受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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そろそろ感謝回って事で番外編作りたいなって気持ちがあるので着手中。本編にそぐわないハチャメチャなギャグ回になるでしょうね。


それではどうぞ。


第46話 決意の末

side一進

 

 

 

 

「……俺は…魔界で生まれた人間なんだ」

「…………」

 

 …………。

 

 俺の告白によって辺りは静寂に包まれる。

 

 ここには三人しかいないが、それを感じさせない程にまで静まり返る。

 

「……嘘よ…」

「嘘じゃねぇよ」

 

 やっとの事で紡いだであろう紫の言葉からは悲観の意が溢れていた。

 

「だからそっちの先生が―「永琳よ」ん?…ああ了解。…が言った通りで俺は魔界の産まれなんだよ」

 

 赤と青というポピュラーだが合わせる事により奇抜さが際立つ配色をあしらった服を着ている女性が名を教えてくれる。

 

 永琳と言うらしいが…今は一先ずは先生とでもつけておこうかな…。

 

「…………ッ」

 

 信じてくれたのかね…?紫は歯噛みして何かを押し殺しているようにも見える。…いや、寧ろ―「でも一進は……」…ん?

 

「外界ではそんな事一言も言わなかったじゃない!!」

「…………」

 

 紫の怒りたくなる気持ちも分かるっちゃ分かる。今更そんな大切な事を言い出した…というか忘れていた俺が十全に悪いのは明白だし。

 

 ……それに、

 

「…周りから疎まれ嫌われていたのがツラかった…だからそんな世界に嫌気が差して更には見限って幻想郷(こっち)に来た…」

 

 当初はそんな事言ってたけど…ここまできたらその考え自体が最初っからおかしかったんだな。

 

 …なんせ俺は元々その世界(外界)に居てはいけない存在である。

 

 それどころか寧ろ異物として混じったのが俺の方なのだから、そもそもの話外界を見限るもクソも初めから無かった訳で…。

 

「そんな訳で俺は全然人間なんかじゃなくて……どっちかと言うと人の皮を被った化け―「やめなさいッ!!!」……」

 

 つらつらと言葉を並べていた俺を制するように遮るように紫は叫び出していた。

 

「何でッ!!何でそうやって簡単に自分を傷つけられるのよ!!魔界生まれであろうと外界で生まれた普通の人間であろうと一進は一進じゃない!…それで…それでいいじゃないッ!」

 

 初めは劈く悲鳴のような叫び声を上げていたが、それも言葉尻には段々としぼんでいってしまい代わりに小さな嗚咽が混じるようになる。

 

「…何で…なのよぉ…」

「…………」

 

 正直驚いた…。

 

 紫の事だから…というと少々バカにしているように聞こえてしまうが、そんな気持ちは一切無い事だけは先に知っていて貰いたい。

 

 だからこそ言うが…俺は紫の事だから実は話をよく理解していないとさえ思っていたんだ。だけどそれは大きな間違いだって事に気付かされる。

 

『外界ではそんな事一言も言わなかったじゃない!!』

 

 これを聞いて、俺は魔界出身であることと、それを言わなかった為紫が怒ったのかと感じていたけどおそらくそれも全然違うだろう。

 

「貴方は…貴方の筈なのに…」

 

 紫は…俺が魔界出身である事に怒った訳じゃ無くて、俺が俺自身を卑下している事について怒っているようだった。

 

「話の腰を折って悪いわね。私は魔界についてあまり詳しく無いから教えて貰いたいのだけどいい?魔界出身魔界出身って言ってるけど…魔界はそこまで忌むものなのかしら?」

 

 そう口を開いたのは、先程から殆ど会話に入って来ずにいた先生。

 

 先生は魔界の事を知っている様だったけど…それも表面的なもので深くは知らないらしい。まぁ俺だって思い出したとはいえ元々魔界の全てを知ってる訳じゃないからどうとも言えないがな…。

 

「…俺が言ったら変な話になるけど……客観的に見てそうだと思うぞ」

 

 人妖入り乱れている幻想郷からすれば大差は無いかもしれないが…とてもじゃないが真っ当な感性なんてものはない。それでも崩壊せずに成り立っていたのは絶対的な力の持ち主が魔界を統べていたからだろう。

 

「そう。なら貴方は自分自身を勝手に卑下しているわけね」

「…はぁ?」

「自分の存在は悪みたいな考えを持っているみたいだけど現状私は貴方の事なんてどうとも思ってないわよ。というかどうでもいい」

 

 

 ………………。

 

 

 …………。

 

 

 …………マジ?

 

「どうでもいい!?いやだって魔界だぞ魔界!魔界の因子がどうとか言ってるんだから魔界がどんな所かぐらいは知ってるだろ!?」

「さぁ?かなり昔に貴方と似たような因子を持っていた魔族に会った事があるけど…どんな所かまでは興味ないわね」

「…興味ないってマジかよ……」

 

 俺だって魔界への行き来の仕方も魔界がどこにあるかも分からないけどよ……。

 

 取り敢えず魔界の中心都市以外は生物が生存出来るような世界じゃない上、その外周世界が魔界全土の七割以上を占めてるって教わったぞ。

 

 …かと言って中心都市にいる奴が弱いって訳じゃ無いし、あいつらが並じゃないのも重々知ってるし。

 

 ……そもそもそっちが教えてくれって言い出したのに興味ないって言うなよ。

 

「あ~、だけど貴方の怪我と再生力の方には興味あるわね」

 

 医者の(さが)なのだろうが変なとこに興味を持たないでもらいたい。俺だってまだ十分に痛すぎるから少々思い出すのもツラいんだからな?

 

「貴方を切ったのは貴方と同じ魔界人よ。そんなに恨まれるような事をしたのかしら?」

「…………」

 

 そういえば傷口の因子うんぬん…プラス俺の魔界出身告白で同族殺しが起きた事まで筒抜けになっているのか…。

 

 こりゃ説明に骨が折れるわ。どこまでこの二人を巻き込まないように出来るかね。

 

 ……にしても恨まれるような事…か、まぁそれはおいておこう。

 

「相手の顔は覚えてたんだけどさ…だけど何でそれを今まで平然と忘れていられたのか自分でも分からねぇんだ」

 

 覚えていたけど忘れていた…。難しい言葉のようだから説明しづらいけど…分かりやすく言ったら怪しむべき所を疑問に思えていなかったって事になると思う。

 

「何で身寄りの無い俺は外界で生きてこれたのか……」

 

 孤児院とかそういう所ならまだ分かるけどそんな記憶は無く家ではいつも一人だった…それだけで十分に異端すぎるじゃねぇか。

 

 魔界でずっと生きてた筈なのに、急に幼くなった俺は外界で教育を受けている。それが当たり前のように過ごしていたからおそらくだが肉体でも記憶でも改竄された可能性が多いにある。

 

 まぁ生憎身の回りの世話はみっちりと仕込まれていたから困らなかったし、金も子供の時を生きるのに困らないぐらいにはあったけどな。

 

「何でそれを当たり前に思っていたのか……」

「……外界で貴方の事をあれだけ調べても何も分からなかったのはそういう事だったのね」

「…あれだけ調べた?」

「あ!…い、いや!何でもないわ!」

 

 そっか?紫は何か気になる事を口にしていたけど…まぁ何でもないと言われれば流石に聞き出す訳にもいくまい。

 

 そう感じた俺は再び話を戻そうと思考を巡らす。

 

「それで俺の事を切った夢子は元々知っている奴だったし…まぁ切った理由も分かるような気がするけどな」

 

 急に斬りかかってくるのはホントに勘弁して貰いたい。魔界では生活能力や戦闘能力を鍛える名目で半分師匠みたいなもんで散々世話になったけど…追い縋れども毎度毎度ボロカスにされて勝った試しなんて皆無だし。

 

「夢子…って魔界神の側近の!?」

「ああ」

 

 どうやら紫は夢子の事も魔界神の事も知っているらしい。

 

 でもちゃんと魔界を知ってたらそこのトップとして魔界神である神綺は何かと有名になるだろうし、夢子は神綺の誇る最強の付き人だからな。さして驚く事じゃないさ。

 

「貴方はなんでそんなのに狙われたのよ…」

「さぁ?心境の変化があったんじゃないか?初めから殺す気だったら俺を外界に追放なんてせずに殺してる筈だし」

 

 先生に聞かれたから答えたけど…あながち間違ってはいないと思う。

 

 更に言えば人里帰りの時だって確実に殺す事が出来たのにそれをしなかった。その結果延命された訳だし。

 

「俺をぶった切った後止めを差さなかったのがいい例だよ」

「…………喜ぶべき…なのかしらね」

 

 ああ。向こうの考えが分からないけどそれのお陰で助かったのは事実だからな

 

 バッサリ切った後に動けないでいた俺に目もくれず消えて――って…。

 

「やべ…服」

 

 切られたついでに嫌な事を理解してしまい少し憂鬱な気分になる。

 

「服?そういえば執事服じゃ無かったわね」

「こいしに選んで貰ったんだよ。俺も割と気に入ってたんだけどな…」

 

 縫えば着れそうだから――血を洗い落とすのが先か…落ちるのかコレ?まぁそこまで深く考える必要は無いと思うけど……。

 

「どうしたの?」

「どうしたよ?」

 

 先生も紫の事が気になっていたようで偶然にも言葉が被る。しかし裏を返せばそれだけ紫の様子が変でもあった。

 

 当の紫はというと…。

 

 

「…………あの子は何をしていたのよ…」

 

 

 あまりにもゾッとするような声で怒りを漲らせていた…。

 

「やめろよ紫!悪いのは全部俺なんだ!こんな事になるなんて思わなくて一人で外出した俺自身の責任だろ」

 

 思わず俺は叫びだす。

 

 ……そうでもしないと今すぐ紫はこいしの下へと向かう気がしてしまったから…。

 

「だって!!あの子が一進についていたらこんな危ない目に合わなかったかもしれないじゃない!?」

「こいしにも被害が及ぶだけで寧ろ悪化するだけだ!それに紫だって夢子を知ってるんだったら実力も分かるだろ!」

 

 俺はこいしが弱いだなんて言ってるつもりは一切無い。ただ夢子がそれ以上に強すぎるというだけなんだ。

 

「…それは……」

 

 ほら見ろ、あいつを知ってる奴なら勝負にならない事なんて初めから分かり切っているんだ。

 

「襲われた際の一撃で通信の札が壊されたから紫に連絡しなかったけど……たとえ仮に連絡が出来てたとしても俺はしなかったと思うぞ」

「そんなに私が頼りないって言うの!?」

 

 いやちげぇよ…ただ紫でも藍さんでも巻き込みたくないってだけで…。

 

「あの子は初めに貴方と会った時より随分変わったって言うけど……私から見たら貴方なんて何も変わっちゃいないわよッ!!」

「…………」

 

 あまりに必死な紫に追い詰められて俺は二の句が告げなくなる。

 

 そして想い起こされる心象風景。

 

 

 

『……お進はさ…初めの頃自分の命を(ないがし)ろにしてたから…それがお姉ちゃんは心配だったみたい』

 

 

 

 …やめろ。

 

 

「いつだって自分よりも他を優先して、その挙句傷つくのは自分だけッ!!」

「…………」

 

 

 

『更には自分を犠牲にしてレミィの本心をフランに聞かせるなんて手を取るなんてね』

 

 

 

 ……やめろ。

 

 

「貴方はそれで勝手に満足してるみたいだけど…私はそんな事一切望んでないわ!!!もう見ていられないからやめてちょうだい!!!」

 

 紫の言葉を聞くたびに周りから言われた事を思い出す…。

 

 確かに俺は自分を蔑ろにしたり犠牲にしたりしてきた……。だけどそれは他者を幸せにする事が出来たし結果それが俺にとっても嬉しい事だった……。

 

 だけど今紫は一切望んでないって……つー事は何だ?今までの全ては俺の勝手なエゴ?自己満足だってか?

 

 

 ……なんて冷静だったのは頭の中だけだった…。 

 

 

 

「だったらッ!!」

 

 

 

 脳外ではもう既に振り切れてしまっていた。

 

「だったら俺はこれからどうすればいいんだよッ!!幻想郷は俺を受け入れてくれた!!不幸を振り撒く問題だらけなこんな俺でも受け入れてくれた!!そんなやつらに恩を返す事すらやめたらどう生きるのかも分からねぇよ!!」

 

 留め処なく言葉を吐き捨てる。今まで必死になって奔走してきた事を真っ向から否定された事で全てが揺らぐ。

 

「俺に…生きる理由をくれよ……」

 

 

 それがダメならあるいは……。

 

「………」

「………」

 

 …………そうか。そうだよな。単純な事だ。異物は異物らしくすべきだろう。これ以上迷惑を掛けない為に俺が取るべき行動は一つだ。

 

「それならいっそこのまま殺されてりゃ―『ドスッ』ぐッ!」

「はしゃぎ過ぎよ。私のオペを無駄にする気?仮にも怪我人なのだから暴れないでもらいたいわ」

 

 先生!?…くそッ…何か刺された…?

 

 ……なんだよこれ…注射器…か…。

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

side紫

 

 

「ちょっと!大丈夫!?」

 

 一進との言い争いが徐々にヒートアップしていった所…私が言った言葉が一進の地雷を踏んでしまったらしく一進は珍しい事に本気で感情を表しているようにも見えた。

 

「永琳!一進に何打ち込んだの!?」

 

 叫び続けていた一進に永琳は何かを注射すると、みるみる活動が鈍くなり一瞬のうちに一進は気絶してしまった。

 

「貴女も落ち着きなさい。ただの鎮静剤と睡眠薬の複合剤よ。下手に暴れられて怪我が悪化したら堪らないからかなり濃度上げてるけど」

「………そう。それなら良かったわ…」

 

 永琳の説明を受けてホッとするのも束の間…永琳は床に臥した一進を病室に運ぶ為に担ぎ上げながら言葉を投げかけてくる…。

 

「彼も外界や魔界の事で相当精神が参ってるみたいね。結果的に私がきっかけだし怪我の兆候もあるししばらくは永遠亭(うち)で面倒見てあげるわ」

「…分かったわ。そうしてちょうだい」

 

 仮にも同郷の知り合いだという彼女(夢子)に殺されかけた直後だっていうのに、私が色々ぶつけてしまったからよね…。

 

 ……一進は薬を打たれる直前、完全に自暴自棄になっていたし…あまつさえ死のうとさえ思っていたみたいだった。

 

「…貴女と魔界の間に何があったのかなんて知らないわ。だから正しいアドバイスは出来ないのだけど…」

 

 永琳はそう言って言葉を切る…。

 

「答えは既に出ている筈よ。…貴女の中でそれの整理がついたらもう一度ここに来なさい」

 

 私と魔界の関係…その答え……。出ているようだけどそれは決して開いてはいけないパンドラの箱…。

 

「ええ。分かってるわ」

 

 魔界の危険性は私も十分な程に良く知ってる。

 

「…少し長くなるかもしれないけど…それまで一進をよろしく頼むわね」

「ふふ…永遠な暇を持て余してる姫様の遊び相手にでもちょうどいいかしらね」

 

 私は今幻想郷の賢者としての岐路に立たされているのかもしれない。

 

 なにせ幻想郷の全ての命を抱えている私の采配に間違いは許されない。許される筈も無い。

 

 

 

 だけど…。

 

 

 

 私の世界で好き勝手にされた挙句、私の愛しい人が傷つけられたら流石に黙っていられないわよ。

 




ギャグ要員の欠乏によりシリアス一直線なのよ。面白枠として犠牲になるウサギは誰でしょうね。


それではまた次回。
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