シャーレのむくろ君(不死身)   作:脱力戦士セシタマン

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評価9貰って大歓喜している最中に評価1渡すのやめてもろて。筆者の心壊れちゃう。


継接むくろ


【挿絵表示】



ラフ画っぽいけど描いたよ。筆者疲れたよ。



守り抜いた物と、失った物

 

 

 次の日、私はシャツとスポーツタイツに身を包み、歪んだ散弾銃を背負い新たに買った拳銃を手にホルスターに入れ、家の玄関の扉に手をかける。

 

 

「むくろさん、私も戦う」

 

 

 振り向くと、ユズキが銃を持ってヘルメットを被っていた。

 

 

「駄目です」

 

「なんでぇ!?」

 

「私は単騎で大軍を相手します。貴方が来たら私か大軍に轢き殺されるのがオチです」

 

「なんか私弱い扱いされてない!?」

 

『え?ちょまっ……私達大軍相手にするの!?』

 

 

 梔子ユメが驚いているが完全にスルーする。

 

 

「トリニティのお嬢様は前線に出ないで下さい。貴方は私に血を渡しているだけで良いのですから」

 

「むぅ………」

 

「ふふっ……やはり可愛いですね」

 

 

 不服で頬を膨らませている姿に、思わず本音が出てしまう。もしかしたら、私は情緒が普通の人間に近付き始めているのかもしれない。ユズキは可愛い、きっとそれは今より前に…………いや、初めて会った時から思っていた。それを言葉にできるようになったのは、大きな進歩と言って良いのかもしれない。

 

 

「えっ!?それ死亡フラグじゃない!?むくろさんの口から出る言葉じゃないって!」

 

「やめてください。私は死にませんが」

 

「はぁ……分かった分かった。じゃ、これだけは守って!」

 

「……何でしょう?」

 

「何事もなく帰ってきて!」

 

「…………善処します」

 

 

 そして私はアビドス高等学校へ向かった。

 

 

「むくろ君……君は単騎で戦うことになるけど、むくろ君なら大丈夫って信じてるよ」

 

「お任せください。私がやられることなど到底あり得ません。最悪『トランス状態』を切ります」

 

「大丈夫だと思うけど、無事で帰ってくるのよ!!!」

 

「ん、むくろさんは死なないし最悪負けても帰ってくる」

 

「むくろさんが負ける未来なんて見えませんが……」

 

「私達は大丈夫だと信じています☆ホシノちゃんを絶対に救い出しますよ!」

 

「勿論です。それではまた全てが終わったら会いましょう」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 私が相手にするのは北方の対デカクラマトン大隊だ。正直私はここの戦力は可能な限り削りたくはないが、撤退を許せば別に大丈夫だろう。最悪ビナー1体なら1人でもやれると思われるので、取り敢えずは暴れるだけだ。

 

 

『ユメさん……行きますよ』

 

『うん!』

 

 

 私は砂漠の真ん中に立ち、左手の母指球辺りを噛んで出血させる。そして眼帯を外し左手に拳銃を持つ。私が今回弾が当たらないと言っておきながら拳銃を持ってきた理由だが、昨日の仕事終わりで帰る途中色々試した結果、ユメの魂が混ざっているためか射撃がある程度当たるようになっていた。当たるようになっていたなら使わない通りはない、という話だ。

 

 

「さて…………そろそろ来ますか……」

 

 

 砂漠の遠くから大軍が見える。私は右手に散弾銃を握り、大軍へ向け走り出す。

 

 

「来るぞ!」

 

「対デカグラマトンの予行演習だと思え!」

 

 

 どうやら向こうは私をデカグラマトンと同等の化け物たと思っているらしい。心外だが言いたい事は分からんでもないしあながち間違いでもないので、私は気にせず地面をサッカー蹴りして広範囲に砂を撒く。私の力ならかなり広範囲に撒ける。

 

 

「っ!」

 

「何処に行った…………!」

 

「グワッ!!!」ガン!!!!

 

「何が……ぐっ!!!」ゴスン!!!!

 

 

 私は音を頼りに敵を探し、散弾銃の銃床をいつも通り叩きつけ、気絶に留める。物によっては頭が凹んでいる兵士もいるが気にせず叩きに行く。

 

 

ガキン!!!

 

 

「危なっ!」ガシッ!「!?」

 

 

 殴りを防いだオートマタもしっかり掴んで地面に埋める。戦車もここまで来ると無力だろう。出来れば戦車は中の兵士をぶん投げて無力化したい。

 

 

「居たぞ!!!!」

 

「次砂を出してきたらサーマルを起動しろ!」

 

 

 どうやら砂はもう風で流されてしまったらしい。同じ手は通用しないと見て、今度は倒れた兵士をぶん投げて無力化させる。

 

 

「ふん!!!!」

 

「速っ!!!」ゴン!!!!

 

「囲め!相手は一人だ!」

 

 

ダンダンダン!!!

 

 

「うわっ!!!!」ガン!!!

 

「うわぁ!!!」ゴンギンガンドンガラガッシャーン!!!

 

 

 私は拳銃で牽制しつつ距離を詰め、盾の上から蹴って吹き飛ばし纏めて倒す。訳の分からない速度で詰めてきているのだから反応も出来ず、蹴った先にいた兵士や戦車、盾となるはずの障害物すらも巻き込む。

 

 

 ダダダダダダ!!!!!

 

 

 いい加減私の速さにも慣れてきて、兵士達が弾幕を張られ始めている。ならば丁度ガトリングをぶっ放すヘリもハッピーセットでやって来たので、落ちている兵士の銃をヘリに向けてぶん投げる。

 

 

「危ない!!!」

 

「ギリギリ回避…………うわーっ!!!」

 

「何が起きて……!」

 

「どーもー」

 

「ヒッ……」

 

 

 私は投げた銃を囮にヘリに飛び乗り、ガトリングマンを落とす。折角ならとガトリングを撃って地上の兵士や他のヘリを落として行く。まあ、投げた方が倒すのが早いがこれに関してはやってみたかっただけである。

 

 

 ダン!!!!

 

 

「痛…………」

 

 

 私はガトリングから手を離し即座に撃ってきたパイロットに掴みかかる。

 

 

ガシッ!!!!

 

「操縦しながら当ててくるなんて…………凄い」

 

「…………この化け物め!!!!」

 

 私はパイロットを手刀で気絶させ、制御を失ったヘリから離脱する。

 

 

ドオーーーーン!!!!

 

 

 着地したらパイロットを寝かせる。まさかここまで練度が高いとは思わなかった。『形代状態:梔子』で強化されている私に、傷を負わせられるとは思っても見なかったからだ。やはり彼らは対デカグラマトン部隊に相応しいと認識を改め慢心を捨てなければならない。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ………………

 

 

「今度は何なんだ!!!!」

 

 

 突如として地面が揺れる。嫌な予感がする。これは恐らくデカグラマトンのビナーだろう。

 

 

ドオーーーーン!!!!

 

 

 遠くで砂が爆発し地面から巨大な蛇と鯨のハーフのような機械が現れる。そしてこちらを見て止まっていた。

 

 

「何だあれは!」

 

「デカグラマトンの1体です。これは一時的に手を組むべきかと思います」

 

「お前……さっきまで襲ってきていたのにか?」

 

「あくまで私は契約に従っているだけです。それにデカグラマトンという脅威に対処する必要があるのは同じです」

 

「…………分かった。仲間に連絡する」

 

 

 私はリーダーらしき兵士に話し、共闘を頼み込んだ。これは契約の履行の為だが仲間がいるに越したことはないだろう。脅威に対しては出し惜しみなどせずリンチ出来るならするべきである。

 

 

「…………よし、お前は今から一時的に仲間だ」

 

「よろしくお願いします」

 

「だがどうやってやるつもりだ?補佐官さんよ」

 

「そうですね…………」

 

 

 ビナーは確か小塗マキが有効打のはずだ。彼女の戦闘での特徴は…………そう、デバフだった。しかしデバフはそういう事が出来そうなのがいないので却下。出来るとするなら…………

 

 

「私では流石あの装甲を破るのは厳しいです。あのデカい口に砲弾をツッコめれば…………」

 

「成る程な…………確かにそれならやれるかもしれん」

 

「装甲の隙間も一応狙っては見ます。ですがあまり期待はしないで下さい」

 

「んで…………どうぶち込むよ。あんなデカい奴の動き止められる奴なんて……………」

 

「…………こっちを見てどうしました?」

 

「お前、止められるか?」

 

「無理です……ですが注意を引く位ならば」

 

「なら………………」

 

 

 そして作戦を聞いた後、私はビナーの方へ走り出した。

 

 

「ごぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 ビナーは猛々しい咆哮を上げ、私に向かって来る。もしかしたら私が目的でここに来たのかもしれない。ビナーは私に向かいながら向けミサイルを飛ばして来た。私はミサイルの爆風を受けないよう全力で地面を蹴り回避をする。そしてビナーの懐を掻い潜り、跳躍した勢いで散弾銃で殴ってみる。

 

 

ガキン!!!!

 

 

「ガッ!!!!」

 

 

 ビナーは衝撃のあまり怯むが装甲は凹むどころか私の散弾銃の方が少し凹んだ。私の形代状態:梔子で殴って凹まないとはどんな装甲なのだろう。まあいい。今は一先ず所定の場所まで引きつければいい。

 

 

 

ドドドドドド!!!!ドンドンドン!!!!

 

「怖いですね」

 

 

 ビナーは相変わらず私を何処までも追いかけて来る。ビナーはただ追いかけるだけでなく尻尾やレーザーを向けて来るが、私はそれを左右に跳びながら誘導して行く。

 

 

「ここですね…………ふん!」

 

「ガァッ?」

 

「はっ!!!」

 

 

ガキン!!!!

 

 

 そして私は所定の位置にて踵を返し、跳躍する。そして私はビナーの頭をぶん殴って地面に叩き付け、ビナーの目の前に戦車部隊が来るようにしてビナーのレーザー攻撃を誘う。私は反作用で上空まで吹き飛ぶが、着地も何とかなる筈なのでよく見える右眼で見守ることにする。ビナーは私の誘いに乗るように口を開き、口内が光り始める。

 

 この状態で戦車の弾がねじ込み、口の中で爆発を起こして殺るという作戦だ。

 

 

「ガァァァ!!!!」

 

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!

 

 

 だがその前に、ミサイルが私に向け飛んで来る。私はミサイルを迎撃する為に拳銃を取り出し構える。右手の散弾銃も上下2つの銃身に根元から弾を込め、珍しく撃てるようにして構える。

 

 

ダンダンダン!!!!

 

 

 私は拳銃と散弾銃を放つがミサイルには当たらなかった。まさか昨日当たったのは偶然なのかと思いながら身構えていた。しかし私にミサイルが当たることはなく下へ向かった。

 

 ミサイルは私を狙ってはいない?…………まさか!!!!

 

 

「ミサイルがっ!!!!」

 

「ガトリングで迎撃だ!!戦車を死守しろ!!」

 

 

 ドンドンドン!!!!

 

 

 対デカグラマトン部隊にミサイルが降り注ぐ。どうにか飛ぶヘリ達のガトリングが幾つか迎撃するものの、不意打ちで振ってくる事や余りの数の多さにより戦車部隊に大きな被害が出てしまう。

 

 そしてビナーは対デカグラマトン部隊は自身を止める力を失ったと見たのか私に光がより強くなった口を向けて来た。

 

 

「一か八かですか!!!」

 

 

 私は無理矢理拳銃に神秘を込める。空中でレーザーを突っ込まれれば回避不能で細胞一つ残らず焼かれるのが目に見える。そうなったら本当に死ぬかもしれない。

 

 神秘の込め方は分からない。でも、何となくこもっている気がする。きっとユメの魂の方が何とかしてくれているのだろう。

 

 

「当たれぇ!!!!」

 

 

 そして放たれた弾丸はビナーの口内を穿ち、大爆発を起こす。ビナーは倒れ伏したが、すぐに体を起こしていたので致命傷とまでは至っていないのだろう。

 

 

「補佐官!すまない!」

 

「気にするな!」

 

 

 私はリーダーと話しながら着地し、ビナーにどうトドメを刺す場合良いか考えていた。

 

 

「何?通信妨害だと!?」

 

 

 電波妨害?ビナーがしているのか?…………ふと空を見れば天候が急激に悪化していた。すぐに風が嵐のように強くなり、雷が鳴る。

 

 雷に嵐…………異常な電波妨害…………

 

 

「まさか!!!!」

 

 

 それは、よりにもよって今来てしまった。それは私の中のユメの力の出力が上がったからなのかは分からないけれど、最悪のタイミングである事は確実だった。

 

 

「ごぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

「セトの憤怒……!」

 

 

 私からそう遠くない位置に現れた、宙を浮く巨大な物体と雷で構成されたかのような色合いの手と翼を持つ異形の巨人は、私の方を向き咆哮した。

 

 

「よりにもよって!!!!」

 

 

 私は余りの焦燥に悪態をついてしまう。だが今回余りに相手が悪すぎる。しかもビナーを仕留めきれていない状況下尚且つ対デカグラマトン部隊も私との戦闘とビナーにやられた分含め数が減らされており、最早不利状況を通り越し絶望的な状況だ。

 

 

 だからどうした。

 

 

 こんな所で留まるわけには行かない。

 

 

「私は飛んでるのを殺ります!皆さんはビナーの足止めをお願いします!!!!」

 

「分かった!!出来る所まで足止めする!!!!」

 

 

 私は近くの兵士にそう言ってセトの憤怒の方へ走る。

 

 使いたくはなかったが私は『トランス状態』になるつもりで左手の母指球辺りを噛む。無理矢理『トランス状態』になった事で『形代状態:梔子』だったのであろうが何だろうが反動は確定で襲いかかる。寧ろ『形代状態:梔子』と併用している為に相当な負担がかかっているが故に反動での廃人コース待ったなしだろう。最早アビドス高等学校の思い出は捨てざるを得ない。

 

 悲しい。だが、それどころではない状況故に私は動き出す。

 

 

ゴロゴロ……ドォーーン!!!!ドォーーン!!!

 

「…………」

 

 

 セトの憤怒は雷を落とし私を確実に殺しに来るが、それを全て第六感とも言えるような勘で避け切る。

 

 

ごぉぉぉっ!!!!

 

「っ!」

 

 

 セトの憤怒はそれに対して暴風を飛ばし、セトの憤怒を追う私を吹き飛ばして引き離す。

 

 

「!………」

 

 

 それでも私は地面を蹴り、セトの憤怒の方へ走る。だが今度は暴風も音を聞き離されないようセトの憤怒に向かう。セトの憤怒は自身を包むように竜巻を発生させて防壁とする。だがそんな物は私の前で意味はない。私は竜巻を無理矢理突破しセトの憤怒を捕らえる。

 

 

「!?」

 

「…………」

 

 

 そして私は散弾銃で全力で殴打する。

 

 

ガァァン!!!!

 

 

「!!!!!!」

 

 

 セトの憤怒に一撃与える。『トランス状態』の全力殴打故セトの憤怒は大きく怯むが、それを見逃さず私は左手でぶん殴り、おまけに蹴りも加える。

 

 

「ゴォォォォ!!!!」

 

 

 セトの憤怒は苦し紛れに暴風で私を飛ばし雷を当てようとするが、私には当たらない。セトの憤怒はその代わりか後ろへ逃げようとするが、私は追いかけ走る勢いのままに殴ろうとする。

 

 

バチバチッ!!!!

 

 

 が、私は雷の音を聞き直ぐ様離れる。案の定セトの憤怒を中心として雷が放たれていた。

 

 離れていては攻撃できないが近付いても自衛手段がある。実に厄介だ。が、結局近接で最高火力を叩き出せるので自衛される前に倒すつもりでいた。

 

 

バチバチバチッ!

 

 

 そしてセトの憤怒の手から雷の弾が浮かぶ。そしてそれは私の方へ向かって来る。速度はそうでもないが、落雷やセトの憤怒から放たれる雷を避けながらでは十分脅威になりうる。

 

 

ヒューーーン!!!!

 

「補佐官!危ない!」

 

 

 更には途中から暴風により軌道の逸れたミサイルが私の方へ飛んできた。暴風により不規則に動くミサイルと合わさり、ほぼ回避不能の弾幕が形成される。

 

 だが、そんな事は関係ない程『トランス状態』では回避し、瞬間移動と見紛う程の速度で動く。

 

 

タッタッタッ!!!!

 

 

 暴風を体を傾けて避け、落雷が来る位置を勘で特定して飛び回り、ミサイルを拳銃で迎撃しつつ一部を踏み台にして雷の弾を躱し、セトの憤怒に再度肉薄する。そして私は全力で跳躍し、セトの憤怒の顔面と思しき部分を全力で殴る。

 

 

ピシッ!!!

 

 

 顔面に届く前に咄嗟に防御された左手(?)の腕輪にヒビが入り、セトの憤怒は困惑する。

 

 

ガンガンガン………バリーン!!!!

 

 

 私はそのまま追撃し、左腕を破壊する。私は左腕を失い片腕となったセトの憤怒をボコボコにする。片腕と雷と暴風なら躱しながら殴れる。そしてとどめを刺そうと散弾銃を振り上げるが、身体に違和感を覚える。

 

 

 風が来る感覚が……ない…………?

 

 

びゅぉぉぉ!!!!

 

「っ!!!!」

 

 

 すぐに私はセトの憤怒の暴風を避けられず散弾銃で受け止め吹き飛ばされる。散弾銃は私の手元を離れて宙を舞い、何処かへ飛ばされてしまう。おかしい。『トランス状態』なら避けられていた筈………なら……まさか……………

 

 

「ゲボッ!!!!おえっ!!!!」

 

 

 着地した私は四つん這いになって地面に血を吐き出す。どうやら時間切れだ。あと少しで仕留められると言うのに…………

 

 セトの憤怒はそれを見逃さない。残った右腕を振り上げ、凄まじい音と共に振り下ろされる。

 

 

ドォォォォォォン!!!!!!!

 

 

 雷の範囲爆発を無理矢理避け、私はシャツの胸ポケットに入っていたどす黒いカードを取り出す。最早出し惜しみなどしていられない。そのカードを掲げ、私はこう叫んだ。

 

 

「私の右耳を代償として!…………私の『トランス状態』を延長して下さい!!!!」

 

 

………………ザクッ!!!!

 

 

 すると私の右耳は何者かに抉られるかのように虚空に消えた。

 

 

「あ゛ぁ゛っ!!!!!!!!」

 

 

 但しそれには耐え難い痛みが伴い、私は右耳を抑え膝を付く。だがそんな物は刹那的な痛みであり、梔子ユメの影響故か再生し始めていた。

 

 私はすぐに起き上がり、セトの憤怒に向かって走る。

 

 私に攻撃は当たらない。だがビナーも残っているために時間はかけられない。なので私はセトの憤怒に、本気で殴った。

 

 

 バキッ!!!!バチバチバチ!!!!!

 

「ごぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

 

 私の力とセトの憤怒が用意していたであろう即席カウンターにより右腕はひしゃげ焼かれてしまうがセトの憤怒の顔面と思しき硬質な物体が破壊され、セトの憤怒は体を維持できなくなり姿を消した。

 

 私はすぐにビナーの方へ走り出す。部隊は壊滅状態ではあったが残る兵士達は諦めずに弾を撃ち、注意を引いていた。

 

 

「………………」

 

「や、やっと来た!!!!」

 

「補佐官遅いぞ!!!!」

 

 

 私は喋らない代わりにビナーに全力で跳躍からアッパーを叩き込む。そして拳銃を取り出し神秘を込め仰向けに倒れるビナーの口の前に立つ。

 

 

「ごおっ!!!!」

 

 

 ビナーは体をよじりミサイルを飛ばしレーザーを構える。私は一旦ビナーから離れ、ミサイルを回避しながらビナーに向かうよう調整する。その間にビナーはレーザーの発射準備を終え、口の中の光は煌々と輝いていた。

 

 

「………………」

 

 

ダン!!!!!!!!!

 

 

 そして私はビナーに向けて走りながら、拳銃でビナーの星の如く赫々とした口目掛け撃つ。

 

 

ドガーーーーーン!!!!!!!!

 

 

 神秘が込められた弾丸は見事に命中し、ビナーの口はまたも大爆発を起こす。だがまだ追撃は終わらず私は倒れたビナーを足蹴りにして跳び上がる。その後ろのミサイルは私の急な方向変換についてこれずビナーに当たり、ビナーは動かなくなる。

 

 

「!……………」

 

 

 しかし数本のミサイルは私に執念でもあるのか未だに追いかける。私は万策尽き、自由落下と共にミサイルに木っ端微塵にされるのを待った。

 

 

「させんぞ!!!!」

 

「当たるか!?……いや、当てる!!!!」

 

 

ダダダダダダダダダ!!!!

 

 

 対デカグラマトン部隊のほんの僅かな生き残りは諦めずに私に向かうミサイルを撃ち落とすべく小銃を撃つ。

 

 

ダダダダダダダダダダダダ!!!!!

 

バン!!!!!!バン!!!!!!

 

 

 ミサイルは一つ、また一つと落とされる。だが、最後に残った一つは間に合わない。だが私はどうにか、どうにか助かる可能性にかけてギリギリで身体をよじるよう構える。

 

 そして、ミサイルが触れるか触れないかのタイミングで身体をよじり無理矢理回避に成功させる。

 

 

トサッ…………

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「無事か補佐官!!」

 

 

 私は着地すると他の対デカグラマトン部隊の兵士が心配して私の元へ走って来る。私は身体の至る所が痛み、『トランス状態』が解けるのも間もない事は自明の理だった。

 

 最後に残された僅かな時間で私はアビドスの為に何ができるだろう?………………

 

 

 …………そうだ……

 

 

 ホシノに、ユメ先輩を届けて謝罪しなければ。

 

 

「おい!大丈夫か!」

 

 

 私はその言葉に左手を上げ、掌を見せるようにする。私には構うなと、そう伝えるつもりでジェスチャーして私はすぐに走った。

 

 

タッタッタッ…………

 

 

 そして私は倒れた兵士から散らばるように落ちた手榴弾を自害用として拾い上げ、ホシノのいる実験室へと走り出した。どういう訳か対デカグラマトン部隊の生き残りは止めはしなかったが、きっとホシノの奪還に成功したのだろう。体力など限界状態だが、私は足を止めない。

 

 いや、足を止めてはならない。

 

 私は拳銃に神秘…………いや、ユメ先輩の魂を宿らせるように注ぎ込みながら、拳銃に絶対に当たらないよう抱えて走った。道中カイザーの兵士がこちらに撃ってきたが、私は『トランス状態』が切れ始めて悲鳴を上げる身体に鞭を打って躱して通り抜ける。

 

 

「ここは通さな」

 

「邪魔!!!!」

 

 

ガン!!!!

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

『むくろさん!?これはどういう!』

 

『いいから静かにしていて下さい!!!!』

 

 

 ユメ先輩は私の中に残らず拳銃に魂が全て乗り移ったようだ。頭に意思を伝えられるのか、私にはユメの言葉が脳に響く。だがこれでいい。右耳は何処かでなくなったのか聞こえなくなっており、確認したくても出来ないがそんな事をしている場合ではなく気にしなかった。

 

 右眼がなくなったからか疲労からか、視界はぼやけ何があるのか良く分からなかった。だが、それでも残された感覚を頼りに建物へ向かう。

 

 そして私はホシノのいるであろう建物の中に入り、拳銃をホルスターに仕舞って左手で地面をぶん殴る。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「むくろさん!?」

 

「むくろ君!!!!大丈夫!?」

 

「すみません…………ホシノに渡さなければいけない物があって………………」

 

 

 私は拳銃をホルスターから取り出し、ぼんやりピンク色が見える方に渡す。

 

 

「あの日の……夜の事…………申し訳……ありませんでした……」

 

 

 私の異様な姿と様子にホシノと思われる者は困惑気味にそのまま受け取る。

 

 

「っ!?ユメ先輩!?」

 

 

 きっと声を聞いたのだろう。これでもうアビドスでやり残したことはない。そう思って、私はフラフラしながら先生達に背を向け歩き始める。

 

 

「待って!!!!むくろ君はもう」

 

「…………私には……行かなければいけない所が……あります…………でも……その前に…………」

 

「?……」

 

 

 

「私はアビドスの皆様方と……共に居られて…………幸せでした」

 

 

 

 私は振り向いて出来る限り笑顔を作ろうとするが、痛みと精神が破壊され始めて頬は歪もうとする。無理しているのもバレバレだろう。頬を何かが伝う感覚もあった。でも、最後に私だけの意思で笑顔を見せられたのだから良かった。

 

 私はアビドスで過ごした日々は始めは興味を持たなかった。それでも、大切な物が出来た。それを多少なりとも守れたのなら、きっと良かった事なのだろう。

 

 私は再び背を向け、地上へ飛ぶためしゃがむ。

 

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』『嫌だよぉ……』『ハハハハハハハ!!!!』『こんな所で!』『私は、私が為すべき事を!』『大人の責任は…………果たす……』

 

 

 最早アビドスの皆の声も、先生の声も、銃声も何もかもが無念にかき消され聞こえない。そして私は建物の外へ出て、出来る限り遠くへ走った。

 

 走って走って、体力の続く限り遠くへ逃げた。

 

 私の足は次第に言うことを聞かなくなって行き、歩みへと変わり、膝を付く。

 

 

「はぁ……はぁ…………あ゛ぁ゛っ……!」

 

 

 私は痛みを堪え無念達の呻きに堪えながら、手榴弾をポケットから取り出しピンを抜く。そしてコックを開き祈るように額に当てる。

 

 

 そう言えば、柴関ラーメンを屋台になってから食べていなかったな。きっとそれは叶わないだろう。叶わなくたっていい。

 

 

 皆が幸せでいてくれたなら…………

 

 

 そう願って、私は意識を手放した。

 

 






 はーいむくろ君大人のカード擬き使いましたー!(事後報告)

 因みにセトの憤怒とビナー同時出現は完全にユメパイの神秘と無念達の異常パワーに反応した為です。なんで本人は知らないけど実質マッチポンプ。

 まあ、ユメホシ問題がなんとかなったんでアビドス編3章は多分ないです。
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