史上最強のドラゴンポケモンになったけど弱すぎるので竜の心を知る娘に養われます 作:秋塚翔
新年一発目からヤツらとの遭遇回です。
「よーしっ、行くよヒュラ!」
「ヒュラララ!」
その場に立つことが日常になってきたシャガ宅のバトルフィールドで。
俺はアイリスの前に悠然と立ち、威勢よく鳴く。
「ヒュラ――りゅうのいぶき!」
アイリスの声に応じ、俺は息を思いっきり吸って、口から物凄い
傍目にはちょっと威力不足も否めないが――それはまさしく『りゅうのいぶき』だ。
続けてアイリスの指示が送られる。
「げんしのちから!」
技を意識すると――転生した俺のどこにその力があるか不明だが――文字通り
「そのまま、ドラゴンテール!」
さらに違う的へと、技マシンで覚えた『ドラゴンテール』を繰り出す。
精細さは姐さん方と比べられないものの、我ながら悪くない身のこなしで的を捉えた。
ついでとばかり離れた的に最初の頃から使っていて、技の精度を磨いてきた『こごえるかぜ』を放つ! ……が、これは普通に外れてしまう。くぅ、締まらねえな……
気を取り直して。引き続き教えられた通り動いて、時には自己判断でも動き。
でき得る限りのメニューをこなし切った。
「――わー! やったやった! ヒュラ、すごいよぉっ!」
まだ体に馴染んではいない動作に疲れを滲ませていると、それを吹き飛ばしてくれるかのような弾んだ賛辞の声が掛けられる。
へへ、せやろせやろ? これが伝説ポケモンの力(約1パーセントの全力)よ。
「ねえねえ、どうだったおじーちゃん!?」
そうアイリスがトレーニング結果を見守るシャガへと訊ねかける。
シャガはふうむと白い髭を撫でつつ、
「見事だ。発展途上だが、よく育てられているな」
「えへへー、ヒュラも一緒に頑張ってくれたお陰だよっ」
照れながら言われると俺も照れる。
まあ実際のとこ頑張ったしな。生前の人生でもここまで努力したことないってくらい。
あれからランニングにはなんとか着いていけるようになったし、加減やハンデありでもバトル練習に参加するようになった。よく食べよく寝て、アイリスたちの叱咤激励もあって、見れる程度には強くなれたぜ……
史上最強にとっては小さな一歩でも俺には大きな一歩である。
「一つ言わせてもらえば、一度だけ勝手に技を使ったのは感心せんな。トレーナーの指示なしで下手に技を使えば不慮の事故や予期せぬ不利にも繋がりかねない。そこは正した方がいいぞ、ヒュラよ」
「ヒュラァ……」
う、やっぱあれダメだったか。
調子乗りすぎたな……今後は気を付けよう。
「グワゥ」
見ていたオノンド姐さんからも労いのような反応をもらった。
手持ち仲間であるオノノクス姐さんやクリムガン姐さんとも今や無事に打ち解けている。これもアイリスの力やオノンド姐さんのフォローあってこそだ。マジ頭が上がらねえ。
「ふむ。ちょうどいい時間だ。一息入れよう。今日はミアレガレットを仕入れたんだ」
「わーい! アイリスそれ好きー!」
微笑ましい祖父と孫の図。
そう思いながら俺も後を着いていこうとした時、
「――シャガ市長! ここにいましたか!」
慌てた様子で一人の男が駆けてくる。
シャガを市長の役職で呼ぶ、ってことはシティの役員の人かな。
「おお、どうしたね?」
「突然すみません、通報がありまして……10番道路で市民が暴漢に襲われたらしいのです」
「なんだと? ……あい分かった。こちらで対応しよう」
真剣な面持ちで応えたシャガは厳格な顔をより顰める。
「おじーちゃん、ボーカンって悪いことしてる人がいるのっ?」
「そのようだ。私でも対処は可能だが、一応着いてきてくれるか、アイリスや」
シャガの問い掛けにアイリスは即座にうんっと頷く。
「もっちろん! アイリスも悪さをしてる人は見逃せないもん!」
そういうことになって。
オヤツはひとまず置いといて、俺たちは10番道路に向かうことにした。
10番道路。
ソウリュウシティとチャンピオンロードとを結ぶ道路。
俺たちが駆け付けると、そこに通報者である親子二人がいた。
「大丈夫か? 何があった」
「あ、ああ、シャガさんにアイリスちゃん……」
父親らしい男性は蹲って泣きじゃくる子供をあやしているようだった。
その父親が事情を話し出す。
「実は、この子と散歩中に妙な格好をした二人組に絡まれまして。訳の分からんことをまくしたてられた上にこの子のポケモンであるチョロネコを奪って逃げていったんですよ……」
「ぐすっ、ミーちゃん……っ」
よほどショックだったのかぐずぐずと泣く女の子。父親も困り果てた表情だ。
……もう誰の仕業か分かったんだけど。
「ひっどーい! 人のポケモン盗るなんてドロボーなんだよ!?」
「うむ……ソウリュウ周辺はジムやリーグが近しい関係で比較的治安はいいはずだ。そこでわざわざそんな真似をするとは図々しい輩だな」
アイリスとシャガ、それぞれで不快感を露わとする。
「まだ遠くには行ってないはずだ。アイリス、君は彼らを見ていてくれ」
「分かった! 任せて!」
シャガがそう言って父親から犯人の逃げた方向を聞き、そちらに向かう。
「大丈夫だよ! あたしたちが絶対悪者捕まえて取り返してあげるから!」
「うぅ、うん……っ」
泣いている女の子にアイリスが元気を分け与えるように励ます。優しい子やなあ。
さて。俺の察しが正しければ、だ。
なんか状況の既視感にいやーな予感がするんだが――
「――あ!? なんだか増えてるぞ!」
「くそっ、上手く行ったし父親からも奪おうと戻ってきたけど人を呼んだな!?」
や っ ぱ り か い 。
逆に違ったらビビるくらいお前らだと思ってたよ――プラズマ団!
「! 誰ッ?」
「あ、あいつらだ! 私たちを襲った奴ら!」
父親が裏付けるように声を上げる。
どうやら一回逃げた後に味占めてしれっと現場に戻ってきたようだ。
……よりによってヒウンでベルのポケモン奪った時と同じ動機で姿晒すとか揃いも揃って愚かすぎるだろ。
犯人と聞いて、アイリスが親子を守るようにして立ち塞がる。
「この子のポケモン返して! そのポケモンはこの子と一緒にいるのがいいんだから!」
「ふんっ、それは人が勝手に言っていることだ!」
「俺たちは人とポケモンを引き離すんだよ!」
揃いの衣装を着たプラズマ団したっぱが我こそ正義とばかりに言い返す。
「なに言ってるの? そんなことしてどうしたいの!」
「そんなの決まっているだろう」
片方が得意げに言って、
「ポケモンは人から離れることで真の自由になれるからだ!」
「俺たちだけがポケモンを使い人を支配するためだ!」
各々異なる主張を言い放った。
「「……ん?」」
相方の発言に違和感を覚えて顔を見合わせるしたっぱ二人。
おい、ここで黒ズマと白ズマの主張ぶつかるな。約二年後にやれ。
「と、とにかく! 弱い子供がポケモンを縛り付けることなど許さない!」
「このポケモンは我々プラズマ団が丁重に扱ってやる! 感謝しろ!」
ひとまず意見の相違は無かったこととしたしたっぱ団員が気炎を吐く。
実物で見ても相変わらず話にならないな……
身勝手な大義と野望を基に、人とポケモンが共に生きていくことで成り立っている世界に要らぬ一石を投じるイカれたカルト教団的な集団。
人と生きるポケモンの一匹としちゃ認めちゃならない悪だろうな。
そして、同じようにそれを許さないトレーナーがここにいる。
「ダメだもん! そんなことはさせないよ! 絶対取り返してやるんだから! ――ヒュラ!」
「ヒュラララッ!」
同感の意を示すように力強く鳴き返す。
そっちが力ずくで奪うなら、こっちも鍛えた成果で阻止するまでだ。
脳内にプラズマ団で唯一評価できるBGMを再生しながら――
プラズマ団のしたっぱが勝負を仕掛けてきた!
初めて戦闘入った時は「なんだこのBGMかっこよ!?」となったのは俺だけでないはず。そこだけはマジで評価できるプラズマ団。でもジャ○ニカ学習帳は草。
よろしければコメント、お気に入り登録、評価などお願いします!