おれは しょうきに もどった!
いかんいかん、突然の百合で思考回路がバグっていたようだ。
俺は1人のオタクとして、百合も相応に嗜んでいる。
それはデンレゼ以前からの話だ。
いわば、塩鮭とハンバーグの様な関係性である。
味の濃いハンバーグを楽しみ好む時期があってこそ、シンプルな旨味の塊である塩鮭の美味しさが分かるようになる。
そして塩鮭の旨味を楽しみ好む時期があってこそ、ハンバーグのパワフルな味わいが身に染みる。
どちらが良いという話ではない。
みんな違ってみんな良い。違う良さを知るからこそ、今ある良さを再確認できるという話だ。
「アサ、もう大丈夫なのか?」
「え?」
「なんかレゼさんに介抱されてたって聞いたけど、何かあったのか?」
「は?」
なんで急にそんな戦争の悪魔みたいな目をするんだ。
「アサちゃんならもう大丈夫だよ。最近暑いからね」
「あぁ、そういう感じの。あんまり体冷やすもんじゃないですけど、この季節はそう言う訳にもいきませんよねえ」
「ねー。寒い地方とかだったら考えなくていいんだろうけど」
突っ込まん。突っ込まんぞ。
「あれ、2人とも食べる所だった?」
「丁度な。一回ジョージがひっくり返したけど」
「いやはや、その節は本当にご迷惑をおかけしました……」
「おかげで作りなおしだよ。はい、チャーハンね。後デンジ君のオムライス」
マスターが新しい物を運んできてくれた。勿論追加の料金は払う事になっている。
「あ、それあるんだ」
「あるんだってなんだよ」
「だってコーラとシーザーサラダは普通に心配になるでしょ」
「何が?」
「食べ合わせ以前に、栄養価とかさ」
「ンな事言ったらチャーハンだけのジョージの方がやべーだろ」
「俺は良いんだよ。デビルハンターだから」
「じゃあ俺も良いだろ」
「公安だからダメ」
「なんじゃそりゃ」
「俺の担当よりやべー悪魔が相手なんだから、用心しろって事」
さて、実食。
「うん……まぁ……うん……」
「なにその顔」
「まあその、なんて言うか……マスター! 追加でコーヒー頂戴!」
「そういうのが一番傷つくんだけどなぁ!?」
「うっすい奴で良いから! なんならマスターが淹れた奴で良いから!」
「『なんなら』って何!?」
なんならはなんならです。
「どんな味だったらそうなるの……?」
「ホレ」
アサがおっかなびっくりという感じで聞いてきたので、レンゲですくって口元に突き出す。
隣に座っているので簡単なものだ。
ちなみにデンジの隣はレゼが座っていて、デンジの前に俺が座っている。
四人掛けのテーブルに客2人と店員2人が詰めている訳だが、これは大丈夫なんだろうか。完全に別の店になっていないだろうか。
具体的には店員と書いてキャストと読むような感じの。
少し躊躇う様な間を置いて、アサがレンゲに口を付けた。
結構思い切り行っており、もう少しでレンゲを持っている指に唇が当たりそうだった。
大丈夫かそれ。喉やってないか?
「うん……これは……その……うん……」
アサは先ほどの俺と同じ、物凄く微妙そうな顔になった。
不味いわけではない。それは断言できる。
だが、諸手を上げて『美味い!』と快哉を上げるには不足する。
では具体的に何が欠点なのかと聞かれると返答に困るぐらいには完成度が高い。
じゃあ売りになるのかと聞かれると店のコンセプトを度外視しても厳しいと言わざるを得ない。
そんな肯定と否定の反復横跳びが無限に起きる、ある意味とんでもないチャーハンである。
必然、その葛藤が作り出す表情もまた中途半端と言う訳だ。
「ちょ、ちょっと私コーヒー淹れてくる……」
「いってら」
もう何も言うまい。
この葛藤から逃れる術は、口内に残る味を全て洗い流すことだけなのだ。
「あ、ジョージ君、ちょっといい?」
「んむ? どうしました?」
「掃除道具の位置間違えてるから、直しといて」
「……まあ、良いですけど」
俺客だよな?
粗相をしたことは認めるけど、俺客だよな?
◆◇◆◇
「いやー、見せつけてくれますなぁ」
「ん? なにが?」
ジョージがマスターに呼ばれて奥に行った後。
ドアの向こうに消えたことを確認してから、レゼがそう言いだした。
「だって見た? さっきの」
「さっき?」
未だにピンと来ない様子で、デンジはオムライスを食べている。
「ほら、ジョージ君がご飯食べさせてたでしょ? あんなのよっぽど仲良しじゃないとできないじゃん」
「そうか? 俺結構やってるぜ?」
デンジが思い出すのは、同居している血の悪魔……厳密には、血の悪魔が死体にとりついた結果生まれた、血の魔人ことパワーの事だった。
野菜を絶対に食べようとしないパワーの口に野菜をねじ込むという業務は、同じく同居人、というか家主の早川アキが悪魔との契約で片腕を失ってからはもっぱらデンジの仕事である。
そんなデンジからすれば、口に食事を入れるという行動に何のロマンスも感じないのだった。
敢えて何か思う所があるとすれば、あれぐらい素直に食べてくれれば楽なんだけどな、ぐらいである。
いちいち殴り合いの喧嘩をしてまで食べようとしないパワーは厄介な奴だと思うが、片方とはいえ腕を失って色々不自由するだろうに頑なにメニューに野菜を入れ続けるアキもアキだと思う。
「やってるの!?」
「おお」
「へー……誰に?」
「パワーって名前の……一緒に住んでる奴」
「変わった名前だね」
「俺もそう思う」
「それで……そのパワーって言う人は、男の人? 女の人?」
「一応、女だけど」
「へー……ふーん……へー……」
さしものデンジも、何かがおかしいと気付く。
レゼの顔からはいつもの赤らみが消え、目は細まってこそいるが笑っておらず、口角のつり上がりにはどこか違和感を覚える。
「仲いいんだ?」
「いやぁ……仲良くは、ない。殴り合いの喧嘩とかしょっちゅうだし」
事実である。
マキマと映画館を梯子しまくったあの日の朝、アッパーカットで天井までぶっ飛ばされたことは記憶に新しい。
その日以来、パワーは血抜きという事でマキマが預かっているので、しばらく顔を見ていないが、まあ元気にやっているのだろうと思う。
だが、何故だろうか。
自分の話した言葉が、どことなく寒々しい言い訳の様に思えるのは。
「私はしたこともされたことも無いけど、デンジ君はあるんだ?」
「あるっつってもホント、ぜってえ食わねえ野菜食わすためで、仲いいとかそういうアレじゃねーっていうか……」
事実である。完璧に、一部の隙も無く、事実である。
しかしレゼはどう見ても納得していないというか、不機嫌な様子を隠そうともしない。
「てっ、ていうかあの2人! ジョージとアサ! 本当にそんなに仲いいのか?」
デンジは話を逸らすことにした。
「そりゃあ……仲いいでしょ。ジョージ君が何かにつけてアサちゃんのこと気にかけてるし、アサちゃんはアサちゃんで、ジョージ君の為にってあんなにコーヒー淹れるの上手くなったんだし」
「そんな理由あったのか」
「ただの職務意識であんなに上達する訳ないからね。マスターが色々教え始めたのだって、そういう熱意に押されたからだし」
「へー」
「まあ、それで腕で追い抜かれて、マスターが凹んでるんだけど」
「おお、ジゴージトクって奴だな!」
「なにそれ。すっごいヤな感じ!」
若者の青春を応援しようと手助けしたら長年の技術を全部ぶっこ抜かれたマスターは泣いて良い。
しかし、それを『自業自得』というだいぶ身も蓋も無い言い回しでまとめたおかげで、ようやくレゼの顔に笑みが戻ってきた。
おかげでデンジもプレッシャーから解放されて、ようやく頭が回り始める。
しばらく笑っていたレゼが呼吸を落ち着けてから続ける。
「はぁ~……やっぱり、目的意識があった方が早いんだろうなぁ」
「レゼは、そう言うのねえの?」
「私?」
ふと、過去のことまで振り返ってしまう。
モルモット。
祖国の兵器。
爆弾の武器人間。
その全てが、レゼが望んで得たものではない。
しかし、その全てがレゼを指し示す称号だ。
レゼの人生に『目的意識』など無かった。
自己と国家と同一視し、個我を抹殺する生い立ちに、そのようなものがあるはずがない。
他者から強制的に押し付けられたものを、人は『目的意識』とは呼ばないのだから。
事実、レゼはコーヒーの淹れ方すら、この店で働くまで知らなかった。
「私は……そうだなぁ……」
分かっている。デンジは恐らく、そう言う意味で聞いたわけではない。
ジョージに尽くすアサという構図を知った事で、レゼが尽くす誰かがいるのではないかと、ある意味で不安に思ったから聞いたのだろう。
或いは、それが自分ではないかという期待も込めて。
だが、忘れていた灰色の過去を断片的ながらも思い出したことで、レゼの気持ちはわずかに落ち込んでいた。
「そういうのは、無いかなぁ……」
自分でも驚くほどに、低く、抑揚のない声だった。
これは失敗だ。
本来のハニートラップとしては、どう考えても『いる』と答えたうえで、それがデンジであるかのように匂わせた方が絶対に正しい。
そんなことは分かっている。
言葉にするよりも先の段階で、ずっとそう思いながら、それでもその言葉が出てくることを止めようとしなかった。
「じゃあ、さ。その……」
その言葉を聞いたデンジがたどたどしく言葉を繋いでいく。
少しじれったくなるようなそれを、レゼはどこか達観した様な思いで聞いていた。
「これより美味いオムライス、作ってくれよ」
レゼがデンジを見る。
デンジは顔を背けて表情を見せないようにしていて、どんな表情をしているのかは分からない。
でも髪から垣間見える耳が真っ赤に染まっていることから、どんな顔色をしているのかはわかる。
きっと、本当に全部が真っ赤になっているのだろう。
そしてレゼの方に差し出されるスプーンの上には、デンジの皿から取り出されたオムライスが一口分乗っている。
食べろ、という事だろうか。
食べて、良いのだろうか。
デンジには家族がいるらしい。
本当に家族と言っていいのかは知らないが、少なくともひとつ屋根の下で過ごす仲間がいるらしい。ある程度手の掛かる妹の様な存在らしい。しかし別にそのことを苦に思っていない様だった。
その妹分と同じ様な扱いを受ける資格が、自分に本当にあるのだろうか。これを受け入れる事は、何か罪深い行いではないのだろうか。
そんな雑然とした、意識的にねじ伏せ、封じ込め、直視しないようにしていた思考が、レゼの中に溢れる。
デンジは恥ずかしさが極致に達したのか、手先の震えがどんどん大きくなっていく。
その震えは、やがてスプーンの上に乗ったオムライスを不安定に揺らして。
ポロリ、と。
スプーンから零れる寸前、レゼはそのスプーンを口に入れていた。
「……」
思わず、反射的に食べてしまった。
ケチャップの酸味とチキンライスの穏やかな旨味が、柔らかな卵に包まれて一体となった味が、レゼの口の中に広がる。
だが、その味をレゼは全く感じていなかった。
スプーンに別の力が加わって、恐る恐るこちらを振り向いたデンジの顔をずっと見ていたから。
顔は赤い。
しかし耳まで真っ赤に染まるというほどのものは流石に落ち着いたようで、その赤らみは頬程度に留まっている。
デンジが目を見開いている。思いのほか、深いところまで口に入れたのが意外だったのだろうか。
何かに動揺したのか、手を引こうとするデンジの動きを、口の締め付けで制止する。
レゼは意識的に唇を強く締め付けて、まるでスプーンをきれいに掃除するかのように、ゆっくりと顔を引いた。
一口分のオムライスを何度か咀嚼して飲み込む。
その一連の動きを見ているデンジを、レゼはずっと見ていた。
「……どうよ? 作れると思う?」
「……あ」
そう言えば、そういう話だった。
「この店、何頼んでも結構ウメーけど、どう?」
声が上ずっているし、滑舌も悪くなっているし、頬は赤らんだままだし、視線はちょっと逸れているし。
頑張って何でもない風を装おうとしているのだろうが、これではバレバレも良い所だ。
レゼは少し考えて。
「……よくわかんなかったから、もーいっかい」
「えぇ!?」
事実である。
レゼはずっとデンジに集中していたものだから、オムライスの味自体はほとんど印象に残っていない。
だから、この状態でオムライスの味をレビューすることは出来ないので、その為にもう一度……というのも、何も間違ったことではない。
だが、何故だろうか。
自分の話した言葉が、どことなく寒々しい言い訳の様に思えるのは。
「ほら、はーやーくー」
レゼは口を開けて、目を細め、デンジに次の一口をお願いし始めた。
デンジはすぐに応じようとしたが、やっぱりなんとなく顔を直視できなかったので、顔を背けて同じ様にしようとしたが。
「デンジく~ん、口はそこじゃないぞ~。ちゃんとこっち見ないと」
レゼが自分からスプーンを迎えに行かないものだから、そう言う訳にもいかなくなってしまった。
デビルハンターで鍛えた鋼の精神力でレゼの方に顔を向ける。
レゼはデンジが想像していたよりも3倍は大きく口を開いていて、迎え舌を出してスプーンを誘っていた。
「ほら、ちゃんと……こっち見て……」
なんだか妙な事をしているような気分になりながら、デンジはレゼの口内へとゆっくりスプーンを差し込む。
先ほどと同じ様に、レゼの唇が強く締め付けられながら、これまたゆっくりとスプーンが出てくる。
改めて、喫食。
「……うん……これは……その……うん……」
不味いわけではない。それは断言できる。
だが、諸手を上げて『美味い!』と快哉を上げるには不足する。
では具体的に何が欠点なのかと聞かれると返答に困るぐらいには完成度が高い。
じゃあ売りになるのかと聞かれると店のコンセプトを度外視しても厳しいと言わざるを得ない。
そんな肯定と否定の反復横跳びが無限に起きる、ある意味とんでもないオムライスであった。
◆◇◆◇
その事件は、2分後に起きた。
掃除道具をしまっていたバックヤードにて、デビルハンターのジョージが倒れているのが発見されたのだ。
第一発見者はレゼ。掃除道具の位置を教えるためにバックヤードに入った所、現場を目撃したと語る。
床の埃を使ってダイイングメッセージを記述しており、『デン』とだけ書かれていた。
「バックヤードに入った時には、既にそうなっていました」
レゼはそう語る。
「私は別の所でコーヒーを入れていました」
アサはそう語る。
「そんときゃ、俺は席でオムライス食べてたな。他の客はいなかった」
デンジはそう語る。
「裏にも出入り口はあるけど……カギはちゃんと掛けていたよ」
マスターはそう語る。
「つまりこれは……密室殺人、と言う訳だな」
ジョージはそう語る。
「「「「……」」」」
「……ん? どうした諸君、何故そんな目で俺を見る?」
「ジョージが生きてたら殺人でも何でもないだろ」
「確かにその通りだな。全く! 一体誰が殺人なんて物騒なことを言いだしたのか」
「お前だろ」
「は? 言ってないが?」
「……コワ~」
事件は終息した。
「ってかなんで俺の名前書いてるんだよ」
「ダイイングメッセージなんて信用するもんじゃねえぞ」
「いやジョージ君生きてるから。全然『ダイイング』じゃないから」
「えー、論破されてしまったので白状すると、デンジのすっげえ初心な感じの言動が面白過ぎて床で抱腹絶倒してたからだな」
「……見てたの!?」
「一部始終を完璧に脳裏に焼き付けたが?」
「なんでそんなに堂々としてるんだ……」
「なんなら隠し持ってたケータイで録画したが?」
「余罪が出てきた」
「えぇ……」
アサがドン引きの溜息を吐いている。
「あ、そうだ。レゼさん、後で連絡先の交換できます?」
「え? そりゃいいけど……なんで今更?」
「ちょっと、今回の録画と前回の盗撮の成果をシェアしようと思って」
「まだ余罪が」
「ていうか、なんで相手が私なの」
「主な被写体がデンジになってしまったので、じゃあレゼさんの方が喜ぶかなって」
「……まあ、受け取ってあげましょう!」
「レゼ!?」
「レゼ先輩!?」
好奇心には逆らわないというか、ある意味欲望に忠実と言うか。
しかし……ふむ、思ったよりデンジに対する好感度が高い気がするな。
レゼの好感度がどう動いたかについては諸説あるが、個人的には『ネズミ問答』での得点が一番高かったと思っている。
都会のネズミが良いと答えてレゼとの価値観の違いを一瞬出しつつも、『食えて楽しけりゃそれでいいのか?』という問いに対する即座の肯定。
これはある意味での、田舎のネズミという価値観にも適合し得るという事を示したわけだ。
まさしく『落として上げる』の典型例と言える。
なので、それ以前の日常段階である現在、そこまで好感度が高いわけではないと思ったのだが……案外、そうでもないのか?
ここでアサが疑問を呈する。
「シェアっていうけど、どうやって?」
あ、そうか。
1995年って、写メ無いんだっけ。
「……そりゃまあ、秘密の場所で落ち合って、メディアとメディアプレーヤーを譲渡する感じになるかな」
「……それ大丈夫?」
「どうです?」
レゼに振る。
「えっ、別に……」
「いやほら、その辺結構デリケートなタイミングかなーってのは確かにそうなんでね」
一瞬の流し目でデンジを示せば、レゼはなんとなく察した様で。
「あー……じゃあ、やっぱりここで受け取ろっかな」
「マジで? 俺の前で俺の盗撮映像のやり取り行われんの?」
「それはそれで倒錯的な話だなぁ」
「一番倒錯してるのは、きっちり盗撮してるジョージだと思うけど」
「それはそう。でもあの光景を保存するなって方が無理があるね」
「何を堂々と……」
実際問題、このビデオを前世に持ち込むことができたら、多分色んな人間が助かると思う。
デンレゼの尊さは生きて腸まで届いてその内ガンにも効くようになるから。
「たまにあるだろ? なんかこう、未来に向けて保存したいなぁ、って感じの光景。朝日が昇る所とか、花火大会のクライマックスとか」
「他人のやり取りに何を見出してるの」
アサは呆れて物も言えないって感じだが、レゼの方は逆にちょっと恥ずかしがっていた。
デンジは無感情だった。流石チェンソーマン。
「って、そう言えば、花火大会は本当にあるんだったか」
「え? ホント?」
「ホントホント。今週末だったかな。縁日も立つらしいぞ」
「どこ情報?」
「区役所」
「何の面白みも無い返答」
「情報源に面白みとかねーよ……マスター!」
ちょっと声を張って問いかける。
「どうしたの?」
「この店って大体何時ぐらいに閉めるの?」
「18時ぐらいだね」
「ありがと」
「はいはい」
アサに向き直り。
「アサ、一緒に行かないか? 確か、本命の花火大会は20時半だったはずだから」
「えぇ、それ補導とか大丈夫?」
「こういうお祭りの日は結構緩い傾向強いからな」
「じゃあ行く」
「おーけー……浴衣着る?」
「着ない」
しかし、花火大会が近づいてるとなると……この二道での日々も、そろそろ終わりか。
惜しい。
だが同時に、少し楽しみでもある。
運命がカードを混ぜ、悪魔がカードを配った。
カード交換とベッティングを繰り返し、ついに始まるオープンハンズ。
勝負は一度、ただの一度。相手はジョーカー。
高揚もするってもんだろうさ。
ジョージ君の扱いは多少マシな東堂葵って感じ