シャーレのむくろ君(不死身)   作:脱力戦士セシタマン

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 筆が乗ったのでねじ込みマッスル。




アビドス

 

 

「むくろ君!行くよ!」

 

「少々お待ちください…………」

 

 

 私達は物資を纏めてとある地へ向かおうとしていた。

 

 アビドス高等学校…………黒い服の先輩のターゲットがいる学校だ。

 

 だが、私の記憶が正しければこのあと遭難する筈だ。だから水を出来る限り多く、こっそり入れておく。先生が助かる可能性を少しでも上げるために。

 

 必要な物を詰め終え、荷物を背負って先生の元へ走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっつい!」

 

「暑くて干からびそう、ですね」

 

 

 

 先生は辛そうにそう言う。先生は余裕がないのだろう。だが私としては先生に死なれては困る。最悪私が犠牲になってでも生きていて欲しかった。

 

 

 私は、キヴォトスを救える人間ではない。私は武器を振るうことしか能がないから。

 

 

「アビドスまでどれくらい?……」

 

「わかりません……遭難しているんですから」

 

 

 案の定と言うべきか、私達は遭難していた。

 

 

「もう……限界…………」

 

 

 そう言い先生はうつ伏せに倒れてしまった。

 

 

「先生!…………」

 

 

 私は先生を仰向けにし、額に手を当て体温を確認する。

 

 

「37.8度程でしょうか?……」

 

 

 熱中症の危険な症状が出始める体温だ。私は自分の分の水を先生にかけた。

 

 

「駄目だよ…………むくろ君の分が……」

 

「私は問題ありません。寧ろ、先生に倒れられてしまっては困ります」

 

 

 私はこの程度では乾かない。だが、一定の周期で血を必要とする。だからこれは私にとって無くても問題ない。

 

 

「ごめんね……私が地図が役に立たないなんて思わ……」

 

「今はその事はどうでもいいです。休んで下さい」

 

 

 そう言って、先生を担いで建物の日陰へ歩こうとした。だが、遠くから何かが近づいている事に気付いた。私の記憶が正しければ狼の神……砂狼シロコの筈だ。

 

 私はすぐに声を張り上げ、こちらに向かってくる自転車に助けを求めた。

 

 

「すみません!!!助けて下さい!!!」

 

 

キィーーーッ!

 

 

「ん、どうしたの?」

 

 

 砂狼シロコを見た瞬間、私の中の無念の幾つかが呻く。それを私はねじ伏せ、平静を装う。

 

 

「私達はアビドス高等学校へ向かっていたのですが遭難してしまい…………もしよろしけれこのお方を連れて行って下さい」

 

「ん、分かった」

 

 

 そう短く要点を伝え、先生を自転車の後ろに乗せてもらっうことにした。

 

 

「でも、貴方は大丈夫なの?」

 

「走って追いかけます」

 

「???」

 

「走って追いかけます」

 

「ん、人を乗せてると言えど自転車だと速いよ」

 

「問題ありません」

 

「…………分かった。貴方の名前は?……」

 

「継接むくろ…………継接でも、むくろでも、好きにお呼びください」

 

「私は砂狼シロコ……よろしく」

 

「よろしく」

 

 

 先生は弱々しい声で答える。

 

 

「ん、生きてたんだ」

 

「熱中症でしょう。ですが水を飲んだので暫くすれば体調は回復すると思います」

 

「じゃあ行こう。早く涼しい所にいたほうがいい」

 

 

 そして彼女は自転車を漕ぎ始めた。私はそれを、走って追いかける。

 

 

 

 

 

 走っていると大きな建物が見えた。

 

 

 

 

 

「ん、もうすぐ着く」

 

「分かりました」

 

「…………疲れないの???」

 

「疲れますが…………これだけであればどうにかなります」

 

「ん、凄い」

 

 

 凄い、その言葉は私には余りに似合わない言葉だ。私は、ただ指し示された道を我武者羅に走っているようなものだからだ。

 

 私の人生そのものという意味でも、このアビドスに辿り着くということに於いても。

 

 

「ありがとうございます」

 

「因みに、この人は?」

 

「私は『シャーレ』の先生だよ」

 

「シャーレから?じゃあ、手紙が届いたんだ」

 

「うん。助けに来たよ」

 

「ん、今は助けられてる」

 

「確かにそうだけど……」

 

 

 先生の容態は大分回復したようだ。良かった。キヴォトスを守る要がこの程度の事で失われるなどとあっては困る。

 

 そう考えていると、アビドス高等学校に着いたようだ。先生はシロコから降ろされる

 

 

「ありがとう、シロコ」

 

「ありがとうございます」

 

「ん、気にしないで。それじゃあ教室に案内する」

 

 

 そして私達は他愛ない話をしながらアビドス廃校対策委員会の元へ向かった。その内容は、私のするべき事と大きく関わりがない為ここでは割愛させて頂く。

 

 教室につくと、『シロコが誘拐した』だの言っていたが先生は自己紹介をし助けに来た旨を伝えていた。

 

 

「本当に来てくれたんですね☆」

 

 

 そうこう言っていると、外から銃声が聞こえてきた。どうやら面倒事が舞い込んできたらしい。そう思い銃を手に飛び出そうとしたが、先生に手を肩に置かれ、引き留められる。

 

 

「むくろ君?むくろ君は護衛に回ってほしいな」

 

「え?何?戦おうとしてたの!?」

 

 

 セリカが衝撃を受けたかのように言う。

 

 

「……分かりました」

 

「ん、この人は身体能力レベチ」

 

「え?そうなんですか?……」

 

「先生を乗せていたけど、私の自転車に走って追いついてた」

 

「え?そうだったの???」

 

「へぇ~。ま、それぐらいなら…………ってちょっと待ってよ!!!」

 

「シロコちゃん、そういう冗談はよくないですよ〜」

 

 

 わちゃわちゃと私について話している。その様子を見ていると、更に私の中の無念の幾人かがより強く呻く。

 

 

「それより今は敵襲の対処を優先するべきかと」

 

「ん、確かに」

 

 

 そしてアビドスの皆は外へ出ていく。私は先生にただついて行くだけだった。

 

 私は戦闘を観る趣味は特段ない。だから私は先生に流れ弾が飛んでこないか、ただそれだけを警戒し続けた。そうしたら、すぐに戦闘が終わったらしい。少し時間が経ったからか、蠢く幾人かは静かになった。

 

 

「皆お疲れ様」

 

 

 先生がそう言うと皆教室に帰って行った。

 

 私は聞くべきではない。その会話も、聞いてしまえば苦しくなる。だから私は、会話に参加せず一人銃の手入れでもして時間を潰していた。

 

 

「むくろ君?行くよ?」

 

「…………はい」

 

 

 またも護衛をし、その日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日…………

 

 

 

 

「おはよう、セリカ」

 

 

「な、何がおはようよ、馴れ馴れしくしないでくれる?私、まだ貴方達のこと、認めてないから!」

 

 

 知ってはいたがつっぱねられた。私は追いかける意味がないと思ったが先生は追いかけたそうにしていたので、私もついて行く事にした。

 

 

「追いかけよう」

 

「何故追いかけよう、と言う発想に至るのですか?……」

 

「セリカが何処に行くか気になって」

 

「それを特定してどうするおつもりで」

 

「交流のネタにでもしようかなって」

 

 

 交流…………私は人との交流は最低限だ。出来ることなら人と会いたくない。だが仕事に必要なので人付き合いはする。

 

 

 そして辿り着いた先はラーメン屋だった。ラーメン屋に着くなり先生は誰かに連絡していた。恐らくは、廃校対策委員会のメンバーだろう。

 

 

「よし……それじゃあ対策委員会の皆を呼んだから来るまでむくろ君に質問タイムだよ!」

 

 

 ………………とても面倒な事になった。私の素性は知られたくなかった。余計な詮索などせず淡々と仕事をこなしているだけでいいじゃないかと思っていた。

 

 

「……それは必要なことですか?」

 

「だって、むくろ君自分から話すことがなくて私はあんまり知らないから」

 

「………………左様ですか」

 

「それじゃあ…………まず、好きな食べ物から!」

 

「好きな食べ物……ですか…………甘い物全般です」

 

「そうじゃなくて、どら焼きとか」

 

「気分次第で食べたいものは変わると思うので、余りそう言いたくないのですが……」

 

「そっか……じゃあ次は、むくろ君の家族について」

 

 

 家族…………私に存在しないものだ。いや、存在しないというのは嘘だろう。このキヴォトスに来てから家族は限りなく存在しないに近しい生き方だった。そう言うべきだろう。

 

 私は記憶では家族がいる。だが、もう連絡は途絶え合うこともないだろう。それにそもそも、何故キヴォトスに来たかに関しては覚えていない。

 

 

「家族…………いました。もう会うことはありませんが」

 

「……もしかして複雑だったかな?…………」

 

「複雑、と言うか私が一人が好きなので関わりがないだけです。連絡も取れないです」

 

「それってむくろ君が酷いんじゃ???」

 

「私は一人が好きなので」

 

「……ちゃんと親孝行はしたほうがいいよ」

 

「そもそもキヴォトスの外からここに単身送られている時点で親がどうかと思います」

 

「え?単身赴任みたいな感じってこと!?」 

 

「多分そうです」

 

「……………むくろ君、大変だね」

 

「何も言わないでください」

 

 

 同情されると少し心が傷付き……はしないが、憐れみを向けられるのはいい気分ではない。

 

 

「じゃあ最後に…………むくろ君、身体どうなってるの?」

 

「余り説明したくないのですか……」

 

「言いたくなかったらいいよ」

 

「いえ、お互いのためにも言っておくべきでしょう…………端的に私の身体がどうなっているか説明すると、身体は誰かの血肉を摂取する必要性がある代わりに異常な再生ができます」

 

「血肉?…………」

 

「はい。正確にはヘイローを持つ生徒の血等です。髪の毛でも可能です」

 

「……そう……だったんだ」

 

「ですがその点は大丈夫です。私に協力して頂ける方がいらっしゃるので人を襲うような事はありません」

 

「いや……え?そんな事する可能性あるって事?」

 

「ゼロと言い切れない……ですが、可能性は限りなくゼロに近しいかと」

 

「ならいいんだけど……」

 

「再生能力は理論上細胞一つでも残っていれば復活出来ます。細胞一つから全身の再生が12時間程、血を頂ければもっと早く再生出来ます」

 

「そうなんだ。でも、なんでそこまで詳しいの?」

 

「それなら私は先生が来る前に暫くキヴォトスにいたので、その間に色々検証しました」

 

 

 私がそう言い終わると、誰かの気配を感じた。

 

 

「ん、いた」

 

「二人ともわざわざ外で待っていたんですね」

 

 

 どうやら先生が読んだ人が来たようだ。私は呻く無念達を前のように無理矢理ねじ伏せる。そして私達はラーメン屋に入った。

 

 

「いらっしゃいませ〜柴関ラーメンで……って。えぇ!?」

 

 

 セリカが予想通りの反応を見せた。私は少し眠たかった。もしかしたら、そろそろ血が必要な時期かもしれない。そうこう言いながら、私達はテーブル席に案内された。

 

 

「むくろ君はこっちですよ〜☆」

 

 

 私はノノミの隣に座らされた。狭かったが、眠たい俺にとって隣に柔らかい枕のような人がいると何とも言えず欠伸が出てしまう。

 

 

「むくろ君は何がいいですか?」

 

「……すみません、私の分はいいです。先生に迷惑をかけるわけには行かないので」

 

「むくろ君……!」

 

「その代わり眠いので、眠らせてください」

 

「寝たいだけかい!」

 

 先生の威勢のいいツッコミが飛んでくるが、私は背もたれに寄りかかり上を向くように体勢を取り、そのまま眠ろうとした。

 

 意識は次第に朦朧とし、呻く幾人かは釣られてその活動を弱める。だが、それとは違う何かが私の意識の中に入って来た。

 

 

(貴方は誰?)

 

(お前……誰?……)

 

(私は梔子ユメだよ〜。貴方は?)

 

(俺…………継接骸……眠い…………)

 

(じゃあ、眠っている間に身体を貸して!)

 

(無理…………少なくとも今はよして……)

 

(ぶぅー、けちー)

 

 

 そんな声を聞いた後から、俺は何も覚えていない。きっと眠っていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が目が覚めた時にはシャーレのオフィスだった。体を起こし外を見れば空は闇に染まり、寂れた街灯が点々としているだけだった。

 

 

「おはよう、むくろ君」

 

「おはようございます…………」

 

「びっくりしたよ。何をしても起きないから仕方なく背負ってかえったんだよ?」

 

「ご迷惑をお掛けしました。申し訳ありません」

 

「大丈夫だよ。シャーレの仕事は激務だからね」

 

 

 先生に心配させてしまうとは……私は補佐官失格だな。

 

 

「先生、私の分の書類は……」

 

「私が片付けておいたから、今日は休んで」

 

「…………分かりました」

 

 

 渋々ではあったが、私は帰る事にした。が、その前に私は黒い服の先輩の元へ向かった。

 

 私は点々とした街灯を浴びながら、フラフラと歩みを進める。余りにフラフラしているので少しシーシャを吸うことにした。

 

 

スゥー………

 

 

 私の精神を安定させる、強い麻薬の類。それを水蒸気にして吸っている。これは気づかれてはいけない。そしてこれを常人が吸えば、廃人真っしぐらなので盗まれるのも駄目だ。

 

 

 私はシーシャを吸いながら眠る前の『梔子ユメ』はどういう訳で俺に干渉してきたのか考えていた。私の意識に干渉した時点で無念達の瓦礫の山に埋もれてしまうのではないのか?

 

 結構あれこれ考えた末、『私が梔子ユメがアビドスの面倒事を解決してくれないかと言う願望が幻聴となった』ということにした。

 

 そしてシーシャが吸い終わり、そろそろ歩こうとした時だった。

 

 

「おやおや……どうやら神秘切れのようですね」

 

 

 黒い服の先輩が現れた。相変わらず人外のような見た目の先輩方、その内黒い先輩は、以前私が生徒の血を啜れなかった時に輸血パックをくれた人だ。それ以降、私はその先輩に何かと頼る。

 

 

「はい……すみません、またも頼ってしまうことになりそうです」

 

「いえいえ、貴方はいざという時にゲマトリアの最終防壁になって頂く存在です。このような場で狂われてしまえば困ります」

 

「お願いします」

 

 

 すると輸血パックが渡された。ひんやりとしていて、新鮮さを保とうとしているようだった。

 

 

「生徒の血を集めるのも一苦労なのですよ?」

 

「今回は申し訳ありません。次は赤い先輩に要らない髪の毛を貰いに行きます」

 

「いえいえ。ですが、血を提供して貰える生徒を用意してみては如何でしょうか」

 

「…………出来るかは分かりませんが、挑戦してみます」

 

「頑張ってくださいね。私達は貴方に期待しているのですよ」

 

「ありがとうございます。これからもご指導ご鞭撻の程お願いします」

 

 

 そう言って私は、輸血パックを手にその場を去った。私は適当な路地裏で輸血パックを飲み、パックを綺麗に折りたたみポケットに仕舞った。

 

 私は先程眠っていたにも関わらず眠たかった。早く家に帰ろうと、路地裏から出ようとしたその時だった。

 

 

「ねぇ、そこの人。こんな路地裏で一体何を?」

 

 

 誰かが話しかけてきた。若い声からしてスケバンかヘルメット団辺りだろう。そう思って振り返ると、案の定黒いヘルメット団の団員がいた。

 

 

「輸血パック飲んでました…………あ」

 

 

 余りの眠さに私は素直に答えてしまう。これはまずい、そう思って散弾銃を手に持つ。この事がバレればシャーレの信用に関わる。それは避けなければならない。

 

 

「ちょっ、ちょっ!落ち着いて!ただ調子が悪そうだったから話しかけただけ!」

 

「そう…………ですが……知った以上は……」

 

「何それ!ちょっと待て!」

 

 

 

 そう言えば、丁度血を提供して貰える生徒を探していたんだ。金で口封じと血の定期供給をお願いできるだろうか。

 

 

 

「貴方は…………金銭や寝泊まりする場所にお困りですか?」

 

「急に落ち着かないでって!…………いや、まあ困ってると言えば困ってるけど」

 

「であれば、血の提供と私の血を必要とする体であることを口外しない事を条件に、私の書類仕事を手伝って頂けないでしょうか?衣食住は用意しますし、勉学に支障をきたさない程度の労働時間で良いので」

 

「うーん…………」

 

「私はシャーレの先生の補佐を任されているものです。ある程度金銭には余裕があるかと…………」

 

「……………返事は明日までって出来ない?」

 

「口外しない確証がないので、今ここで決めて頂きたいです」

 

 

 私はそう言いながら、散弾銃を握り締める。もし逃げるようなら、逃げる前に殴って気絶させる。私はそれをちらつかせ、最早脅迫ではあるが契約させる。

 

 

「はぁ……分かった分かった。貴方の元で働いてあげる。でも、せめて名前とか教えて欲しいな」

 

「私は『継接むくろ』と言います。貴方は?」

 

 

 私がそう聞くと、その少女はヘルメットを取った。美しい銀色の長い髪が靡き、何処か鋭い目がこちらを見る。だが敵意のある目ではない。そして凛々しい顔と透き通る淡い青緑色の瞳が私の濁っていると思われる瞳に向いた。

 

 その姿は、ただ美しかった。

 

 

「私は白銀ユヅキ。よろしく」

 

 

 彼女のにこやかな笑みと共に名前を教えてもらった。

 

 何故私がここまで美しいと感じたのかは分からないが、何はともあれユヅキを名乗る生徒()であり私にとってのドナー(食料)を得られた。そのまま、私は具体的な条件を相談したのち、その日は別れた。

 

 勿論、口封じを確実にする為に契約書は書いた。あの黒い服の先輩のやっているように、これは大事な事だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 むくろ君が寝ていた頃の事…………

 

 

「ん、それにしてもこの人喋らない」

 

「まるで他人事みたいな感じですよね」

 

「うん…………むくろ君は多分今までまともな環境で育てられれてないから」

 

「え?そうなんですか?」

 

「むくろ君、家族ともう連絡取れていなくて家族との関係も余りよくなかったんじゃないかな?……」

 

「そんな……」

 

 

 私はむくろの体質については伏せておいた。皆はむくろが余り明るくない過去を持っている事を知り、幾分かは態度が柔らかくなっただろう。

 

 

「ん、むくろさんが私に追いついてたのは?」

 

「それは……多分彼が単純に凄い怪力なんだと思う…………この間何食わぬ顔でエンストした車持ち運んでたし」

 

「何それ怖〜」

 

「でも本当はとても優しい人だから、時折話しかけて上げてほしいな」

 

「ん、分かった」

 

 

 アビドスの皆は初めは彼に懐疑的な目線を向けていた。私についてくるだけで何も喋らないのだから当たり前だが、これで幾分かはましになるだろう。それでもむくろ君がちゃんと話そうとしないダメだから、ちゃんと注意しないといけないけれど。

 

 私はそう思いながら、眠っている間は穏やかなむくろ君をシャーレに連れて帰った。

 

 






追記

誤字報告感謝します、lightacenoah様。

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