タグってもっと増やしたほうがいいの?教えてエラい人ー!
「お待ちください」
「待つもんか!」
カリンは対戦車ライフルを抱え、必死に逃げていた。しかしフォルトゥナはそんな物関係ないと言わんばかりに追いかけ、カリンとの距離を詰めていた。
ダダダダダダ!!
「危ない……!」
「逃げても無駄ですよ?」
そう言ってフォルトゥナは右手で射撃して左手で閃光弾のピンをこっそり抜いてカリンの目の前に来るよう投げる。
「っ!?」
パァン!!!!
カリンは突然の事で対応出来ず視界と聴覚が奪い取られる。それでもカリンは走り続ける。
ガシッ!!!!
「対象、捕獲」
「まずっ!!」
フォルトゥナはカリンの服を掴み、掴んだ所を中心に前方宙返りをして踵落としを頭に叩き込む。
ゴッ!!ドゴーーーーン!!!!
フォルトゥナの超速度が乗せられた踵落としはクリーンヒットし、カリンの頭は地面に叩きつけられ地面は割れる。
「対象、沈黙。貴方はまだ殺しません。大将を
その様子は正しく殺戮人形と呼ぶに相応しい様子だった。フォルトゥナの呟きは誰にも聞こえず、彼女はそのまま頭から血を流すカリンを引きずりながらゲーム開発部の方へ向かった。
フォルトゥナは空中で廊下で戦う2つの影目掛けカリンを投げ込む。
「っ!?」
「なんだ!?…………カリン!?」
そしてフォルトゥナは投げ込んだカリンの上に着地してネルの方を見る。
「テメェ…………何もんだ?……」
「フォルトゥナ先輩!フォルトゥナ先輩でもチビネル先輩は危険です!」
「あ?なんか言っか!」
「どうでもいいです。むくろ様の記憶は殺されました。ですから貴方には死んでもらいます」
「何そんなキレてんだよ。だってあの補佐官は不死身で……」
「……むくろ様は脳が破壊されると記憶が幾分か失われます」
「ほう」
「それが帰ってくることはありません。即ち、彼の精神は……記憶は、殺されたのです」
「むくろさんは無事ではないのですか?」
「…………はい。恐らく貴方のことは覚えていないでしょう。そして私も……」
「そんな……」
「あー…………そりゃ悪いことしたな」
「別に構いません。命で払ってもらうだけなので」
そう言ってフォルトゥナはネルに銃口を向けて連射する。
ダダダダダダダダダ!!!!
「問答無用かよ!」
ネルはそれを躱し逃げ始めるが、フォルトゥナは恐ろしい目で追いかけ始めた。
命がけの鬼ごっこが、今始まった。
…………………………………………………………
『起きて!…………』
私は誰かの呼び声に反応して体を起き上がらせる。聞き慣れた、とても愛おしい声。そしてそれは聞くと、凄く寂しくなる声だった。まだ頭は再生仕切っていないのか頭を振るとまだ少し軽かった。だが左眼を光を取り込み、左耳は周囲の音を拾っていた。
「…………ここは?……いや、先生は!」
私はどうしてこんな荒れた部屋にいるか分からなかった。だが私は先生の元に行かなければならない。先生が殺されてしまえばキヴォトスは壊れてしまう。私一人ではキヴォトスは守れない。
私は地面を全力で蹴り部屋を出て廊下を駆ける。そこら中にロボットの残骸が転がり、その様子は異様そのものだった。
「ひっ!……」
「っ!むくろ君!」
「むくろさん……っ!?」
私はロボットの残骸を追いかけて行くと先生の元に着いた。私の未だ脳が再生しかけの姿にアリスのいないゲーム開発部は狼狽え、アスナは酷く怯えた様子で逃げてしまった。
「戦況は?」
「C&Cが襲撃してきて1人倒したけどもう1人に……あれ?」
アスナは既にこの場から逃走しており、敵はいなかった。どうやらアカネは倒していたようだ。道中見かけていなかったのはどうしてか分からなかったが、一先ず先に進むことにした。
「むくろ君!フォルトゥナの様子がおかしいんだ!」
「成る程、分かりました。どちらへ?」
「ロボットの残骸が続いている方!」
「ありがとうございます」
先生からその言葉を聞いて私は全力で走り出す。私はすぐにアリスに追いつくが、角に隠れる。
ふと奥に目をやると寝るとフォルトゥナが追いかけっこしていた。フォルトゥナの様子を見るに捕まったらすり身にされそうだ。だが私の頭が未だ再生していないのをアリスに見せる訳にはいかない。もしかしたら頭が弾け飛ぶ瞬間を見られてしまったかもしれないが、頭がめきめき再生して行く悍ましい様は見せるべきではないだろう。
せめて私の頭が再生するまでネルには耐えて欲しい。と言うか、耐えてください。
地面を見ると頭から血を流すカリンが転がっており、天井が空いているのを見る限りフォルトゥナがカリンを倒して投げ込んだのだろう。フォルトゥナの強さと恐ろしさが何となく分かった気がする。
「捕まっ!?」
そう考えているとすぐにネルは掴まってしまった。フォルトゥナは掴んだネルを三角絞めで首を絞める。フォルトゥナは本気で窒息死を狙っていた。
「ガッ……テメ……ェ…………!」
「むくろ様の様に柔らかければ苦しめられずに仕留められるのですが…………仕方がありません。苦しめるつもりはありませんでしたが苦しんで死んで下さい」
「フォルトゥナ先輩!待って下さい!」
アリスはフォルトゥナが何をしようとしているのかきちんと分からなかっていなさそうだったが、あまり良い予感はしなかっのか声を上げる。
「なんですか?」
「フォルトゥナ先輩!それ以上はやり過ぎです!これ以上は死体撃ちです!」
「死体撃ちなど、ゲームだから駄目なのです。これは命の奪い合いであり、そこに礼儀作法など存在しない。ただ殺す為に全てのリソースを使う。それだけです」
「そんな事をしてもむくろさんの記憶は返ってきません!だから……」
「そんな事は分かっています!!!!」
フォルトゥナは声を張り上げる。そして何処か泣き出しそうな、苦しそうな表情でアリスに言う。
「でも私は!……ただ奪われ続けるのが嫌なのです!……貴方は分かりますか?大切な仲間が私を庇って死んでいくのを!私を生かすために、幸せにする為に自壊していく様を!」
「……それは…………!」
「分からないのならそこで…………っ!?」
私は角から飛び出しフォルトゥナの足を掴んで無理矢理締めを解かせ投げ飛ばす。頭は右側はまだ未完成だが死人が出されるのは話が違う。
「むくろ様…………」
「フォルトゥナ…………私はどうして貴方の名前を呼んでいるのか……どうしてフォルトゥナだと分かるかなど覚えていません」
「っ!…………」
どうしてか彼女の……フォルトゥナという名は覚えていた。そのフォルトゥナとどういう関係なのか、どういう出会いだったのか……何も思い出せない。だが彼女は大切な人だったと確かに分かる。
だから彼女の思いは、何も知らない私になってしまったとしても受け止めるべきだろう。
「でも…………貴方はきっと苦しんでいるだから、何も知らない私いいのなら…………」
「駄目です…………私は……むくろ様を…………」
今にも泣き出しそうなフォルトゥナに近づき、しゃがんで私はこう言った。
「私に慰めさせてほしい。貴方がきっと大切だから」
「………………う……うぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん!!!!」
泣くフォルトゥナを抱き抱え、私は優しく頭を撫でる。きっと彼女は無理をして、我慢をして、これが今崩れたのだろう。
「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛……む゛く゛ろ゛兄゛……」
私はむくろ兄と言われた事をツッコミたくなったが、今その言葉は相応しくない故、口を噤む。その代わり、私はフォルトゥナの目を見つめ言葉をかける。
「私はフォルトゥナに人殺しになってほしくない。私はフォルトゥナに年相応の、可憐な少女として生きて欲しいんだ」
「……それは…………」
「……少なくとも、殺しに加担して欲しくない。これは……私の我儘かもしれないけど」
「……うん…………」
私を離したフォルトゥナは紙を丸めたような、それでも綺麗な顔で私の目を見つめていた。涙と鼻水が溢れ出ていて、本当に年相応の泣き方で何故だか安心した。フォルトゥナの年齢が幾つか知らないが、そう思ったのだから今はいいだろう。
私は立ち上がってフォルトゥナの手を繋いだままネルとアリスの方を向く。ネルはボロボロではあるがまだ余力がありそうな様子で立っていた。アリスは何処か温かい目で手を繋いだまま俯くフォルトゥナを見ていた。
ふとネル達の後ろの方に目をやると先生も追いかけてきているのが見えた。
「…………見苦しい所をお見せしましたね」
「いや…………いい。お陰で助かった……」
「いえ、流石に死人が出るのは話が違うので」
ネルは貴重なキヴォトスの滅びに抗する為の戦力だ。こんな所で死なれては困る。
「大丈夫!?」
「えぇ。色々ありましたが」
「えっ?どうしたのフォルちゃん俯いちゃって」
「…………」
「今はそっとしておいて下さい。その方が良いでしょう」
「むくろさんがそう言うなら…………」
「むくろさん…………」
アリスが私に何処か不安そうな様子で話しかけて来た。
「むくろさんは…………アリスの事を覚えていますか?」
「…………いえ、初めましてでは?」
ブルーアーカイブの記憶がある以上アリスの事は知っている。だが私が書類で知っているのは才羽姉妹とユズだけなので一貫性を保つ為そう言う。
「……やっぱり…………」
「えっ!?私の事は!?」
「一応書類でどのような人物か見た記憶はあります。散々な事を書かれていた気がしますが」
「嘘でしょー(泣)」
少なくとも、私は で私が何をしたのか、何が起きたのか知らない。
「一先ず……私達は荒れた部室?…………を整理しましょう。先生、私が倒れていた部屋はゲー…………あれ?」
「……どうしたの?」
「…………貴方方の部活名を忘れてしまいました。活動がぱっとしないからですかね?」
「ぱっとしないて酷くない!?」
冗談で茶化すが部活名すら忘れるのは致命的だ。これは良くない。これはブルーアーカイブの記憶…………先生が救済に向かう正解を忘れてしまうのは非常にまずい。そろそろ記憶をロストしなくていいような処置を探った方がいいのかもしれない。
「取り敢えず…………そうですね。皆さんはお先に戻ってください。私は負傷者の多いC&Cを送ります」
「…………分かった。気を付けてね」
先生は私の周りに戦力が固まっているのが分かっていたのか承諾してくれた。私はフォルトゥナの手を繋いだまま、カリンを担ぎ上げる。
「フォルトゥナ、一緒にアカネを探してくれるか?」
「うん……任せてむくろ兄」
まだ気分が良くはなさそうだが、人探しは苦手故フォルトゥナにも協力を仰ぐ。
「オメェ……本当になにもんだ?……」
「私は少しだけ体質が特殊なだけの、ただのシャーレの補佐官です」
「少しじゃねーだろ!」
ネルにそうツッコまれるが、少しだと思っていなければ私が危険人物みたいな気がするので少しだと思っておく。
「いました」
フォルトゥナが瓦礫を指す。私はその瓦礫を退け、アカネわ担ぎ上げる。そして私達は負傷者を病院へ連れて行く為、その方に歩みを進めた。
「あのチビスケの事、お前はどう思っている?」
ネルは私にそう質問した。それまで大した会話もしなかった為聞いておきたいことなのだろう。
「そうですね…………あれは恐らく世界を破壊しかねない程の力を持つ存在です。危険と判断した場合殺します」
「お前もそう言う感じかよ……」
「フォルトゥナの場合恐らく私情で殺しにかかっていたので。寧ろ私は彼女は殺したくないです」
「へぇ?」
「なぜでしょうか……彼女がこちらの戦力になってくれれば心強いというのもありますが、私個人として彼女には生きていて欲しいと思っています。何故なのか本当に分かりませんが」
私は少し考えて見るが、やはりと言うべきか思い出す事は出来ない。
「むくろ兄……」
「……どうした?フォルトゥナ」
「むくろ兄はゲーム開発部の皆とゲームしてる時……凄く楽しそうだった」
「あぁ……そういう事ですか」
私は何処か納得行ったような気がした。私のような生徒を喰らう怪物がどうして一緒に遊んだのか分からない。だが確かにその時間は楽しかったのだろう。大人して、シャーレの補佐官として働く私が年相応に過ごせた数少ない時間なのだろう。
「……意外と人間らしいじゃねぇか」
「心外ですね……と言いたい所ですが思い当たる節が多すぎるので何も言わないことにします。それにしては余りに人でないような口振りですが…………」
「いや、初めて会った時のお前の目が余りにヤバい目だったんでな。今もだけど」
「そう?……だったのですか」
「それとうちの奴の1人が酷く怯えててな。『あの補佐官ヤバいよ!』って言って隠れたままになっちまった」
「1人…………」
未だに遭遇しないアスナだろう。私の本質が……『
まあなんでもいい。私がいるだけで楽できたとでも考えておこう。
私はカリンとアカネを病院に預け、シャーレへ向かう……前に、フォルトゥナを家に送り届けようとした。今は少し休むべきだろう。ユズキも今日は私の家で遊んでいるだろうしフォルトゥナには仕事ではなくのんびり過ごし心の整理をして欲しかった。
こう言う時は、のんびりするに限るだろう。少なくとも、そういう時は私はのんびりする。
「…………むくろ兄……いや、むくろ様」
「……どうした?フォルトゥナ」
「むくろ兄とむくろ様、どっちがいい?…………」
私個人としてはどちらでもよかったが、聞き馴染みがあるのはむくろ兄だったのでむくろ兄と呼んでもらおう。
「なら、私はむくろ兄……がいいかな…………」
「……分かった。でも恥ずかしいから皆の前ではむくろ様のままにさせて」
「分かった」
「それと……一つ謝らせて」
「なんだ?」
「私が1人の時に『影』に襲われたと言うのは嘘なの……」
「………………そうか……」
「ごめんなさい」
「いや、フォルトゥナが無事ならばそれでいい」
「…………ありがとう」
そして私達は家に着き、フォルトゥナをユズキに預けてシャーレへ向かう…………つもりだったが、私は1人とある場所へ向かった。
誰かの墓標。私が忘れた、だが確かに引っかかる場所。私は何かを求めてその墓標へと向かった。
ふらふらと、ただ暗い地下道を朧げな記憶を頼りに墓標へと辿り着く。だがその墓標の近くに、イーゼルにスケッチブックを乗せ、高い椅子に座った少女がいた。椅子の側には大きなバッグがあり、旅をしているようだ。
「君は…………」
「…………貴方は……何者ですか?」
その少女は私に気づくと眼鏡越しにその深紅の瞳を私に向けた。その瞳は私と似て気だるそうな、絶望に満ち溢れているような瞳だった。
「そっか……忘れてるんだよね………………私は……そう、『テオ』って呼んで」
「テオ…………」
私はその少女の顔に見覚えがあった。今の彼女はバンダナをつけダボッとした服の上からエプロンを着ていたが、格好に見覚えがないのは以前とは格好が違うのかもしれない。
「君の今の名前は?……」
「私は…………継接むくろと言いますが、以前は違う名を?……」
「いや、ここでは前の名前は使わない決まりだから。フォルトゥナは例外みたいだけど、彼女はまあ…………あぁ、そうか。だからむくろ君も…………」
「?…………」
「ごめんね……こっちの話」
「それより、貴方はここで何を?」
彼女は確かに何か知っている。そう踏んで私は質問した。
「……私はこの墓標を描いていた。それと、この義手が懐かしくってね」
「この義手について知っているのですか?」
「うん。私が作ったものだったから。でも私は、もうそう言うのは辞めたんだ」
そう言う彼女の瞳は何も見ていないような目だった。確かに私の方を見ている筈だが、彼女は本当は遠くの何かを追いかけているかのような不安定な目だった。
「……私の事は気にしないで挨拶して。私はここを描くだけだから」
そう言う彼女の絵を覗くと、鉛筆で描かれた簡素な白黒の絵だったが、何か惹かれるものがあった。シンプルで、何処か味がある絵な様に感じて、少し欲しくなった。
「……その絵、買えますか?」
「…………欲しいの?」
「はい。気に入りました」
「そう……………………」
「では、商談ですね?」
「!……」
彼女の雰囲気はぼんやりとした様子から一転して鋭い瞳へと変わる。その赫赫とした瞳は幾重にも修羅場をくぐり抜けた人の物だと直感する。私はその変化に、驚きを隠せなかった。
「それではまず…………貴方はこの絵に幾らの価値をつけますか?」
まるでこちらを値踏みするかの如くテオはそう質問する。私の目はどれ程のものか……そう問われているような感覚だった。
「まず絵の相場を教えて下さい」
「そうですね…………絵は大きさによって値段はまちまちですが、絵画なら数千から数万まで行きます」
「…………成る程……」
「さて……この絵にどれ程の価値があると思いますか?」
「…………」
彼女は笑ってそう言うが、作られたような笑みであり眼鏡の奥の目は鋭くこちらの瞳を覗き込んでいた。この絵に一体どれ程の価値があるのか、正直私には分からない。分からなかったが、彼女はこの絵にどれ程惹かれ値段を賭けられるのか聞いているような気がした。
「では…………3万円でどうでしょう?」
「!?」
「…………?」
テオは衝撃を受けた様に目を見開き、私を見た。私はこの絵にそれだけの価値があると思えた。いや、私にとってはというべきなのだろう。テオは私の心を見透かそうと瞳を覗かれるが、すぐに諦めた様に私に喋りかけてきた。
「成る程……理由を聞いても?」
理由……正直分からない。分からないなりに言葉を紡ごうとする。
「分かりません…………ですがそれだけの価値があると思いました」
「…………根拠は?」
「根拠…………私の感性……でしょうか?」
「…………随分様変わりしましたね……」
「それはどう言う?…………」
「今の貴方を見定めるつもりで絵の値段を質問しました。十分私はお代を頂いたので、この絵はタダで大丈夫ですよ?」
「……タダは申し訳ないので、1000円でどうですか?」
「………………分かりました。商談成立ですね」
そう言うとテオはぼんやりとした様子へと戻った。
「ちょっと待ってて。すぐ仕上げるから」
そう言ってテオはスケッチブックに向き合う。何処か心地よいスケッチブックに黒鉛を乗せる音を聞きながら絵の完成を見守っていると、すぐに筆が止められスケッチブックから絵を切り離した。切り離され後のスケッチブックにちらっとテオの自画像らしき絵が見えた気がした。
「…………はい、どうぞ。大切にしてね」
「はい」
そう言ってファイルに入れられ『墓標』と題されたテオの絵を受け取り、1000円札を渡した。
「一つ聞いてもいいですか?……」
「何かな?」
「貴方は私の過去について…………知っている範疇で良いので教えていただけますか?」
彼女は私の観測していないロストした記憶の内容を知っている筈だ。少なくとも彼女はこの墓標の主は知っている。私はそう推測しテオに質問をぶつけた。
「それは駄目だよ」
「どうしてですか……!」
「それはきっと貴方が忘れたくて忘れていることだから。貴方にはまだ自分の罪に向き合う覚悟ができていないんだよ」
テオは荷物を纏めながらそう言う。
「罪…………」
「うん。私も罪と向き合う為にこうして旅をしている」
「そうでしたか…………ありがとうございます」
「それから……一ついいかな?」
「?……」
「むくろ君は少し、感情的になり過ぎだ。若いと言え、子どものようにはしゃぎ過ぎれば君の中の人達に足元を掬われるよ」
「…………肝に銘じておきます」
どうしてテオがそう言ったのかすぐには分からなかったが、すぐに私が驚きを隠せなかった所から見抜いたのだろうか。以前の私なら表情一つ崩さず相手を観察していただろう。
私は本当は16歳だからと言う事に甘え過ぎていたのかもしれない。私はもう大人だ。そう認識を改め直さなければいけないだろう。その筈なのだ。だが私はそれを心の何処かでは否定したがっていた。
「何か入り用の物があったら連絡して。こう見えて商人だったから用意しておくよ。勿論、貴方には安く用意するよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、またね」
そう言ってテオは自身の連絡先が書かれた紙を私に渡し、去ってしまった。誰もいない静かなこの場所で、私は墓標に近付きしゃがみこむ。そして私は祈る様に目を閉じる。
どちらにしろ私は失った記憶と向き合うべきだろう。フォルトゥナと関わり、私の失った記憶の中で私は意図せず人を悲しませていたのかもしれないと思えたからなのかもしれない。それがテオと関わった事で明確に分かった。
こうやって墓標の前でしゃがみ込んだとて、それが叶う訳ではではあるまい。だが、少しだけ心の整理が出来た気がする。
そして私は目を開いて、その墓標を後にした。
フォルトゥナのビジュ!描くのだるい!あと女子描くの苦手!
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