賞味期限は味の期限なので正味守らなくていい。
(更新して)欲しけりゃくれてやる!(但し次の更新は遅れるあと口が悪くて申し訳ありません)
「なんでお前がここに!……」
私もそう言いかけるが言っても意味がないので言わないことにした。
「そうですね……彼は私の後輩です」
「…………つまりお前の仲間なんだな」
ホシノからいつの緩い目つきとは全く違う目でこちらを睨んできた。それどころか散弾銃を持ち、私に向けようとしていた。
「無駄ですよ?彼はその程度では死にません」
「…………はぁ……」
ホシノは渋々散弾銃を下ろす。
「彼は私達の仲間ですがシャーレの補佐官を担ってもらっていただいています。お陰でシャーレの動きは筒抜けです」
「……何が目的だ?…………」
「いえ、私はシャーレの情報は流していません。先輩の冗談です」
「にしては随分キツイ冗談だけど?」
「冗談です。彼はたまたま連邦生徒会長に選ばれた人だったのです」
「連邦生徒会長も中々変なのを選ぶね」
「彼がそれだけ優秀ということです。睡眠も食事も必要とせず必要なのは「先輩?」「おっとすみません、口走ってしまうところでした」
危うくホシノに血が必要な事がバレるところだった。黒い服の先輩はこういう所がある。
「それで……お前はどういう理由でここに来たんだ?」
「定期検診です。私の体はかなり特殊なので黒い服の先輩に異常の有無の確認等をお願いしています」
「そうか……」
「ホシノさん、まさか彼を無理矢理私達の仲間にしたと思っていませんよね?」
「っ!」
「彼は自ら望んで我々の仲間になったのですよ。年齢で言えば彼は貴方方と大きく変わりませんが、彼もまた目的のためなら手段を選ばない方ですよ?」
「お前は……やっぱり……!」
「先輩、あんまり変な事教えないで下さい。私の居心地が悪くなります」
「おや?貴方が居心地を気にするようになるとは……一体どういう心境の変化なのでしょうか?」
「変化も何も、人らしい生活が良いなと感じただけです。ですが私にとって意味の無いことなので。それと気まずくなります」
「相変わらずですね…………強がりはあまり良くないですよ?」
「元々私は人間じゃないです。ですから私はそうある必要はありません」
「人間じゃない…………だって……?」
「そうです。私はもう人ではない。あれだけの力で街を荒らし回れば化け物扱いされるのは必然です。もう慣れてしまいましたが」
「荒らすとは……まさか『トランス状態』を使いましたか?」
「はい」
「成る程……では詳しい検査が必要ですね」
ホシノを横目に私は先輩とゆっくり話すことが出来て、会話が弾んでいた。
「あの……二人とも?……」
「あぁ、すみません。久々にゆっくり話せる機会だったのでつい話し込んでしまいました」
「因みにですが、ホシノはどのような要件で先輩に?」
「あ、うん…………私は渡すものがあって」
「そうだったのですか」
ホシノが困惑気味に答える。黒服と仲が良さそうな事が意外だったのだろうか?それでも別に気にすることはない。私は私のするべきことをするだけだ。
「それではむくろさんはこちらに…………」
そして私は病人服に着替えてからいつもの棺桶のような装置に入り、目を閉じる。目は開いていてもいいが、見えるのは私の体液に染まっただけの空間なのでどうせなら何も見えない闇のほうがマシな気がしたので目を閉じた。
「それでは検査を開始しますね」
「はい」
「ホシノさんも折角ですし見ていきますか?」
「…………見るようなものじゃないと思うんだけど……」
「いえいえ、面白い物が見れますよ?」
「…………」
どうやらホシノは黒い服の先輩と共にカメラ越しで見るらしいが、見せたら良くない物が沢山出てくる。具体的にはR18Gに指定されるレベルの代物が沢山見れてしまうのでただでさえメンタルぐちゃぐちゃのホシノが見ればもう精神崩壊待ったなしだろう。本当は止めたかったが、私がどう叫ぼうと向こうがマイクをオンにしない限り聞こえないようになっているので残念ながらホシノのに見ることをやめさせる事は出来ない。せめて耐えられるように祈るばかりだ。
ウィーン…………
そして機械が動き出す。始めは至って普通の検査だ。呼吸や心拍数、血圧なんかを測る。そして私の血液が少量抜き取られ、最後にx線検査をする。普通の検査はこれで終わりだ。ここからR18Gのお時間である。
ザクッ!!!
「っ!?!?」
体の切断音と共にホシノの息を呑む声が聞こえる。ここからの検査は再生能力の検査だ。私の体は次々と切られ、そしてすぐにくっついて何事もなかったかのように再生する。そしてこれはまだまだ序の口だ。
「黒服!これはどういう事だ!!!」
「これは彼の再生能力の検査ですよ?」
「こんなのが検査な訳ないだろう!!」
「ですが彼の再生能力はこれでしか実証出来ない。だから彼に合った検診はこれなのです」
「そんな……そんなのって…………」
残念ながらホシノ側の声は全て聞こえている為、ホシノがいらない勘違いをしていそうな事がよく分かった。黒い服の先輩も少しは不安を煽る発言はよしてほしい。別に私が苦しんでいるわけでもないし、本当に必要なことなのだ。再生するまでの時間は全て計測されており、その記録は私がどこがどれ程で再生するか分かるようにしたいという我儘を聞いてもらっているだけだ。
だがそれを伏せているため、ホシノの目には『拷問じみた検診を定期的に受けさせられ感情を失った被害者』として映っているのだろう。完全に誤解である。
そうこう考えているうちにそろそろ首から下が潰される時間になってくる。
グチャッ!
「むくろさん!…………」
「そういえば、彼の声は私達は聞こえないようになっています。彼の叫び声がこちらに響いては困るので」
「っ!黒服!!!」
またまたいらない勘違いを誘発させる発言だ。『私の声はホシノ側は聞こえない』=『私が痛みで叫んでいる可能性が高い』という誤解を与えられているだろう。これもまた誤解である。私は叫んでなどいない。まずそもそも肺も潰れているのだから普通に考えて叫ばないだろう。だがそれに気づかないホシノのメンタルは既に黒い服の先輩によってぐちゃぐちゃを通り越してドロドロにでもなっている事だろう。
しかし黒い服の先輩は追撃をやめない。面白がっているのが声で分かる。それが『私を傷つけて面白がってる』に変換され更に勘違いは加速する。黒い服の先輩は頼むから本当にやめてほしい。その誤解を解くのに一体どれ程の時間をかけなければいけなくなるのやら。
そう遠い目をしていると火炙りにされ、次は水に浸けられ、その次は電流が流され、毒や菌が体内に放り込まれもした。なんだかんだで一番嫌なのは毒が入れられる事である。たまに催涙ガスをイタズラなのか入れられて、鼻や目がツーンとしたことがある。それ以来この工程は余り好きではなくなった。
「今すぐやめろ!!!やめなければ……」
「いいのですか?今ここで私を殺しても、彼をあそこから出せますか?」
「っ!!!」
「クックックッ……もう少し彼について貴方は知るべきです」
「このっ……!!!」
普通に考えて私の怪力で自力で脱出出来ると思うだろう。と言うか出来る。やはり精神が追い詰められると思考の幅が狭まってしまう。これはホシノを反面教師として見るべきだろう。そして『貴方は彼について知るべき』も恐らくホシノには皮肉っているように聞こえるだろう。これに関してはそのままの意味のはずなのだが…………
と言うか、黒い服の先輩がホシノイジメをやめないのは何故だろう。私は黒い服の先輩を不快にする事をしただろうか?
「最後に
「はい」
そのうち最後の検査になる。聞こえないだろうが、私は一応返事をしておく。ここは無念達という瓦礫の山に沈まない為に気合を入れて挑まなければならない。だが、大抵は耐えられるので問題はない。
そしてすぐに機械が唸り、無念達が呻き声を上げる。悔恨、絶望、憎悪、幾多の感情が私の意識に訴えかける。私はそれを無理くり堪え、終わる時を待つ。訴えかけるその感情に任せてしまえば私は暴走してしまう。
いつものようにそれもすぐに終わり、装置から出た私は血に塗れたせいかどうにか黒焦げで済んだ服からスーツに着替え、黒い服の先輩の元へ向かった。
「先輩、今日はありがとうございました」
「むくろ……さん…………?」
ホシノがぐらぐら揺れる瞳と大層震えた声で私の名を呼んだ。これでは勘違いを解くのは半分不可能だろう。
「ホシノさん、私は大丈夫です。それより先輩…………本当に余計な事言い過ぎですよ?」
「言っていることは全て事実ですよ?」
「だとしても限度があります。私が叫んだのも先輩か余計な事をしたからですよ?」
「何の話でしょう?」
「むくろさん…………もういいよ……」
「ホシノさん…………お気になさらず。寧ろ貴方の最初の反応は崩さないほうが賢明だと思います」
「そうです。彼もまた私と同じ悪い大人です」
「…………そうか……」
ホシノは何処か納得の行かない顔だったが、大して気にすることもないだろうと思い、私は建物から出た。出てすぐに後ろから足音が聞こえた。
「むくろさん…………一つ聞いてもいいかな?……」
「何でしょうか?」
「……むくろさんはどうして黒服の仲間になったの?」
「そうですね……」
私が何故ゲマトリアの一員となったのか。一言で言うなら
その理由は答えられる。だが、それは私の内の無念達を晴らす事が理由なので言うことは出来ない。だから拾われたからと言うしかない。
「私は元々キヴォトスに来た理由が分かりません。気付いた時には黒い服の先輩の仲間に拾われて、仲間入りしたというだけです」
「そうだったんだ……」
「勘違いして欲しくないのは、私はこう言った検診は無理矢理ではなく自ら必要性を感じて受けているものです。自分の再生能力が何処まであるのか、自分の体に異常がないのか…………それは知る事は大切な事なのです」
「でも……むくろさんはちゃんと苦しいって思っていた時期もちゃんとあるんだよね?……」
「苦しんでいた時期、ですか……分かりません。昔の事はよく忘れてしまいます」
「そう……なんだ……」
その時突如として私の頭に痛みが走る。余りの痛みに私はその場で蹲ってしまう。
「う……ぁ……が……」
「むくろさん!!!」
「あ……ぅ……」
「大丈夫!?!?」
「ぁ…………ホシノ……ちゃん?……」
それは以前聞いたことのあった声だ。覚えていないが、どういう訳か聞いたことだけはあった。
「なん……で?…………」
梔子ユメは最悪のタイミングで無理矢理私の体を使おうとしてきたのだ。これは非常に不味い。既に体の左半身は乗っ取られているのか私には何も見えない。ただ分かるのは、私の体はもう蹲っておらず立ち上がっていることだけだ。
「その……目は……声……は……」
「ホシノちゃん…………久しぶ」
ザクッ!!!
私はまだ乗っ取られていない右手で左目を潰し、視界を奪う。
「返せ!これは私の体だ!私が!無念を晴らすための!」
「っ!?」
私の中にいる無念達は私の意思を後押しし、梔子ユメの意識を押しのける。ホシノが息を呑む声が微かに聞こえたが、今はそれどころではない。
「嫌だ!折角……折角ホシノちゃんに会えたのに!」
「返せ返せ返せ返せ返せ!!!!!」
梔子ユメは抵抗するが、余りに悍ましい量の無念達を前にしては無力であり、梔子ユメは沈黙していく。
「ごめんね…………ホシノ……ちゃん……」
「ユメ先輩!!!」
「………………」
私は再び蹲った。どう誤魔化すか考えていたが、私は起きた事を知らないということにしておこう。そう決め、私は再び立ち上がった。
「何か……あったのですか?」
「えっ??????」
「どうして私の目は潰されているのですか?」
「それは……自分で潰したんじゃ???」
そうこう言っていると潰された目が再生する。目を潰した事で流れた血をハンカチで拭いながら、混乱するホシノを見る。視界が少しだけ赤いが大きな問題はない。
「…………本当に何があったのでしょうか?……」
「覚えてないの?……」
「いえ、急な頭痛で蹲っていただけの筈ですが?」
「えっ?????……」
「『トランス状態』の反動かもしれませんね。今日は遅いので、また明日会いましょう」
「え?あ、うん」
彼女は呆然としていたが、私はその場を去った。彼女が抱える精神的傷を癒やす事は先生の方が向いている。だから私はこれ以上の干渉はするべきではないだろう。私は帰り道の途中でシーシャを吸い、家に帰った。今日はユズキは友人の家に泊まると言っていたので、家には誰にも居ないはずだ。
「おかえりー」
「…………?????」
「どうしたの?その顔は」
「いえ、どうしてユズキさんが私の家に????……今日は友人の家に泊まると言っていなかったのですか?」
「それはね、私気付いちゃったのよ。衣食住を保障するって言われて食事が用意されないのはどうなんだってね」
「…………つまり?」
「友達が泊められなくなっちゃったみたいから夕食作って♡」
「…………はぁ……分かりました」
確かに契約書に書いてある内容ではその様に決められているため問題はない。が、口約と言えど基本的に自分で作るか買うかするようにしてもらっている筈なのだ。
まあ作る分には別に一人分増えるだけなので問題はない。
今日はピーマンの肉詰めとミネストローネだ。
「今日はピーマンの肉詰めですが、ピーマンは苦手ですか?」
「あ、大丈夫。流石にそれが食べられない子供じゃないよ?」
「いえ、トリニティのお嬢様は嫌いかなと思っただけです」
「私ヘルメット団員だよ???流石にピーマンは食べた事あるから」
「…………そうですか」
それを聞き、私はピーマンの肉詰めのタネを作り始める。
「今回は私も手伝うよ。別にこれは契約で決めてないし」
「………………ありがとうございます。ではピーマンを縦に半分に切って種とヘタを取って下さい。包丁とまな板はそこの引き出しに入っています」
「分かったわ!」
そう言ってユズキはまな板と包丁の入った引き出しを引っ張る。私は冷凍された合挽き肉を電子レンジに入れて解凍する。その間に玉ねぎを切っておかなければならない。これはユズキさんに任せよう。そう思ってユズキさんの方を見る。
「ユズキさんその持ち方は危ないですよ!」
「へっ!?」
ユズキはピーマンをガッツリ掴んで切ろうとしていた。そんな抑え方では何をどう考えても指を斬るだろう。
「切り方、知らないのですか?」
「っ!し、仕方ないでしょ!あんまこういうのやった事ないの!///」
「教えましょうか?」
「…………お願いします……///」
「……それでは持ち方は…………」
赤面するユズキに可愛いと思いながらも、ユズキに包丁の扱い方と切る物の抑え方を教えつつ玉ねぎをみじん切りにしておく。
「それではピーマンを切ってくださいね」
「分かったけど目が!目が!」
「…………先に目を洗って来ても良いですよ」
そしてユズキが目を洗いに行ったのを見て私は電子レンジから肉を取り出して玉ねぎ入れて加熱する。そして合挽き肉にパン粉、卵、塩胡椒を加えて混ぜる。
「ったー!むくろさんは痛くないの?」
「大丈夫です。私は半分人外なので」
「何それ怖!」
「タネ投げますよ?」
「真顔で言うのやめて?怖いって」
「それよりピーマンを切ってください」
そう言って私は電子レンジからみじん切りにした玉ねぎを電子レンジから取り出し、タネに混ぜる。粘り気が出て来たら混ぜるのをやめる。
「ピーマンの下処理は……」
「終わったよ!」
「それではタネをピーマンに詰めて下さい。その間にミネストローネを作ります」
そして私はキャベツを短冊切りにし、人参と玉ねぎをみじん切りに、ウインナーを輪切りにして小さな鍋に入れる。それをオリーブオイルと共に炒める。暫く炒めたら水を入れて煮る。
「肉詰めた!」
「ありがとうございます。ゆっくり休んでいて下さい」
「じゃ、お風呂入ってくるねー」
そう言ってユズキさんはキッチンを出て行ってしまった。私は一人でピーマンの肉詰めをフライパンで焼き、鍋にトマト缶の中身を入れ、更に火をかける。
「ふぃー……いい風呂だったー」
「食事が出来上がりました。一緒に食べましょう」
「お、ありがとー」
そしてピーマンの肉詰めを乗せた皿とミネストローネを入れたマグカップと米の入った茶碗を食卓に運び、私とユズキは夕食を楽しむ。きっといつしか家が用意出来れば終わってしまうが、それは何処か寂しい。私は知らない内にこの騒がしい生徒を気に入っていたようだ。
「どうしたの?ボケーッとして」
「いえ、ユズキさんがいなくなると家が静寂に包まれてしまうなと」
「寂しいなら寂しいって言いなよー。私は別にむくろさんちは自分の家みたいに思っているから」
「そこまで来ると図々しいですね」
「寂しいんじゃないの!?」
「いえ…………ですが貴方が家にいてくれたほうが私は嬉しいです」
「素直じゃないねー本当に」
そんな下らない会話を交わしながら食事を終え、私は風呂に入って眠った。
むくろが叫んだのは初めて催涙ガスを突っ込まれた時だけです。黒服サイテーっすねぇ!!!!