歪な間隔で点在する不愉快に明滅する街灯、家屋の壁を越え道路にまで及んだ何度も上書きされたラクガキ、部屋の蛍光灯とは異なる光が漏れ出るガラスの割れた窓、電柱は途切れ途切れに倒れ、無理やり通ったのであろう路肩に押し退けられた瓦礫、そんな荒れた道路をカーラは早足で歩く。
やがてそれらは徐々にマシになっていく。街灯は数と光量を増し、僅かながら人通りが見えてくる。廃墟となった町を乗っ取った不良たちの生活園の中心、アーケード商店街を利用したそこにブラックマーケットがあった。入り口には車両が停まりそこから忙しなく物資のやり取りをしているのが見える。近づくにつれ喧騒が耳に届く。交渉や宣伝の声、わざわざそれらに負けないように張り上げた声で会話する不良たち、和気藹々とした雰囲気も一触即発の雰囲気もそこかしこに点在するそこは異様な空気感を醸し出している。
(想像以上に賑やかな場所だね。さて、まずは戦利品を売っ払うか。ここの入り口は売買というより精算の意味合いが強いみたいだ。仕事を受けてない私が今利用できそうにない。こういうのは中心に近づくほど信用出来るって相場が決まってるんだ。商品を横目に中央へ向かうとしよう。)
入り口からすぐ近くの店は露天商と大して変わらない有様だった。開けたコンテナに値札が貼っただけの商品棚にゴミ箱やかご一杯に積まれたよくわからない商品、傘のように立てかけられた銃らしき商品といった売る気があるのかわからない店が軒を連ねる。そのなかにはカーラの目的の1つである食料品らしき物もちらほら見かける。
(一番買うべきは鞄だね。少なくともこの付近で居を構えるつもりはないし。返り討ちにした奴らに案内させた方がよかったか?情報を精査する時間もないしこの案はダメそうか。しっかし口喧嘩は聞こえるけど銃声はしないね。この場を取り仕切ってる奴らは頑張ってるってことか。)
やがて店の装いが変えていく。商品を乱雑に置くのではなく、並び立てて展示している店が増えた。入り口から溢れんばかり一杯にジャンクが積まれた店もあるがそのどれもが先程までの店と違い、明らかに手入れされた看板を掲げている。聞こえる喧騒も先程までより穏やかになり*1、統一された武装を纏う機械人を見かけるようになる。
(そろそろそれっぽい店に入ってみるか。二束三文にしかならなくてもこいつらを持ち歩かなくてよくなる方が大きい。最悪ジャンク売りに流してやろう。…謳い文句はなんでも買い取ります、いいね。さっさと降ろしたいしここにしよう。)
選んだのはシンプルな店だった。のぼりにはやたらキャッチーな文字が躍っているのと対称的に外観は飾り気がない。ところどころの塗装は剥げ、看板は綺麗に保たれているが全く主張しておらず、店の名前が確認できるだけだった。窓から覗ける店内は狭く、ここからでも店内が見渡せる。中には壁にだけ商品が掛けられており、店員らしき人影が入り口から背を向けなにかを熱心に弄っている。
「邪魔するよ。」
扉を開けると取り付けられた鐘が来客を告げる。それにつられ店員の獣人が振り返りカーラを見据える。装いや店の規模を鑑みるに彼が店主で間違いないだろう。
「…見ない顔だな、新入りか?」
「さてね。なんでも買うってのは本当かい?」
「よっぽどのものじゃなければな。いくらうちでも人身売買なんかは専門外だ。」
「そんなもの持ってるように見えるかい?売りたいのはこいつらさ。」
カーラは最初に拾った2丁を除き戦利品を並べる。
「…これをどこで拾った?」
「なんだ、知り合いかい?そりゃ悪いことしたね。どれのことか知らないけど大半は返り討ちにした奴らの得物さ。」
「…まぁいい。盗品の買い取りはうちでもやってる。何が欲しい?」
「ここは物々交換なのかい?はした金になればそれでいいんだけどねぇ?」
「こいつらはどいつもうちのお得意様だ。少しは融通してやりたいんだ。それにあんたが背負ってるそれも、だ。」
「欲張りだね?ま、思い入れなんてないから別に手放すのはいいけど、代わりがないと話にならないね。」
「わかっている。少し待ってろ。とりあえず釣り合うようなものを出してくる。銃以外に必要なものは?それによって出すものを決める。」
「情報。…冗談だよ、半分くらいは。物で言うなら鞄だね。携帯に便利なやつがいい。」
「はは、情報なんてどいつもこいつも欲しがってる。情報は水物だからな。鞄ならいくらでもある…と言いたいが今は少し在庫がなくてな。盗品をまとめていれて鞄ごと盗って持ち込んでくるんから捨て値で売ってたんだが、それを何かに使いたいって奴が買い占めたんだ。あんなに鞄買って何がしたいんだか。」
「ならどこへ行っても鞄はないってことかい?」
「少し違うな。あいつが欲しがったのはレジ袋代わりに捨て値で売ってた盗品の鞄だ。ちゃんとした鞄ならそこら辺に置いてるだろうよ。だがおまけなしで銃だけってのは交換として成り立たないし気が引けるな。…チェストリグなんてどうだ?」
「見てみないことにはなにも言えないね。」
「少し待ってろ。在庫を持ってくる。」
そう言って店主は近くの扉から奥に引っ込む。手持ち無沙汰になったカーラは客用の椅子に座り、これからの予定を立てるためにスマホを弄る。すぐに参加できるバイトを眺め、そのうちの1つに目をつける。夜間バイトの一環、巡回及び監視業務である。日常的に物資の搬入に使われるそのエリア周辺の警備が目的のそれは外縁部の偵察に人手を必要としており、確約される報酬は少し物足りないが何かが起きた場合は別途報酬がでると謳うそれは今のカーラにとって都合が良いものだった。
(これなら色々試せそうだ。この世界の機械に触れるチャンスでもある。なによりこんな信用していませんなんて書き方されるならこっちも気が楽でいい。有事の際は先方の対応次第でいくらでもやりようがある。)
ブリーフィングは指定された場所で行われ、時間に間に合わなければ話が消えるだけという調べた限りこの世界のばら撒き依頼によく見られる形式のものだった。
カーラが依頼の形式を比べていると店主がカゴに色々積んで表に出てきた。何度か往復してそれらをカウンターに広げる。多少無作為に見えるが、何らかの意図があるのだろう配置で商品が並べられていく。並び終えたそれらは大きく5つのまとまりに分けられた。
「6ポイントやる。左から順にポイントが増える。左端が1で右端が5だ。好きな組み合わせを選べばいい。」
1
「とりあえず持ち込んだ銃と同じカテゴリのものと取り回しのいいハンドガンを並べてある。他のカテゴリが欲しいなら言ってくれ。といっても特殊なやつは4や5になるだろうが。バラさないなら好きに検分してくれて構わない。」
「ならマガジンと弾薬はどうなる?」
「それぞれ満タンで2つ、計4つってところか。勿論追加で払うなら在庫のやつを出すぞ。」
「…なら選んでいる間にここにはない商品のリストを出して貰えるかい?特に工具みたいな武器以外のやつを。あるなら追加で買いたいんだ。」
「ポイントにしなくていいなら据え置きのやつがそこの紙に載ってる。相談にも乗るぞ?」
「そうだね…なら世間話でもしようじゃないか。最近の売れ行きはどうだい?」
店主と他愛のない話をしながら商品を選ぶ。情勢や各地のブラックマーケットの特徴を聞きながらカーラは結局3pのSGとリグを選ぶ。
「それで決まりか?なら他のやつは下げてくる。リグのつけ方はわかるだろうが調整は出来るか?」
「誰にもの言ってんだい。着替えさせてもらわないといけないほど幼くないよ。」
「悪かったな。だができないやつがいるのも事実なんだ。」
「…あんたも苦労してるんだね?」
「まぁな。で、他にいるものはあるのか?」
「なら工具一式と通信ケーブルがいくつか、それとデカいマガジンにフラッシュメモリが欲しい。」
「わかった。少し待ってろ」
今度は引っ込んですぐに商品を手に店主が戻ってくる。
「そのショットガンに合うマガジンはこれだ。円盤2個とバナナを1個をサービスしてやる。バナナにはスラッグを詰めてる。こっちがケーブル。規格が別の3種類だ。これなら少なくともPCに接続するのに困らんだろう。フラッシュメモリも両端が別の規格になってる。言うまでもないが衝撃には気をつけろ。このポーチに入ってるのが工具一式。消耗品は1回分だが整備も日曜大工にも困らんだろう。」
カーラはそれらを受け取るとリグに詰めていく。ポーチはベルトに付けることができたため、リグのベルト部分に取り付けた。具合を確かめたカーラは店を出る。
「色々世話になったね。またくるよ。」
「次はまともな取引で頼むぞ。」
店長の苦笑いの混じった見送りの言葉を背にカーラは次の店を探す。が、想定より長居してしまったために目をつけていた傭兵バイトの時間が迫っていた。向かう分には時間が余りに余るだろうが納得いく買い物をするには心もとない時間。
カーラは目的地に向かいながら食料品を買い漁ることにした。リグには小物入れにバナナが3つ、ドラムマガジンが2つ入るように拡張されていた。かさばっていた大量のマガジンがなくなり、リグにもポケットにも携帯用の食料バーをいれるには余裕がある。メモリや工具は多少値が張ったがそれでも電車から降りたときを思えば所持金には余裕がある。
結局カーラは一旦の予算を所持金の1割に決め、うち半分で冒険することにした。両のポケットに詰めるだけ買い込んだそれらは、その中を1種の闇鍋にしていた。カーラは歩きながらうち1つを無作為に選びパッケージを写真に残して食べ始めた。リグのバナナをいれる場所にはペットボトルの水が入っている。
(これは…食感が砂だね。味は悪くない…というか味がしない。あとはどれだけ水と反応するか…。流し込んでみるか。うーん…控えめに言って泥だね。かなり水を吸ってるみたいだ。総評は食えないことはない…っと。)
カーラはそれをきっちり胃袋に収め、バイトに向かうのだった。
書いてて思いました。私カーラの服装の描写してませんでした。前回の描写で混乱させてしまったと思います。
申し訳ありませんでした。後でプロローグにでも加筆しておきます。
原作介入ってどこまで見たいですか?参考までに
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先生にほぼベッタリくっついて介入するべき
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アビドス第一章から全てに個別で顔出すべき
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偶然遭ったなら手伝うべき
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メインストーリーには非干渉を徹底するべき
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なんでもいいからエタらないよう完結すべき