史上最強のドラゴンポケモンになったけど弱すぎるので竜の心を知る娘に養われます   作:秋塚翔

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少し手こずりました。より良いものを…!と肩肘張るもんじゃない。筆が留まったら本末転倒。


ポケモンはコワい生き物でした

ヒュラァ(ふぁーあ)っ……」

 

 マメパトがパタパタ空を飛んでいる昼下がりのある日。

 降り注ぐ陽気に、俺は堪らず欠伸を零した。

 

 この間のプラズマ団によるせこいポケモン泥棒の件はまだ記憶に新しいが、それに匹敵するような出来事はそうそう起きなくて。以降は平穏すぎるほどの日々が送られている。

 

「そーれぇ!」

 

 今日もトレーニングを終え、街外れの川にてのんびりとした時を満喫していた。

 視線の先では、アイリスが他の手持ちポケモンたちと川遊びに興じている。

 

「わっ! やったなー!」

 

 レギンスを脱いだ例のアニポケスタイルで川に入ったアイリスが水を浴びせれば、オノンド、クリムガン、オノノクスの姐さん方も負けじと水を浴びせ返す。ドラゴンポケモン三体相手は流石に不利かと思いきや、アイリスは軽い身のこなしで善戦していた。

 

 俺はそれを川べりで見ているだけ。どっちもがんばれー。

 いや、別にノリが悪いとか気取ってるとかじゃなく、キュレムって体から冷気を出してるから、俺が入ると下手したら川が凍り付くんだよね。熱い湯舟もたちまち氷風呂に早変わりだ。だから俺は配慮して不参加に甘んじている。仲間外れ感あるけれど。

 

「ふあー……ちょっときゅーけー!」

 

 しばらくしてアイリスの号令で皆こぞって川の中から上がってくる。

 アイリスはそのまま俺の傍でごろりと寝転んだ。

 

「ごめんね、ヒュラ。つまんないよね? みんなで遊べたらいいんだけど、あたしも寒いの苦手だから……」

「ヒュララ」

「……気にするなって? えへへ、ありがとー」

 

 申し訳なさそうな言葉に、解釈通りの返事をする俺。アニポケの方のアイリスで承知してるし、こればっかはポケモンの生態だからしょうがないって。

 

 しかしまあ――強くなるってのも考えものだなあ。

 レベル1だった頃は本当に弱くて、ちょっと体がひんやりする程度だったのが、こうして伝説のポケモンの片鱗が垣間見えて確かな成長を感じる。もう赤ちゃんポケモンからは卒業だろう。

 それに伴って、文字通り力が強まり加減しなきゃならんことも出てきたのは口惜しいところだ。こういう点が人間ではなくポケモンに転生したことによる違いか。思わぬ発見だった。

 

 でもま、そりゃ贅沢な悩みってヤツだろう。

 いずれは史上最強のドラゴンポケモンになる予定だし、伝説のポケモンだったらこうでなきゃ示しが付かない。むしろもっともっと突き詰めて、正真正銘の『史上最強』になるつもりでないと。せっかくのポケモンライフなんだからな。

 その時はいつかの夢の通り、チャンピオンになったこの子の傍らでなんて――

 

「――すぅ……すぅ……」

 

 おっと?

 気が付くと、アイリスが寝入ってしまっていた。

 心地いいこの陽気に誘われたか、遊び疲れたように小さな寝息を立てている。

 あらまあ。気持ち良く寝ちゃってら。

 

 見ると姐さん方も寝そべったり、日向ぼっこしたりしてそれぞれの時を過ごしている様子。

 うーん。これは帰るまでもう少し掛かるな……どうしよ、急に手持ち無沙汰だ。

 これから一匹きりで水浴びするのも寂しいしなあ。

 

 ――ということで。

 暇潰しも兼ねて俺は散歩に出かけることにした。

 

 転生したての頃、野生ポケモンに挑みかかってフルボッコされて以来、怖くて気軽に外を出歩けなかったのはもう過去のこと。厳しく鍛えられた今ではレベルも上がり、技もどんどん覚えていって、一匹で散歩できるまでになれていた。

 まだ戦って楽勝なレベルではないけどな。

 

 鼻歌を口ずさみたい(でもできない)気分で外の空気を楽しむ俺。場所柄、タマゲタケやモロバレルがボールに擬態してたり、ダゲキやナゲキが野外試合やってたり、バッフロンがこっちに気を留めず仲間同士で力比べしてたりと、穏やかな雰囲気が漂っている。心に余裕ができたことでの視点。

 

 その中に混じってゆったりたっぷりのんびりしていると、

 

「「「「「くえぇっ!」」」」」

 

 唐突に。

 バサバサァッ! という羽ばたきと共に、複数ものポケモンが飛び出してくる。

 それはざっと五匹からなる――野生のワシボンだった。

 

ヒュラ(おおう)っ?」

 

 いきなり立ちはだかってきたワシボンたち。

 どうもたまたま俺が目に入って挑んできた様子だ……群れバトルかな?

 

「くえッ!!」

 

 問答無用とばかりにワシボンの群れが襲い掛かってくる。

 対する俺は、いったんそれをかわして――事態を把握しほくそ笑む。

 ほう……向かってくるのか……逃げずにこのKYUREM(キュレム)に近づいてくるのか……

 いい機会だ。日頃のトレーニングの成果を試させてもらおうか!

 

 再度掛かってくるワシボンたち。

 それに俺は返り討つように口から冷気の光線を放った。

 

「っくえぇ!?」

 

 空気も凍り付く反撃にワシボンが慌てふためく。

 ――『れいとうビーム』。順当にレベルを上げていった俺が新たに覚えた技だ。言わずと知れた氷タイプ技の代表格で、今の俺のメインウェポンである。

 え、こごえるかぜ……? なんだっけそれ(1・2のポカン)

 

 それはさておき。

 狼狽するワシボンの群れに俺は積極的に攻め入った。

 弱点を狙わせてもらうが、これがポケモン勝負なんだから悪く思うなよ?

 

「くえぇーッ!!」

 

 不利を悟った一体が天高く叫ぶ。

 仲間を呼ぶ気か……いいぜ、いくらでもかかってきな。

 お前ら全員俺の経験値にさせてもらうぜ――

 

 

 

 強大な存在に目を付けられたような感覚。

 

 

 

 ぞっとして。直後、つんざく鳴き声が轟いた。

 

「わっわっわっわ!!」

 

 上空から飛来し降り立つ大きな影。

 明確な敵意を持って、俺の前に立ちはだかってくる()()

 それはワシボンの進化形で、しかし通常のそれよりも巨体のウォーグルだった。

 

 おい、ウソだろ……

 まさか――オヤブン個体のウォーグルってコト!?

 

「ワアァッ……!!」

 

 外敵である俺を、赤く爛々と輝いた目で睨むオヤブンウォーグル。

 ヒスイや未来のミアレじゃあるまいし、なんだってオヤブンが出てくるんだ……もしかしてここ、実はレジェンズBW(仮)の世界だったりするんか?

 なんにしてもマズい状況だ。俺一匹でオヤブン含めたこの数に敵う自信はない。

 

 だが、希望はある。

 ここから元いた川まではそう離れていないはず。ならば騒ぎを聞きつけてアイリスたちが駆け付けてくる可能性は多分にあった。俺は無理でも、アイリスや姐さん方の力を借りれば切り抜けられる!

 

「――ワアッ!!」

 

 と、考えを過らせていた矢先。

 オヤブンウォーグルは一瞬の内に距離を詰め、その爪で俺を掴み、空高く舞い上がった。

 

 なっ……『フリーフォール』!? それは無いだろおいィ!?

 行動を封じられて。俺はその場から連れ去られてしまった。

 

 ――体感として1ターン。

 叩きつけられるようにして地上に墜落させられる。

 

ヒュラ(ぐへ)ッ!?」

 

 い、痛え……実寸大キュレムだったらリアルでシャレになってないぞ……!

 だが起き上がった俺の前に、それ以上の危機が迫っていた。

 

「クワァッ……!!」

 

 オヤブンウォーグルと、取り巻きのワシボンが取り囲む。敵意は十分。

 ……ヤバい。ヤバすぎる。

 知ってか知らずか、オヤブンウォーグルによって場所を相当離されたせいで救援は望めなくなった。言うまでもないピンチに陥る俺。

 まさに危機的状況だ。

 

 もはや袋のネズミポケモンとなっている俺へと、今に襲い掛からんとする群れ。

 こうなったら死ぬ気で囲いを抜けるしか……! そう覚悟した時、

 

 

 

「ブワッフア!!」

 

 

 

 横やりを入れるが如く、荒々しい鳴き声が割り込む。

 同時に空から現れる複数の影――ポケモン。

 

 露骨な主張をするように飛来してきたのは、野生のバルチャイたち。ゲームでは知る人ぞ知る、ワシボンとバージョン違いで登場する対の鳥ポケモン。

 そして、それらを率いて来たのは進化形のバルジーナ――その通常より巨大な個体。

 目を赤く光らせた、オヤブン個体のバルジーナだった。

 

 突如乱入したオヤブンバルジーナの群れに、新たな敵意を向けるオヤブンウォーグルの群れ。

 それを受け、同等の敵意を剥き出しにするオヤブンバルジーナの群れ。

 いきなりに始まる縄張り争いの図。

 そこに巻き込まれた形の俺。

 

 いや、ちょ……

 マジでヒスイやミアレすぎんだろこれぇ!?




ちょっと詰め込みすぎなので次回に続きます。

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