あと完全に別件で感謝回を何処に投げるか迷い中です。
それではどうぞ。
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紫が改正した条約により、地上との行き来が改善された地底世界。
地上に出るにはさとりの通行許可さえ下りた者であれば進出が可能となっている為、興味本位の者や住居を地上に移そうと考える者も現れ、閉鎖的であった地底も徐々に地上との交流も期待が持てると考えられる。
そんな地底のとある酒場にて、数人の少女達が酒を酌み交わしながらワイワイと騒いでいた。
「いや〜!大勢で騒ぐ酒ってのもいいがこうやって少ない人数で呑むってのもまた味があるな!」
「…そう?いつもの日本酒だしあまり変わらないと思う…」
鬼の四天王で酒呑みの筆頭である勇儀に続いて杯を傾ける少女はキスメ。
彼女は釣瓶落としの妖怪であるが故に大半を桶の中で過ごしている変わり者。現在も酒場の中だと言うのに桶の中に入り、そこからヒョッコリ顔を覗かせていた。
「違うわよ、勇儀の場合騒がしかろうが静かだろうが酒が呑めればいいって事でしょう」
「おう!結局は酒が呑みたいだけだがそれの何が悪い!」
「開き直んなっつーの。あんたに付き合わされる私達の身にもなってみなさいよ」
そうやって鬼を相手に一片たりとも物怖じせずに文句を言っているもう一人の少女は水橋パルスィ。彼女は切れ長の耳を持ち、くすんだ金色の髪から覗かせている怪しい緑色の瞳が特徴的だろう。
パルスィは他人の嫉妬心を煽る事が出来る能力を持っている橋姫の妖怪であり、追加で言えば常に他人を羨んでいるメンドクサイ性格の持ち主でもあった。
「おいおいパルスィ~折角紫の
「良く無いわよ…。そもそも地霊殿の主人が片付けてたからあんた何もしてないじゃないーーってか酒クサッ!どんだけ吞んだのよ!?」
しかしそんな特有なマイナス思考を有しているパルスィでも心を開く事が出来る相手は居る。まぁ居たら居たで自分が弄られ役になってしまうのが分かっているので当人はあまり喜んではいないのだが…。
…取り敢えず本日はそんなメンバーが酒屋に集まり酒を酌み交わしていた。
「アッハッハ〜!!なになになにキスメとパルパル〜はそんなちびちび呑んでんのさ〜。も〜っと沢山呑みなさいよ〜♪」
「…げ」
ホラホラ〜、と通常よりかなり陽気なテンションで騒いでいる人物は黒谷ヤマメ。
彼女は宴会などで盛り上げ役を買って出るぐらい目立つのも騒ぐのも好きなムードメーカー的な妖怪である。そしてヤマメは程よく減りかかっていたパルスィ達の杯にギリギリまで酒を注いでにこやかに笑う。
「あんたねぇ…」
「…なみなみ」
しかもかなりの度数のやつだし…と、キスメとパルスィはヤマメに注がれた杯を見て少しだけ胸焼けしそうになり陰鬱な気持ちになっていた。
「え〜い私の酒が呑めねぇってのかぁ〜!!」
「ええいウザい!!ダルい!!分かった!分かったわよ!呑むからメンドくさい絡み方するな!」
しかしここは宴の席、いくら自分の呑むペースを適度にと心掛けていようと周りがそれを許さない。…ヤマメはパルスィの後ろから抱きつくような形で飲酒を強要させている。
「ングッング…ハァ〜きっつ………。ったくヤマメ。何であんたは既に出来上がってんのよ…」
強要された酒を仕方が無く呑み干したパルスィは取り敢えず矢継ぎ早に文句を口にする。
たとえ酔ってる相手に聞いた所で無意味だとは分かっていたけど…それでも一人だけアルコールが回って楽しそうにしているのが納得いかなかったからというのが内心なのだが。
「んん〜♪もう一杯呑む?」
「聞けッ!もうここまでくるといっそ清々しい程に妬ましいわ!!」
しかし上機嫌なヤマメは一切取り繕う事無く再びパルスィの杯に酒を注ごうと手を伸ばしてくる。
「…パルパルが来る前に既に勇儀と呑みあってたからね」
「おう!ヤマメのやつもなかなか頑張って呑んでたぞ」
「オイ主犯!!」
ケラケラと笑いながら自分が呑まされてるシーンを酒の肴にして楽しんでる勇儀にパルスィはつい暴言を吐きたくなるのをグッと堪える。しかもキスメはキスメでいつの間にかヤマメの相手を免れるように少し離れた場所に移動しているのが尚の事腹が立つのだがそれも自分の中に押し留める。
「はぁ…いいわよ完全に予想通りだったし…。というかヤマメも言ってたけどキスメ、その呼び方何なのよ?」
「…ん~?…パルパル〜♪」
「……チッ」
そろそろパルスィに若干の苛立ちが見え隠れしてきているが…それでもキスメは取り付く島も無くパルスィで遊んでいる。
普段からと言えば普段からなのだが…本日はいつにも増して弄られに弄られるのでパルスィはキスメ達を無視して比較的にまともに相手をしてくれそうな勇儀に視点を合わせる事にした。
「ったく…。ああ、ちょっと勇儀?」
「んあ?どうしたよパルスィ」
いい加減自分が弄られるのも勘弁だったパルスィは、酒を吞む勇儀を見て思い出したと言わんばかりに前々から気になっていた事を勇儀に尋ねていた。
「あんたって少し前に地上に行ったって言っていたけど…結局地上はどうだったのよ?」
「およよ〜?そ〜言えばそんな事言ってたよね〜!それでそれで!ひっさびさの地上はどんな感じだった?」
「…あ〜どんな感じって言われてもなぁ…。私だって行きも帰りも紫のスキマだったからそんなに見て回らなかったぞ」
「折角なのにもったいない…」
パルスィ達の疑問を聞いた勇儀は暫し首を傾げて言葉を繋ぐ…。
「ああ。それに私は地上よりも
呑み始めてからずっと持ち続けていた杯をようやく机に置いて真剣な顔をして語り出していた。
地上みたいな制約が少なく、力がモノを言う地底世界で生きている方が自分達妖怪が妖怪として生きていれるから。と勇儀は口には出さずに心の中で思っていたから…。
「…暗くて狭いのが好き?」
「いやそうじゃねぇよ。…ってかそれはお前だろ」
なんて折角出した真面目さもキスメにボケられてしまい軽くツッコム勇儀。すると、勇儀の言う事に思う所があるのか…パルスィ達も地上に対しての考えをそれぞれ口にし始めていた。
「ま、勇儀がそう言うならそれでいいんじゃない?私だって地上なんて行きたくないわよ」
「うそぉ~私は逆に行ってみたいけどな~。もしかしたら人里でのブレイクも狙えるかもしれないし」
いざ!ヤマメちゃんの地上進出〜♪と勇儀と吞んだ後から天井知らずのテンションフルスロットルのまま地上を思い馳せていた。
「(…パルスィ、あいつが地上でもウケると思うか?)」
「(さぁ?でも取り敢えず一度行って現実を知るのがヤマメの為じゃないかしら?)」
言葉上じゃ完全にウケないと受け取る事が出来るが……ストレートに言って無いのはパルスィの優しさという事にしておこう。
「あ…」
「ん?どうしたのキスメ?…ああ地上で私が人気者になって遠くの存在になっちゃうのが寂しいってわけね。大丈夫大丈夫!どんな事になったとしてもキスメは私の親友だから!」
「じゃなくって…ほら」
一人ではしゃぎだしてキスメに抱き着いたヤマメはほっとくとして…鬱陶しそうな顔をするキスメの視線の先には――。
「あら、地霊殿のとこの妹じゃない」
「お〜、こいしじゃないか!久々に地底に戻ってきたんだな」
先程の勇儀に負けずとも劣らない、真剣な表情をした古明地こいしが酒場の入り口に立っていた。
「勇儀お願い!!わたしを……わたしを鍛えて!!」
「「「……え?」」」
「はぁ?」
そして、酒場に入ってきたこいしは開口一番にそんな事を言出していた。
○
sideこいし
「(…う〜ん……。やっぱり勇儀が一番良いのかな?)」
地上から一時的に地底に戻ってきている私は、ちょっとした用がある為勇儀の姿を探して旧都を駆け回っていた。
いつまでも紅魔館にお世話になるわけにもいかないし、それでなくても服やらなんやらで荷物が多くなってきてたからさ、一度は地霊殿に帰ろうと思ってた所だったからちょうど良かったんだけどね。
……そう。ちょうど良かった。
別にわたしは荷物を置きに来る為だけに地底へと帰ってきたわけじゃない。…何故かって言うとそれは…数刻前までしていた地上での紫との会話を思い出す。
***
『紫。いきなりで悪いけど何でわたしが来たか分かるでしょ?』
『……こいし…』
紫は突然八雲邸へとやってきたわたしを見るなりに厄介そうな表情を浮かべながらも何かを思案している様だった。
…しかもよくよく見ると、その目下にはクマが出来ていて、今までに見せた事がない程に疲労が溜まっている様でもある…。
だけどそんな状態である紫に対しわたしは――、
『お進に…何があったの…?』
『…………』
数日前に紫から伝えられた…お進がナニカに襲われて大怪我したって話が全然納得出来ていなかった為に問いただす。
あの時は聞いた瞬間に頭が真っ白になってたんだけど…どうやらわたしはレミリアに気絶させられたみたいで、目が覚めた時は紅魔館のベッドの中にいた。
…後からメイドさんに聞いたんだけど…紫はわたしに対して怒り…否、僅かながら殺気さえも向けていたんだって。
レミリアが咄嗟の判断でわたしを止めてくれたから助かったけど、本当にあのままわたしがお進の下に向かっていたらおそらく紫はそれ相応の対処をしていたと思う…。
だからわたしは紫の下までわざわざ会いに来た。下手に焦って行動するよりはしっかりと理由が分かった上でわたしはお進に会いに行きたい。
『…紅魔館で教えたでしょう?一進は今永遠亭で療養中よ』
永遠亭…迷いの竹林の奥地に建っていて、幻想郷で医療施設を築いている珍しい場所。
しかも、そこの住人と直接戦った事のあるレミリアとメイドさんの話によると相当な実力者がいるんだって。
『それは分かってるよ。だからわたしは何でお進に会っちゃいけないのって事が聞きたいの』
『……』
紫はだんまりしてわたしの顔をじっと見つめて来る。
…お進と居た時とはあれほど煌めいていたっていうのに、今や完全に輝きを失った瞳でわたしを見ていた。
『……会っちゃ…いけない?……ふ、あははは!』
『――ッグ!?』
『貴女は何を言ってるのッ!!』
『紫様ッ!!』
ひとしきり笑った紫は突如血相を変えてわたしの首を締めていた。ひやりと冷たく、細長く綺麗な指がわたしの首元に沈み込んでくるのが分かる。
締められる瞬間に微かに空気が漏れ、わたしは喉が振るわせるだけで一瞬にして声すらも出せなくなる。
『何をやってるんですか紫様!!』
『…………ッ』ドサッ
『ゲホッ!ゲホゲホ!』
わたしを八雲邸まで連れてきてくれた狐さんの介入によって、紫は指の力を緩めた事でわたしは絞首から解放されて床に落とされる。
『…ハァ…ハァ…』
『平気か古明地こいし!』
『大…丈夫』
と、急いで駆け寄ってきてくれた狐さんに無事である事を伝えると同時にわたしは紫に再び目を向ける。
『…………』
見下ろしてくる紫は口元を固く
…………。
…締められた首は痛くは無かった…。
……だけど、普通に締められる以上にわたしは紫から恐怖を感じた。
……わたしが紫に恐怖を抱いてるわけじゃなく、紫が何かを恐れているように感じとれてしまった。
『……止めてくれて助かったわ藍。…それじゃあこいし。貴女はこれ以上入り込まない事ね』
だけど、わたしには紫に脅されてる事よりも、儚く崩れ去りそうな印象が伺える紫の心の方が遥かに深刻に思えた。
だから、だからだろう。
『だったら思う存分わたしを痛めつけてよッ!!それで、それでやっと真実を知れるなら本望だよ!』
『おいッ!?』
狐さんの制止の声も聞かずに再び紫の前へと立ち上がる。……わたしは否が応でも紫の事もお進の事も知りたくなってしまったから。
『……本気で言ってるのかしら』
『うん、本気だよ』
紫程の者でも思い悩むのだから、わたしが真実を知った所でどうしようもないと思う。
そう。貴女
そのお陰で紫がわたしからお進を遠ざける気持ちが少し分かって嬉しかったし…同時に頼りにされてない事が悲しかった。
大前提な話だけど紫は幻想郷の全てを愛している。その為に調停者となりその為に奔走している。
だからこそ、その中にいるわたしに危険が及ばないように考えてくれているのが分かるし、それがとても暖かい気持ちになる。
――だけど。
『わたしがお進を想う気持ちを勝手な尺度で解釈するな!!』
わたしの想いは曲げられない。
お進を想うこの気持ちは本物だ。
『…そう』
わたしの言葉に紫の妖力が揺らぐ。向こうが思い詰めて考えている事もあるんだろうけど、そんなに苦しむ顔をするならそれをわたしにも背負わせて欲しい。
だからこそ、わたしは知りたかった事を知る為に臆さずに言い放つ。この先わたしは紫のされるがままになるけど…そんな事は気にせずにわたしは眼を閉じた。
…………。
……。
…?
しかし、しばらく待てど不可解な事にわたしは一切何かをされる事はなかった。
不思議に思いわたしは閉じていた眼を開いて紫を確認する。
『…ねぇ藍?何で連れてきちゃったのよ…』
『人里まで買い物に出たら待ち伏せされてまして…』
わたしを見た紫は一瞬複雑そうな顔をした後、狐さんに向かって何故わたしを連れてきてしまったのか問いただしていた。
『それでここまでノコノコ連れてきてしまったと…』
『面目ありません。ですが良かったのでは?』
『……ま、たしかに頃合い…ね。こいし、貴女の覚悟を受け取ったわ』
決心をした紫の表情と、そこで紫の口から語られた真実。
一度聞いてしまえば後戻りは出来ず、わたしはただただ、紫が現状で把握している所まで聞かされる事になった。
『藤代一進……彼は人間じゃ無いわ』
『……え?』
次もこいしのターンなんですけど…ちょっとかっこ良すぎないっすかねぇ。
それではまた次回。