史上最強のドラゴンポケモンになったけど弱すぎるので竜の心を知る娘に養われます   作:秋塚翔

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今さらですがこの時点での時系列的はBW開始前にあたります。
ちゃんと明言してなかったから一応ここで。


後日、不甲斐なく筋肉痛になったのは言うまでもない

「むんッ! ふッ、ぬぅんッ!!」

 

 ――目の前でなかなか信じられない光景が繰り広げられている。

 人間とポケモンが生身でスパーリングしていた。

 

 過不足なく鍛え上げられた上裸を晒すシャガとポケモン――それもオノノクス(シャガ手持ち)が明らか手加減なんてしていない気勢で互いに打ち合っている。さっきからガスッ! ドカッ! バゴォッ! というえげつない打撃音がバトルフィールド内に響いていた。

 ポケモン側が加減してないのおかしいし、それを受けて耐えるシャガもおかしい上、シャガからの打拳にオノノクスが若干よろめいてるのマジでどうかしてるんだが……???

 

「ふぅ――このくらいにしよう。ご苦労だった、オノノクス」

「グワァウっ」

 

 開始から一時間弱。ようやくスパーリングが終わったようだった。

 

「おじーちゃん! お疲れさま、はいこれっ!」

「おお。ありがとうアイリス」

 

 すかさずアイリスがシャガに汗拭き用のタオルを手渡す。

 なんか息上がってるオノノクスも労われる横で、シャガは自身を見下ろしながら一言。

 

「うーむ……昔と比べたらすっかり衰えたな」

 

 ガ○プ中将かあんたは。

 

「もーっ、おじーちゃんは自分にもスパルタすぎるよー」

「他者に求めるならまず己からだよ。そうでなくば着いてきてくれているポケモンたちに信頼されん。ポケモンもまた我々を見て信じられるか否かを判断しているんだからね」

 

 もっともなことを言うシャガ。

 ……いやそれにしたって人間がそこまでやる必要はなさそうだが。

 そういえば最新どころだと錠前付きの鉄格子を正拳突きでぶっ飛ばしてポケモン(クレッフィ)に呆然とされるジャスティスがいたっけ……お前ら人間じゃねえ!

 

「ということだ。こちらはもういいから、アイリスも予定通りのメニューをこなしてきなさい」

「はーい! それじゃ行こっか、ヒュラ! オノンド!」

「ヒュラっ」

「ガゥ!」

 

 アイリスに呼ばれ、ボールから出てきたオノンドと共にその後を着いていく。

 

 ケガもすっかり癒えてきた今日。俺はいよいよトレーニングメンバーの仲間入りをした。

 俺専用のモンスターボールに入れてもらったのは昨日のことだ。正式にアイリスの手持ちに加入して、今日から本格的にポケモンとして育てられるようになる。初日はオノンドと合同らしい。

 

 ここから俺ことキュレムの史上最強のドラゴンポケモン計画の第一歩と言えよう。

 これを足掛かりにレベルを上げ、技もどんどん習得してって、専用技も使えるようにしてフォルムチェンジ――は単独でできるもんじゃないから置いといて。本当の史上最強を目指すのが目下の到達地点だ。

 先は長いが、これが最短ルートなのは確かで。俺の気合いも朝から溜まりに溜まっている。今なら相手の急所に当たりやすくなるかもしれないな、とか浮かれたりして。

 

 さあ、どんなハードルでもかかってきやがれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あの、前言撤回していいすか……?

 

 正直言って舐めてた。もう気合いは風前の灯火。さっきの俺を殴りたい。

 

「ちゃんとついてきてねー!」

 

 そう元気よく言ってくるアイリスは野生児さながらに木の枝から木の枝へと渡っていって、もはや小さな影にしか見えなくなっている。俺たちを気に掛けてる言葉くれちゃいるが、あれ半分楽しくなって周囲見えてないな? そういうとこは子供っぽいとこあるねうちのトレーナーちゃん……

 

 街の外れ。自然溢れる森の中で、俺たちはランニングを行っていた。

 最初は着いていけてたんだけど……いかんせんアイリスは子供の行動力に、シャガの指導の影響も受けているせいか割と容赦がないようだ。じきにレベル1ステータスの俺はどんどんと引き離され、今や一匹(ひとり)森の中でとぼとぼ歩いている状態だった。

 一緒に訓練するオノンドも先に行ってしまった模様。

 

 子供に振り回されて疲労困憊になる大人ってあるあるな話だけどさ……まさかポケモンとして生を受けてからそれ味わうとは思いもしなかったよ。こっちの方が幼いんだが。だとすれば元気な姉に置いていかれる弟の構図? どっちにせよ新鮮な体験だなー(なげやり)

 とにかくだ。完全に置いてかれたが目的地まではなんとか行くとするか――

 

 

 

 殺気。

 

 

 

 気付いた時には本能で動いていた。

 途端、俺のいた場所の木々が横一文字に切り裂かれる。

 転がり態勢を整えた俺が何事かと見やると、

 

「ザンッ!」

ヒュラララ(キリキザン)……!?」

 

 そこには野生と思しきキリキザンが敵意十分に佇んでいた。

 恐らく縄張りで目に入った俺を敵か、あるいは獲物と見て襲ってきたのか……腕の刃を不気味に光らせて、再び猛然と襲い掛かってくる!

 

ヒュラ(うお)……ッ!」

 

 技『つじぎり』をまたギリギリでかわす。日頃バトル風景を眺めていた成果か。

 

ヒュラ(この)っ!」

 

 即座に『こごえるかぜ』を放って反撃に転じる。

 が、対するキリキザンはそれを軽く腕一本で振り払ってきた。くっ、ダメか……!

 こっちは依然『こごえるかぜ』しか使えないレベル1。レベル差抜きにしたって相手は鋼タイプなので、氷タイプの技ではまず太刀打ちできない。

 相性の悪い相手で、対抗手段も乏しい……つまりジリ貧。これピンチでは!?

 

「ザンッ!!」

 

 猛るキリキザンが仕掛けてくる。最悪のタイミング。マズい……!

 

「――グガウゥ!」

 

 と、

 そこに荒々しい吠え声が割り込んできた。

 一瞬動きを止めるキリキザン。そこへ飛び掛かるのは――オノンドだった。

 

「グァッ!!」

「ザ、ザン……ッ!?」

 

 オノンドは『ドラゴンテール』を繰り出し、不意を突かれた形のキリキザンはそれにより茂みの奥へと吹き飛ばされて消えていった。

 森が静寂に戻る。

 

「グワァウ」

 

 呆ける俺にオノンドは「大丈夫か?」と問うように鳴く。慌てて俺は無事を身振りで伝える。

 オノンドは「だったら早く来い。アイリスが待ってる」という風な仕草をして、来た道を戻っていった。先の戦闘も助けたことも気にする素振りなく、さながらクールに。

 

 ……なんだあれ、かっけぇ……

 

 立ち去る背中に妙な感動を覚えながら。

 俺はその後を遅れて追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんねヒュラ! あたし走るの楽しくなって気付いてなかったよー!」

 

 ゴール地点に辿り着くと、アイリスが申し訳なさそうにそう言う。

 思ってた通りのそんな理由に、むしろ微笑ましさが先に来る。

 ホントに子どもね~(テンプレ)

 

 以降の道中は無事に済んだ俺は、着いて早々オノンドを探す。

 すぐに川べりで小休止しているのを見付け、おそるおそる歩み寄っていく。そうしてさっき助けられたことへの感謝をニュアンスで述べる。

 

「グゥ」

 

 すると、先ほど同様「気にするな」と言わんばかりに鳴き返してくる。素っ気ないというより、ぶっきらぼうな対応。言うなれば先輩が後輩に慣れないフォローをするような。

 思わず憧れを抱いてしまうそんな振る舞い。

 

 か、かっけえ……!

 

 オノンド先輩――いや、オノンド姐さん!(アイリスの手持ちは全員♀)

 同じドラゴンポケモンとしてマジリスペクトっす! まだまだ不甲斐ない俺もいつか姐さんみたいな強いドラゴンポケモン目指します! よろしくっす!

 と、いうような態度を示すと、姐さんは「頑張れよ」という風に返答してくれる。仲間として認めてくれた達成感。

 

「あれ、仲良くなったの? わぁーっ、よかったね!」

「ヒュラっ!」

 

 為せたことに素直な喜びを表す俺。

 改めて、最強計画へのモチベを上げるのであった。




シローが登場しなければシャガをこんな風に扱うことはなかったかもしれない。
でもある意味元祖だよね。オノノクスとスパーリングが公式という事実。

今年はこれにて。来年も皆様に読む楽しみをお送りできたら幸いです。
来年とも合わせて良いお年でありますよう。

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