史上最強のドラゴンポケモンになったけど弱すぎるので竜の心を知る娘に養われます   作:秋塚翔

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作者は三下、下衆な小悪党セリフを書くのが楽しい変な癖があります。
そういう点でプラズマ団は戦闘BGM以外でも好きだったりして。

またもオリジナル注意です。


束の間の迷子

 …………迷った。

 

 道に、迷った。

 

 いま俺がいるのは、暗く狭いヒウンの通り――恐らく、スリムストリート。

 隠れ家的なカフェとか、驚かしてきて『フラッシュ』の技マシンくれるヤツがいるあそこだ。

 そこで俺はあてもなく彷徨っていた。

 

 しかも――アイリスたちとはぐれて一匹きりで。

 なんてこったい(それの顔文字)

 

 ……とりあえず経緯を説明しよう。

 アーティとトウコが逃げたプラズマ団を追いかけていってしばらくの後、アイリスのライブキャスターにアーティからプラズマ団の居所を見付けたので来てほしいという連絡が入った。想定していた流れ。

 

 これを受け、アイリスはベルを引き連れて早速そこに向かおうとする……のだが。ヒウンの地理に疎いアイリスが口頭で場所を伝えられただけでは右も左も分からず、活発な行動力であちこち走り回るものだから、後からついていく俺は雑踏に紛れた二人の姿を見失ってしまう。

 

 探し回る俺もそのうち方向感覚を失って現在地が分からなくなり、

 流れ流れて、気付けばスリムストリートまで迷い込んでいたのであった。

 

 ゲームより当然に広大な都市の中で、向かうべき目的地は知っているはずなのに何処をどう行けば辿り着けるかも見失ってしまっている現状。

 完全に迷子状態の俺は、絶賛途方に暮れるのだった。

 

ヒュララァ(どうしよ)……」

 

 マジで。これはシャレにならん。

 紛れもなく親とはぐれた子供じゃねえかこんなん。

 

 くっ、判断ミスった……!

 これなら場所が分かってる時点で直行すれば良かっただろうに、『初めて来た街でルート把握してるのはおかしくないか?』という懸念が浮かんで、ならば自然にと黙ってついていったのがいけなかった。この都会の人だかりは考慮の外だった。

 

 (いま)になって思うと、ルート知ってるのはポケモンの直感とかって言い訳で導いたらいいやんと。仮にも伝ポケが何を常識気にしてるのか。俺ってほんとバカ。可愛く言ってあんぽんたん。

 

 とかしたっぱのセリフ泥棒してる場合じゃねえ。

 その仲間のポケモン泥棒を追いかけてきたってのに、これじゃその場面に立ち会えないぞ。アイリスたちは必ず着くとして、俺がそこに合流しないことには悔やんでも悔やみきれん。

 どうする、どうしたらいい――

 

「っよーし捕ったぁ!」

「ヒュラッ!?」

 

 そう思考に気を取られていたところ、俺はいきなり尻尾を掴まれて吊り下げられる。

 何事かと慌てた俺が見上げれば、

 

「へへっ、いいタイミングで珍しそうなポケモンゲットだぜ!」

 

 げッ、プラズマ団!?

 なんと俺は、プラズマ団のしたっぱに捕らえられていた。

 

「さっき役に立たないポケモン捨てたばっかりだったしなあ。運が良いぜ」

「これも我らの王、N様のお導きのタマモノってな。さーて、城に帰ったら山ほど力仕事させてやるから楽しみにしてろよー?」

「おいおい、そんな荒っぽいから手に入れるポケモンがみんな使い物にならなくなるんだろ? ポケモンはトモダチなんだから愛情深く扱わないとな」

「そういうお前もトモダチを高値で売って小遣い稼ぎに利用してるだろーが!」

「「ぎゃはははははッ!!」」

 

 捕まえた俺を挟んで吐き気を催す下衆の会話が交わされる。

 やべえ、こいつら黒ズマ思考のしたっぱだ。ポケモンを道具かなんかとして見てるゲーチス派。真にポケモンの解放を謳うNの知らぬ裏で好き勝手やる悪党ドストレートの手合いだ。

 運が悪すぎるだろチクショウ。殺意が湧くけど、この態勢と俺の覚えてる技じゃ容易に反撃できねえのが厄介だぜっ……

 

 ポケモン泥棒追って、まさかポケモン泥棒被害の当事者になるとは。まさにミイラ取りがミイラ。デスカーンの特性でなく。

 このままじゃろくなことにしかならない。連れていかれるにせよなんにせよ、どちらにしても俺のせいでアイリスにも迷惑かかることになるのはもう勘弁だぞ……!

 

「ヒュラっ、ヒュララ!」

「はっ、生意気に逆らおうってのか? こりゃお仕置きが必要だなあ?」

 

 懸命の威嚇も図に乗ったしたっぱ共には効果が薄い。

 くっそ、舐めやがって……俺だって立派なキュレムになったら凄いんだぞ! 喋れば高○克実、鳴けばゴ○ラなんだからな! プラズマ団総辞職ビーム撃ってやろうか!?

 もういっそ冷気全開で振り解いて――

 

 

 

「お前たち、何をしているんだ?」

 

 

 

 と。

 型で取ったように質実な声が上がる。

 

 薄暗い通りの出口、光差すそこを背にして。

 黒い軽鎧を着た青年が険しい表情でこちらにやって来た。

 ……え、誰?

 

「「ネ、ネーロ様!?」」

 

 下衆したっぱ二人組が畏まりながら口を揃える。

 青年――ネーロはそんな二人を咎めるように見据えた。

 

「こんなところで何をしている。お前たちはゲーチス様の隊だな? ゲーチス様の隊はもうとっくにこの街のアジトに到着している。それなのに何故お前たちはここにいるんだ?」

「いや、あの……実は別働で行動してまして……!」

「そ、そうです()()()! それで、ちょっと手持ちのポケモンをやむにやまれぬ事情で手放してしまったので新しいポケモンを捕獲してから戻ろうかと……!」

 

 慌てふためいた様子でしたっぱ二人はネーロに弁解する。

 捨てたり売っ払った癖に何がやむにやまれぬ事情だ。

 

「言い訳は無用だ。ポケモンの捕獲にしても、街中で誰のものとも分からぬポケモンに手を出して無駄な騒ぎを誘発するな。隊の乱れは組織の乱れに通じる。早く持ち場に戻れ」

「は、はいっ! ……それで、このポケモンは……?」

「いちいち言わねば動けないか? そして返事が違うぞ」

「「はっ――あ、じゃなくて、プラーズマー!」」

 

 決まりの掛け声を発した後、したっぱたちはそそくさ立ち去っていった。俺を放り出して。

 しばらくぶりの地上に降り立った俺に、ネーロは視線を向けてくる。

 

「……すまないな。プラズマ団のああした実態は把握していて、それを良しとしている私だが……それでも理不尽に虐げられるポケモンを見るのは忍びない」

 

 表情の固い顔のまま、謝辞を述べるネーロ。

 艶消しした黒い軽鎧に、腰には短めの剣を佩く端正な顔立ちの青年。特徴だけ言えば周りに浮きそうな格好であるが、不思議とその堂々たる姿勢と顔つきが違和感なく見せている。

 

 よくよく見たら鎧の胸元にはプラズマ団のマーク。ってことはこいつプラズマ団の一員か。しかもしたっぱ団員が逆らえない幹部級。『騎士長』とかなんとか言ってたし。

 この前のブランって子といい、また知らんプラズマ団来たんだが? いらんことする連中の知らんキャラ出てくるな。訳分かんなくなるから。

 

「今後は気を付けることだ。……N様が世界を変えるその時までな」

 

 そう言い捨てて、したっぱたちと同じようにネーロも立ち去っていく。

 ただのポケモンに言ったところで分からないだろうという態度。もちろんそれが意味することを俺は分かっているんだが。そこそこやりこんだBWのメインストーリーだし。

 

 しかしそれにしても……俺の知らないことがちょくちょくあるな。

 オヤブンポケモンは、まあそういうのもあるとして。一応把握しているつもりだったBWでのポケモン世界の知識が通用しない場面があることがある。そも、キュレムがここにいる時点でもうイレギュラーだし。

 これからもそういうのがあったら俺のアドバンテージなくなるんだけど……?

 

 ……考えても仕方がないか。俺ポケモン。なるようになれ。

 ストーリー面では原作主人公(トウコ)に頑張ってもらうのが無難だな、うん!

 

 さてと。ちょっと時間取られちまったが。

 今のクダリ――もといくだりで頭が落ち着いてきた。ひとまずスリムストリートを出て、そこから看板を頼りにして行けば目的地に辿り着くことはできるだろう。それで間に合えば万事オーケーだ。

 

 仕切り直して、俺はヒウンジムのある通りの方に歩を進めるのだった。




新オリキャラ、ネーロ。名前の由来はイタリア語で「黒」。時代錯誤の軽鎧姿が様になってる生真面目イケメンです。

ちなみに以前登場したブランともども、由来の言語とポケモン世界でそのモデルとなった地方とは(当然ながら)無関係なのであしからず。それ言ったらチェレンやベルも他地方出身になる。

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