絶賛シリアスターン中。
それではどうぞ。
◯
side一進
「ん〜、うん。美味しい」
朝の時間帯、台所に立ってるうどんは自らが作った味噌汁(かな?)を
「ええ〜っと後何品か…っていうより今日は姫様は起きてくるのかな…?」
「なぁ、何か手伝うか?」
首を傾げるうどんの姿を居間から眺めていた俺は、ポツリとそう提案する。
だってあっち行ったりこっち行ったり、あまりにもうどんが可哀想過ぎるんだもの…。
数日間見てたけど、うどんって家事やったり先生の補佐やったり人里行って薬置いたりと色々忙しそうなんだ。
それなのに俺は限られた者以外との外部接触が禁じられてる身の為、本当にやる事が少なく心なしか罪悪感が芽生えてきてる…。
「え…いや、いいわよ…」
「遠慮すんな遠慮すんな!俺がやりたいだけだからさ」
「遠慮とかじゃなくて…その…」
「?」
遠慮じゃない?だったら何ぞや?
うどんは何やら口にしていい事なのかと悩んでいるようなそぶり続ける…。
「…また…師匠に折檻……ないし」
「は?」
逡巡した挙句、うどんは虚ろな目をして小声でブツブツと何やら言っているのだが…
「な、何でもないわ!それに手伝うって言ってもあんたって怪我の後遺症で手先が麻痺してるんでしょ?」
「麻痺ではないがな」
と言うか後遺症でもない。
頑として俺を手伝わさないようにうどんは言い張ってくるからどうしたもんかね。まぁそれだけなら兎も角…俺はうどんにあらぬ心配までされてしまっていたのに少し驚く。
「(即効で麻痺じゃないって答えたけど…当たってるよな?コレって多分麻痺とは言わないよな?)」
俺は自分の手をグーパーしながらそんな事を思う。
ああ、因みに俺は初日に先生の下で俺に制限をかける為に服用したっていう薬(つーか毒?)について話を聞きに行ったんだよ。
だからって事ではないが、皆にはその内容について少しだけ教えよう。
『え?自分に何を投与されたのか知りたいですって?』
『そりゃな。気になるもんは気になったもんで』
『……なら教えるけど…塩化……CaCl2H2OとKClとNaClとC3H5NaO3よ。分かるの?』
ん〜…と。
『塩化カルシウム水和物と塩化カリウムと塩化ナトリウムと……乳酸ナトリウムか?』
多分教えるのが面倒だからわざわざ化学式で言い治したのであろう。それで俺が分からなければそれまでって事にすれば良いし。
だが残念、若干違ったような気がするがパン作りの時に食品添加物としてそれを見かけた事があるから多分合ってる筈。
『……何で…』
『分かるのってか?外の世界じゃ割とありふれてるぞ」
フフンどーよ、俺の無駄な知識がこんな時に活きるなんてな。
だからまさかマジで当たってるなんて思わなかったから…得意げな顔して言ったのがおそらく悪手だったんだわ…。
『……そう。…それなら』
うん。今思い返せば完全に俺が調子に乗ったのがいけなかった。
『……一から教えてあげるからしっかりと覚えなさいね』
そっから先はマジで意味不明な言葉の羅列だったよ。
にっこり笑った先生は嫌がらせかってぐらいに
「麻痺じゃないの?…いや、でも似たような状態の人間に料理なんて任せられないわ」
そう言ったうどんは再び料理に意識を戻してしまう。
任せられないって言われてもなぁ、最近じゃ手や足先に若干の違和感ぐらいしか感じないから別に困る事も無いし気にせずにいるんだけど…。
「つーわけであれだ。働かせろ」
「アッブナ!?」
若干の職業病になりつつある俺は、台所に立つうどんの背後から忍び寄って前後にうどんを揺らす。
「ちょっとォ!?包丁動かしてんだから急に触らないでよッ!!」
「だったら包丁置けよ!!」
「今のって私が怒られなきゃいけないの!?」
理不尽?知るかそんな事!こっちは散々縛られた生活を強いられているんだ!!
「そんぐらい分かってくれ、何もせずにいるってのがかなり苦痛なんだよ!」
……実際は日中姫さんと遊ぶってのが仕事にあったんだけど…姫さんと居たらず〜っとゲーム三昧になるんだよな。
ファミ◯ンとかドリ◯ャスとか…一体どっから仕入れて来てるんだっつーの。
「…安◯先生…料理が…したいです」
「変な懇願しないでよ!ってか誰よソイツ!!…はぁ、ああもう分かったわ!」
「え!」
っしゃおらキタコレ!
きたッ!きたぞ!!俺の誠実で熱心(?)な頼みが通じたのか遂にうどんが折れてくれた!!
「よっしゃ何喰いたい!?グラッセか?チャプチェか?きんぴらか?しりしりか?」
全部のレシピに人参が入っているがそんな事は気にしない。
少なからず料理の許しをくれたうどんへの感謝の気持ちとして人参大量投入は普通だよ普通。
「…え、いや…」
「何ぞ?もっと他のもんがいいのか?」
まぁ、俺が今挙げた中以外から注文するでもそれはそれで構わんぞ。それに別に今だったら何だって作ってやらん事も無いし。
さ~てさて~どんなのを作ろうか――。
「やる気出してくれるのは嬉しいけど…もう用意は殆ど終わってるから一進に頼むのは次回からよ」
「…………」
…………。
「え?」
「え?」
…………。
「次回?」
「次回よ」
うどんは手を止めて振り返り、俺の言葉にオウム返しをしながら食器を取り出そうと戸棚に向かって行く。
そうして結果的にうどんが退いてくれたから俺は調理場の上を見る事が出来たわけで…。
ああ…うん…。今更俺が手を加えれないぐらい料理が完成してますわ……。
…………。
「お前の血は何色だぁぁぁ!!!」
「だから何で私が怒られてんの!?」
***
「そんなわけで先生。俺は永遠亭の家事をうどんと両分する事になったから」
いつも通り姫さんだけが来ない永遠亭の朝の食卓。
俺はうどん
「下手に竹林の外に出ないんだったら別に構わないわよ。私もそこまで貴方を縛るつもりなんてないし」
「良いんじゃない?私の方も手伝ってくれるなら尚の事良いんだけどな〜♪」
と、二人からも許しが出たので俺は本格的にココでも仕事が出来そうである。
…てゐについては釈然としないが……まぁ、時間を見つけたらちょいちょい手伝ってやろう。
「私としては他の事に時間を使えるようになるので一進の申し出は助かりましたよ」
というよりも俺が禁断症状みたくなってたんだけどな。
「へぇ〜自ら働きたいなんて一進も変わり者だねぇ〜。…姫様に爪の垢でも差し出してほしいよ」
「ハッハッハ!やらねぇよ」
てゐの言わんとしてる事は分からなくはない。
ないけど…悪戯大好きな俺でも流石にそれは許容出来ない。
「……やめなさいよ?」
「やらねぇって!!」
の、筈なのに先生からは釘を刺される始末…。
何?何なの?俺はここでの生活で周りからはそういう事をやる人間だとでも思われてるわけ?
「ええ」
「まぁ」
「うん」
「頷いてんじゃねぇよ!?ってか心読むなよ!」
実際は三人とも俺の思考を予想して言ってるだけなんだろうけど…。何三人揃ってさとりもびっくりの観察眼を発動してんだよ。
……全く、俺ほどの聖人なんて他にはいないと――。
「「「はっ」」」
「表出ろやぁ!ミハルスと兎二羽!!」
自分でも巫山戯た事言ったのは自覚してるけど…ツッコムのならともかく鼻で笑うのは許さんぞッ!
***
○
sideてゐ
「一進もバカだね〜。私と鈴仙だけならまだしもお師匠様に突っかかるのはただの愚行だよ」
一進が数秒でお師匠様に制圧されてから数分後…現在では私と一進だけが居間に残っている。
そして、皿洗いをやっている一進の背中を見て私は先ほどの事を掘り返していた。
「ミハルスで笑ったお前が言うなよ」
「いや〜まぁごもっともで」
だってお師匠様をミハルスって…確かにカラーはそうだけどあまりにも不意打ち過ぎたからついね。
…ん?ミハルスが分からないって?
カスタネットとも言われる『うんたん♪』する打楽器の事だよ。
「だけどもう逆らおうなんて気は起きないでしょ」
「そりゃ起きるわけ無ぇだろ。……久々にガキ扱いされたからな」
静かに一進は
怪我無く制圧…。
相手にもよるが幻想郷の住民だと怪我する事なく相手を倒す事が出来る実力者はそこそこ多いだろう。おそらく一進もそのクラス。
だけど、そんな相手に怪我するでは無く、それどころか怪我させる事なく倒せるっていう、より難易度が高い事をやってのけてしまう超常さがお師匠様にはある。
「一進もそこそこ強いんだってね。でもお師匠様とは格が違うよ」
確かに一進は紅魔館に居たらしいからあの吸血鬼嬢に認められるぐらいの実力はあるんだろうけど…それでも…ね。
「世辞として受け取っとくよ。それにあのレベルとは次元が違うのは俺が良く分かってるっつーの」
そう言いながら台拭きでしっかりと机まで拭いている所を見ると、案外一進は仕事好きな上仕事が出来る人間なのかもしれない。
……ん?……あのレベル?
「で、お前は何か俺に手伝わせたい事でもあるのか?」
「え?」
ちょっと一進が言っていた事が気になったけど…片付けも終えた一進がそんな事を聞いてくる。
「ああ、いやいや特に何も無いよ。ただ姫様が起きてきたら食事の用意があるからここにいるんだけどね」
と言っても鈴仙が作ったのを温めればいいだけだからラクなんだけどさ。
「それよりも私は本当に手伝ってくれる事に驚いたよ。何さ、筍に味でも占めた?」
既に筍採りなど手伝わせていた事もあったからてっきり聞き流されるもんだと思ってたよ。
ま、一進がやってくれるって言うなら次から一進は籠二つにでもして手伝って貰おうかな〜♪
「まぁ、俺にメリットがありそうだったら大抵は手伝うつもりだけど…本当は先生の所の方が良かったんだけどな」
「ん〜、治療方や薬学、医療術全般を知っておきたいって事?」
「まぁな」
ホント勉強熱心で頭下がる人だね。……これは一進が寝てる間に本当に爪から採取しようかな?
「つってもうどんの奴が
「…妨害?」
鈴仙が?
「ああ。俺の行動を図ったかのように長々と先生と話し合ったりしてな」
お師匠様と医療について話し合うって…。
あれ〜?そんな事する程仕事熱心だったっけあいつ?
「お陰で俺が日中メチャクチャ暇だったって事から初っ端の話になるわけさ…。暇過ぎて自分の居場所が無いってのもあるけど」
「…成る程ねぇ」
ああ成る程成る程、分かった分かった。一進のお陰で鈴仙の行動が理解出来たよ。
「何でか分かるのか?」
「ま、鈴仙とも長くいるからね。と言っても一進も聞いていた筈だよ」
「?」
ありゃ忘れてんのかい、初めて姫様に会わせた直前に鈴仙と姫様がやってた問答の事なのにさ。
……まぁ覚えてないなら覚えてないでいいんだけどね。
「ええ〜っと…鈴仙の妨害の理由は…私以上に毛色が違うってになるのかな」
…嫌だねぇ鈴仙は…。もう私達からしたら家族も同然だっていうのに未だにそんな事気にしてさ。
「うどんの毛色?…黒と紫でそこまで変わるもんなのか?」
「……それ、本気で言ってる?」
私の頭を見てそんな事を口走る一進。
だとしたらこの会話はここで終了させて貰うよ、そんな無駄な時間を使いたく無いし。
「……あ〜、悪い。大ボケかました」
私が声色を少し変えた為、一進は反省するように深く頭を下げる。
…別に私だって巫山戯るのは大好きなタイプだから人に向かって『巫山戯るな!』なんて言うのは
「TPOって思ったより大事なんだよ?シリアスの時なら特にね」
「…悪い」
巫山戯ていい時と悪い時ぐらいはしっかりと使い分けてほしい。
「期待…してんだよ?」
ポフっと…。
一進が胡座をかいていた所に背中を預けるようにして私は座る。
「期待?何が?」
いきなり座られたから少し戸惑っているようだったけど、一進は慣れた手つきで私の頭に手を置いてくる。
「私はさ、幸運の素兎なんて言われてんだけど…あの人らにはそんなの通用しないのさ」
「幸運…ねぇ。で、あの人
「うん」
若干オマケもいるんだけど…姫様の為にソイツも救ってやってほしい。
「オイオイ…皆揃って幸せにしろだなんて難しい事言ってくれるなぁ。スーパーヒーローになった覚えも無いしそれに俺の目には別段不幸だってやつが見当たらないんだが」
一進は頬をかいて思ってる事を素直に言ってくる。
私に言われるがままにただ了承するのでは無く…今度は言葉を選びながらもしっかりと発言する姿には好感が持てるよ。
「しかも何でてゐがそれを望むんだよ?」
「…永〜く生きてるとそんなもんだよ」
ただただ永く、何も変えられなかった私の生き方に一石投じてくれたのがあの人達だったから。
永く生き過ぎた私は、あの人達に出会って…そして、それからは劇的に私の人生が変わったから。
「よっと。私の事を手伝ってくれるんでしょ?」
「…………」
私は少しばかり思い巡らせた後、立ち上がって振り返り、座っている一進に軽く微笑んで手を差し出す。
…………。
…………。
「…………ハァ」
長い沈黙の後、一進は諦めたように息を吐いてから私の手を取って立ち上がる。
「分かったよ。そこまで言われたらやってやる」
「うん。ありがと♪」
ちょっと意地悪だったかもしれないけど、始めから一進なら手伝ってくれると思ってたからね。
「つっても俺如きの関与なんだ。何も改善しなかったとしても文句は言うなよ」
『絶対に成功させる』なんて言葉を望んでたけど…まぁいっか。
一進だって相手に不確定な期待を持たせないように言ってるだけだもんね。
「そりゃ言わないつもりだよ。っていうか言わせないでね」
だけど残念だね、私は出来なかった時の為の保険なんて聞くつもりないよ。
「……ホント口は強ぇな、その返しは全く思いつかんかった」
「永〜く生きてるからね♪」
「…ハァ」
再三に渡る一進の溜息。
ふふふ、大丈夫大丈夫!一進なら何とか出来るって信じてるからさ!
それに、一進は何かと自分の事を普通だなんて言ってるけどさ……。
私は…ね。
一進に私の能力がちゃんと発動してない時点で、一進が純粋な人間じゃ無い事をとっくに気づいているから。
てゐが想像以上に頭良さそうになったので今後会話考えるのに差し支えそうです。頑張れ優曇華院!シリアルにするには君の手に掛かってる!
それではまた次回。