史上最強のドラゴンポケモンになったけど弱すぎるので竜の心を知る娘に養われます 作:秋塚翔
ここらでオリジナル要素投入です。お楽しみいただければ。
勝負は尋常に決した。
「ヒュラ、こごえるかぜ!」
「
アイリスの指示に応えて十八番の『こごえるかぜ』を繰り出す。
指し示された攻撃は見事狙いが的中。事前にダメージを与えていたこともあり、それが決め手となってプラズマ団したっぱ(二人目)のコロモリは力なく倒れる。
先に倒した一人目は言うまでもなく、これで二人目も手持ちはゼロとなった。
すなわち――アイリスの勝利だ。
「バカな……!」
「こ、こんな子供に負けるとは!?」
自分たちが敗北したことに驚きを隠せないしたっぱ二人。
しかし当然の結果だろう。バージョンによっては最終ジムのジムリーダーを務め、未来のリーグチャンピオンが確定しているのがアイリスだ。悪の組織とはいえしたっぱの名無し団員が二人がかりだって敵いはしまい。
子供だからってうちのトレーナーちゃんをナメてもらっちゃ困る。あ、もちろん
「くそぅ、弱っちいポケモンめ!」
黒ズマ的したっぱ(つまり二人目)が自分のポケモンに悪態を吐く。
実に小物らしい負け惜しみを……相性の有利もあったけど、負けたのはポケモンが弱いからじゃないってのは分からんか。
片やポケモン勝負で育てたりしてない白ズマに、片や私利私欲でポケモンを無理やり従わせてる黒ズマではポケモンも力を出し切れなかろう。やっぱこの段階のプラズマ団は両極端すぎてどうしようもねえな。
「さぁ、この子から奪ったポケモンを返してもらうよ!」
アイリスが勝者として言えば、したっぱたちはじりりとたじろぐ。
勝負を挑んで負けた以上は賞金を支払うように従わざるを得ない状況。
が、黒ズマ的したっぱが歯噛みして一つのモンスターボールを掲げて見せる。
「……これを見ろ! こいつがどうなってもいいのか!?」
「! ミーちゃんっ!」
したっぱが出したボールを見て、後方の女の子が叫ぶ。
あの野郎……
「ヒキョーだよ! 大人しくその子を返して!」
「へっ、このまま引き下がったらゲーチス様にどんな処罰を受けるか……そうなるくらいならポケモンを文字通り人間から解放してやるぜッ!」
相方の白ズマ的したっぱが「え、え、そこまでしなくても!」と狼狽えている横で、優位に立ったとばかりにニヤケ顔を浮かべるしたっぱ団員。マジでそこまでしやがるか……!
どうする。これで退いてもポケモンを返してくれる保証はない。かといって強行すれば有言実行するのが早い間合いだ。俺の攻撃もそこまで精密射撃はできないし……
「はははっ、手も足も出ないか? だったら俺たちは行かせてもら――くぺっ!?!?!?」
嘲笑していたしたっぱは、
次の瞬間、体を
え? なにごと?
「――ふぅむ……私としたことが、危うく取り逃すところだった」
ぴくぴく痙攣して倒れ伏すしたっぱを足元に、むくりと直立して姿を現したのはシャガだった。その手にはしたっぱから取り返したミーちゃん入りのボールが。
どうやら背面へのタックルで沈めた模様。悪質タックル……いやこの場合は合法か。
「おじーちゃん!」
「大丈夫か、アイリス。後は任せなさい」
穏やかに言うシャガがもう一人のしたっぱに向き直る。
「な、こ、このジジィ……! お、俺は元からておうだったんだ! ナメるなよぉ!」
危機を感じたしたっぱが猛然と迫る。
それをシャガは構えを取らずして真っ向から迎え、
ドカッ!!
「……なっ……!?」
「鍛えが甘いな」
繰り出された拳を厚い胸板で完全に受け止めてしまう。
愕然とするしたっぱに、シャガが鋭い拳の突き上げでアッパーカット。「ぇごっ!?」という悲鳴と共に一瞬宙を飛んだしたっぱはどさりと撃沈した。
…………いや、あの。
ここ、ポケモンの世界だよね? すっごい人間の格闘劇を見たんだが。
……こんな場面で人間が鍛えることへの意義を目の当たりにするとは思わなかったよ。
「しばらく探しても見付からないのでもしやと思って引き返してきたが、現場に戻ってきているとは思わなんだ。間に合って良かったよ。この子がキミのポケモンかい?」
「ミーちゃん! ……ありがとう!」
瞬く間に二人をのしたシャガからチョロネコのミーちゃんが女の子の許に返された。
女の子は大喜びし、父親も何度となく礼を述べる。
うん、なにはともあれ良かった良かった。
「さてと。この者たちをどうするかだな」
「「ひ、ひぃッ……」」
すっかり戦意喪失したしたっぱ二人組に厳しい目を向ける。
ポケモン解放を謳うのは勝手だし自由だけど、それを子供に強要して奪うような真似するのはマジ許しがたいことだなあ……?
アイリスもご立腹だ。さてどう調理してやろうか……
と、同調して詰め寄ろうとした時だ。
――ズウゥゥゥンッ!!
そこへ割って入るようにして、巨大な影が落ちてきた。
「むっ!?」
舞い立つ砂埃に身を竦める俺たち。
いったい何かと正面に今一度向き直ると、
「ゴルゥグ――」
「! これ、ゴルーグ……!」
そこに立ちはだかっていたのはポケモンのゴルーグだった。
まるでしたっぱたちを守るかのような佇まい。
一瞬、連中の隠していた手持ちか? と疑った直後、
「――失礼いたします。少々強引に割り込ませてもらいました」
カツカツ、という音と共にそんな柔らか気な声が届く。
思わず視線を向くと。白いミニドレスに身を包む少女が杖を突きながら姿を現した。
その胸元には、プラズマ団のマーク。
「……ブラン様!」
「大丈夫ですか、同士のお二人」
したっぱ二人が畏まったような態度で少女の名を呼び掛ける。
少女もまたそんなしたっぱたちに既知の如く身を案じた。
ブ、ブラン……? え、だ、誰それ???
「同士が大変無礼を働きました。この通りお詫びします」
「……詫びという割には本当に強引だな」
「それについても重ねてお詫びを。なにぶん私は不自由な身なので、同士の危機にポケモンの力を頼らざるを得なかったもので」
シャガの応答にブランという少女は苦笑気味に言う。
そこで気付く。微妙に視線の合わない目――どうやら彼女は目が見えないようだ。
「彼らを許してください。ポケモンの解放という大義を果たすべく、このような手荒な行為に走ってしまったのです。それで無理に解放しても意味はないというのに……」
憂うように言った後、ブランはカツンと杖を地に突き立てて続ける。
「彼らには私が責任を持って言い聞かせるので、お見逃しいただけませんか?」
「……それが呑めないと言ったら?」
「誠に遺憾ですが、是非を決めるために力を尽くさねばなりません」
少女のポケモンらしいゴルーグが前に出る。
見かけの儚さに似合わず戦いも辞さないってか……
「――分かった。キミに免じて彼らを引き渡そう」
「おじーちゃん!? 悪者なのにいーの!?」
「アイリス、ここには戦えない者もいるんだ。下手に戦って巻き込んでは申し訳が立たん」
「あっ……むー!」
背後の親子を指して言うシャガに、アイリスは不服ながらも理解した態度。
要求が通ったブランは心底安堵したように小さく息を吐く。
「ありがとうございます。……それではごきげんよう」
そう言うと、まずしたっぱたちは一目散に逃げ去り、後からブランは杖で歩く先を探りながら、ゴルーグから差し出された大きな手に乗り込んでそのまま飛んで行ってしまう。例のジェット噴射で。
……シュールだけどなかなか圧巻だな。
「うー……逃げちゃった、ポケモンドロボー……」
「すまないアイリス。私も悔しい限りだ」
未練がましく連中の逃げた方向を睨むアイリスと、そんなアイリスの頭をなだめるようにして撫でるシャガ。
市長として、ジムリーダーとして市民である親子を守ることを選んだのは英断だ。それはそれとして悪人を逃したアイリスとシャガそれぞれの悔しさも分かる。
それだけプラズマ団も一筋縄じゃいかない悪の組織ってことなんだよな。
……で、だ。
そんなプラズマ団の幹部級と思しきあのブランという盲目の少女。
俺は知らんぞ、あんなキャラは。
ポケスペやアニポケをしっかり履修してる訳じゃないが……少なくとも俺のBW知識でブランというプラズマ団員にはまったく心当たりがない。
ポケスペルビサファ編のアクア団・マグマ団みたいなオリジナル幹部キャラか? シズクとかホカゲのような。それならあのキャラ立ちに納得いくけれど……
うーん、分からん。急な展開で頭が追いつかん。
……ひとまず保留でいっか。
その後は特筆することもなく。
親子を無事シティの家に送り届け、俺たちも帰路に就くであった。
オリジナルキャラ、ブラン登場。
儚い系の盲目少女でプラズマ団幹部です。名前の由来はフランス語で「白」。
ここでオリキャラ投入により物語が転じていくぜ感。
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