デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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原作と大して変わらない心情描写しかできないっぽい所は飛ばします。
あと読み返す程に「会話の独特のテンポ感真似できねェ~」と悦に浸っています。


劇場、開場、首尾上々

 花火の開始は20時半から。

 この事実が意味する事は、この世界は言うなれば『劇場版』に準拠するという事だ。

 

 レゼ編では、レゼがボムガールになってデンジを攻撃した際に、民間のデビルハンターが登場するシーンがある。

 

 この時に戦闘開始時刻を無線で記録に残しているのだが、原作では『18時半ごろ』で、劇場版では『20時半ごろ』だったのだ。

 細かい数字については流石に覚えていないが、これらと花火大会の開始時刻を合わせる事で、原作準拠か劇場版準拠かが分かると言う訳だ。

 

 で、これがどういう意味かと言うと、劇場版でのVSレゼはとにかくド派手になっている。

 よって、戦闘の余波とそこからくる被害が、原作版のそれとは比べ物にならないのだ。特に前哨戦となる台風の悪魔は相当に描写が盛られていた。

 

 特にそのつもりはないが、仮に何らかの形で介入しようとすると、俺も相応に力を発揮しなければならないだろう。

 

 まあ、ここら辺については全面的に『助けてチェンソーマン』のスタンスで行くつもりだ。

 あの戦闘は半分ぐらいデンレゼの痴話げんかだと思っているので。

 

◆◇◆◇

 

 レゼは苛ついていた。

 イマイチ進捗の実感がつかめない任務に対してではなく、それを急かしてきた祖国に対して。

 

 どうも別件で日本を訪れていた同志ミハイルが、帰り際にレゼに接触してきたのだ。

 祖国は思いのほか焦っているらしく、『早急にチェンソーの心臓を持ってこい』と改めて命令された。

 

 同志ミハイルは熟達の銃器設計者である。

 日本に来ているのはその筋での公的な用事であり、彼本人は身バレの危険が存在しない。

 

 しかしレゼは違う。

 レゼは工作員であり、非合法の存在であり、マキマの支配する日本での身バレは即座の死を意味する。

 いくら焦っているとはいえ、そんな状況下にある工作員に非公式であろうと接触してくるなど、こちらの命を軽んじているようにしか思えない。

 

 ……否、事実として、軽んじている。

 

 何のことは無い。

 平和な日本の、平和な高校生を演じているうちに忘れていただけで、レゼの命の価値などずっとその程度だ。

 どれだけ粗雑に扱い、或いは放り捨てようとも、ピンを引き抜けば即座に戻ってくる、便利な便利なソ連の爆薬。

 

 それがレゼの全て。

 

 知っている。否、知っていたことだ。

 当たり前すぎて、常識的過ぎて、レゼが取りこぼしていただけだ。

 

 そしてただ、それをもう一度見せつけられただけだ。

 

◆◇◆◇

 

 二道のテーブル。

 モーニングの喧騒が過ぎ去り、長く閑古鳥が居座るこの場所で、レゼは教科書と大学ノートを開いて勉強していた。

 

 ある種のストレス発散だった。

 

 ロシア人であるレゼにとっては、日本語で書かれた教科書は読み辛いったらない。使われている文字の種類が多すぎる。

 その内容を捉えて、要約し、日本語でノートに記述する。これもまたなかなかに骨の折れる作業だ。

 

 だが、それで良かった。

 

 日本語による勉強で四苦八苦している時、レゼはまるで自分が本当に日本の学生であるかのような気分になれた。

 寝ぼけ眼で朝食を取り、カバンの中に教科書とノートを詰めて、通学路で出くわした友人と学校へ行き、真剣な顔して授業を受けながら、気になる男の子を横目で盗み見る。

 そんな、普通の高校生であるかのような。

 

 単なる現実逃避だ。

 それは分かっている。分かった上で、その逃避に溺れる事が、こんなにも心地よい。

 

 ガランガラン。

 

 ドアベルの音だ。

 

「あ、お客様だ」

 

 気になる男の子を見るのと同じ様に、横目でドアを盗み見る。

 そこにはレゼがちょっと気になる男の子のデンジが居た。

 

「昼食い来た」

「一週間も連続で来るほど美味しくないでしょ」

「ウマいよ?」

「美味しいよ?」

 

 マスターが遠距離から苦言を呈するが、あんなオムライスを作った時点で弁護の余地はない。

 

「バカ舌」

 

 べ、と少し馬鹿にするかのように舌を出した。

 デンジに対しても、勿論マスターに対しても。

 

「今日はアサいねえんだな」

「浴衣見るんだって」

「……着ないっつってなかったっけ?」

「サプライズって奴じゃない? ジョージ君もわざわざ言及したって事は、案外見たいのかもよ?」

 

 正直アサは男の趣味が悪いと思う。

 一方で、それほどまでに尽くそうと思える相手がいる事実と、それが許される環境が酷く羨ましくもあった。

 

 だからこそ、そんな可愛い後輩をあまり気に留めず、悠々自適に振舞い続けるジョージにヘイトが溜まったりもする訳だが。

 

 デンジはメニューを開いて、注文を考え始める。

 

「そうだなぁ……カレーと……アイス……あ! あとチャーハン!」

「オムライスは如何ですか、お客様~」

「いーよ、勉強中だろ? 店員のクセによ」

「君は学校行ってないだろ~? 16歳のクセによ」

 

 そっけなく断られたことに口を尖らせて抗議しながら、レゼは続ける。

 

「そっちの方がヤバいと思いますけどねぇ」

「そうかなぁ……そうかあ?」

「学校行かないでデビルハンターなんて珍種だよ。珍種」

「珍種って事は無いだろ。ジョージだってそうなんだし」

「いやぁ、ジョージ君も大概珍種だと思うけど」

 

 デンジは公安のデビルハンターである。

 その実態は『かろうじて悪魔じゃないので、ひとまず監視しつつ、可能な限り利益を生むように運用する』というものだ。

 言い換えると、『強制的にデビルハンターとして働かされている』とも言える。

 

 しかしジョージの場合は民間のデビルハンター。

 つまり、始めたのはあくまでも自分の意志だし、続けるかどうかも本人の匙加減一つ。何時でも辞められるのだ。

 言い換えると、『自主的にデビルハンターとして働いている』とも言える。

 

 学校へ行ったりする普通の人生の権利を捨てて、ローティーンでありながら悪魔と殺したり殺されかけたりで生計を立てている。

 珍種具合で言えば、デンジとどっこいどっこいだ。

 

 レゼが欲してやまない権利をいともたやすく捨てている訳だ。

 そう言う所も、レゼが今一つ彼を気に入らない理由なのだが。

 

「……こっちで勉強しよ~と。そっち詰めて詰めて」

 

 レゼは勉強道具一式を纏めて、デンジの隣へ移動する。

 テーブルに広げた勉強道具をみて、デンジはぼそりと呟いた。

 

「……漢字は読めるようになりたいかな」

「漢字読めないの!? じゃ教えてあげる!」

 

 ノートの片隅にさらさらと漢字を書いて。

 

「じゃじゃん! これは何と読むでしょう?」

「『キンタマ』だろエロ女!」

「なぁんだ、分かってるじゃん」

「唯一、金玉だけは読めるんだよ」

 

 つい1週間前に開いた最強の大会のおかげである。

 ちなみに、優勝賞品である『サムライソードの玉金』は適当に投げ捨てた。

 

「アッハハハハハ! なんじゃそりゃ!」

 

 あまりにも奇妙な学習状態を聞いて、レゼが笑う。

 そんなレゼの笑顔を見て。

 

「レゼとなら学校行きたかったかな。なんか楽しそうだし」

 

 デンジはそんなことを零した。

 言った直後に、自分は何を言っているのかと自問したが、物凄く嬉しそうな顔をしたレゼが自答よりも先に言葉を放つ。

 

「行っちゃいますか? 夜」

「夜?」

「一緒に夜の学校探検しよ?」

「します……」

 

◆◇◆◇

 

 二道の中で、レゼが勉強道具を広げていたのを確認した。

 つまり、恐らくは夜の学校探検は今晩で、花火大会で戦闘が始まる公算大と言う訳だ。

 

 軽く二道で雑談をした俺は早々に引き上げて、決戦に向けた仕込みの仕上げを済ます。

 

「もしもし?」

 

 電話口から相手の声が聞こえる。

 

『完了しました。指定の電話番号に掛ければ、いつでもジャック可能です』

「ご苦労さん。依頼料は指定の口座に振り込んでおくよ」

『どうも。では』

 

 相手は、いわゆる何でも屋である。

 アメリカのスキン兄弟や、ドイツのサンタクロース。分類的にはジョージ・スマイルズもそれにあたる。

 

 ちなみに、『スキン兄弟』は俺の造語である。名前忘れたし。

 

 とはいえ、今回頼んだのはそういう物騒な所ではなく、もっと平和で悪辣な、特殊工作員みたいな連中だ。

 接触する事すら結構難しい相手だったりするのだが、連中は連中で金だけで動いてくれる柵の無い武力……つまり、ジョージ・スマイルズが必要な時もある。

 ナイフ一本を公言しているので、隠密を是とする彼らの流儀にも噛み合っている。

 

 持ちつ持たれつ、という奴だ。

 

 ぶっちゃけ、俺らの金って同業者の中でプレゼント交換よろしく回してるだけの様な気がしないでもない。

 

 更に別の相手に電話を掛ける。

 こちらはこちらで、別の仕事を依頼していた奴だ。

 

「首尾は?」

『上々。進捗は92%です』

「よし。金は振り込んでおくから、残りも頼むぞ」

『勿論。この業界、信用が命ですからね』

 

 電話を切った。

 

 こっちは、現代で言う所の『闇バイト』の指示役だ。

 方々に密輸の真似事をさせている。勿論、これもマキマを殺すための仕込みである。

 

 一応、もっと効果的な方法もあったが……終わった後の始末まで考えると、こちらの方が良い。

 

 末端が支配、監視されれば無力化されてしまうので、俺自身でも相当量の密輸を行う。

 体が1つでは普通に足りないレベルの仕事量だが、単純な荷運びぐらいであれば問題無い。

 

「台風の悪魔にどれぐらいぶっ飛ばされるかもわかんねーしなぁ……」

 

 二道周辺はかなり被害を免れたっぽい事は分かるのだが、実際にそれを当てにしすぎるわけにもいかない。

 特に、マキマとの決戦は何が起きるか分からない。準備し過ぎるという事は無いだろ。

 

「さて、後はチーズ野郎が上手く踊ってくれるといいんだが……」

 

◆◇◆◇

 

「ねえ……少し怖いから……手、繋いでいい?」

 

 夜の学校探検。

 レゼはそう言っていたし、デンジは気付く由も無かったが。

 

 レゼは下駄箱をスルーして土足のまま上がり込んでいたし、椅子や机のサイズがレゼの体長と合っていなかったし、給食で出てくる牛乳パックの空箱が積まれていた。

 

 レゼは高校生という設定になっているが……2人が入り込んだ学校は、実の所小学校なのだった。

 

「デンジ君って、本当に小学校も行ってないの?」

「あ? うん」

「それってさ……なんか……なんか……ダメじゃない?」

「ダメ?」

「ダメって言うか……おかしい」

 

 レゼはそういうが、デンジは全くピンと来ていなかった。

 

「16歳ってまだ全然子供だよ? 普通は受験勉強して、部活頑張って、友達と遊びに行って……それなのにデンジ君は悪魔を殺したり殺されそうになったり……今いる公安っていう場所は、本当にいい場所なの?」

「まあ凄ぇいいトコだぜ? 1日3回食えるし、布団で寝れるし」

 

 あと同僚の女性率が高いらしいし、と続けようとしたが、デンジは流石に思いとどまった。

 

「それって日本人として最低限の……当たり前の事だよ?」

 

 そういう……ものなのだろうか?

 デンジは思い返してみるが、いわゆる『当たり前』だとか『普通』と言えるような人間との接点が全く無い事に気付いた。

 

 パワーは魔人だ。そもそも人間ではない。

 早川アキは人間だが、公安でデビルハンターをしている時点でまともじゃないらしい。

 ジョージも人間でデビルハンターだが、自主的にやっている分まともと言えるかどうか。

 

 マキマは? ビームは? 姫野先輩は? コベニは? 天使は?

 

「う~~ん……考えすぎて頭熱くなってきた」

「……じゃあ、少し冷やしますか」

 

◆◇◆◇

 

「じゃあさ、今度の花火大会一緒に行かない? きっと楽しいし美味しいよ」

「……仕事終わってからならいーよ」

「いえーい、やった! 約束ね!」

 

 そう言ってから手洗いに席を外したレゼを見送って、デンジが一言。

 

「超クソ可愛い……」

 

 レゼが教室を去ってから呟きはしたのだが、レゼはこれでも諜報員として『五感を研ぎ澄ます』訓練を受けている。

 つまり、廊下に出てからも、デンジの呟きはハッキリと耳に捉えていた。

 

 しばらくご機嫌に廊下を歩いていたレゼだったが、研ぎ澄まされた聴覚が別の足音を聞き取る。

 

「……デンジ君?」

 

 恐らく、違う。

 体重が明らかに違っていたし、靴の素材からくる音色も別物。

 

 事実、振り返った先には、ナイフを掲げた見知らぬ男がいた。

 

◆◇◆◇

 

 レゼは逃げた。

 相手が少女だという侮りを差し引いても、男の動きはそう大したものではない。その気になれば、悪魔の力を使うことなく簡単に殺せる。

 

 だが、ここではだめだ。

 

 ここではデンジが近すぎる。

 

「なんで逃げるんだ? 連れションしようって約束したろ?」

「はっ……」

 

 意味不明な男の言動を無視して、階段を上がる。

 悪手だ。階を登るという事は、逃げ道が減るという事。特に外へ昇降口から離れるのが致命的だ。

 

 その上で、敢えてそうしている。

 慎重でキレる奴なら、罠を疑う動きだが……。

 

「待ってよ~、お話しようよ~、ねぇ~」

 

 追って来た。やはり少女相手という事で油断しているのだろう。

 意図していなかったが、張り付いた『レゼ』の演技が功を奏した。

 

 そしてやがて屋上に着く。

 当然だ、上に登り続ければいずれここに辿り着く。

 

 ここでレゼの五感が捉える不自然さ。

 

 この雲、この雨は……。

 

「お~い、もしも~し! 君は屋上でションベンすんのか~?」

「アナタ……アナタなんなの!?」

「そういう事聞く自分こそ、己が何者か分かっているのか?」

 

 己が、何者か?

 

「お前はチーズだ。ネズミを表におびき出すためのチーズ」

「なにを言ってるの……? お願いやめて」

「これからお前の顔の皮を剥いで、目をくりぬいてチェンソーに見せつけてこう言うんだ……『君の大切な女性は、まだ生きているよ』……するとなぜだか、だいたいみんな俺のいう事を大人しく聞いてくれるんだ」

 

 単なる通り魔か何かかと思ったが、なるほど自分と同じく『チェンソーの心臓』が目的か。

 

 ……自分と、同じく?

 

 己が何者か。チェンソーの心臓を奪う為、ソ連から来た刺客だ。

 目の前の男と同じく。

 

 自分が、この男と同じ?

 

 レゼの視界がブレる。

 雨が眼に入ったのではない。(まぶた)がヒクヒクと痙攣して制御できない。

 

 重篤なストレスによる症状だと、レゼはどこか他人事の様に思い出していた。

 

「だから後は殺すだけ。お前の体で欲しいのは、皮と目だけなんだ。命はいらない」

 

 男が何かを言っている。

 だがどうでもいい。レゼの脳は、男の発言を言語として解釈しなかった。

 

 男がナイフを振って来た。

 

「アあ、あああアアア! ああ」

 

 その声は何のために上げたものだったか。

 か弱い婦女子の演技か、それとも怒りに任せた単なる怒号か。

 

 分からない。分からないが……レゼの肉体は、叩き込まれた反撃の最適解を、レコードプレーヤーの様になぞって動く。

 男の手首を取り、肩に負荷が掛かる様に捻り上げて動きを抑制。怯んだ隙に背後で回り込みつつ肘関節を破壊。腹部を足で固定し、両腕で首を締めあげ、体重移動で後ろ向きに倒れ込む。

 

 裸締め。

 

 完璧に決まれば返し技は存在しない極め技であり……そうなれば、いつまでも続けることができる。

 文字通り、死ぬまででも。

 

 脱出手段が0と言う訳ではない。

 武器による腕部の破壊、純粋な膂力による解除、契約悪魔の力を使うのもアリだ。

 

 だが、武器は弾き飛ばして無効化、膂力は肘関節の破壊で間接的に阻止した。

 悪魔の力はその多くが口頭での命令を必要とする。気道を締め上げて発声を制限していれば、結構な確率で阻止できる。

 

 事実として、男はただただ藻掻くだけだった。

 

「День моего свидания с Джейн. Все готово」

 

 レゼは歌を歌い始めた。

 遠き祖国、ソ連で習った歌だ。

 

 今日はジェーンとデートの日。

 何もかも準備完了。

 朝、私たちは一緒に教会へ行く。

 カフェでコーヒーを飲んで、オムレツを食べる。

 公園を散歩して、水族館に行き、ジェーンのお気に入りのイルカとペンギンを見に行こう。

 昼食の後は休憩だ。

 午前中には何をしたっけ。

 思い出せるまで語るけど。

 思い出せないからずっとお話。

 そして夜には、教会で眠る。

 

 『ジェーンは教会で眠った』という歌。

 ちょうど『人間が確実に窒息する時間』で終わる歌。

 

 嗚呼、本当にこんな日々を過ごせたら。

 

「……」

 

 レゼが立ち上がる。

 男の死体を見下ろしながら、それを作った己を見下しながら。

 

 排水口に目をやる。

 考えてみれば、この嵐は色々と不自然だった。

 

 こんな規模の豪雨なんてそうそう起きるものではない。局地的に起きたとしても、さっさと収まるものだ。

 まるで網の様に即座に広がり、閉じ込めるかのように居座っている。

 そして屋上に出た時に感じた、あの臭い。

 

 悪魔の臭い。

 

「嵐で学校に閉じ込めたの君でしょ。台風」

 

 レゼが排水口に向けてそう言い放つ。

 すると、何とも奇妙なことに、排水口が言い返した。

 

「レゼ様ガイタトハ知リマセンデシタ」

「今回の事見逃すから、しばらく私に服従ね。この男の死体は処理しておいて」

 

 誤解されがちだが、武器人間は悪魔と契約できない訳ではない。

 武器人間の肉体は、悪魔との契約において『無価値』と判定されるだけだ。

 

 いくらでも再生・蘇生できるのだから当然と言えば当然である。

 掛け替えのないものであるからこそ、奪うに値する。

 

 故に、こうした『おてつき』に対するペナルティの様な形であれば、武器人間も契約はできる。

 

 状況に対してひとまずの決着を見たレゼは、屋上からデンジのいる教室へ向かった。

 

◆◇◆◇

 

 夜の教室に足音が響く。

 デンジはその音源と思しき廊下に、不安げな視線を向けた。

 

 足音が近づいてくる。

 

 なにせ場所が場所である。不法侵入している事に間違いは無い。

 武装が無いので、悪魔か何かだったらチェンソーマンになる必要があるだろうが……そうなるとレゼが心配だ。

 ド派手な戦闘は余波も大きく、レゼが巻き込まれては悔やんでも悔やみきれない。

 

 或いは顔に傷が残るだけでも……考えたくもない。

 

 足音が近づいてくる。

 

 とりあえずの印象としては、悪魔というよりも人間っぽいが……人間の様なナリをした悪魔の可能性もあるし、人間だとしてもキチガイだったら同じ事だ。

 流石に人間の犯罪者を相手に攻撃する権利は、特異課には無いのだから。

 

 足音がもう教室のすぐそばだ。

 そして、そこで止まる。

 

「……?」

「ばあっ!」

「うわぁッ!?」

 

 脅かすかのようにバッと姿を表したのは、レゼだった。

 

「にへへぇ……」

「あ、あはは……」

 

 濡れた髪を横にどかして、レゼが笑う。

 それを見たデンジも、ようやく笑顔が戻って来たのだった。

 

「あれ? レゼってトイレ行ってたんだよな? なんでびしょぬれになってんだ?」

「……わぁ~! 雨止んだよ!」

 

 レゼはデンジの所に行きた過ぎて、言い訳を考えていなかった。




おまけ

台風「レゼ様がいたとは……しかし僥倖! これで確実にチェンソーの心臓を……」
レゼ「ばあっ!」
台風「え、あの、戦うんでは……?」
レゼ「今濡れてるから爆発弱いし」
台風「ではなぜプールに……?」
レゼ「……明日お祭り行くって約束しちゃったし」
台風「……」
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