シャーレのむくろ君(不死身)   作:脱力戦士セシタマン

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 高校生で銃を持っている=ブルーアーカイブ

 ならば

 私=ブルーアーカイブ

 になります。

 つまり、私こそが『ブルーアーカイブ』だ!!!!


……実弾射撃疲え過ぎて前書きもう何書いてるか訳わかんね。




継接の形代

 

 

 私はいつものようにシャーレへ出勤し、アビドスへ行った。さて、そろそろカイザーコーポレーションの理事長と顔合わせする時期だろう。

 

 

 そして私達はカイザーコーポレーションが調査を進める基地へ向かっていくこととなった。折角だから連絡を入れても良かったかもしれないが、シャーレの先生側かカイザーコーポレーション側なのか、そこははっきりしておくべきなので連絡しない事にした。

 

 

「今日はちょっと遠出するよ」

 

「承知いたしました」

 

 

 そして私達は砂漠の真ん中へと向かった。

 

 

「そう言えば、むくろさんって殴るのに使ってる散弾銃ずっと整備してるよねー」

 

「これですか?……これはいざという時に撃てるようにしておきたいからです」

 

「撃たないのに?」

 

「接射じゃないと当たりません」

 

「ちょっ!下手くそ過ぎない!?」

 

「…………もしよかったら今度コツを教えて下さい」

 

「うへ〜……おじさんがいいかな〜?」

 

「ホシノ先輩は最早感覚で撃ってるんじゃないですか?」

 

「仕方ないわね…………私が教えて上げるわ!」

 

「ありがとうございます」

 

 

 なんだかんだで私はいつの日か射撃術を習うことになりそうだ。まあ、結局殴った方が早い事が多いのが悲しいところだが…………

 

 

「それから、これはシャーレの着任祝いとして貰った物の筈です」

 

「へぇ~、誰から?」

 

「誰か……それは……」

 

 

 ……思い出せない。でも、かつて関係のあった者から贈られたものの筈だ。これに関して覚えているのは…………そう、確か額縁の先輩経由で貰った。

 

 

「…………秘密、にしておきます」

 

「ん、ケチ」

 

「シロコちゃーん☆言い過ぎですよ〜」

 

 

 申し訳ないが、私は答えられないので誤魔化させてもらうことにした。しかし彼女らと、そして先生と話すというのは存外悪い気はしない。それと共に、少しだけ苦しさがあったのはどうしてなのか、今は分からなかった。

 

 

「皆さん!カイザーの兵士が近づいて居ます!」

 

「マジ!?むくろさんは下がってて!」

 

「……はい」

 

 

 とある地点からカイザーの兵士が襲撃してくるが、アビドスの生徒達は私が流れ弾を警戒する必要が無いほど次々倒して行く。ここは記憶が正しければカイザーの土地故にカイザーの兵士が襲ってきている筈だが、私は気にせず戦う様子を眺める。

 

 

「……みさ……至急…たちに……りゅう…………」

 

 

 突如としてオペレーターとの通信が途絶える。どうやら電波妨害までしてきたらしい。かなり本気で殺しに来るようだ。更には兵士達の包囲がかなり固まってきていたので、私はいざという時にせめて先生だけは担いで逃げられるよう準備はしつつ、様子を伺っていた。

 

 すると兵士が道を開け始めた。まるで誰かが通るかのように。

 

 

「侵入者と聞いて焦ったが、まさかアビドスだったとは…………」

 

「な、何よこいつ……」

 

 

 カイザーコーポレーションの理事長はアビドス廃校対策委員会の前に姿を現した。

 

 

「勝手に人の私有地に入り、暴れたことによるこれらの被害額、人的被害……君たちの学校の借金に加えても良いのだが……まぁ大して金額は変わらないか……」

 

「……あんた、あの時の……」

 

「……確か、例のゲマトリアが狙っていた生徒会長…………いや、副会長だったか……ふむ、いいアイデアが浮かんできたな……便利屋かヘルメット団を雇うより効率が良さそうだな…………」

 

「便利屋?な、何を言って……」

 

「……あなたは、誰なんですか?」

 

「……まさか私のことを知らないとは……まったく、子どもらしく無知なものだな、アビドス。君たちなら、よく知っている相手だと思うがね」

 

「お久しぶりです。理事長」

 

「むくろ…………まさか貴様がそちら側にいるとはな」

 

「むくろ……さん?…………」

 

 

 ホシノが何か信じられない物を見たような目でこちらを見ているが、気にせず挨拶する。

 

 

「むくろ君、知ってるの?」

 

「はい。このお方はカイザーコーポレーション、カイザーローン、カイザーコンストラクションの理事長を務めている方で、最近はカイザーPMCの代表取締役も兼任し始めた方ですね」

 

「!…………」

 

「嘘……」

 

 

 対策委員会の皆や先生は衝撃的と言わんばかりの反応をするが、私は気にせず理事長と話す。理事長とは協力関係を結んでいる。デカグラマトンという脅威に備えなければいけないのは私もゲマトリアもカイザーコーポレーションも同じであり、デカグラマトンに関する情報共有をしている。私は様々な情報を貰う代わりにデカグラマトン出現時には私も戦闘に参加する事になっている。

 

 破格の条件にも見えるが、それほどまで私の力は異常であり、最早生徒の体の一部だけ貰えれば出せる力としては破格だろう。

 

 そして彼らが探す『お宝』。これは色彩の襲撃に備え必要な物としてカイザーに情報を渡し探してもらっている。情報料として色彩襲撃時は私の所有物となるが、それ以外は自由に使ってもらうつもりだ。まあ、十中八九ゲマトリアの諸先輩方があの手この手で回収するオチが見えてはいるのだが。

 

 

「しかしむくろ、何故私に連絡しなかった?」

 

「そうですね……私はあくまでシャーレに所属する人間である事を示しておきたかったからです」

 

「そうか……残念だ。この件でお前ほどの力を持つ人間がカイザーの味方になってくれないとはな」

 

「申し訳ありません…………」

 

「別にいい。ただし、契約は守ってもらうぞ」

 

「勿論です。調査の方はどうでしょうか?」

 

「進捗はなしだ」

 

「左様ですか。ありがとうございます」

 

「むくろ君、理事長とはどういう関係なの?」

 

 

 先生は理事長とよく話す私を見て疑問に思ったらしい。

 

 

「理事長、と言うよりカイザーコーポレーションと緊急時に戦力として協力する契約を結んでいるだけです。その時に話したのがこの理事長だったというだけです」

 

「その緊急時ってどういう時なの?…………」

 

 

 シロコが恐る恐る聞く。恐らく何かあった時に私が敵になる事を恐れて言ったのだろう。特に私の『トランス状態』を見れば敵に回った時に勝ち目が感じられなくなるだろう。

 

 

「科学で説明が出来ないような未知の存在、或いはキヴォトスを滅ぼしかねない危険因子が現れた時です」

 

「ん、よかった……」

 

 

 シロコは安堵した様にそう返す。

 

 

「今はそんなのどうでもいい、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことで良いね?」

 

「……ほう」

 

「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまでずっと私たちを苦しめてきたのがあんたって事でしょ?」

 

 

 ここからは私の出る幕ではないので先生を守れる位置まで下がることにした。対策委員会は理事長と話しているが、私から話すことはないので私は見守ることにした。借金が増えただのどうだので理事長はかなり大人気ない事をしていたが、私にはどうでもいいことだ。

 

 

「………みんな、帰ろう」

 

 

 どうやら帰るみたいだ。私は理事長に別れ位は挨拶しようと前に出る。

 

 

「ほう……副生徒会長、さすがに君は賢そうだな」

 

「…………」

 

 

 私は少し嫌な予感がした。理事長は人を見下した態度があるのでこのあと梔子ユメの罵倒でもされれば暴れるかもしれない。一応、私は備えておく。備えておくに越したことはないだろう。

 

 

「……ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもって馬鹿な生徒会長のこともな……」

 

『!!!!』

 

 

 その予感は的中し、その言葉を聞いた瞬間左腕が銃を勝手に肩から下ろし振ろうとしていた。それを右腕で無理矢理抑え、内から湧き上がる梔子ユメの怒りを抑え込む。

 

 

「どうした!」

 

 

 理事長の声が聞こえ、多くの気配を感じた。恐らくは暴走の危険性を考慮して兵士に銃口を向けさせているのだろう。梔子ユメの瞬間的な怒りが収まり、左腕が勝手に動かなくなる事を確認したら右手を上げ問題ない旨をアピールする。

 

 それが伝わったのか顔を上げると取り囲んでいたカイザーの兵士が銃口を下ろしており、私はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「全く…………むくろの暴走癖は心臓に悪い」

 

「癖じゃないです。と言うか心臓ないでしょう?」

 

「暗喩だ。バカにも程があるぞ」

 

「そろそろ別れです。また」

 

「あぁ。君たちが足掻く姿を見るのは滑稽だったよ。保証金と来月以降の返済についてはよろしく頼むよ。お客様」

 

 

 私の事を信じられない物を見たと言わんばかりの目でホシノは見ていたが、気にせず私は踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スゥー………

 

 

 私は先生がアビドスに遅くまで残るそうなので私も残る事にした。黒い服の先輩から連絡があり、どうやらホシノは黒い服の先輩の条件を飲んで借金を減らすらしい。と言うことは、今頃先生に退会証の事を詰められている頃合いだろう。そう思いながら、私はシーシャを屋上で吸いつつ空を見ていた。

 

 

「へぇ~、むくろさん水タバコ吸うんだね〜。意外とワルイとこあるんだね〜?」

 

 

 怒気の満ちた声で誰かが話しかけてきた。声の主は見ないでも分かっていたが、ホシノだった。

 

 

「……どのような要件で?」

 

「もう分かってるよね?」

 

 

 ホシノがどうしてここまでキレているのかよく分からなかった。

 

 

「なんのことです?」

 

「しらを切るつもり?むくろさんはさ…………」

 

 

 私はホシノの次の言葉を聞いて思わず目を見開いた。

 

 

「どうしてむくろさんはユメ先輩の事を隠してたの?」

 

 

 どうしてその結論に至ったのか。何故ユメ先輩まで行くのか。私は理解できなかった。黒い服の先輩が理解不能な時に『何故何故何故何故何故何故何故?』と言う理由が分かった気がする。

 

 

「…………どうしてその質問に?」

 

「むくろさん、今日左手が勝手に動いてたのなんとなく予測してたよね?じゃなきゃあんなに早く対応出来ない」

 

 

 最早私が暴走するのは前提な事が少し悲しいが、私はあの時暴走を抑えるので手一杯だった為にそこまで気を回せなかった。完全に私のミスだ。

 

 

「…………つまりそれであの時の事を覚えていると判断したのですね?」

 

「そう。だから答えて?」

 

 

 本当は素直に答えるべきなのだろう。だが私にとっても未知の連続であり、分かっていることを話すとしても私の無念達について説明しなければならない。

 

 

「…………答えられません」

 

「どうして?……」

 

「…………」

 

「ねぇ……答えてよ!!!!」

 

 

 ホシノは私の胸倉を掴み引き寄せる。ホシノの身長故に必然的に私は覗き込むような形になる。そして私の目の前の瞳は完全に敵を見据えていた。ホシノの目は何処までも憤慨しており、無念達に近しい物を感じた。

 

 

「…………これは話せません」

 

「……そうだよね……悪い大人っていつもそう。残念だよ。むくろさんは違うって思ってたのに」

 

 

 ホシノはそう呆れた様子で手を離す。私は襟元を正しながら話す。

 

 

「……私だけ悪い大人扱いなら構いません」

 

「?」

 

「ですが、先生は違います。彼は生徒を救うためなら損得勘定抜きで動ける、良い大人です。そこだけは留意して欲しいです」

 

「…………そう」

 

 

 私のなかにいる無念達は私の悍ましい本性そのものであり、それ故に話せないのは必然だ。だから、許してほしい。せめて彼女が私の事を嫌悪したとて、先生だけは嫌悪しないで欲しかった。あの人は本当に生徒思いの素晴らしい人だ。だから暴力装置のような私は先生を守り、補佐する事しか出来ない。

 

 私は生徒の為を思える存在ではないから。

 

 そして私は屋上から教室へ戻り、先生と共にシャーレへ帰った。私はシャーレでの仕事を終わらせてから家に帰った。少し遅い時間になってしまったから、きっとユヅキは寝ていることだろう。

 

 

「おかえりー」

 

「…………寝てないのですか?……」

 

 

 家に帰ると、ユヅキは私の家に置いてあるゲーム機で遊んでいた。

 

 

「いーじゃん別にー。ちょっと夜更かししてみたくなってさ」

 

「…………仕方がありませんね」

 

「さて、むくろさんも帰ってきたことだし夜食にしよー!」

 

「……夕飯は食べました?」

 

「……タ、タベタヨー」

 

 

 ユヅキの目が泳いでいるので完全に黒だろう。

 

 

「ユヅキさん。育ち盛りなのですからきちんと身体を労って下さい」

 

「ぶー……契約にはないじゃーん」

 

「………………確かにそうですね」

 

 

 そう言って私はカップラーメンを棚から取り出し、お湯を沸かす。

 

 

「カップラーメンは何味がいいですか?」

 

「作ってくれるの?じゃ、味噌で」

 

「それは私が食べたいやつです」

 

「え?味噌もうないの?」

 

「多分1個しかないですね。仕方がないので私は塩にしておきます」

 

「あーい」

 

 

 ユヅキはゲームに戻り、私はお湯が沸き上がるのをぼんやりと眺めていた。

 

 

「そう言えば、むくろさんって何かほしい物ある?」

 

「欲しい物ですか?……ないですね……」

 

「え〜?なんかないのなんか」

 

「…………まさかプレゼントか何かで私に渡すつもりですか?」

 

「ギクッ!」

 

 

 どうやら図星のようだ。だが私に聞くのはそう思っても仕方ないので容赦なくツッコませてもらう。丁度言わなければいけない事があったからいいだろう。

 

 

「…………ユズキさん。貴方は契約内容に従っていれば良いのです。私は契約内容に従った行動を取っているだけなので」

 

「いや、そうだけどさ……契約内容とは言えここまで良くして貰ってるならなんか返したいなって思ってさ……」

 

「左様ですか…………ならば一つ頼みがあります」

 

「え?なになに?」

 

 

 ユズキは私が滅多にしない頼み事に興味津々だ。だが伝える内容は余りに残酷だった。

 

 

「私は脳が物理的に破壊されると記憶を失います」

 

「へー………え????」

 

「なので私が記憶を失った状態で帰って来た時、契約書を私に見せて下さい。それで命は保証されると思いますので」

 

「分かったけど……さらっと重いこと言ってない!?」

 

「私のことは良いのです。ユヅキさんの身を案じて伝えておきたかったので」

 

「そっか……」

 

 

 ユズキは不服そうだったが湯は沸騰しきった。私は2つのカップラーメンにお湯を注ぎ、タイマーをつけた。

 

 

「でもよく思うけどさ……むくろさん、もう少し肩の力抜かない?いい加減敬語辞めてほしいんだけど」

 

「敬語ですか……」

 

「ほら、別に居候にまで敬語使うことないじゃん」

 

「貴方、居候と言う自覚があったのですね」

 

「あったけど酷くない?」

 

「いえ…………そうですね……」

 

 

 確かに、ユヅキの言うことも間違っていない。正直私はプライベートと仕事を分けるタイプではあるが、ユヅキはまだ仕事相手と言う感覚が何処か残っている。

 

 

「それは…………まだ出来ません。ですが、いつかは敬語出なくとも話せるようにはします」

 

「もしかして、敬語以外話せない感じ?」

 

「……恐らくはそうなのかと…………」

 

「大丈夫?日本語学校行く?」

 

「それは丁重にお断りさせていただきます」

 

 

 そして私とユズキはカップラーメンを楽しみ、その日はシャワーを浴びて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝、無事ホシノは黒い服の先輩の元についたらしい。

 

 黒い服の先輩の探求が進んだ事を電話で祝いつつ、私は黒い服の先輩にシャーレにつくものとして敵対せざるを得ない可能性がある旨を伝えた。

 

 

「安心してください。何かあっても少し痛めつけるだけで済ませます」

 

「その痛めつけるは信用出来ませんが全力で手加減して下さいね?」

 

「全力で???分かりました……先輩がそうおっしゃるのなら」

 

「いえ、言い方を変えましょう。子猫を殴る程優しくお願いしますね」

 

「それは無理です。先輩は猫ではないので。ですが先輩も可愛い所があるので手加減頑張ります」

 

「それは褒めてると取っておきますね?」

 

「褒めてますよ。それではお時間なので」

 

「あぁ、一つ言い忘れていました」

 

「……なんでしょうか?」

 

「机の上に置いてある黒い封筒をカイザーを撃退出来たのなら渡して下さい」

 

「…………分かりました」

 

 

 私は黒い服の先輩が私を驚愕させようとこういう事をしてくる。私はその程度ではリアクションを見せないから意味はないが、恐らく私の家に不法侵入したと思われるので次会った時は『お巡りさんこいつです』とでも言ってイジろう。

 

 そして電話を切った私はシャーレへと出勤し、アビドスへと向かった。アビドスへ着くと葬式のような雰囲気だった。どうやらホシノは置き手紙を残していたようだ。

 

 

「ホシノ先輩!!!!」

 

 

 セリカの余りの声の大きさに両耳を塞ぐ。銃声には慣れているが、セリカの高い声で声量が大きくしかも限りなく耳元に近かった為だ。

 

 さて、こうなると黒い服の先輩が言っていたようにカイザーPMCが攻めてくるだろう。

 

 

ドガーーーーン!!!!

 

 

 やはり攻めて来た。私達は市街地に向かう事になった。私のやるべき事はカイザーの兵士を殺すことだ。市民の命が脅かされている関係上、アビドスの皆と足並みを合わせていては間に合わない。私は左手の母指球辺りを噛み、走り出した。今は時間がない。一張羅と眼鏡は諦めることにする。

 

 

「むくろ君!待って!!!」

 

 

 そして先生の静止を聞かず私は市街地へ駆け出した。

 

 

 市街地にはかなりの数のカイザーの兵士がおり、それを次々と破壊する。

 

 

「や、やめてくれ!!!」

 

「とっとと出ていk」ミシャッ!!!

 

「…………あ、貴方はシャーレの補佐官!?」

 

「…………」

 

 

 私は気にも留めずカイザーの兵士達を鏖殺していく。腹が穿たれ眼鏡諸共顔を破壊されようと、私はカイザーの兵士達に破壊の限りを尽くす。

 

 

『私も……私も戦いたい!』

 

 

 その途中、梔子ユメの声が私の内でそう言う。私は話を聞きつつ周囲のカイザーの兵士をそこら辺に落ちている石や銃弾を投げて蹴散らす。

 

 

『私は……ホシノちゃんを守りたい!』

 

『そうですか。私もです』

 

『!』

 

『私に案がありますが、貴方にも反動が来る方法です。それでも良いのですか?』

 

『大丈夫だよ!ホシノちゃんの為なら!』

 

『今はお待ち下さい』

 

『分かった!』

 

 

 そして梔子ユメは鳴りを潜め、私はカイザーの兵士の殺戮に専念する。

 

 

「ほ、補佐官だ!」

 

「小さな死体巨人が来やがった!」

 

「嫌だ……死にたくない!」

 

 

 カイザーの兵士はうだうだ言っているが、石を投げて牽制しつつ距離を詰める。

 

 石とは原始的で尚且つ強力な武器である。

 

 

バキッ!!ミシャッ!!!

 

「ヒッ……」

 

ガーン!!!

 

 

 私は1体を銃床で叩き潰し、すぐ近くの兵士をホームランする。すぐ近くに怯える猫の市民がいるが、気にせず去ろうとする。

 

 

「ま、待ってくれ!あんたシャーレの補佐官だろ!この崩れた家の下に私の妻が居るはずなんだ!」

 

「…………分かりました」

 

 

 そう言って私は瓦礫の山を軽々持ち上げ、辛うじて隙間にいた為に軽傷で(と言っても気を失っている)済んだ猫の市民を持ち上げ、夫らしい人に渡す。

 

 

「気を失っていますが軽傷です。早く病院へ」

 

「あ、ありがとう!」

 

 

 そして私は、すぐにその場を離れた。

 

 

『人気はないですね…………ユメさん、起きてますか?』

 

『うん。それで、どうするの?』

 

『貴方は私の中にいる無念達を知っているでしょう?欠けた魂を貴方の魂で補って五体満足の状態で戦えるようにします』

 

『それって私戦ってなくない!?』

 

『いえ、貴方の魂と私の魂がフュージョンしていると言う感覚が近いかもしれません』

 

『そっかー……じゃあお願い!』

 

『まあ、きちんと出来るかはまだ分からないので一応気は抜かないで下さい』

 

『おっけー!』

 

 

 そして私は梔子ユメも覚醒させるようなイメージで、左手の母指球辺りを噛み出血させる。出来るかどうか覚えていない。でも、出来る確信は何故かある。

 

 

 

「痛っ…………これで大丈夫」

 

 

 

 私の中にいるユメに語りかけるように、私はそう言う。私は…………そうだね、『継接ユメ』そう思っておこう。合体したなら苗字を使ったほうが丁度いい。

 

 

「さて……カイザーの兵士を…………っ!!!」

 

 

 突然私の存在しない右眼に痛みが走る。まるで再生されているかのような感覚だった。

 

 

「もしかして…………」

 

 

 恐る恐る私は眼帯を取る。すると再生するはずの無い右眼が再生していた。まさか魂が一時的な補修と言えど完全な形を持っているからなのかもしれない。私は魂の形こそ分からないが、体の感覚でそのような感じがした。

 

 ふと近くの割れた鏡を見ると、右眼は梔子色になっており左眼もどんな汚い水よりも濁った焦茶色の瞳に抵抗するような、何処か目に光があるような気がした。視界は左眼はぼやけているが、右眼ははっきりと世界を写していた。

 

 

「よし、行こう」

 

 

 そして私は市街地を駆け回った。後ほど先生から聞いた噂によると私は『シャーレの補佐官は副業で補佐官をやっており本職は某フィジカル最強ヒーロー*1』と揶揄されるレベルの暴れっぷりだったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アル!右の障害物にハードボイルドショット!シロコは高速連射!」

 

 

 今、私こと先生はカイザーPMCを撃退するべく対策委員会&便利屋68を指揮している。まさかあのタイミングで便利屋68が来てアルが一喝してくれるなんて思いもしなかった。

 

 でも依然として兵力差は大きく最後の切り札のむくろ君も市街地の方へ走ったっきり合流しない。むくろ君なら大丈夫だと信じているけど、何かあった時に心配だ。

 

 

「ゴリアテを出せ!」

 

「皆気を付けて!」

 

 

 こんな時にむくろ君がいてくれたなら、そんな事を思ってしまう。

 

 

「もう何なの!あの朴念仁はどこに行ったの!!!」

 

「ん、分からない、でも頼るのは駄目。あの人の力に頼り過ぎると私達だけで守れなくなる」

 

 

 セリカが意外と『朴念仁』と言う難しい言葉を知っている事に内心驚いた。だけど、シロコの言う通り私はむくろ君に頼り過ぎていたのかもしれない。むくろ君は危険を顧みずに私の為に頑張ってくれるし、書類仕事もむくろ君が私が目を通さなければいけない物以外は全て終わらせてくれる。お陰でどうにか毎日12時を回る前に帰れていたな。

 

 いや、今はそんな事はいい。むくろ君ならそう言う。私の出来る事を、私のするべきことをしよう。

 

 

「皆さん!とんでもない速度で何か飛んできます!これは……えっ!?!?!?」

 

「どうしたの!?アヤn」

 

 

ドゴーーーーン!!!!

 

 

「何だ!何が起きている!増援か!!!」

 

「えっ?何これ………………オートマタ!?!?!?」

 

「そ、空からオートマタが……」

 

 

 突然遥か上空から何かが降ってきた。煙が晴れるとそれはオートマタだったが、そう言えばこれぐらい人を吹き飛ばしている光景を見たことがある気がする。

 

 

「ん、こんな事出来るのは一人しかいない」

 

「また何か飛んできます!これはまさか!!!!」

 

 

ドゴーーーーン!!!!

 

 

 その飛んできた何か……いや、その人は私達に最も近いオートマタ辺りに着地した。そして煙が晴れるとそこには血の染み付いたボロボロのスーツを来た男が散弾銃をバットを持つが如く持って立っていた。

 

 

「助けに来た!先生!」

 

 

 むくろ君はそう言って、両目で私達の方を見た。

 

 

*1
ワで始まるあのヒーロー






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