デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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ここからはオリ展開故、オリ設定とか独自解釈とか諸々注意
って言っとけば大体何しても良いと思っている。


後始末
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「あ、デンジ」

「んだよ」

 

 花束を抱えたままのデンジに向けて、窓が良く見えるカウンターから話しかける。

 

「ちょっと頭下げて頭」

「頭?……こう?」

「おっけーおっけー」

 

 ちゃんと路地へと射線が通ったことを確認した俺は、何処からともなくアンチマテリアルライフル(バレット M82)を取り出して、窓の向こう側にいるマキマへ照準。

 

「は?」

 

 間抜けな声を出すデンジを無視し、レゼに寄り添う形になっているマキマの頭部だけを狙いすまして。

 

 発砲。

 

「どわぁ!?」

 

 銃の規制が緩いアメリカですら個人所有が認められない化け物だ。

 銃声1つとっても拳銃とは一線を画する。

 

 できるだけ垂直方向に着弾させたゆえに跳弾や弾道の歪みも起きず、易々と窓ガラスを突き破った銃弾がマキマの頭蓋を消し飛ばす。

 

 さて、これで岸辺への合図は済んだ。

 これほどの轟音だ。上手く紛れて天使の悪魔を無力化してくれていることだろう。

 

 マキマはしばらくの間復活をしない。自らの死亡を確認するために刺客の方から近づいてくると踏んでいるからだ。

 これは公安襲撃編での動きを見るに間違いない。

 

 頭蓋が消し飛んだ今、どうやってそれを選んでいるのかは知らんがね。

 

「マスター、これ店の修理代金と迷惑料ね。後、これは純粋な善意からの助言だけど、出来るだけ遠くに逃げた方が良いよ。アサにも同じ事言ったしさ」

「ジョ、ジョージ君? 君は一体……?」

「デビルハンターですよ、マスター」

 

 アンチマテリアルライフルを捨て、散弾銃(ウィンチェスター M1887)を取り出して発砲。

 こちらも拳銃とは別物の銃声を鳴らして12発の鉄球を空中にバラまき、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 数分後には、『例の6人』に2発ずつ着弾し、心臓と脳を破壊する。

 

 そこからが本当の勝負。

 契約の復旧には最短でも2時間はかかる。その間にマキマをもう一度殺せれば、復活できずにそのまま絶命させられる。

 

「マキマさんッ!!」

「あ?」

 

 男の声だ。

 デンジの声じゃない。マスターはその名前を知らないはず。天使はもっと中性的。

 

 ……誰だ?

 

 いや、聞き覚えはあるぞ。

 

「び、ビビったァ……ンだよジョージ、おめえ何やってんだよ……」

 

 ひっくり返っていたデンジが起き上がり、吹っ飛ばした窓の向こう側を見る。

 

「レゼ!? と、マキマさん!?」

「デンジ! お前なんでそんなところにいんだ!!」

「早パイ!? 早パイこそなんでんなトコいんだよ!?」

 

 早パイ……早川アキか!

 

 なぜこんな所にいる? 

 というか岸辺はどうした? 天使の悪魔は無力化したのか?

 

 ……いや、していないだろうな。

 少しでも過剰なリスクを感じ取ったら、自由に引いてもいい。俺と岸辺の連帯なんてそんなものだ。

 

 俺の『天使の悪魔とネズミ一匹』の予言が外れたことをどこかで察して、恐らく今は別の場所にいるのだろう。

 

 計画通りにいかないとは思っていたが、こんな序盤からか!

 

「俺は仕事だ! デンジ、お前が撃ったのか!?」

「あー? 俺じゃねえよ!」

「ちょいと横を失礼」

 

 仮面を被り、ジョージ・スマイルズになって窓から外に出る。

 

 なるほど、レゼの後ろに居たのか。そして天使の悪魔はビルの上で健在、と。

 

「初めまして皆々様。私、フリーでデビルハンターをやっております。ジョージ・スマイルズと申します。先ほどの銃撃は私によるものです」

 

 慇懃に一礼しながら、周囲を探る。

 天使、アキ、デンジの他に目立った気配はない。マスターはちゃんと逃げ出してくれたようだ。

 

 レゼとマキマは並んで仲良く死んでいるようだが、どっちもワンアクションで元通りだ。

 あまり意味は無いだろうな。

 

「テメエが、マキマさんを……」

 

 アキが懐から短刀を取り出して構える。

 銃の悪魔に対する恨みから、銃器は使わないと思っていたが……ナイフ一本で悪魔と? 天使の寿命武器だとしても無理があるだろ。

 

 つーか、この時点のアキはまだ両腕あったよな?なんで片腕になってんだ?

 眼も一個足りねえし。

 

 ……もしかして、腕が片方しかないから、天使の事をちゃんと抱きしめられなかったせいで好感度不足?

 だから天使はこの現場にアキを連れてきたって事?

 

 やっぱ俺の所為なのかな?

 

「ぶっ殺してやる」

 

 滑らかな動きでこちらに迫りくるアキ。

 片手でショットガンを回してリロードし、水平よりやや下狙いで発砲。

 

 殺意と動きからするに、この面攻撃をスライディングの様な屈み込む形で避けてから攻撃してくる。

 という読みでやや地面に寄せて撃ったが、その読みをさらに上回り、路地の壁を蹴って上に避けられた。

 

 そう言えば、未来の悪魔の能力はあるのか……って事は腕と目は契約の代償か?

 じゃあ、いわゆる最悪の死に方はしないって事なんだろうか?

 

 空中に居るアキが突如として攻撃を放棄し、強引に体をよじる。

 

 その脇腹を、俺の肩から飛び出した弾丸が貫いた。

 

「っがぁッ!!」

「バカが。なんでこんな大物をわざわざ片手で使ってると思ってんだ。サイドアームがあるからに決まってるだろうが」

 

 ショットガンを撃った反対側の手には、拳銃(S&W M19)

 威力重視のリボルバー式拳銃である。

 

 これを、袖の中を通すようにして撃った。

 

 未来の悪魔の能力はあくまでも『未来()』。

 つまり視覚的に認識できない、直前まで見えない攻撃であれば予知は不可能。

 

 避けなかったら腹直筋の破壊で戦力外だったんだが……まあ、着弾自体は予知できる訳だから、流石に甘かったか。

 

「女が殺されて冷静さを失ったか? お前それでもデビルハンターか?」

「が……っそ、がぁ……」

 

 態勢を立て直す前に、追撃で足の骨を折っておく。

 一応、治ったらもっと強くなるよう、綺麗に折ったつもりだが……まあ、上手く行ってなかったらゴメンな!

 

「さて……」

 

 時間的には、もう着弾したころだろう。

 そして今回の復活分は既に内定しているハズだ。

 

 つまりこれから2時間の内に、マキマを殺しなおす必要がある。

 

 すべてマキマの絶命中に進めたので、契約の不活性化を探知されていないと良いのだが……。

 

「起きろ~い」

 

 2人の死体に歩み寄って、レゼの首元からピンを抜く。

 その瞬間、背後にあるマキマの死体が動く。

 

「ぱん」

 

 マキマが放つ不可視の攻撃。

 どうせ何かしら攻撃してくるとは思っていたので、回避は容易だったが……凄い威力だな。ビルが崩れてるぞ。

 

 再生中のレゼを掴んで二道まで戻る。

 デンジにレゼを任せ、崩れ行くビルの瓦礫から歩き出すマキマを視界に捉える。

 

「なんだあの能力……」

「マキマさん……」

「デンジ君、ありがとうね」

 

 ……マキマの肉声を聞いたのはこれが初めてだが、いやぁ、本当にいい声してるなぁ。声優になれるんじゃないか?

 後は性根がああじゃ無ければ……。

 

「その子はデンジ君の心臓を奪いに来たソ連のスパイなんだよ? それを捕まえるなんてすごいね」

「え? いやぁ……そっすか?」

「さぁ……その子を持って、こっちに来て?」

 

 雑な褒め言葉になぜか照れていたデンジだが、流石にその一言で固まってしまう。

 

「デンジ。言うまでもないだろうが……ここが分岐点だ。今なら、まだ戻れる」

「……」

「今の生活が心底気に喰わねえって訳じゃあねえんだろ? さあ、どうする?」

「デンジ、君?」

 

 デンジの腕の中に居たレゼが目覚めた。

 きょろきょろと周囲を見回すその姿は、油断なく状況把握に徹する諜報員というより、親からはぐれて人込みの中に居る子供の様な頼りなさだ。

 

「なに、この状況……」

「レゼ」

 

 デンジの指に、少しだけ力がこもる。

 

「なァ~~~~~~んにも聞かずに、俺と逃げてくれるか?」

 

 レゼはしばらく呆然として……それこそ、爆発したかのように顔が真っ赤になった。

 そして、無言のまま、しかし確かに頷いた。

 

「……ってコトだ! 悪ぃな、早パイ!」

「~~~ッ!! お前は……ッ! だから、俺はお前みたいな奴……」

 

 しばらくの間何かをこらえ、噛み締めるかのように全身を引き絞ったアキ。

 ふと、その緊張が解ける。

 

「……たまには、顔見せに来いよ」

「へ! そんときゃ『孫』の顔も見してやんよ!」

 

 どこか通じあった様な会話が、2人の別れの全てだったのだろう。

 

「そっかぁ……デンジ君、公安を止めるんだね?」

「ハイ! スイマセンマキマさん!」

「分かったよ。じゃあ……デンジ君は悪魔として処理します」

 

 事前に分かっていたこととはいえ、改めて面を向かって言われると堪えるものがあるようで、デンジは表情をわずかに歪めた。

 

 そして、俺も表情を歪めた。

 

「バカな……早すぎる……」

 

 それは突如として周囲に現れた、大量の気配に対しての言葉。

 公安戦力がもう到着したのか?

 

 マキマの周囲を固めたそいつらは、どこか見覚えのある様な、無い様な……出番が少なかったのか?

 いや、2人は明確に見覚えがあるな。

 

 彼らは陣形を作った訳ではない。ただ、そこに並んだだけだ。

 だが、そいつらからすれば、それだけで十分なのだろう。

 

「公安対魔特異5()課、戦闘開始」

 

 シャ。

 ジュジュジュジュ。

 パチン。

 カチ。

 シャ。

 

 そんな音を立てて、そいつらは()()した。

 

 なるほど……武器人間か。

 

 武器人間はそれぞれが固有の高速移動能力を有する。

 サムライソードは居合で移動していたし、レゼは爆発の反動で移動していた。

 デンジは……チェンソーマンはスパイ〇ーマンの真似事で移動していたようだが、デンジは多分地面にチェンソーを突き立てて稼働させることで、キャタピラの様に移動するのだと思う。映画でやってた。

 

 これほどまでに迅速に集合できたタネはそういう事らしい。

 

「デンジ」

「ああ?」

「俺、今から全力でアイツらの事ぶっ殺すけど、巻き込まれるなよ?」

「あー? ナイフと拳銃のお前にどうやって巻き込まれろってんだよ!」

「ふふ、そうかもな……レゼ」

「え?」

「もしどっちかが死んでも、諦めずに復活して復活させろよ? その辺の判断は、お前の方が上手そうだ」

「……分かった」

「ああそれと……忘れもんだぞ、色男」

 

 床に落ちた花束をデンジに持たせる。

 これで劇場版入場特典第二弾の構図になったな! ヨシ!

 

「ああ……ありがとよ」

「二道には裏口があるだろう。レゼ、案内してやれ」

「なんか偉そう……まあ良いか」

 

 デンジからの礼を受け取り、敢えてドアから威風堂々と登場する。

 

「あっ! コイツ!」

「ん?」

「テメエ! 前はよくもやってくれたなジョージ・スマイルズ!」

「ああ、君は確か……サムライソード、だったかな?」

「知り合い?」

「コイツぁヤクザやってた時に事務所乗り込んで来て銃の悪魔の肉片全部持って行きやがったんだ!」

「あぁ……例の」

「マキマさんに命救われて裏切るデンジも許せねえが、ヤクザを舐め腐りやがったコイツもメチャ許せんよなぁ~~~!?」

 

 刀の武器人間の姿で、サムライソードがこちらに思いっきり近付き、ガンを飛ばしてくる。

 それを見て、俺は。

 

「くひッ」

 

 笑った。

 

「あ? なに笑ってんだテメエオイ? まさかこの戦力差でビビっておかしくなっちまったか?」

「いやぁ……ふふ、くききき……そうじゃないさ。あの時の言葉が、また因果な形で巡るなぁ、と感慨深かっただけさ」

「因果だァ?」

「伏線回収、という奴だな。いや、まさかこんなことになるとは正直思わなかったが」

 

 そんな風にじゃれていると、痺れを切らしたマキマが後ろから話し出す。

 

「早くデンジ君を追いなさい」

 

 そして指をこちらに向けて、武器人間ごと。

 

「ぱん」

 

 撃った。

 

「……」

「……?」

「……しかし、なにも、おこらなかった……ってか?」

 

 そう、何も起こらなかった。

 何のことは無い、支配の悪魔にあんな能力ないのだから、それは別の悪魔の能力だ。

 

 その悪魔が契約を破棄すれば、如何にマキマでも使えない。

 

 意外な顔の内訳は、破棄の権限など与えていないはずなのに、という所だろうな。

 

「なあサムライソード。前に俺は言ったよな? お前の事を指して、『旧態依然の骨董品』と」

「……それが、どうしたってんだ」

 

 何らかの異常は感じ取っているのだろう。その根源に俺がいることも察しているのだろう。

 だが、同時にどういう理屈なのか全く分からない。

 

「アレはな、ヤクザとしてのお前に向かって言ったんじゃあない……お前の中身、刀の悪魔の心臓について言ったんだ」

「なんだと?」

「更に正確には、お前達に、向けて言ったともいえるな」

 

 俺は右手を左腕に沿わせる。

 それはルーティーン。発作を起こした時に、『リセット』するための。

 

 それを、音が鳴るぐらい大きく行う。

 

 ジャキン。

 

「ッ! ヘビ、ヒグマ、ぬりかべ、城」

 

 マキマが何かを察し、悪魔を呼び出して防御を固める。

 やはり頭が良く、行動が正確だな、この女は。

 

 次の瞬間、武器人間全員が穴だらけになった。

 

 その血潮を浴びる俺は、既に人間の姿をしていない。

 

 仮面が壊れて覗く両目は、レティクルがびっしりと付いた照準器の様な虹彩となり。

 額からは、二本の銃身が角の様に天を衝き。

 体には、弾帯で出来た羽衣を纏い。

 頭上には、輪切りにされた様なリボルバーの弾倉が、天使の輪の様に浮かぶ。

 

 マキマが防御に呼んだすべての悪魔が、武器人間たちと同じ様に穴だらけになるが、マキマ本人は無傷のままだ。

 

「……なるほど。確かに、疑問ではありました。肉片を集めれば契約ができるぐらいの理知を得て、脳や心臓らしきものも生まれてくる……では、そのオリジナルはどこにあるのか、と……しかしまさか……」

 

 変身した俺の姿を見て、マキマが呟く。

 

 レゼは、恐らく俺が武器人間であることまでしか分からなかった。

 もしも俺が『何』の武器人間であるかを知れば……それはもう、ある意味チェンソーの心臓よりも重大な事態だ。即刻上役に指示を仰いだだろう。

 

 存在を消すなんて荒唐無稽な力ではなく。

 現在進行形で成立・機能している抑止力。

 

「銃の悪魔の心臓に、持ち主が居たとは」

「おやおやこれはどうしたことだ……死体が喋っている」

「……これは、流石に分が悪そうですね」

 

 だが、マキマはあくまでも不敵に笑った。

 

◆◇◆◇

 

 1995年8月15日 日本時間午後0時28分11秒。

 ソ連、アメリカ、中国にて。

 

 『銃の悪魔』、略式顕現。

 

 0時28分12秒。

 全『銃の悪魔』、各国首都へ移動開始。

 

 0時28分15秒。

 アメリカの『銃の悪魔』、首都に到着。

 

 0時28分18秒。

 ソ連、中国の『銃の悪魔』、首都に到着。

 全『銃の悪魔』、能力発動。『半径9㎞以内に存在する、現在、または過去に公式・非公式を問わず国家公務員及びそれに類する立場であった人間の心臓を撃ち抜く』能力を確認。

 

 0時28分26秒。

 『銃の悪魔』、攻撃終了。

 

 以下死者。

 (中略)

 (中略)

 (中略)

 (後略)

 

◆◇◆◇

 

 レゼはデンジに抱きかかえられながら、デンジの行く先を指示していた。

 向かうはいくつかあるセーフハウスの1つだ。二道の方角から聞こえる爆音は明らかな異常事態であり、恐らく別の諜報員がそちらに向かっている。

 

 逆に、そこから離れるレゼは『チェンソーの心臓の持ち主を上手く誑かして逃げている』ように見えるはずだ。

 

 まさか「ハニトラの標的に自分が惚れてしまってマジで愛の逃避行の真っ最中」だなんて色ボケが軍事超大国のソ連の諜報員の中に居るとは誰も思うまいて。

 ……自分で言ってて悲しくなってきた。

 

「レゼェ! こっちか!? こっちでいいのか!?」

「大丈夫。もうここだから」

 

 デンジの腕に花束を押し付けて、レゼが地面のマンホールを引きはがし、中に入っていく。

 

「おぉ、秘密基地って奴だな!」

 

 謎にテンションが上がったデンジが後に続いて穴の中に入り、マンホールを閉じる。

 下水の悪臭が2人の鼻を襲うが、やはり2人とも特に動じたりはせず、慣れた風だ。

 

 やがて少し開けた場所に出た。

 

 レゼが壁のスイッチを弄ると、照明が付く。

 生憎、ここは『レゼ』ではなく『モルモット』としてのセーフハウスだ。つまり例の全身ピンクゴスロリは置いていない。

 あるのはサンドバッグをはじめとする原始的な訓練道具。潜伏地域の詳細な地図。連絡用の短波通信無線の機材。そして若干の銃と大量の刃物といった武器。

 そんな物騒なものばかりだ。

 

 粗大ごみから持ってきた家具もいくらかあるが……まあ、どれも廃材は廃材だ。

 

「ここならしばらく大丈夫でしょ……それで、ジョージ君の手土産って?」

「これ」

 

 デンジはジョージからもらった紙袋を渡す。

 その重みから中身をある程度類推したレゼは若干眉をひそめたが、ひとまず開封することにした。

 

「拳銃2丁と、新幹線のチケット、あと現金か……本当に実用一辺倒って感じ。有難いけど」

「あと、なんか説明書がどうとか」

「説明書?」

 

 もう一度紙袋を改めると、紙幣に紛れて気付かなかったが、確かに手紙の様な封筒があった。

 

「これか」

 

 宛名には『親愛なる我が姉君へ』と書いてあった。

 

 漢字をたくさん使ってる。

 これだとデンジ君は読めないから私宛なんだろうけど……姉君?

 

 疑問に思いつつ封筒を開く。

 

◆◇◆◇

 

 これを読んでいるという事は、恐らく俺は今マキマと……支配の悪魔と殺し合っている頃だろう。

 

 まずは注意喚起として、小動物に対する警戒を厳にしてもらいたい。

 支配の悪魔は小動物の耳を借り、日本に監視網を張り巡らせている。犬、猫、鼠、鴉、鳩……この辺りは何処に居てもおかしくなく、かつ潰しが効くことから、特に警戒する事。

 筆談で会話すれば聞かれることは無いので、可能な限りそうして欲しい。

 

 盛岡行きの新幹線は中途半端に感じるかもしれないが、俺が支配の悪魔を殺せれば、お前らにとって日本は安住の地になる。

 逆に、俺が敗北して支配される可能性もあるが、まあそうなったら自力で海外脱出してくれ。

 

 一応の援助として、アメリカ、ソ連、中国にいる国家公務員の類を大量に虐殺するので、デカい混乱が起きてはいるハズだ。上手く活用してくれ。

 

 さて、武器の説明だったな。

 

 それは『銃の悪魔』との契約で出力させた高分子ポリマー銃だ。要するに金属探知機の類には引っ掛からない銃だ。

 使用する弾薬はこれまた特殊仕様で、弾薬そのものが高い消音性能を有する。薬莢は再利用できるから、逃亡生活が長引きそうなら捨てないように。

 弾頭も高分子ポリマー製だが、撃ち切って金属弾頭に変えたら金属探知機に引っ掛かるので気を付けてくれ。

 

 勿論、信頼性が十二分に高いモデルを出力させたので、安心して使って欲しい。

 

 銃のメンテナンス方法と薬莢の再利用方法と使用されている火薬のレシピは別紙参照。

 

◆◇◆◇

 

 封筒の中には、その別紙も確かに入っていた。

 

「レゼ? なんて書いてあった?」

「ちょっとゴメン」

 

 レゼはそれだけ言って周囲を確認する。

 ……大丈夫だ、この辺りにネズミは居ない。

 

「で、書いてあったことだけど」

「おう」

「マキマは小動物……鼠とか猫とかの耳を借りて、こっちの声とかを聴いているんだってさ」

「マジで? それ逃げらんなくねぇ?」

「どーだろ。流石に何百何千って耳を同時に聞き分けてるとも思えないし、出来るとしても相当集中する必要があるはず……ジョージ君と戦ってる今なら、そんなに気にしなくていいかな」

「なるほど……レゼってスゲーな!」

「なに急に?」

「ジョージがよ、もしレゼが二道にきたら、思ったことは全部言えって言ってたから」

「だから、スゲーって思ったからスゲーって?」

「おう!」

 

 そこで自信満々に頷いたデンジに、レゼはようやく少し笑った。

 

「ふ、ぁっはは……なんじゃそりゃ」

 

 ()()()




と言う訳で、ジョージ君の正体は『銃の武器人間』でした。

銃の扱いがやたら達者
伝手も無いのにめっちゃ銃と弾薬を調達してくる
銃の悪魔の肉片取得量と肉体の成長曲線がある程度一致する
等々、あちこちに伏線は張ってたんでこの無茶な展開も許し亭許して

まあそもそも苗字が『種ヶ島』の時点で何も隠せていなかった様な気もする。
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