デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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ボム、ナイフ、ガン

「デンジ君は私の事嫌い?」

「好きイ!!」

 

 レゼは、マスターに教わったマル秘スポットで、一世一代の告白をした。

 

 『デンジ君の事が好きだから』。

 

 言うつもりではあった。

 言うために、今日までを積み重ねてきた。

 

 それでも、一体どうしようか迷ってしまうぐらいに、あばらの奥が高鳴っていた。

 

 その高鳴りを使ってデンジを罠に掛けようとしている事実に罪悪感は有ったが、今のレゼには『恐怖』が勝っていた。

 以前から。具体的には、夜の学校探検あたりから、飛行機がレゼの頭上を飛んでいた。

 

 確証はないが……アレは恐らく、ソ連の監視だ。

 

 秘密の部屋で受けた数々の仕打ち。

 徹底した思考統制。

 手落ちがあれば即座に飛んでくる鞭。

 貧相な食事に冷たく暗い部屋。

 

 そして何より、『  』でしかない自分。

 

 トラウマだった。

 それがまた自分に向けられる。向ける為の眼が、こちらを見ているという事実が、レゼの思考に恐怖という名の視野狭窄をもたらしていた。

 

 それでも、本当に。

 本当に、一緒に行く。一緒に逃げると言ってくれるなら。

 

「だけど……」

 

 この恐怖も、乗り越えられたかもしれないのに。

 

「最近仕事が認められてきてさ……監視が無くても遠くに行けるようになったし……糞みたいな性格んバディの扱い方もだんだんわかってきた……それにイヤ~な先輩ともやっと仲良くなってきたんだ……仕事の目標みてえなモンも見つけてさ。だんだん、楽しくなってきてンだ、今……」

 

 デンジにしては随分と長文で、しどろもどろになりながらもちゃんと説明しようとしてくれている。

 しかし、同時に腐臭……隠し事の気配をレゼは感じ取った。回りくどい言い回しは、その点に言及しない為の物であると。

 

「ここで仕事続けながら、レゼと……会うのじゃダメなの?」

 

 しばらく呆然としていた。

 

 正直な所、断られるなんて思っていなかった。

 異性愛者の男性は全員自分に落ちるなんて不遜な事を考えてはいないが、出来る限りそうなる様に訓練を積んできたし、そうして培った技を実践テストという名目で総動員した。

 偶然を演出したファーストコンタクト、花火がやがて打ちあがるというシチュエーション、関係性が決まりきる前のタイミング、その中で限界まで積み重ねた信頼、度重なる異性としてのアピール……今振り返ってもレゼに落ち度はなかったはずだ。

 事実、自分とデンジの関係性は客観的に見ても良好だった。

 

 その上、デンジは『今』を捨てる事に躊躇いが無いというか、こうしたいという直感に従える人間だ。

 もしもレゼと逃げ出したいと考えれば、本当に一緒に逃げてくれるだろう。

 

 だが、事実としてそうはなっていない。

 

 何故?

 否、先ほどの隠し事と併せ考えれば、そう難しい事でも無かった。

 

「そっか、わかった」

 

 要するに、レゼと同じだけの重みが、天秤の反対側に乗っかっているだけだ。

 

「デンジ君、私の他に、好きな人いるでしょ」

「え?」

 

 花火が上がる。

 その閃光と轟音に一瞬気を取られたデンジの意識をすり抜けて、至近距離へ。

 

「んっ……」

 

 キス。

 デンジの頭を手で引き寄せて、強引に。

 

 少し、浸った。

 

 少しだけだ。少しだけデンジとの……気になる男の子とのキスに浸った。

 これを思い出にして、未練を断ち切ろう。

 

 ごり。

 

「~~~~ッ!?」

 

 レゼの口内に溢れる血の味。

 マスターが作ったオムライスよりも、ずっと印象深かった。

 

 口の中に、今まさに噛み千切ったデンジの舌が残る。

 

 デンジは痛みと混乱の余りに倒れ込んでしまった。

 まるで勝ち誇るかのように、レゼは口の中の舌をデンジに見せつける。

 

 こちらに伸ばそうとした手をすり抜けて、喉をナイフで掻き切る。発声の妨害。

 デンジが自らの胸元に伸ばした手。変身のトリガーだろう。手首ごと切り落として妨害。

 

 苦痛、衝撃、混乱、絶望、忘我。

 デンジの胸中に渦巻く感情を列挙するならこの辺りか。

 

 そう言えば、ジョージが言っていたことを思い出す。

 なんでも『デンジはなんていうか……可哀想な時が一番かわいいらしいですよ? 確かな筋からの情報です』だそうだ。

 どの筋から何の需要で仕入れた知識なのかよくわからない情報を謎に知っている男である。

 

 さて、そう言う視点で今のデンジを見ると……なるほど、確かに琴線に触れるものがある。

 レゼは思わずもう一回キスをした。

 

「痛いね? ごめんね? デンジ君の心臓、貰うね?」

 

 何なら、抉り取ってから息を引き取るまでにもう一回キスをしてしまおうか。

 

「ダッシュ!!」

「え!?」

 

 死角から何かが飛び出してきて、瀕死のデンジをさらってしまった。

 そのまま柵を乗り越え、山を最短経路で下っていく。

 

 柵に取りついて下手人を確認すると……全体的なシルエットは人間、しかし頭部に明らかな異常。

 人間の死体を乗っ取った悪魔こと魔人だ。

 

 監視が無くても遠くに行ける、とデンジが言っていたので、てっきりこの手の護衛は居ないものだと踏んでいた。

 いや、そうだとしても、自分が完全に何の対応もできないとは思えない。

 

 ……ひょっとして、ちょっとデンジの可愛い所に夢中になり過ぎた?

 

 反省は後で良いか。

 まずは再奪還が優先と気を取り直して、首元に手をやる。

 それは、レゼの変身トリガー。

 

「なんで匂いで気付かなかった! ビィーム!! アイツヤバいですチェンソー様! あん匂い、あいつ、ボムだああああああ!」

「ボンっ」

 

 チョーカーから生えた、否、そのように見せかけたピンを引き抜く。

 

 心臓から、喉、延髄、脳幹にエネルギーが駆け巡り……爆ぜる。

 

 頭部は魚雷を思わせる流線型に。

 両腕は編み込まれた導火線に。

 そして大量のダイナマイトがエプロンの様に垂れさがる。

 

 爆ぜて飛び散った自らの肉片の残骸を浴びながら、レゼは魔人を視認する。

 

「泥棒」

 

 レゼは爆弾の武器人間。

 爆発そのものを操るだけでなく、肉体を爆弾として全身を自在に爆発させられるのは勿論、爆発を目的にした器物を創造・操作できる。

 

 足元に爆発を起こして高速移動なんて、それこそ歩くのと同じレベルで出来る事だ。

 

 レゼの姿が消える。

 

 デンジを運ぶ魔人めがけて、爆発を伴った跳び蹴り。

 寸前で魔人が身をひるがえしたものだから仕留め損なったが、盛大に態勢を崩している。

 

「ギギャア……チェンソー様ァ!!」

 

 即座にデンジを抱え直して走り出した魔人を先回りするかのように爆発を起こして移動。

 続く爆撃は上手くかわされ、結構な距離をデンジと共に転がっていった。

 

「ア、ヴヴヴ!!」

「アナタも4課の一員なのかな? 今デンジ君を置いて逃げるなら見逃すよ?」

「ヴヴ、ヴヴヴヴヴ!! ヴァ!!」

 

 威嚇する様な唸り声。

 

「あそう」

「ギャワ!!」

 

 頭部を巨大なサメに変形させ、魔人が襲い掛かってくる。

 つまり、鮫の魔人という事だろうか?

 

 しかし遅い。簡単に合わせられる。

 

 カウンターの形での爆撃。

 一撃で全身が黒焦げになったが、まだまだ息がある。相当タフだ。

 

 まぁ、わざわざ殺す必要は無い。

 要するに、デンジさえ手に入れば……

 

「あれ?」

 

 天地が逆さになっている。

 

 いや、上下の感覚は正常に地面を下だと言っている。

 ではなぜ?

 

 レゼの思考がまとまるよりも先に状況は動く。

 

 何かがレゼの肩に巻き付いて両腕を拘束し、ほぼ同時に鎖骨の間へ衝撃。

 

「かはっ」

 

 吐血の感触。

 この痛みはただ殴られただけではない。

 

 鎖骨の間にナイフが突き刺さっている。

 

 それと同時に、レゼは自分の頸骨と頭蓋骨の間が180°捻り上げられていることを理解した。

 

 不味い。

 上腕が水平方向に固定されている所為で、首元のピンが抜けない。

 再生できない。

 

 咄嗟にうなじから爆発を起こすが手応え無し。

 しかし拘束も無くなったので結果オーライ。ひとまずピンを抜いて傷を再生させる。

 

 ごりゅん、とエグイ音を立てて視界が元に戻った。

 

「……あ? まだ生きてんのか」

 

 声の主はやはり背後にいた。随分と聞きなじみのある声だ。

 

 振り返って声の主を見る。

 そこには、チープなにこちゃんマークの仮面を付けた小柄な男が、ナイフに付いた血を拭いながらこちらを見ていた。

 

「ジョージ・スマイルズ」

「おっと、俺ってば有名人。悪魔の割には事情通だなぁ……サイン要る?」

「要らない」

「あっそ」

 

 ジョージ・スマイルズ。

 祖国での着任前に、そして以前接触してきた同志ミハイルから改めて警告された、3名いる『要注意人物』の1人。

 

 1人はマキマ。

 超常的な力を有し、或いは日本全土に監視の網を張り巡らせているやもと警戒されている。

 契約悪魔の名前すら不明であり、その万能すぎる働きから警戒されている。

 

 1人は岸辺。

 こちらはマキマに比べればまだまだ何とかなりそうではあるものの、豊富な経験とネジが外れた発想、そして人間離れしたフィジカルによって、最強のデビルハンターの名をほしいままにしている。

 

 最後の1人が、ジョージ・スマイルズだ。

 上2人は正直、結構前から警戒対象だったのだが、こちらはここ最近でめきめきと頭角を現してきた傭兵型デビルハンターである。

 それだけならちょっと珍しい営業形態をしているだけの民間デビルハンターでしかないのだが、日本で討伐した『人間の悪魔』がよろしくなかった。

 

 人間が人間を恐れる気持ちから生まれた悪魔というなんとも業の深い悪魔であったが、この悪魔が真に注目されていたのはその能力である。

 

 触れた生命体を自由自在に改造する。

 

 人間や動植物は勿論、悪魔さえも適用範囲であるこの能力によって、人間の悪魔は使い捨ての駒を無限に仕入れることができた。

 これらは無理な改造故に短命であったが、本来あった寿命を全て圧縮したその性能は熟練のデビルハンターを容易く凌駕する。

 

 そうした駒を掻い潜っても、今度はワンタッチでゲームオーバーの格闘戦が始まる。

 

 攻撃が当たっても自らを改造する事で無尽蔵に再生。

 動物系の悪魔に丸呑みさせたデビルハンターはその悪魔が改造されて逆用。

 

 放置するにはあまりにも危険で……あまりにも魅力的な能力だった。

 

 大規模な捕獲作戦が始まる計画もあったのだが、その前に横取りする様な形で、ジョージ・スマイルズが単独撃破してしまったのだ。

 

 以来、『ジョージ・スマイルズ』はソ連の上層部から危険視されるようになる。

 

 戦力的な意味でもそうだが……肉体に作用するタイプの悪魔の力は、魔人と武器人間に適用できない、という事実を彼らが知っていたからである。

 本当に全てを回避して殺し切ったのであればそれはそれで凄まじい事だが、それ以上に未確認の武器人間である可能性が危険視されたのだ。

 

 自分達の振るう武器人間(レゼ)が強力であればあるほどに、それが自分達に向けられた場合を恐怖する。

 言ってしまえば、よくある感情の動き方だ。

 

「何が目的? 私はデンジ君さえ持っていければそれでいいんだけど?」

「デビルハンターと悪魔が出会って『何が目的?』はねえだろ」

「あっそ……じゃ、やろうか」

 

 レゼが構えた。

 ソ連仕込みの軍隊格闘術。そこに武器人間の身体能力が組み合わされば、それだけで驚異的な威力を発揮する。

 

 その構えの淀みのなさから、ジョージはレゼの技術レベルをある程度察する。

 10段階評価で行くと、8よりの7って所だろう。十分熟達の域にありながら、まだまだ伸びしろを残している。

 

 ジョージも応じるかのように構える。

 前世の記憶を活用して手に入れた『理』。そこからの逆算とデビルハンターでの経験を合わせ編み出されたオリジナルの格闘術。

 

 レゼもまた、ジョージの技術を感じ取った。

 少なくとも、油断はできない相手だと。

 

「「……」」

 

 膠着。

 

 この状況、あまりに先手が不利すぎる。

 しかしレゼはデンジを追跡する必要があり、逃げられているにせよ救援が来ているにせよ、時間との闘いだ。

 

 その事実を戦闘前の会話で引き出されてしまったために、ジョージが動かない。

 

 レゼは先手を打たなければならない。

 だが、当然不用意な攻撃は容易く狩られる。となると動きにくい。

 デビルハンターであり、かつ魔人との戦闘を見られた以上、ボムの能力も通じるかどうか。

 

 がさぁッ!!

 

「「ッ!!」」

 

 道路脇。

 ガードレールの外。

 

 茂みが大きく動いた音。

 

 援軍を警戒するレゼはそちらに視線を向けてしまう。

 その隙を逃すことなく、ジョージが肉薄した。

 

 が、それもまたレゼは想定していた。

 

 ここにきて格闘の駆け引きを放棄し、足元を爆破して飛び上がる。

 そして空中から状況を俯瞰。

 

 ジョージ・スマイルズは無傷。デンジ君には逃げられた。

 茂みから出てきたのは……あの水色の浴衣って、アサちゃん?

 

 ってことは、ジョージ・スマイルズって……。

 

「うっそぉ~!? 流石にそれは隠す気無さ過ぎでしょ、ジョージ君!」

「テメエが言えたことかよ! 『レゼ先輩』!」

 

 さて、これにて両者コンニチワの挨拶が済んだと言う訳だ。

 

 ジョージは拳銃の早打ちでレゼを撃ち落そうとする。

 だがいくら精度が高くとも、これだけ距離があっては限界がある。打ち上げる構図なのも不利だ。

 軽く左右に揺れるだけで完全に避けられてしまう。

 

「どっから持ってきたの、そんな危ない物!」

「さぁなぁ!? 銃の悪魔に貰ったとかかもよぉ!?」

「な訳ないでしょ~!」

 

 レゼだって、銃の悪魔が既に討伐されていることは知っている。

 肉片だけでも悪魔として機能するものだから、ソ連をはじめとした列強諸国がある種の抑止力として機能していることも。

 

 裏を返せば、ある程度まとまった量の肉片があれば、取引で銃を出力させることも可能ではあるだろうが……そんな量の肉片がどこにあるというのか。

 

「てゆーか隣にアサちゃんいるんだから、まずは逃げたら!?」

「追撃されたら終わりじゃねーか!」

「じゃあアサちゃんだけ逃がすとかさぁ!」

「コイツこういう時に絶対コケるんだよ!」

「えっ」

 

 それは確かに私としても否定できないけど、それはそれでそういう扱いをされているのはなんか傷つく。

 

 そんな複雑な表情のアサを無視して銃撃を続けるジョージだが、やはり拳銃で対空砲火は無理がある。

 レゼとしてもさっさと切り上げてデンジを追いたいので、ここは無視して嗅覚に神経を注いだ。

 

 デンジと鮫の魔人についている硝煙の匂い。

 

 悪魔になって強化された感覚と自らを由来とするが故の特例的な感度が組み合わさって、ある程度の位置を抑えられると言う訳だ。

 

「じゃ、私が逃~げよっと」

 

 くるりと身を翻して、爆発で加速。

 と、同時に。

 

「追撃されたら終わりっつったろ」

 

 咄嗟の防御。

 そこに叩き込まれる、ジョージのかかと落とし。

 

 拳銃での対空砲火なんて無駄な事をしてると思ったら、飛行手段が無いと思わせるための布石だったのか。

 

 アスファルトに叩きつけられたころに、レゼはそう理解した。

 

「ん? この匂い……」

 

 それは、直前までレゼが嗅覚に神経を注いでいたから気付けた匂い。

 

「そっかぁ……コーヒーかぁ! だからずっとコーヒー飲んでたんだ!? その匂い誤魔化すために!」

「おっと、余計な事しちまったか?」

「いやぁ、私からすれば有難い事だよ」

 

 なにせ、これで祖国に対する最低限の成果にはなる。

 仮にチェンソーの心臓が手に入らなくても、もはや鞭打たれることはあるまい。

 秘された情報は常に値千金。まして警戒対象であるジョージ・スマイルズの物であればなおさらだ。

 

「あっさり見逃してくれるんなら何もしないけど?」

「……迷いどこだなぁ。今俺、別に誰かに雇われてるわけでもないし。ただ働きになっちゃうし」

「でしょ? じゃお互い見逃すのがwin-winってもんじゃない?」

「その通り、なんだけど……俺一回殴っちゃったからなぁ」

「まあそれはオマケしてあげる」

「あそう? じゃ、先にそっちから引いてくれや」

「はいはい……もう追って来ないでね」

「さっさとどうぞ」

「あのっ!!」

 

◆◇◆◇

 

 俺は冷静じゃなかった。

 

 レゼと戦うなんてあまり考えていなかったが、原作での描写を元にした戦力分析は何度も行っている。

 なんだかんだで、戦闘面ではずっとデンジを手玉に取り続けた存在だ。仮想敵にはうってつけだった。

 

 分析結果としては……ガチの全開戦闘なら百やって百勝てるが、『ジョージ・スマイルズ』として戦うなら百やれば四十も勝てないぐらいと踏んでいる。

 

 そんな推論を繰り返していたものだから、晒された隙を反射的に狩りに行ってしまった。

 

 本当に逃げるつもりだったから良いようなものの、これがレゼの『釣り』であったら俺は手痛いカウンターを食らう事になる所だった。

 その瞬間の交錯については勝利と言っていいが、その内容については反省が勝る。

 

 目先の勝利よりも、広義的な意味での状況勝利を優先する冷静さを欠いていた。

 

 おかげで何かしらの情報を抜かれた。

 いやまあ、俺がマキマに勝とうが負けようが、結局ソ連に持ち帰られることは無いので別に良いか。

 

 だがそれよりも、アサに時間を与えてしまった。

 

 始めて見る命のやり取り、人の様な形をしながらも異形の姿、噴き出す血液にまき散らされる爆炎。そして、レゼの正体。

 多くの衝撃がアサを襲い……そして、そこから最低限復帰できるだけの時間を与えてしまった。

 

 ここから何をどう問答したところで、良い結果など待っているわけがないのに。

 

「あのっ!! 先輩、レゼ先輩、なんですか?」

「……そうだよ、アサちゃん。顔は違うけど声は同じだし……服もさっき見た奴でしょ?」

 

 レゼはダイナマイトのエプロンをたくし上げて、下に着ている服に身覚えがある事を確認させてきた。

 

「でも、レゼ先輩は、レゼ先輩で……それが、その……」

「私はね、半分悪魔なの。心臓が『爆弾の悪魔』になってる。とっても珍しい存在だから、まだ名前も付いてない」

「悪魔? 半分……レゼ先輩が?」

「そ。だから悪魔の姿になれるし、爆弾の悪魔の力も使える」

「……だ、だま、騙してたんですか?」

 

 途切れ途切れになりながらも絞り出したアサの言葉に、レゼの体が震える。

 

「そう、だね。騙してた、のかもね」

 

 頭部が悪魔になっているため、表情は全く分からないが……声は暗く、低く、小さい。

 泣きそうな声だと思ってしまうのは、俺が持っている偏見なのだろうか。

 

「な、なんですか……かもねって。かもねってなんですか……だって、じゃあ、そんなの」

「……ごめんね」

「ッ!!」

 

 アサが泣き出しそうな、怒り出しそうな、叫び出しそうな、複雑な表情を呈する。

 そんな表情を見て、言い訳をするでもなく開き直るわけでも無く、ただ謝るだけのレゼ。

 

 ある意味でこの状況に責任のある俺も心が痛い。

 さっさと逃がして『レゼによく似たバケモノ』って事にして片づけられた方が、少なくとも心の負担は軽かったろうに。

 

 レゼが光る。

 

「あ?」

 

 爆発か、と一瞬構えたが、背後からのエンジン音。

 車だ。多分、原作でレゼと遭遇した民間のデビルハンターたち。

 

 アサがそちらに意識を向けた瞬間、レゼは逃げ出した。

 

 俺は先の約束通りに、それを追いかけはしなかった。




ちなみに人間の悪魔は「俺こそ真なる人間……真人だ!」とかは別に言ってません
魂の輪郭とかそう言うのは無い世界観なので、ほんの500回ほど殺すだけで死んでくれます
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