あんうぇるかむ
今日もアビドス高等学校へ向かう。ミズキとは帰った後に会うつもりだ。しかし今日はただでは済まないかもしれない。
「今日はセリカちゃんが遅いですね?……」
「ん、連絡も繋がらない」
「まさか……セリカちゃんになにかあったんじゃ!?……」
どうやらセリカが音信不通らしい。これに関しては私に出来ることはない。先生とシッテムの箱に任せよう。
「セリカはどうやらここに……」
タブレットで地図を開き、場所を示していた、成る程、場所が具体的に分かれば私一人で救出可能だろう。そう思って外に駆け出そうとした瞬間、私はまたも先生に肩を捕まれ止められる。
「むくろ君は護衛お願いね?」
「…………私は前線に出ても問題ありません」
「駄目だよ?生徒達の教育に悪いから」
「むくろさん、どんな戦い方なんですか?……」
アヤネが興味を示した。聞かれたのなら素直に答えるべきだろう。
「泥臭く銃で殴ります」
「え?銃弾避けられるの????」
「いえ、避けられません」
「ちょっと待って、それ食らってるよね?」
「はい」
「え?それ体に穴空くよ?」
「はい、空きます」
衝撃のあまりホシノも素の口調で体に穴が空くだろうとツッコミを入れる。しかし私は相変わらず表情筋の死んだ顔面と抑揚が微かにある声で答える。
皆の視線は(こいつ頭おかしいんじゃないのか)と言わんばかりの冷たい物だったが、先生が嫌われていないなら別に良かった。
「むくろ君ね……死なない体質みたいなんだよ」
「「「「はぁ!?!?!?」」」」
先生のその発言に皆は絶対にありえんだろうという反応を見せる。が、よく考えなくても俺が死なない事で驚いている場合じゃないと思った。
「私の事よりセリカさんの事を優先しましょう」
そうやって兎に角話を逸らす。と言うか私情なしで優先すべきだろう。
「確かにそうだね」
「じゃ、帰って来たら色々聞かないとねー」
辞めてほしいと内心思いながらも、セリカ救出に向かった。
…………………………………………………………
結局セリカ救出は何もさせてもらえず、私はトラックや戦車がぶっ壊される様子を眺めていることしかできなかった。
救出後、先生は相変わらずストーカーとセリカに言われていた。私は一応擁護しようとしたが、結局ストーカー呼ばわりは変わっていなかったので意味なかっただろう。
私にとってそんな事はどうでもいい。
この後、私は尋問される事が確実なのだ。
「それで、むくろ君。君が死なない体質ってどういう事かな〜?」
ホシノが何処か詰めようとしているように感じられる視線と喋り方なのは気の所為だと信じたい。
「私は致命傷であっても死亡せず、再生出来ます」
「え、何それ怖……」
セリカから罵倒ではなくドン引き発言が飛んでくるのは相当ヤバい奴だと思われているのだろう。そう言う目で見られるのには慣れていたから別にどうでも良かったが。
「ん、本当に再生するの?」
「はい。実演してみせましょうか?腕を切り落とす位なら……」
「いや、大丈夫」
「じゃあその右眼に眼帯しているのは?」
「これは生まれつき右眼がない為です」
完全に真っ赤な嘘だが大人のカード擬きの事はバラさないほうがいい。バラせば良からぬことを考えそうな人間がいるからだ。特にそこのアビドススナオオカミとアビドスユメモドキは絶対に使おうとするだろう。この大人のカード擬きは黒い服の先輩が作った物だから余計駄目である。
「ん、そうだったんだ」
「むくろ君…………スプラッタは教育に悪いから前線に出ないで欲しいんだよ」
「そう……ですか…………」
武器を振るう事しか能のない私に武器を振るなと言われてしまえば何も出来なくなる。だから私は出来れば戦いたかった。
「しかしむくろさんはどうしてそのような身体になったのでしょうか?」
「分かりません。そもそも私のこの体質が判明したのがキヴォトスに来てからだったので……」
「でも、死なないからって血まみれになっていい訳じゃありませんよ☆」
「むぅ…………」
「駄目なものは駄目だよ」
「…………分かりました」
私の身体の話はこれぐらいなもので済んだので、私は帰るときまでぼんやりしていた。
そういえば、ユヅキは野垂れ死んでいないだろうか?……そんな事を考えながら。
そういえば、以前先生に『何故そこまで人との関わりを最小限にするのか?その体質は隠すこともないだろう』と言っていたことを思い出した。私はその時誤魔化していたような気がするが、今思い返すと私の中にいる無念達の説明をしていなかった。
私が死なない体質を明かしても血を啜る体質を隠す最大の理由。私の内に瓦礫の如く積み重なった無念。それは私の記憶内でプレイアブルキャラだった存在に幾つか反応するようになっている。なんといえば良いのか、身体の中と意識の中で違う誰かがいるような感覚……と言う言葉が私が考えられる中で最も適切な言葉だろう。
これはどういう事なのか。原因は記憶喪失する以前に生徒を食ったから…………それ以外に考えられない。
黒い服の先輩が私の事を『神喰らいの継接』と呼びシロコを狼の神と呼ぶのなら、私は神喰らい=生徒を食ったということになるのだろう。しかし呻く無念は余りに多く、私の記憶喪失する前は恐ろしい、言ってしまえば人喰いだったのだろう。何故有名な事案となっていないのかかなり謎だが、キヴォトスの外にいた元生徒を喰らっていたとでも思っている。
だから私はこの体質を明かしたくない。死なない事はいいが、血を啜るのは人喰いに繋がり恐怖感を与えかねないから。
先生に素直に話したのは今後の付き合いと先生が聖人だからに尽きるが、これから私の血を啜る体質を知るものは今後現れないだろう。
そうこう考えていく内に帰る時間になった。私はとっとと物を纏め、ユヅキの元へ走った。
…………………………………………………………
私はヘルメット団の基地へ足を運んだ。ヘルメット団員が2人、監視に立っていた。私はその人が見える位置から近づき、話しかけた。
「あん?なんだおめぇ…………」
「白銀ユヅキさんに用件があり参りました」
「おい……こいつよく見たら……」
「お前……シャーレの先生の側にいた!……」
「はい、そうです。ですが余計な事は考えない方がいいですよ?」
「いや…………お前は怖すぎて誰も襲わねぇよ」
「?」
「知らないのか?連邦生徒会の失踪が発覚した日、身体に風穴空けられまくりながら銃で殴って来る化け物が先生の補佐官やってるって…………かなり噂になってるぜ?」
「そうだったのですか」
知らなかった。私にそのような噂が立っているとは。
「あの時は戦いに来なくてほんとによかったわ」
「それは先生に護衛を頼まれただけです」
「そうだったのか。あ、悪い。お前こいつをユヅキんとこに案内してやってくれ。ついでに交代を呼んできてくれ」
「仕方ねぇな…………おい、補佐官。ついてきてくれ」
「はい」
そう言って私に噂を教えてくれた方が建物の中へ案内してくれた。
「しかしユヅキの奴、こんな変なのと関わりがあるなんてな」
「いえ、昨日の今日知り合ったばかりなのですが……」
「お前とユヅキはどういう関係なんだ?」
「雇用関係……でしょうか」
「ふーん…………やっぱあいつは物好きだな」
「ミズキさんはどのような人なのですか?」
「あいつ?あいつはなんかぱっと見は怖いんだけど、何だかんだ優しい奴だぜ?元はトリニティのお嬢様だったらしいが」
「そうだったんですね」
トリニティ……政治紛争に嫌気が差した、といったところだろうか。
「おーい、ユヅキー!あんたに用があるって奴が来たぞー!」
「一体誰が……ってむくろさん?」
「ユヅキさん…………お迎えに上がりました」
「お迎えって……私が勝手に行くって言ったじゃん!」
「いえ、まだ信用し切れないので」
「酷くない?私は約束守る女よ?」
「まあ、いいです。ついてきてくださ……」
私がそう言いかけたとき、外から轟音が聞こえた。何かが爆発する音。そして火薬の嫌な匂いが鼻を焼く。
「何だ!何があった!」
「敵襲だ!急いで外に出ろ!」
そう言ってヘルメット団員達は外へ出ていく。
「……これはまずい…………むくろさん、余り前線には……」
「いえ、私が行きます。その代わりスーツと眼鏡と靴をお願いします」
「え?ちょっと待って」
「?」
「あんまり傷付くのは良くないんじゃないの?……ほら、痛いとか」
「関係ありません。先生が敵でないのなら殴り伏せます。邪魔なので」
「むくろさん……実は脳筋?」
「ノーコメントです。ある程度交渉も狙いますが……」
そう答えて私はスーツを脱ぎ、あの日のようにシャツとスポーツタイツに着替える。スポーツタイツとシャツなら何とか買い直しても財布へのダメージが少ない為、戦闘は必然的にこの服になる。
「それでは……行ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
私はその言葉を受け止め、轟音の鳴る方へ歩みを進めた。
…………………………………………………………
「死んで下さい死んで下さい死んで下さい!!!!」
外へ出ると、紫髪の女が散弾銃を手に暴れ回っていた。ヘルメット団員は散り散りに倒れており、殆どヘルメット団員は生き残っていなさそうだった。彼女にこれ以上暴れてられて私にとって貴重な
彼女が私に気付いたのかこちらに散弾銃を向けてこちらに向かって突っ込んで来た。
「死んで下さい死んで下さい死んで下さい!!!!」
「落ち着いて下さい」
私は冷たい声でそう言うが、止まる様子がない。そしてこの小娘は便利屋68所属故に、白目をむくスナイパーや爆弾魔がいる筈だ。その人達と出来れば交渉に持ち込みたい。
「邪魔です!アル様の邪魔をするなら……!」
その前に撃たれそうである。まあいい。いっそそのまま撃たれてイチャモンをつけるのもありだ。
「ハルカ!ちょっと待っ!」
ダン!!!
そう思いながら、誰かの声と共に銃声を聞いた。視界は即座に失われ、顔の辺りの感覚がおかしくなる。よりにもよってハルカはヘッドショットを狙ったらしい。
「そんな……嘘……」
私は散弾を喰らった勢いで倒れるが、耳は無事なのか声が聞こえる。声からして陸八魔アルだろうか。私の顔を見たのだろう。
だが私はこの程度では死なない。死なないが安静にすれば早く治るので動かない。それに、私のうちの無念達の幾つかがまた私の中で呻き声を上げる。それを私は堪えながら、陸八魔アルとその仲間の会話に耳を傾けた。
「アル様!すみませんすみませんすみません!!!!」
「うわ…………これは酷い……」
「どうしよう…………でもこの格好……まさかシャーレの補佐官?」
バレたか。この格好と言っている辺り、俺のその日の活躍を知っているということだろう。どうする?……起き上がってもいいが…………
「ちょっ……治ってない!?」
「やっぱり……この人死なないからそんなに心配しなくていいよ」
「よ、よかった……じゃなくて!」
アルの声が聞こえた所で、私は光を感じた。瞳が戻ったのだろう。私はゆっくりと立ち上がりながら、左目を開ける。視界はぼやけているが、案の定便利屋68のメンバーが私の前に立っていた。
「え?……大丈夫?」
「問題ありません」
「シャーレの補佐官が…………こんな場所にどういう理由でいるの?」
「ヘッドハンティング……ですかね。貴方方はどういった理由で?」
「要らなくなったゴミの処分よ」
「はぁ……そういう事ですか」
私の記憶が正しければ彼女らは次にアビドスに襲撃を仕掛ける筈だ。私が余計な手出しをしてバタフライ効果が起きてもまずいから、私とミズキを逃がして貰えないか交渉したかった。
「私は特段ヘルメット団に肩入れするつもりは御座いません。どうか私ともう一人、見逃して頂けませんか?」
私は両手を上げ、敵意がないアピールをする。しかし彼女達から警戒の目は向けられたままだ。それに少し、不気味だと思う忌避の目もあった。
「命乞い?まあ、私は逃がしてあげてもいいけど」
「ふふっ……そうやすやすと見逃すと思っているの?」
やはりただでは逃がしてくれないらしい。しかし撃たれた事にイチャモンをつけるつもりでいたので交渉材料は特に考えていなかった。
「であれば……所望の時に私が戦力として協力する…………というのはどうでしょう。シャーレと敵対しない範疇であれば私は戦力として役に立つかと」
「あのお兄さんはあぁ言ってるけど…………どうする?アルちゃん」
「仕事中は社長と呼びなさい…………そうね……」
彼女は考え込んでしまった。内心白目を剥いているだろうが、私は見逃してくれることを心の中で祈りながら、答えを待った。
「その話……」
陸八魔アルがそう口を開いた時だった。彼女達に銃弾が横から突く。
「いたたたた!!!」
彼女らはUターンして近くの物陰に隠れた。
「補佐官!ナイスだ!」
「はぁ……どうやら騙されたみたいだね」
「な、ななな、なんですってー!!!」
横槍を入れたヘルメット団員は余計な事をしてくれた。だがこうなっては仕方ない。交渉は残念ながら決裂だが、こうなってはやるしかない。私も撃ったヘルメット団員の方へ隠れながら、散弾銃を構える。勿論バットを持つように、銃口の辺りを持つ。
「余計な事をしましたね」
「お前、私等を置いて逃げようとした罰だぜ」
「他のヘルメット団員は?」
「私とミズキ以外は全滅だ」
「成る程。援護お願いします。私が前衛を張るので」
「分かった」
先程交代を呼ぶよう頼まれていたヘルメット団員はそう答えた。それを聞き、私は左手を噛み出血させて姿を晒す。
「アル様を騙すなんて…………許さない許さない許さない許さない許さない!!!!!」
それを見て、ハルカがパニック顔で突撃してくる。散弾銃をこちらに向けている。私は近くの障害物に一旦隠れ、殴れる範囲に来るまで待つ。
「死んで下さい!!!!」
ハルカは障害物を捲るように散弾銃を私の横から向ける。それを私はすぐに左手で掴み、ハルカの右頬を力をセーブし殴る。
「ぐっ!!!」
その隙にハルカの胸倉に左手を伸ばし、掴んで盾にしようとする。だがそれを彼女は払い除け、後ろに下がる。
私はそれを走って追いかけようとする。だが、私の足を何かが撃ち抜いた。私は構わず突撃しようとするが、進行方向にバッグが飛んできた。すぐににムツキの爆弾だと分かった私はすぐ近くの障害物に隠れる。
しかしバッグは空中で撃ち抜かれる。ヘルメット団員がカバーしようとしたのだろう。
だが、また誰かが先程撃ち抜かれた足にまた銃弾が突き刺さる。今度は私の足を貫かず、赤い光を放ち刺さっていた。
気付いた時には遅く、その弾丸は爆発し私は吹き飛び右足は木っ端微塵になる。
身体はずたずたであり、最早生きている人間とは言えないだろう。だが身体は再生し、既に右足の太ももの骨は伸び始めていた。まだ戦わなければならない。爆破で生じた煙に隠れまた別の障害物に隠れる。
「これ……ほんとに大丈夫なの!?」
「多分大丈夫。彼がここに来てるのは公的理由ではない筈だし」
戦闘時ですら喋る余裕があることを柄でもなく羨んでしまうが、私はそれすら抑え込み右足が治るのを待つ。足首が再生しているかしていないか程で私は右足で地を蹴り姿を晒す。
そしてハルカの方目掛け逆の足で地面を全力で一蹴りし、確実に仕留める為に先程より力を込めて殴りかかる。
「速っ!」
「へっ!?」
ムツキが驚きを隠せず、ハルカも何が起きたか分からないような様子だったが、お構いなく振り向いた所を右頬をぶん殴る。
ゴッ!!!!!!
「っ!!!!…………」
ドゴーーーン!!!
ハルカは頭から壁へ等速直線運動で吹き飛んで激突。壁が割れたのか煙が立ち込めた。恐らく頭が壁にめり込んでいるだろう。これは少々やり過ぎたと反省しながらも、私は残りに距離を詰める。
まずは一番近いムツキから。彼女をやれれば火力は大幅に落ちる。
「っ!……やばっ!」
だがムツキはすかさずマシンガンで弾幕を張る。それに対し私は右に飛び、壁に着地したら天井へ向け飛び、撹乱する。当然マシンガンではその狂った機動に銃口は追いつけず、落下しながらムツキに向けて銃を振り被る私には向かない。そしてそのまま、今度は先程より弱めにムツキに兜割りを頭に当てる。
ゴン!ドゴッ!!!!!
しかし私のセーブも虚しくムツキの頭は激しく地面へ叩きつけられ、また煙が立った。これは地面が割れ、確実に気絶しているだろう。と言うか、地面に頭がめり込んでいそうである。
そして私は次にカヨコを狙う。地面をふと見ると、多くの弾丸が転がっていた。先程ムツキを狙っている間にヘルメット団員が弾を散らし手出し出来ない様にしてくれていたらしい。後で感謝しなくては。
「まずっ!」
カヨコに煙が立っていようと分かる距離まで近づき、銃を振り上げた。
ガシッ!…………
「!」
「させ……ません!…………」
しかし、ハルカが頭から血を流しフラフラの状態で私にタックルを横からして来た。あの状態なら最早死んでもおかしくないレベルである。それを彼女は耐え、私を阻む。
私はそれを振り解こうと振り上げた銃をハルカに向け、振るおうとした。
「『私の大切な社員にこれ以上手出しさせないわよ!!』」
突然その言葉が私の意識に反響し、私の頭が苦しみに満ち溢れる。これは傷を受ける度に感じる物、痛みだった。
その苦しみは私の意識を破壊せんとばかりに響き渡り、私は自身の不満も抑え込んだ反動か痛みに体を暴れさせてしまう。周りに何が起きているのかも分からない。
私は最後には意識を失うが、悶える間何が起きていたのか分からない。だが意識を手放す直前、天井に向けて人ならざる声で叫んでいた事だけは、覚えていた。
…………………………………………………………
「ごめん」「助けて……助けて……」「ぁぁぁ」「どうして……どうしてこんなことに!!!!」
「なんなのよあれ!」
「ハルカ!……大丈夫……じゃないよね」
「いえ……大丈夫…………です」
「フラフラじゃん。無茶しないで」
「ありがとう……ございます…………」
そう言ってカヨコはハルカに肩を貸す。私はシャーレの補佐官が人を辞めていると分かるような、色んな人の声でわけの分からない事を叫び続けていた。
「私は……生徒を!……」「まだ…………まだ終われない」「がぁぁぁ!」「嫌だ……死にたくない……!」
まるでその中に色んな人の魂が入り混じっているかのように、ある時は男の声で、またある時は女の声で叫んでいた。それを、この場にいるものは離れた所で呆然と見ることしかできなかった。
「キュァァァァァァァ!!!!!!!」
最後に全ての人の悲鳴を混ぜたような声で天に叫び、力なく倒れてしまった。
「…………止まった?」
(どどどどうなっているの!?私が『社員にこれ以上手出しさせないわよ!』って言ってから急にこうじゃない!)
「社長?」
「うぁっ!?……何かしら!」
「どうする?……これじゃあ私達、明日の襲撃出来なさそうじゃないかな?」
「た、確かに…………」
「まあ…………取り敢えず最後に残ってる1体は倒しておこう」
「っ!」
「課長、行かなくてもいいわ。私の一撃で十分よ」
そう言ってアルが片手で銃を持ち、障害物に一発撃つ。そして赤く輝く弾丸が突き刺さり、爆発する。
「うっ!…………」
むくろを援護していたヘルメット団員は打ち倒され、ここには便利屋68以外に立つものはいなかった。
「さて…………一先ず帰りましょう」
「そうだね…………もうこれ以上は戦えないし」
「ムツキは……うわ、地面に埋まってるじゃない……よいしょっ!」
「こんな事できるなんて…………本当にこの人は何者なの?……」
アルがムツキの埋まった頭引っ張り出そうとしている横で、カヨコがそう呟く。その時に、むくろの方から声がした。
「…………か……」
「!……まだ起きて!……」
「誰か……」
「…………」
「アルでも……アリスでも…………誰でもいいんだ……誰か…………」
「助けて…………俺を……瓦礫の山から……」
(!?!?!?…………なんで私の名前を!?!?)
カヨコがむくろに近づき様子を伺う。むくろの顔は苦しみに満ちた顔をしていたが、眠っていた。
「…………眠っている……寝言みたい。でも社長は関わりあるの?」
「えっ???知らないわ???」
「……もしかしたら名前の同じ知らない人かも」
「そう……そうだったらいいんだけど……」
「この人……どうする?」
「ちょっといい!」
叫び声を聞いて心配したミズキは物陰から様子を伺っていた。そしてむくろの為に両手を上げて出てきた。
「まだ残ってたんだ…………」
「この人は私が連れて帰る……だから私を見逃して欲しい!」
「……成る程ね…………」
「…………どうするの?……一応相手は一人だし無防備だからやろうと思えばやれるけど……」
「……仕方がないから見逃してあげるわ。でもきちんと家に連れて帰るのよ?」
「ありがとう!」
そう言ってユヅキはむくろを背負い、そそくさと去って行った。
(……今度会った時には聞いてみたいわね)
アルはそう思いつつ、ムツキを担ぎ事務所に帰って行った。
追記
誤字報告感謝します、lightacenoah様。