デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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猫、最強、引退

 デビルハンターとして街をパトロールしつつ、思案に耽る。

 

 マキマを殺すためには、大まかに分けて3つの障壁がある。

 

 1つ目が内閣総理大臣との契約により、自らに対する攻撃を日本国民に押し付ける能力。これは悪魔の契約として比較的再現性のあるものらしく、第二部では戦争の悪魔が同じ様な事をしていた。

 2つ目が公的な立場からくる公安デビルハンターの常駐戦力。マキマは基本的に公安デビルハンターの本部にいる為、そこの警備を兼業するデビルハンターと、マキマが支配している武器人間などがマキマ側の戦力として参戦してくる。

 3つ目が単純なマキマの実力。チェンソーマンを相手にやや劣勢ながらも張り合えて、1つ目の能力による持久勝ちを狙えるレベルの格闘能力に、『支配の悪魔』によって支配した人間の契約悪魔の力を使ってくる。

 

 これら3つの障壁をどうにかこうにか突破して、ようやくマキマの命に手が届く。

 

 原作では、絶対的な好意によって『攻撃』として判定されずに1つ目をクリア。事前にポチタとの連携プレーで常駐戦力を撃滅。実力は不意打ちでスルーした。

 

 単純な戦闘能力は勿論必要だが、それ以上に『攻撃の押し付け』をどう突破するのかが、マキマ攻略のカギとなる。

 

 実の所、2つ目と3つ目については勝算がある。

 勝算というか、これらの部分に限定するのであれば、現時点で既に『勝ち確』と言って良いレベルだ。

 

 そのため、マキマの命はリーチが掛かっている。

 問題はそのリーチをアガれる最後の1つがどうにもならない事だ。

 

 日本国民を皆殺しにすれば、押し付ける先を失ったマキマにダメージが通るのだろうが……この論法だと悪魔と魔人と武器人間以外を皆殺しにすることになる。本末転倒も良い所だ。

 

「やっぱり、『攻撃をしない』ってのがカギか……」

 

 例えば、暗示。

 『ダメージを受けた』という錯覚だけを強烈に与える事で、肉体そのものを自死に追いやる様な。

 

 ダメージを受けたというのは錯覚なのだから、押し付けるダメージ自体が存在しない。存在しないものを誰かに押し付けることは出来ない。

 よってそのまま通るという理屈だ。

 

 まあこれについては『その暗示自体が攻撃だよね?』とか『苦痛に対するキャパシティの都合で自死まで追いやれない可能性』とか、色々とツッコミどころも多いのでそのまま採用する訳にはいかないが、1つのオプションとしては良いかもしれない。

 

 単純な攻撃で良いなら確実に滅殺できる自信があるが、それで通らないのなら搦め手……精神攻撃がキモか。

 となるとそれ系の悪魔と契約する必要がある。

 

「しかし、んな都合の良い悪魔なんてそうそういないしなぁ」

 

 いた所で通じるかも微妙な所だし。

 

 そんなことを考えていると、懐の携帯が着信を知らせる。

 

「もしもし?」

『ジョージ……すぐに、来てくれ。場所は……』

「あいあい」

 

◆◇◆◇

 

 今の俺は完全にストリートチルドレン。

 身分証どころか明日食う飯にも困る身の上だったが、路上で見かけたデビルハンターと思しき人間に戦力を売り込むことで、『デビルハンター見習い』として生計を立てている。

 実際には主力級の働きをしているが、身分証や戸籍が存在しない俺の代わりに、彼らは悪魔を換金してくれると言う訳だ。

 

 彼らがいなければ、俺はデンジさながらにヤクザを頼って闇ルートに流してもらう事になる。別に食い扶持を稼ぐだけならそれでもいいが、それで変にデンジと絡みが生まれるとやや困るので、出来るだけ原作の流れからは離れておくつもりだ。その方がマキマの警戒も煽らないだろうし。

 

 自転車で急行した現場では、ちょっと奇妙な事があった。

 

 悪魔……見た所、翼の悪魔といった所だろうか?

 基本的な骨格は人間に近いが、両腕が翼になっており、羽毛が頭を覆っていて視線が読めない。足の先端も猛禽類のそれを思い出させる形をしている。顔が羽で埋まったハーピーといった所か。

 これが結構強力な悪魔らしく、先輩方が2人程ダウンしている。生死は不明だが、ちょっと分が悪そう。

 

 まあこれについては、言っちゃあなんだがデビルハンターの日常だ。

 パトロール中に手に余る悪魔とうっかり遭遇して、或いは挑みかかって、そのままあの世に一直線。攻防の末に競り負けるとか、誰かの身代わりになるとか、そういうドラマチックな死に様は望めないのがこの稼業である。

 更に身も蓋も無い事を言うなら、強力な悪魔とエンカウントして交通事故さながらにサラッと絶命するのは、この世界の人間全員の日常とも言えるが。

 

 ちょっと奇妙な事と言うのは、その先輩方を遠巻きに見物している人がいる事だ。

 

 この世界、野次馬と言うのは非常に少ない。

 悪魔の脅威が徹底的に周知されているし、SNSの様なものが発展する以前の時代背景である為だろう。悪魔を見たら迅速に逃げる事が骨身に染み込んでいる。

 

 そもそも悪魔とデビルハンターの戦闘は周囲への余波を免れない激しい物であり、それに巻き込まれれば普通に死んでしまう。

 それを理解した上で野次馬をするという事は、好奇心が自分の命よりも重大な狂人か、戦闘の余波が来ても難なくあしらえる実力者のいずれかだ。

 

 そして、身に纏うのは黒スーツ。

 

 公安のデビルハンターだ。

 

 即座にカバンから武器と仮面を取り出して装備する。

 武器の方は、米国軍需物資の横流し品を闇ルートで用立ててもらった銃剣(バヨネット)。これをただのナイフと同じように使う。

 仮面はそこらのド〇キで買ったにこちゃんマークがモチーフになったもので、見るからにチープな作りだ。

 

 施設から離れて何年か経っているが、全く成長しない上背の所為で顔を隠してもあまり意味が無いような気もするが、全く無いよりはマシだろう。

 

 ひとまずは公安を無視して翼の悪魔へ肉薄する。

 銃の肉片は反応していない。プレーンな個体だ。これならそう難しくも無いだろう。

 

 と、思ったのだが。

 この悪魔、なかなかの戦上手であった。

 

 翼の扱いが非常にうまく、三次元的な動きでこちらを惑わしてくる。

 推進力を得るための手段が接地以外にもある為、直感に反する動きが多い。ドロップキックの為に跳躍……したかと思えば急降下してタックル、みたいな感じだ。

 鋭利な爪が生えた足技も侮れない。羽毛はバラまいて攪乱につかってくるし、本当に悪魔なのか疑うぐらいに人間臭い。しかしその人間臭さの中に、『悪魔特有のアドバンテージ』を織り込んでくるのが非常に厄介だ。

 

 だが。

 

「うん、大体わかった」

 

 そう呟いた時は、既に攻撃は終わった後だ。

 

 翼の悪魔のへそには銃剣が深々と突き刺さり、背面まで貫通している。

 基本的な骨格が人間と同じという事は、弱点もまたある程度同じという事。腹直筋の破損はそのまま全身の脱力に繋がり、そこにある内臓は骨に守られていない。

 勿論これで悪魔が死ぬわけ無いので、腕力で強引に銃剣を持ち上げ、ゴリゴリと嫌な音を立てながら、心臓を肋骨諸共に切り上げる。

 

 なにせ8歳児レベルの体格なので、心臓まで届かせるために跳躍する必要があったが、心臓さえ破壊してしまえば動きは格段に鈍る。

 そのまま空中で身をひるがえして、悪魔の頸骨を蹴りでへし折る。

 

 倒れ込んだところへ飛び掛かり、無慈悲に頭蓋を踏み砕いてトドメだ。

 

「ほい、終わり」

「ぢゅぢゅ、じゅー……」

 

 絞り出す様な断末魔を尻目に、ハンカチで銃剣を拭いながら、先輩方を確認する。

 最後まで粘っていた人は俺が助けに入ったおかげで無事だったようだが、全身に傷を負っている。どれも命に別状はなさそうだが、雑菌が入って破傷風にでもなればことだ。とりあえず、カバンの中から消毒液と包帯を渡しておく。

 到着時点から倒れていた2人の内、1人はピクリとも動かない。脈を計った所、こちらもピクリともしていないので、死んでしまったらしい。

 もう1人は生きてはいるようだが、頭から出血しているし、胸が異常な形に陥没している。太腿内側の太い血管も切られているようで、長くなさそうだ。脇に落としている携帯は、俺を呼ぶ時に使った物か。

 

「……言い残すことは?」

 

 まだ口は聞けるだろうかと思いながら、そう問うてみる。

 

 だが、掠れた様な吐息が続くばかりで、意味のある言葉が聞こえてくることは無かった。

 瞳孔も開いて、視線は虚空を彷徨うばかり。もはや意識も朦朧としているのだろう。

 

 不幸中の幸いとしては、戦闘のアドレナリンがまだ残っているのか、或いは死の恐怖を和らげる脳内麻薬でも出ているのか、苦痛に顔を歪めているわけではない点だ。

 

 デビルハンターに『満足の死』など存在しない。

 それでも安らかに行けるのであれば、それはせめてもの慰めになってくれるだろうか。

 

「ジョージ……」

 

 最後まで粘っていた人が手当てを終えて、こちらにやって来た。

 

「そいつは?」

「もう長くありません。多分、声も聞こえてないかと」

「そうか……少し、外してくれ」

「はい」

 

 立ち上がって周囲を確認する。

 悪魔の物であろうと、血は血だ。匂いにひかれて別の悪魔がやってくる可能性はある。

 

 また、原作では描かれなかっただろうスキマとして、同業者による『ハイエナ行為』にも注意が必要だ。

 要するに、瀕死のデビルハンターを殺して、悪魔討伐の功績を横取りする訳だ。単純な成果報酬は勿論、強力な悪魔を討伐した実績は将来的に新しい仕事を呼び込む広告塔にもなる。

 今まさに見物客となっている公安デビルハンターなんかからすれば、出世の足掛かりにもなる。

 

 勿論バチバチの犯罪だが、死人に口なしと言う訳だ。

 

「それで、公安の方が一体何の御用で?」

 

 改めて正面から顔を見てみれば、頬にある巨大な縫合痕と無精髭。

 最強のデビルハンター、狂犬の仇名で知られる岸辺だろう。下の名前は知らない。

 

「……いや、最近のガキは随分と腕が立つらしいと思ってな」

「貴方に言われる事じゃあないと思いますがね、狂犬さん。美人とウワサのバディの方も見てみたかったですが」

「随分と、詳しいんだな」

「デビルハンターであなたを知らなかったらモグリでしょ」

 

 そんなこと言いながら、カバンから取り出した包帯の余りに、血で文字を書いていく。

 どうやら最強の名は今の段階でもその通りなようで、バディをつれていないのは実力に対する信頼故か。

 

 いきなりの異常行動に怪訝そうな顔をする岸辺だが、『デビルハンターなんてそんなもの』という意識があるのか、割と普通に会話を続けてくれる。

 

「そんな年頃で事情通だったら、十分驚きだと思うがな」

「ま、契約の代償みたいなものでしてね。見た目通りの年齢じゃあないですよ」

「身長、年齢、過去……そんな所か?」

「ご自由にどうぞ。契約内容については、こっちからこれ以上開示したくないですね」

「……」

 

 少し考える風な岸辺はさておき、完成した包帯を見せる。

 

 『シハイのアクマをコロしたい』と書いた包帯だ。

 顔料が血液で、筆記用具が指なのでカタカナだが、十分伝わるはずだ。

 

「本当に……色々と、詳しいんだな」

「見習いなので。情報収集なんかも仕事の一環です」

「そうか……公安に欲しいレベルの諜報網だな」

「盤面を『支配』するのは結局情報ですからね。情報漏れが多いほど、盤面を有利に進められる。そうは思いませんか?」

「……あぁ、その通りだな。参考にさせてもらうよ……盤外戦術も、立派に1つの戦術だからな」

 

 目を合わせてニマリと笑いかけると、ぎこちない笑みを浮かべてくれた。

 同盟成立、と受け取っていいだろう。

 

 正直、実際にどのタイミングで岸辺がマキマを殺すことに思い至ったのかは微妙な所だったが、今の段階で彼の協力を得られたことは幸運としか言えない。

 まあ攻撃の押し付けはどうにもならないが、マキマの護衛を彼に任せることができるなら、ただでさえの勝ち確状態が更に安定する。

 

「で、実際なんの為に見物なんかやってたんですか?」

「民間の手に負えない悪魔を処理するのは公安の仕事だからな。お前らが全滅したら俺が選手交代だ」

「さっさと助けてくれれば良かったのに」

「そうすると『悪魔の横取り』で業務妨害になっちまうだろうが」

「狂犬も丸くなったんですねぇ」

「年だからな」

 

 岸辺は酒瓶(スキレット)を取り出すと、一口煽って踵を返した。

 

 まあ、この段階でこれ以上の接触は不自然か。

 

「じゃあ俺はパトロールに戻る」

「良いデビルハンターを見つけた、と報告書に書いてもいいですよ」

「お前みたいな胡散臭い奴を誰が信用するか」

 

 ごもっとも。

 

◆◇◆◇

 

 悪魔退治の報告書の作成、特殊清掃業者の手配、死亡手続き、死体処理、武器の摩耗度合いの確認、武器整備業者の手配、替えの武器の発注、発注した武器の届け出……デビルハンターの仕事と言うのは、ぶっちゃけ悪魔を倒した後の方が長いし疲れる。

 公安の様に大規模な所であれば事務員がいるのだろうし、そもそも役所側という事で書類の巡りも早かろうが、一民間団体ではどちらにも限度があるのだ。

 

 司法書士などに頼むまでも無い書類は、当然見習いである俺の仕事な訳だが……今回ばかりは、少し別の書類が必要そうだ。

 

「すまない、ジョージ……だが、もう無理だ」

 

 つまりは、廃業届である。

 

 これも言ってしまえばよくある話で、長年連れ立った戦友がひょんなことから死んでしまって、命懸けのデビルハンターを続けるだけの気力や戦力がなくなってしまったのだ。

 実の所、俺は過去に6つ程のデビルハンターグループを転々としており、そのグループが廃業する度に別のグループへ転職していたので、こうした事態は慣れっこだったりする。

 

 そろそろ『凶兆の祓魔童子』みたいな縁起が悪くて中二臭い仇名がついてそうなので、俺も別の稼業を考えた方が良いのかもしれない。

 

◆◇◆◇

 

 翼の悪魔の分の報酬を現金で受け取り、帰宅する。

 部屋を借りるにも不動産を買うにも身分証が必要だが、それを持っていないので基本的にはホテル暮らしだ。ペットOKのホテルと言うのは少なく、グレードと比較して割高の傾向があるが、背に腹は代えられない。

 

「にゃあ」

「もう猫の為に働いてるまであるねこりゃ」

 

 ホテルの部屋に帰った俺を出迎えたのは、あの日から少し年を取ったクラムボンだ。

 長い体毛はややキューティクルを失ってはいるものの、それ以外はおおよそあの頃と同じまま。

 

 理知に富んだ顔つきも、見透かす様な瞳も、ぷにぷにと柔らかい肉球も、そしてやたらめったらと懐いてくるところも。

 

「はぁ……」

 

 荷物を投げ捨て、部屋着に着替え、クラムボンとじゃれあう。

 

「すぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……………」

 

 猫吸いを考えた猫好きの誰かはノーベル賞を受賞するべきだ。

 永久機関よりは人類を幸福にするだろう。

 

「ゲファッ!! ごぼふふぁっ! えふっ、ゲホ、ゲホッ!!」

 

 同時にダーウィン賞も受賞するべきだな。

 吸うだけ吸って『吐き出す』ってプロセスが勘定に入っていない。

 

「あー……ごめんな、クラムボン」

 

 ティッシュで唾液まみれになったクラムボンの背中を拭う。

 気にしてるんだか気にしてないんだか、クラムボンは為されるがままだ。

 

「西川さん、デビルハンター辞めるんだってさ……それでグループ解散。俺もお払い箱……別の所に行こうにも、もう悪評たちまくってるだろうなぁ……もう6チームも崩壊してるもんなぁ……」

 

 誰が悪いのかと言えば、勿論直接的に殺した悪魔が悪いのだし、分不相応な悪魔に挑みかかった当人らが悪いのだが。

 では分不相応な悪魔に挑みかかるようになってしまった原因は、確かに俺にあるのだ。

 

 俺がいれば、そんな分不相応な相手だって簡単に殺せる。

 強い悪魔を倒せば、その分案件当たりの単価は高いし、余所で手に負えない悪魔の案件が回ってくることもある。金と名声が一挙に手に入るわけだ。まるでランプの魔人と契約したかのように。

 

 最初の頃は傭兵のおかげだと分かっているのだが、周囲からの賞賛も相まって、段々俺の実力と自分の実力を混同するようになっていく。

 

 俺は俺でちゃんと見習いのフリをするために、他の先輩方がいる現場では他を立てるような形の戦闘しかしないのも、その混同に拍車をかけてしまう。そこでガンガン前に出ては、他の人たちのお株を奪う形になってしまうし。

 彼らもそのことを理解しているので、俺が存分に暴れてくれるように単独でパトロールをするように言われることが多い。岸辺隊長と同じ様な扱いだ。

 

 そして認識と現実の歪みが臨界点に達した時、甚大な被害を被る。

 

 改めて言うが、直接的に殺したのは悪魔だし、現実的な戦力測定を喪失した彼ら自身の非も大きい。

 それでも、そのような事態が起きた間接的な要因は俺な訳だ。

 

「もー俺もデビルハンターやめて、猫カフェとかやろっかなぁ……ん?」

 

 カフェ?

 

「あ」

 

 デンジが公安所属になるまでには時間があるが、仮にそうなってもそれを知る術は、一民間デビルハンターの俺にはない。

 しかし、『公安所属になったデンジ』を目撃する術はある。

 

 喫茶店(カフェ)、二道。

 

 デンジはそのカフェの看板娘のレゼを目当てに、最低でも1週間連続で昼食を食べにくる。

 個人店なのでカメラなどの心配が無く、飲食店なので小動物の心配が無く、喫茶店なのでいつまで粘っても不自然でなく、誰が居てもおかしくない。

 あまりにも完璧すぎる環境だ。

 

 だが問題が1つ。

 二道の場所が分からない。

 

 今はG○○gle Mapなんて存在しない1990年代。

 第二の産業革命とも言える「情報革命」が起きる前の世界において、特定の1つの店を探すことの難しさと来たらない。

 しかも、周囲の人たちに「カフェの二道はどこですか?」なんて聞いて回るわけにもいかない。知らないはずの店にいきなり行くのは不自然が過ぎる。

 

 そういう意味では、何処をどう放浪(パトロール)していても不自然ではないデビルハンターはうってつけの職業だ。

 更に言えば、フリーになってしまった現状もまた、行動の自由度を高めてくれている。

 

「これは……もしや、千載一遇の好機なのでは?」

 

 備え付けの金庫……とは全く無関係の場所に隠した金を確認しに行く。

 デビルハンターは命懸けの仕事と言うだけあって、とにかく金が良い。書類上の扱いは見習いであっても、結構贅沢な暮らしができる。

 特に俺は手入れが少ない武器だし、支出もそう多くない。

 

 総じて……まぁ、一生遊んで暮らせる、とまでは言わないが。

 向こう20年は生活の心配をしなくていいぐらいの金額が溜まっていた。

 

「身分証があれば、巨万の富ぐらいは築けただろうが……まあ良いか」

 

 1994年。バブル崩壊の傷跡癒えぬ時代。

 もし『金融の悪魔』なんてのがいれば、これから5年はそいつの天下かも。

 

 なんてことを考えて、明日からの為に寝ることにした。

 勿論、ベッドの中心はクラムボンである。

 

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