シャーレのむくろ君(不死身)   作:脱力戦士セシタマン

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 時系列的にはパヴァーヌ2章よりエデン条約編が先なんすね……と言うことでエデン条約編です。

 俺は防人になります。俺は、九州の『漢』になるッ!!!!




補習授業部

 

 

 

 私はきっと夢を見ている。

 

 そうでなければ目の前に広がる、血に塗れ死体の転がる静かな地下鉄のホームなどありえないからだ。

 

 現実なら、あり得てはならない筈なのだ。

 

 

ファン!!!!

 

 

 膝を付き何者かの血肉を持つ私の耳に何処かから列車の音が届いた。するとすぐに列車が到着し、乗客が窓から見えない程すかすかの列車は扉を開いた。

 

 

「……これは!………………」

 

 

 金髪の狐娘は列車の中からその様子に狼狽えていた。それは恐らくセイアであり、私の瞳はセイアを見つめる。

 

 何故ここにいるのか、私の夢の中にいるのかすぐに分からなかった。

 

 

「君は一体……何者だい?……」

 

 

 セイアは私から見ても分かる程怯えていたが、同時にこの質問は好奇もあるように感じた。

 

 私は手に持った血に塗れた肉を捨てふらふらと立ち上がる。あまりいい気分ではないが、何かして彼女を怯えさせるのもまずいだろう。

 

 

「私はキヴォトスを救う防衛装置…………それだけです」

 

 

 そう言って私は彼女から目を離し、とぼとぼと階段へと歩いて行った。

 

 

『ごめんね…………私だけ先に死んじゃ(救われちゃ)って』

 

 

 私の中で、そんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むくろ様!起きてください!」

 

「むくろさーん!寝すぎー!」

 

「………………」

 

 

 私は二人の声により起こされる。私が瞳を開くと、フォルトゥナの顔が目の前に現れた。

 

 

「やっと起きましたね!寝坊ですよ!」

 

 

 どうやらフォルトゥナが私の上に馬乗りの状態で肩を振って起こそうとしてくれていたみたいだ。

 

 

「…………ありがとう」

 

「さあ着替えて下さい!私達は朝食を作っているので」

 

 

 そう言ってフォルトゥナは部屋を出てリビングへと向かった。時計を見るといつもより大幅に遅い時間である。支度は十分間に合うが、時間を無駄にしていられない状態だ。私はすぐに起き上がり、洗面の為部屋を出た。

 

 

「やっと起きたー!朝飯作ってるから支度して!」

 

「ありがとう」

 

 

 ユズキは朝食を先んじて作ってくれていたようだ。私は洗面所で口を濯いで顔を洗う。冷たい水は未だぼんやりする私の頭を幾分かはっきりさせた。

 

 私は部屋のクローゼットを開き、パジャマを脱いでスーツに着替える。まだスーツやシャツの予備はあるが、そろそろ補充しないといけないかもしれない……そうぼんやり考えながら着替えを済ませ、リビングへと向かった。

 

 

「はい座って!」

 

 

 今日の朝食はトーストとミネストローネ、そこにオムレツがついていた。

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

 そう言って私達は食事を頬張る。トーストにはバターしか塗られていなかったが、オムレツと食べる事で甘じょっぱい味わいが生み出され、とても美味しかった。

 

 

「料理の腕を上げましたね……師匠として私は嬉しいです」

 

「弟子入りした記憶ないんだけど?……」

 

「……ユズキさんは料理を学んでいたのか?…………」

 

「まあね」

 

「トリニティのお嬢様だろうと料理は出来たほうがいいでしょう、と言う事で教えていました!」

 

「トリニティ?……」

 

「あ、忘れてたのか……」

 

 

 ユズキは私が忘れていた事に気付き、少し気まずい空気が流れるが、私はそれを打ち破るべく口を開く。

 

 

「気にしないでくれ。私は記憶を無くした分知らなければいけないから教えて欲しい」

 

「……分かった。私ね、元々トリニティにいたんだよ。まあ、色々あって辞めちゃったけど……」

 

「そうだったんです……そうだったのか……」

 

 

 私はうっかり敬語になってしまう。私はユズキに敬語は嫌と言われていたんだった…………いつかは覚えていないが、確かに言われていた気がする。

 

 

「早く食べて下さい。遅刻しますよ?」

 

「あぁ、そうだった」

 

 

 そう言って私達は食事を終え、シャーレへと向かった。

 

 

「おはようございます」

 

「おはよー」

 

「先生おっはー!」

 

 

 シャーレに着くと、先生が先んじてデスクで仕事を始めていた。いつもは私が先に着いているのだが、今日は私が寝坊事で逆になってしまった。

 

 

「むくろ君が遅いなんて珍しいね」

 

「はい……寝坊してしまいました」

 

「今日はトリニティに行くよ!」

 

「げっ……トリニティ……」

 

「……行きたくないのかい?」

 

「…………ま、まあ……」

 

「ユズキさんはシャーレ所属ではないので、別に行かなくてもいいですよ」

 

 

 トリニティに行くということは補習授業部でもできるのだろう。

 

 

「じゃあそれで頼むわ」

 

「分かりました。ではシャーレの業務をお願いします」

 

「はーい」

 

 

 私としてはユズキに案内を頼みたかったが、無理をさせる必要もないだろう。そう思い、私は先生について行く。私はヘリコプターに揺られながら今日の夢のことについて、ずっとぼんやり考えていた。

 

 あの恐ろしい光景は何だったのだろう。見たことがある気がしてしまうのが、とても恐ろしかった。

 

 

「むくろ君?」

 

「?……どうされましたか?…………」

 

「凄い顔してたけど……」

 

「凄い顔?…………」

 

「凄く青ざめていましたよ!」

 

「そんな……私が?……」

 

 

 私は信じられなかった。私はこの死なない身体になってから恐怖という感情は薄れていた筈だった。死なないなら死への恐怖もなく、それ故怖い物も特段ない。

 

 風評被害を気にしないのも、風評被害があったとて私の力は異常でありその気になれば叩き潰せるからだ。

 

 私の疑問は消えないままトリニティへと着いた。

 

 

「こちらへどうぞ」

 

 

 私達は扉の中へ案内される。そこではミカナギサがおり、ナギサは優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 私の片目がティーパーティーを捉えた時、無念達がまたもや呻き出した。人としての感覚が戻り始めていた為か何を言っているのか分からないその呻きに苦しみを感じた。

 

 やはり私はこの感覚が嫌いだ。だから私は生徒との関わりが嫌いだ。

 

 

「こんにちは、先生、むくろさん。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。そしてこちらは、同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」

 

 

 そう言われたミカは、自己紹介を始める。私は無念達の声を必死に聞き流しながら耳を傾ける。

 

 

「あらためまして、お初にお目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです」

 

「初めまして!よろしくね!」

 

 

 やはり思うが、私は展開を知っている以上聞く必要性はないだろう。それより無念達のうめき声がうるさく、会話を聞く余裕もなくなっていく。そのせいか、ティーパーティーからの話は殆ど右から左へ流れてしまった。

 

 

「むくろ様!」

 

「……?」

 

 

 フォルトゥナの呼び声にだけは、どうにか反応出来た。

 

 

「ぼんやりし過ぎです!自己紹介ですよ!」

 

「?……あぁ、私の事は『継接むくろ』と呼んでください。年齢は19歳、趣味はゲームです。よろしくお願いします」

 

 

 私はそう言う。見るとミカもナギサも、なんだこいつと言わんばかりの顔だった。まあ、それに関しては私が悪いし私が怪物である以上変な奴止まりなだけマシだろう。

 

 私は『神を喰らう怪物(ヨルムンガンド)』なのだ。何処からか生まれた子供のように感情的な私を亡くすため、そう心の中で言い聞かせ続けた。

 

 

「むくろ君、行くよ」

 

「はい……」

 

 

 そう言われて私は先生について行き、扉の外へ出た。

 

 そして扉が閉まり、先生とフォルトゥナしかいないのを確認して、気を抜いた。

 

 

「っ!、」

 

 

 私は声にもならない声を出し、その場で膝を付く。

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

 先生やフォルトゥナの心配しているであろう声も、何の音も聞こえない。私には呻き声しか聞こえない。朝シーシャを吸えてないせいか何時もより呻きは強く頭が割れそうで、とても苦しい。

 

 

 あぁ……感情など取り戻さなければ良かった。そう私は強く思った。

 

 

 暫く時間が経って無念達の呻き声は収まった。ゆっくり顔を上げると先生が覗き込んでおり、フォルトゥナは抱き着いていた。

 

 

「むくろ君!」

 

「むくろ様!」

 

「…………!」

 

 

 先生はどうしてか驚いた表情をした後に、少し俯いた。どういう事なのか本当にさっぱり分からなかったが、私はゲーム開発部に行く前に戻った様な感覚があった。

 

 私に成すべき事を成す。私はただそれだけで良いのだ。

 

 

「……ありがとうございます。少し落ち着きました」

 

「うん……良かった」

 

「むくろ様!しっかりして下さい!」

 

「……すまない」

 

 

 そうして私は立ち上がる。私にはするべき事、成すべき事がある。無念達の意志を継ぎ、キヴォトスを守り抜き、無念を晴らす。私がするべき事はそれだけだ。

 

 私達はその日はシャーレに帰って仕事を終わらせた。遅い時間故私はフォルトゥナを先に帰らせていたので、私は一人で帰る事になった。

 

 私はまたあの墓標へ向かった。帰りが遅くなり、眠る時間が削られようとそこに向かいたかった。私は過去へ向き合わなければならない。それはこれからキヴォトスを守る上で無念達の出所を知る必要があると感じたからだ。あの墓標を調べれば、きっと何かが分かる……そう考えて向かった。

 

 

「よう」

 

 

 今度は現代には余りに似つかない、騎士が近くの瓦礫に座っていた。

 

 

「……貴方は?」

 

「その反応……成る程、忘れているのか。まあ無理もない。頭が壊れ過ぎて記憶までぶっ壊れたんだろう」

 

 

 私の事について知っている。その事実は私に警戒の念を強める。

 

 

「あぁ、俺は『灰原まきと』だ。よろしくな」

 

 

 まきと……また新しい人間が増えた。一体私の知らない記憶を知る人間は何人程いるのだろうか。

 

 

「それで…………ここに来たって事はお墓参りか?それとも…………」

 

 

 

 

 

「昔の事を探りに……か?」

 

 

 知りたいんだろ?……そう言わんばかりに言う。それは何処か鼻につく物言いだったが、私は知りたかった為に首を縦に振って肯定する。

 

 

「成る程な……なら俺が教えてやれる範疇でな」

 

 

 そう言ってまきとは語り出した。

 

 

「まずお前は俺らと同じで別世界のキヴォトスから来た人間だ」

 

「?……」

 

「まぁキョトンってするよな。だがマジだ。そしてお前はそこで生徒を喰っていた」

 

「!……」

 

 

 私は衝撃を受け、再び殺した筈の感情が動いた様な感じがした。だがそれ以上に、バラバラだったピースがいきなり全てはまったような、奇妙な感覚に襲われた。

 

 

「まあタダでって訳じゃない。限界状態のキヴォトスを何とかしなきゃいけなかったんだ。死んだ生徒位喰っていたって許されるだろうよ」

 

「…………」

 

「それにお前…………自分の体質を嫌ってるな?」

 

「…………いえ……」

 

「嘘はよくないな。お前は生徒のちょっとやそっとの血なんぞじゃ満足出来ない体だ。なのに目立った生徒の死がないのはそう言う事だろう」

 

「…………何が言いたいのですか?」

 

 

 私がそう言うとまきとはこう言った。

 

 

「素直になれよ。お前自身が怪物だって認めているなら尚更、生徒を喰うべきだろ?」

 

「それは……出来ません」

 

 

 そんな事が出来る筈もなかった。それは私の今生きる理由を否定するような事だ。

 

 

「…………お前は昔っからそうだったな。まだお役目には忠実って訳らしい。だが直に嫌気がさす時が来るだろう。その時は連絡してくれ」

 

 

 まきとは連絡先の書かれた紙を渡す。こんな騎士がスマホを持っているとは思えなかったが、取り敢えず受け取る事にした。

 

 

「だがまあ、強いて記憶に関して言うなら…………お前の中にいる霊達の声を聞け。お前はどうせ中の霊達の事を『強い力の代償』としか捉えていなさそうだからな」

 

「…………ありがとうございます」

 

 

 そして私は家に帰った。部屋は真っ暗で静寂に包まれていた。私はシーシャを吸っていない事に気付いて一度外に出て、シーシャを吸う。

 

 私が別世界のキヴォトスにいた…………それには驚いたが、私はそうだと思った。そうでなければ私が持つおびただしい数の無念も、キヴォトスを守ろうとするのも、そうなら説明が着く。

 

 謎も多いが今日は疲れた。私はシーシャを吸い終わらせてすぐに風呂に入って寝た。

 

 

 

 

 そしてまた数週間後、私達は補習授業部を迎えに行く事になった。

 

 私はなんだか、疲れが溜まっているのか色々とどうでもよくなり始めているような気がした。投げやり……というべきなのだろうが、私の気分は余り良いものではなかった。そのせいか、まきとの話が頭の中で居座っている。

 

 もしかしたら、無念達の呻きが以前より強くなり始めているからなのかもしれない。何故なのか分からないが、前回のキヴォトスで何かあったのかもしれない。

 

 そんな事を考えていると、私達はヒフミと合流していたらしい。私はヒフミの事を忘れていたから、気付かなかった。

 

 

「お久しぶりです!このお方は?」

 

「私はフォルトゥナです!」

 

 

 フォルトゥナはヒフミに自己紹介をしていた。私はヒフミからしてどう言う人間と見られているのか分からなかったが、一先ず私は前からの性質を思い出し先生について行くだけにした。

 

 私はヒフミから何か言われるかとヒヤヒヤしていたが、結局会話することもなく補習授業部の待つ場所に着いた。そこが何処か覚えているが、どうでも良かった。

 

 私は以前のように聞き流す。聞き流しても問題ないだろうし、聞く気力がなかった。

 

 

「むくろ様!ボケっとしてないで自己紹介ですよ!」

 

「…………あぁ」

 

「……むくろ君大丈夫?前より元気がないと言うか…………」

 

「大丈夫です」

 

 

 私はそう答える。前がいつなのか分からないが、ゲーム開発部と関わっていた頃だとしておこう。

 

 

「どうも。私は……『継接むくろ』と呼んでください。年齢は19歳、趣味はゲームです。よろしくお願いします」

 

 

 私はテンプレートのような、いつも通りの自己紹介をする。アズサもコハルも始めはキョトンとしていたがいつも通りの目だった。だが、ハナコはいつも通り……に見えて余り良い目線ではなかった。

 

 その目は…………そう、見慣れた人を蔑む目だったと思う。本人にそう言う自覚はないだろうが、そう言う目だった。能力が高い人間は、そういう性質があるのだろう。私はその程度にしか捉えていなかった。

 

 

「あれ?……先生?もう1人は?…………」

 

「それが……むくろ君だよ!」

 

「??????」

 

 

 無念の声が少し薄れたために珍しく耳を傾けると私が勉強しなくてはいけないと言われ頭の中が疑問符で埋め尽くされる。

 

 

「どう言うことです?…………」

 

「むくろ君……君流石に因数分解出来ないのは駄目だと思うんだ……」

 

「えっ?????」

 

「…………つまり勉強しろと……」

 

 

 因数分解が出来ないのは否定しない。あんな事は私に必要ない機能だし、そう言うのはそういう事が得意な人間にやらせればいいだろう。私はそう思っていた。

 

 それに第一、私は脳が壊されてしまえば記憶は消えてしまう。勉強は私にとって意味が薄すぎる。

 

 

「…………分かりました。出来る限りのことはします」

 

 

 だが、先生の意見とあらば聞くべきだろう。先生に何か考えがあるのかもしれない。そして無念達の強まり続ける声に耳を奪われ何が起きているのかよくわからないまま、コハルは外へ出てしまった。

 

 

「…………引き留めますか?」

 

「いや、いいよ」

 

 

 そうして、その日は仕事を終わらせ家に帰る事になった。私は余りいい気分ではなかった。しかもトリニティにいる間ずっと…………まだ過去について探るべきだろう。

 

 

「……むくろ兄?」

 

「…………あぁ、フォルトゥナ……」

 

「最近の調子は……大丈夫?…………」

 

「……大丈夫、と言いたい所だが…………」

 

「貴方の中の人達がうるさい…………とか?」

 

「……あぁ」

 

 

 フォルトゥナは知っているようだ。ならばフォルトゥナが過去を話さない理由も何となく分かったような気がする。

 

 

「……あの薬が効かなくなってるのかな…………」

 

「それと……」

 

「……なに?」

 

「私は過去と向き合うべきなのだろうか……」

 

「!…………」

 

 

 フォルトゥナは目を見開く。

 

 

「きっと……そうなんだと思う…………でも……」

 

 

 フォルトゥナは続けて言う。

 

 

「私はむくろ兄に苦しんで欲しくない…………だから、私は向き合わなくてもいいとも思ってる」

 

 

 そんな会話を交わしていると私は家に着いた。

 

 

「おかえり〜」

 

「ユズキさん……帰って来ていたんですね」

 

「うん。ま、トリニティとはもう関わりたくないからね」

 

「そう……ですか……」

 

 

 そう短く会話を交わし、私は夕飯の支度に取り掛かる。

 

 

「久々にむくろさんの手料理だー!」

 

「何度かフォルトゥナには作って貰ったから……今回は私が作る番だ」

 

「成る程……では私は風呂に入ってきます!」

 

 

 そう言ってフォルトゥナは去ってしまった。

 

 

「ソースを頼んでもいいですか?」

 

「何ソース?」

 

「そうですね…………ユズキさんのお任せで」

 

「うーん…………でも折角むくろさんの手料理が食べたいし、むくろさんに作って欲しいかなぁ」

 

「……成る程…………ではパスタの茹で加減を任せます」

 

「おけ……あと敬語」

 

「あっ……すまん」

 

「これは味で償って貰わないとねぇ〜?」

 

「…………ぜ、善処する」

 

 

 そして私は冷蔵庫を開く。野菜でソースを作るとしたら…………カルボナーラが無難だろうか。私はそう思い、ベーコンとほうれん草、牛乳、卵、バターを取り出す。そして私はフライパンを取り出してベーコンもほうれん草を切り始める。

 

 

「うーん…………これは……カルボナーラ!」

 

 

 そう言いながらユズキは湯沸かし器にスイッチを入れる。

 

 

「正解だ。ちょっと待っててくれ」

 

 

 そして切り終わったほうれん草とベーコンをバターを溶かしたフライパンに突っ込む。

 

 

「あ、今日はパスタしか考えてなかったので副菜がないですね……」

 

「じゃ、その辺はやっとくよ」

 

「感謝する」

 

 

 ユズキの気遣いに感謝しつつ、私はベーコンとほうれん草を炒める。ユズキは野菜にウインナー、トマト缶を出していた。

 

 

「それは……ミネストローネですか?」

 

「あったりー!あとテキトーにサラダでいいかな?」

 

「えぇ。お願いします」

 

 

 私はフライパンに牛乳とコンソメを入れ、頃合いを見て卵を入れる。

 

 

「麺はどうですか?……」

 

「茹で上がってるよ〜。そこに置いてるやつ」

 

「ありがとう」

 

 

 私はお湯が切られてある麺をフライパンに入れ、ソースが絡むまで混ぜる。ソースが絡んだら火を止める。

 

 

「むくろ様〜、パンツどこです〜?」

 

「そこに干してないか?」

 

 

 そう言って顔を出すと一糸纏わぬ姿のフォルトゥナが脱衣場から出ていた。

 

 

「ちょッ!!!!」

 

「はぁ……子供じゃないからやめてくれ……」

 

「あのさぁ…………ちょっとは恥じらい持たない?」

 

「別に……むくろ様とはそういう関係になるわけないので。むくろ様は実は超絶一途ですよ?」

 

「えっ?そうなの?……って聞いても分からないか……」

 

「……記憶にございません…………これ私が言っても違和感ないですね」

 

 

 そう私が言っている間にパンツを見つけたようでフォルトゥナは脱衣所に入って行った。私は丁度出来上がったカルボナーラを皿に盛り付け、食卓へと運んだ。ユズキはミネストローネとサラダを運び、食卓に置く。

 

 

「揃ったか……それじゃあ」

 

「「「いただきます!」」」

 

 

 私はまずミネストローネを飲む。コンソメのよく効いた、美味しいミネストローネだ。

 

 

「美味しい……」

 

「おっ、むくろさん気に入った?」

 

「はい。毎日飲みたい位には」

 

「…………口説いてる?」

 

「……?」

 

 

 私は口説いてなどいないだろう。口説くと言うのはもっとこう、あると思うのだが……

 

 

「ダメです。むくろ様は口説くが何か分からないクソボケなのです!」

 

「あー……クソボケは今に始まったことじゃないしまあ……」

 

「????」

 

 

 そして私は下らない、だが尊い時間を過ごし、風呂に入って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近どう?」

 

 

 私はフォルちゃんと皿を洗いながら私はそう聞く。私はシャーレの方に出向いて書類仕事をやっていたのでむくろさんの最近の様子は知れていなかった。

 

 

「えぇ……そのことですが…………」

 

「えっ?……なんかまずいことあった?……」

 

 

 なんだかちょっと嫌な予感がした。特に私のことについて言及があったんじゃないか…………一瞬そんな不安に駆られていたが、フォルちゃんの回答はそんな物すぐに吹き飛ばした。

 

 

「トリニティにいる時に、凄く苦しそうにしているのです」

 

「っ!?」

 

 

 私は息を呑んだ。

 

 

「…………きっと、彼の過去の事で苦しんでるのでしょう。ですが彼はそれに向き合おうとしている……」

 

 

 私は昔の事とかが嫌で逃げていた。けれど、むくろさんは忘れているにも関わらず、それに向き合おうとしている。このままでいいようには思えなかったが、まだ向き合う気にもなれない私は声を出すことが出来なかった。

 

 

「……私もサポートします。ユズキさんも、むくろ様のメンタルケアを頼みますよ」

 

「えっ?……私が?」

 

 

 逃げている私に頼まれるなんて、理由がわからなかった。

 

 

「むくろ様、ユズキさんの事が大事なようです。これは…………言っていた等ではなく、私の勘でしかありませんが…………」

 

 

 私が大切なんだと言われても、余計理由がわからなくなった。

 

 

「ですから……何かあった時にむくろ様の事を慰めてあげてくださいね。むくろ様は、大切な人の為に幾らでも無茶出来る人ですので」

 

 

 そんな事言われても、私に出来るか分からなかった。でも、私が大切なのは分かった気がする。

 

 私と交わした契約。血を渡す代わりに血が必要な事の口外禁止と衣食住の提供。それから普通に仕事を手伝う事だけど…………むくろさんは私から()()()血を取ってない。

 

 彼はもしかしたら血を取ることが怖いのかもしれない。根拠は余りに薄すぎるけど……

 

 

「……わかった」

 

 

 まあでも、私に出来ることはするべきなんだろう。私は皿洗いを終えたら、風呂に入って寝た。

 

 






評価9貰えて秤金次のボーナス時の呪力並にやる気が湧き上がってます(沢山書けるとは言ってない)。評価してくれた方に、感謝を……

フォルトゥナのビジュ!描くのだるい!あと女子描くの苦手!

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