お荷物追放された俺に、バグキャラみたいなメスガキの弟子が出来ました。   作:歌うたい

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第2話『幼馴染』

「えっ。所属ユニオンをクビになった?」

 

 あんぐりと口を開けた目の前のゆるふわ銀髪眼鏡美女に、シレンはスプーン片手に神妙に頷いた。

 

「いつ?」

「今日」

「今日!? え、じゃあクビになってそのままうちに来たんですか!?」

「そうなるな」

「なんでちょっと他人事なんですか!」

 

 失敬な、ちゃんと当事者だよ。そう言いかけはするも、出されたシチューをパクつく腕も口も止まらない。クビになったにしては妙に解放感に溢れたシレンの様子に、ゆるふわ銀髪眼鏡美女ことエスカリエ・ライムマーチは首を傾げる。

 ひょっとしたら、自分の前では強がってみせているだけかもしれない。突如自宅を訪ねてきた幼馴染には、昔からそういう所があったのだ。だから深くは聞かないでおこうと、エスカリエは傾げた首をひょいと戻した。

 

「でも、シレンをクビにするなんて、エレン君のユニオンは大丈夫なんでしょうか? 例の他三人でエレン君を支えることなんて出来ます?」

「教える事はもうとっくに教え切ってるし、最近じゃ俺はずっとサポート役だったからな。問題ないんじゃないか? 俺はお役御免だよ」

「⋯⋯どうせ他三人の見せ場を作る為に、裏方に回ったんでしょうに。まあ、シレンが良いなら部外者の私がとやかく言うことじゃないんでしょうけど」

 

 時たまシレンと会う機会があり、エレンとも知り合いであるエスカリエはグローリーについてもある程度把握していた。エレンのシレンに対する好意にも、直接聞いた訳ではないが少しは悟っていた。

 だからこそエレンがシレンを手放した事は意外だった。よもやシレンを一度傷心させ、その傷を慰める事で距離をぐぐっと詰めよう、という本末転倒な計画を企んだとは思うまい。

 仮にそれを知ったとしたら、エスカリエは激怒する事だろう。三姉妹がエレンの役に立ちたがってる事を思い、サポート役に徹したシレン。彼がダンジョンの下調べや、構造把握にナビゲート等、便利なアイテムやモンスターの知識などを得るべく図書館に足(しげ)く通っている事を、王立大図書館の司書であるエスカリエは知っていたのだから。

 

「えっと。とりあえず、お疲れ様でした。でもこれからどうするんです?」

「⋯⋯そこなんだよなぁ」

 

 労りつつも先を窺うエスカリエに、はじめてシレンはスプーンを置いた。

 つい三姉妹の悪感情とエレンの激重愛執から脱せられると、アジトを去ったシレン。その足でエスカリエの元へと来た訳である。今後のプランなど立っている訳もなかった。

 

「しばらくは中級ダンジョンをソロで潜りつつ、職でも探そうと思ってる」

「そ、ソロでですか? 流石に無茶ですよ。中級ダンジョンはモンスターも厄介なのが増えてますし、ダンジョントラップも多いし、やっぱり危険です」

「心配症だな。中級くらいなら問題ないだろうが⋯⋯まあ、安全面重視で行くならマップ作りには自信があるし、探索系ユニオンの雑用募集でもないか、ギルドの掲示板をあたってみるつもりだ」

「そうですか⋯⋯あ。そういえばシレン。あのユニオンに入ってからはアジト住まいで、元の家は引き払ってましたよね? クビになったということは⋯⋯」

「あー⋯⋯人間、住めばどこだって都だぞエスカリエ。廃墟だろうがスラムの路地裏だろうが、二、三日経てば慣れる。多分、きっと」

「そういう無駄な逞しさは結構です。新しいお家が決まるまでは泊まっていってくれていいですからっ。頼るならちゃんと頼ってくださいよ、まったくもう、ほんとにもう」

 

 つまり現状、シレンは家無し職無しである。役立たずの烙印を押された上に住処を丸々失うというのは、二十代の働き盛りにとってあまりにも重い処遇だろう。

 現に軽口を叩く最中にも、これからどうしようという憂鬱さが滲み出ている。それでも幼馴染の前では強がろうとしてはみたが、エスカリエを呆れさせるだった。

 

「ありがとう、お母さん」

「気にしないで⋯⋯って誰がお母さんですか! ただの幼馴染でしょ、年だって君と二つしか変わらないのに!」

「ご馳走様。皿とスプーンは洗っとくな、お母さん」

「なんだかんだ結構余裕ありますよね! そういうところですよ! まったくもう、ほんとにもう!」 

 

 ストレス過多なユニオンから脱せたとはいえ、家無し職なしなシレン・グレイジュライは間違いなくドン底なはずだ。

 しかし、こんなゆるふわ銀髪眼鏡美女を幼馴染に持ってる時点で充分トントンなのではないか。更に優しさに甘えて同居までするのでは、むしろ全然勝ち組ではないか。議論が待たれるところであった。

 

 

 それから数日後のこと。

 定職というものが簡単に見つかるはずもなく、日雇いの労働に明け暮れていたシレン。そんな彼に手を差し伸べたのは、やはり心も器量も豊かな眼鏡美女であった。

 

「シレンに相談があるのですが⋯⋯ちょっと【家庭教師】というものをやってみませんか?」

 

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