今日も世界は、緩やかに動いている。
「『次は、新宿、新宿です』」
変わりない日常。変わりない風景。
『こんにちわ』
『やっほー』
変わりない人生。
『ローン…』
『残高が…』
そして、それは幻想郷に於いても同じである………はずだった。
幻想郷。
外界から忘れ去れた者の行き着く最後の土地、森羅万象様々な者が存在する"桃源郷"である。
朝霧の立ちこめる川辺。
此処は、山奥の小さな掘立小屋。
無数の木と岩に覆われた天然の出版社だ。
「んんん、あぁ〜ネタが、ネタがぁ!」
その中に、締め切りに追われる者が一人。
名は射命丸文。
妖怪の山に住み【文々。新聞】を掲載している文屋だ。
そして、彼女の側でお茶を立てる者も一人。
「あまり頭を使いすぎるとパンクしちゃいますよ〜」
名は犬走椛。白狼天狗で、文の実質的な部下である。
「はいお茶です」
椛は茶杓を置き、茶碗をゆっくりと机の上に乗せた。
「あ、ありがと」
文は筆を一旦止め、一服した。
そして、乱れた心を整えようとする。
しかし、すぐに頭を掻き始め、肘を机に置いて悩み始めた。
「でもさ、ネタがないとお茶がいくらあっても足りなくない?」
「は、はぁ。そこの所は私には分かりかねます」
文の萎んだ顔つきに、椛は助言しようと頭を捻らせた。
椛は手を合わせて言った。
「そういえば、森の魔法使い伝いで聞いた話なのですが…」
前置きを始めると、文の耳がピクリと動いた。
「…どんな?」
「確か、人里で妙に噂が広まり易くなったとか。それも、どれも信憑性のない悪い物ばっかりだそうで…」
そう言い終えた途端、文は机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「ほぉ!」
「うわぁっ!、びっくりした」
「これは、っいい匂いがしますね。行きますよ!」
文は慌ただしく戸棚を開け、中から正装とカメラを取り出す。
今までの憂鬱さが嘘の様に、寝巻きを速攻で着替えてフィルムの準備をし始める。
そんな彼女の横で、椛は口を開けたままぽかんとしている。
そんな椛に文は一言。
「なにやってるんですか?、行きますよ!」
「…え?」
呆気に取られる椛の腕を掴み、彼女は錆だらけの扉を蹴破った。
「あぁ!?、何してるんです!?」
「椛、捕まってください!、それと目も閉じといて!」
椛は慌てて文の腕に抱き瞼を固く閉じた。
すると、文は腰に巻きつけたベルトから八手を取り出し、頭上へと翳す。
軽快なステップを踏み、文は口を大きく開けて叫んだ。
「いざ、特ダネの地へ!」
その瞬間、疾風が巻き起こり、近くの大木がゆらゆら揺れた。
落ち葉は、また木に生えようと思う程に高く飛び上がり、彼女らの背景を淡い緑で覆い尽くした。
「…………ウググゥっ…!」
強風で煽られながらも、椛は文の腕を離そうとはしない。
速度はマッハ10、話したらひとたまりもない。
「………、もう開けていいですよ?」
そう言われ、彼女が目を開けると。
そこには、朝日に照らされ黄金に輝く、天にまで届くかの様な、白雲の姿があった。
文はにんまりして言った。
「ラッキーですね。普段は私しか見ないですから」
「…えぇ、素晴らしい景色です」
「でも、目的はこれではありませんよ。下に見えるでしょう?。あれが人里です」
文は下の家々を指差す。
しかし、人生初めてなのだろう。
椛はその黄昏に目を輝かせて居た。
「……でも、ここまで綺麗な雲は久方ぶりですね。….それに、貴女も見惚れて目が離せない様だし、後もうちょっとだけ、私も見惚れていますか」
こうして、彼女らの取材一日目は朝日と共に始まったのである。
今日2025年十二月二十五日!
皆はクリスマスでワイワイしてるなか、主はこの世界、ハーメルンに初めて足を踏み入れて居た。
友達がいない…? ハハっ
そんな中で書いた文章です。