デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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銃列、ネズミ、獄の番

 盾は『2枚』あったッ!

 それがジョージが気付き、マキマが気付かれたことに気付いた真実である。

 

 第1の盾……内閣総理大臣との契約に何らかの不具合が起きた時の為の保険。

 内閣総理大臣との契約は反則的な防御能力を実現するが、それはどこまで行っても契約でしかない。

 

 他人依存、相手在りき……マキマは、そんなもので安心だと考えたりはしない。

 

 なぜなら、それは『支配者』の在り方では無いからだ。

 支配の悪魔の本能が、『対等な関係の他人』を作らせないからだ。

 

 支配者は常に孤高であり、誰かに依存したりせず、仲良くなったり、まして抱きしめたり抱きしめられたりしない。

 何かの理由で誰かに依存するのであれば、その誰かを軍門に下らせるべく策を巡らす。

 

 そして全てが自分の下について、ようやく『安心』できる。

 

 それが支配者。支配の悪魔の業。

 故にどれだけ強力であろうと、たった1枚の盾で満足などしない。

 

 外注する強力な第1の盾。であるならば、その保険は『貧弱であろうと自作の盾』に他ならない。

 つまり、マキマに全て捧げる契約をした人間の命を直接盾にする。

 

 ハッキリ言って不便だ。

 盾に出来る人間には数的な限界があるし、減ったら減っただけ自力で補充する必要があるし、どういう順番で減るのかは全く分からないし、減った数や質によっては本業のデビルハンターに支障が出る。

 

 だが確実に機能する。

 

 保険というものは、それだけで値千金なのだ。

 

 マキマの命は有限で、払底しつつある。

 この事実がお互いに共有されたことにより、ジョージとマキマの決戦は個人対個人の決闘ではなくなった。

 

 軍対軍の戦争……戦闘資源の削り合いという、泥沼のフェーズへともつれ込んだのである。

 

 先手はマキマ。公安デビルハンター本部に居る職員を全員『盾』兼『手駒』にした。

 後手はジョージ。マキマが瞬間移動したことを察知し、行動を起こす。

 

◆◇◆◇

 

「移動した……? プリンシに呼ばせたのか?」

 

 先ほどまで後ろに居たはずのマキマが、一瞬で前方に動いたことを察知した。

 つまり、マキマは俺が公安デビルハンター本部に安置されていると思しき残機を直接減らしに行ったことに気付いたわけだ。

 

 それを防ごうとする行動それ自体が、『第2の盾』を証明する様なものだが……ここはブラフではなく堅実な手を打ってきたか。

 となると、どうせ本部で残機を増やしているのだろうな。

 

「しかし、だとするとちょっと遅いな」

 

 移動するタイミングの話だ。

 本当に堅実にやるなら、即座に本部へ移動するべきだったはず。ブラフを張るなら、そのまま移動せずレゼ含む武器人間たちに追撃させたはず。

 

 しばらくその場にとどまり、雑な追撃を仕掛けてから移動……?

 

 ただその場で正道か詭道(きどう)かをまごまごと考えていたわけでもあるまい。

 あの場所で何か、下準備の様な事をしていたと考えるのが妥当か。

 

「……確か、あそこにはアキが居たな」

 

 未来の悪魔の契約者。

 代償をアキに押し付ける事で、マキマ本人は完全にノーコストでその能力を使える。

 

 『未来の悪魔』の能力、数秒先の未来を見る。

 

 恐らくこれを得るために、そして盾を1枚増やすために、アキに全て捧げる様に促していたのだろう。

 

 これはマキマの戦力が増えたことを示すと同時に、マキマの戦力の上限を示す事実でもある。

 本当にこの能力が欲しいのであれば、未来の悪魔そのものを支配すればいい。しかしそれを行わず、契約者を支配する事で間接的に能力を得ている。

 

 つまり、マキマは公安が収容している悪魔を支配することができない。できるとしても、それは一朝一夕にできる事ではない。

 この戦いの間に増える可能性は低いという事だ。

 

 更に言えば、悪魔そのものの力が十全に振るわれる可能性もまた低いという事。

 

「さて……未来視への対抗策なんてものは、古今東西色々とあるものでね……」

 

 ついに到着した公安デビルハンター本部を見下ろしながら、そんなことを呟く。

 

 ただ一言、命じた。

 

 『来い』と。

 

 めくれ上がる。

 本部が。建物が。都市が。東京が。

 

 もはや個人の技量や戦闘力でどうにかなる現象ではない。

 まして、ほんの数秒未来を見た所で、何の足しにもならない。

 

 災害。

 

 『銃の悪魔』は、ただこの場に急行してきただけでそれに匹敵する。

 

「能力発動」

 

 さっきまで公安があった所の直上。

 その空中にたたずむ銃の悪魔へ、更に命令を下す。

 

 銃の悪魔、能力発動。『半径20m以内に存在する、自身の所有権が自身に存在しない生命体の心臓を撃ち抜く能力』を確認。

 

 同時に狙撃銃の悪魔の能力を発動。

 狙撃銃の悪魔の能力は、これまたシンプルで使い勝手がいい。

 

 『狙撃銃の悪魔』の能力、攻撃を必中させる。

 

 未来が見えて、どう体をよじり、何処に逃げ込んでも意味は無い。

 あらゆる障害を回避し、透過し、ただ命中する。

 

 だが……。

 

「チッ」

 

 『所有権』などという抽象的な概念をぶっつけ本番で取り扱ったせいで、能力に無理が出た。

 殺傷能力こそ満足いくものだったが、その分全てのしわ寄せが『射程距離』に行ったせいで地下深くのデビルハンターに攻撃が届いていない。

 それでなくとも、銃の悪魔は浮いてるからな……その分の距離も無駄になってしまった。

 

 マキマの残機は……差し引きでギリギリプラスって所か?

 元々の残機役が全員本部に詰めてる訳もないしな。ある程度は分散させているハズだ。その辺は地道にマキマを殺し続けるしか無い。

 

◆◇◆◇

 

 マキマは生き残った残機に契約悪魔を報告させる。

 それを聞いて戦略を大まかに描いていく。

 

 そして打った一手は。

 

「「「「「「「コン」」」」」」」

 

◆◇◆◇

 

「おろ?」

 

 呼び寄せた銃の悪魔の肉体が、所々で食いちぎられる。

 よく注視してみると、どうやら『狐の悪魔』が丸のみにしている様だ。

 

 流石に体積的にも能力的にも大き過ぎる銃の悪魔を一息で、とはいかないようだが、端切れであれば十分と言う訳か。

 

 だが、それはちょっと俺を舐め過ぎじゃないか?

 

「暴れろ」

 

 噛み千切られた肉片に命令を下し、狐の悪魔の口内で銃を形成。滅茶苦茶な方向に発砲させる。

 それなりの痛手は与え、『無理な契約行使による契約破棄』をいくらか誘発できたようだが、同時にある程度は肉片を飲み込まれて、狐の悪魔が強力になってしまった。

 

 結果として、銃の悪魔を喰らう狐の悪魔の数は減ったが、それぞれの頭が大きくなったので喰われる総量はプラマイ0といった所。

 

 その一回で『無理な契約行使』に該当しない塩梅の量を把握されたようで、契約破棄は期待できそうにない。

 

「”来い”」

 

 公安直上に浮遊していた銃の悪魔を取り込み、狐の悪魔の攻撃から退避させる。

 

 それに伴って肉体が成長するが、些細な事だ。

 ともすれば大味ですらあるこの悪魔の力の打ち合いにおいて、肉体の強度やサイズに一体何の価値があろうというのか。

 

「だがどうするかね……」

 

 マキマの位置は分かる。

 最初の不意打ちに使った弾頭の表面に、銃の悪魔の肉片をUVレジンで固めた粒を大量に塗布していたからだ。

 再生しても異物は残る。この原則を利用した疑似的な発信機といった所か。

 

 これによって取得した位置情報と『狙撃銃の悪魔』の能力を組み合わせる事で、今、この場所からでも必中の攻撃を放つことは出来る。

 だが、恐らくはこの発信機がバレていない現状、この存在を匂わす様な事はしたくない。マキマだって位置がバレていないと思っているから、こんな間接的な攻撃をしているのだろうし。

 

 それに、一般人の立ち入りができない公安関連施設には、スモークグレネードの様な仕込みが出来ていない。

 

 銃の悪魔で上物を取り払い、結構大きく先手を取った印象だが、実情としては支配の悪魔のホームグランドに引きずり込まれた形だ。

 まだまだこっちが優勢ではある。数値にすれば6:4って所だろう。しかしマキマは駒損の代わりに状況有利を取得し、盛り返しつつある。

 

 なので、出来ればマキマをこっちのフィールドに引きずり込みたい。

 

「……どうせこの構図になるんなら、レゼ編ラストに始めた理由がいよいよデンレゼだけだな……」

 

 まあ、それがやりたくて、という節も大いにあったので別に良いのだが。

 

 とはいえ、このまま更地とにらめっこしてても意味が無いのも事実。

 どれ、適当な悪魔に銃の悪魔の肉片を投与して嗾けてみるか。ちょうどいい……ニシンの悪魔、ぐらいのが居てくれるといいんだが。

 

 などと考えて視線を巡らすと、どうやら膠着を破りたかったのはマキマも同じだった様子で。

 

 地面に、巨大なヒビが走った。

 

「おっと……?」

 

 マキマも膠着を嫌っている……という事は、次の『内閣総理大臣』を早急に作る手立てが無いという事か?

 国会議員の全てを支配していたとしても2時間はかかる。だから決着はできるだけ急いで、というつもりだったのだが……この調子なら、戦闘の最中に復活というのは考えなくて良さそうだな。

 

 しかも、こんなにデカい……デカい……

 

「いやマジでデカいな?」

 

 それこそ、公安の地下全部を自分でほっくり返してしまいそうな規模のヒビが大地に入っていく。

 

 ……まさか、『この本部全てが私のものです』みたいな理屈でマキマゲリオン発進とか言わないだろうな?

 

 悪魔の力は認識が法則に優越する。

 よっぽど『そう』と思い込んでいなければまず起きない現象ではあるのだが、絶無と言う訳じゃあない。

 俺なんかは、元々銃の悪魔には浮遊能力があったので、サイコキネシスもできると思い込むのは楽な方だった。

 

 しかし流石にマキマゲリオンは……どうなんだ?

 一応理屈的には不可能じゃない様な気がしないでもないように思うが、そういう正義のヒーローってチェンソーマンの役割じゃないだろうかマキマ的には。

 正直、俺としてもそんなアグレッシブな入〇正一みたいな事されても反応に困るというか。

 

 この例えで出てくるのがリボーンかブラクロかで世代が別れるよなぁと物思いにふけっていた所、ようやく地割れの中から正体を現してきた。

 

「ヂュルア”ア”ァァァアアア!!!」

 

 全長は、20mはあるだろうか。それほどの巨体。

 薄汚れた茶褐色の体毛、ビームのそれとも違う流線型の体、無毛で細く長い尻尾、そして不自然なまでに突出した前歯。

 

 1匹ではない。

 そんな巨体の怪物と全く同じ存在が、10匹も20匹も、地割れの間からぞろぞろと出てくる。

 

 

「そう言えば……確かに、お前との因縁も結構長いモノになるよなぁ……えぇ?」

 

 鼠の悪魔。

 

 だが、お前がいくら強くてもこれでは鶴瓶打ちだぞ?

 

「BANG、BANG、BANG」

 

 20mあろうが悪魔だろうが、生物は所詮生物。

 頭蓋と心臓を消し飛ばせば簡単に死に至る。

 

 制空権を抑え、高火力の遠距離攻撃を打ち下ろし続けるのは、銃の悪魔にとっては本職も良い所だ。

 

「おん?」

 

 鼠の悪魔の生き残りが、死体になった鼠の悪魔に走り寄り……死体を貪る。

 

「……わお」

 

 俺がちょっと引いている間に、その鼠の悪魔から感じられるパワーが増していく。

 すぐさまその鼠の悪魔を撃ち殺すが、更に別の鼠の悪魔がその死体を喰らう。

 

 その繰り返し。それで冪乗されていくかの様にパワーが増していく。

 そして、ある程度パワーが集まったら、分裂してパワーが減る。

 

 しかもまだまだ地割れから這い出してくる。

 

「終わることのない無限の鼠か……まさしく、って感じだな。俺がやったのははぐれ個体とかだったのかな?」

 

 いや、そもそも鼠の悪魔じゃなかった可能性もあるな。

 ヂュウヂュウ鳴いてたからてっきり鼠だと思ってたけど……あ、もしかして(ヂュウ)(ヂュウ)鳴いてたってオチか?

 デンジをチェンソー呼ばわりする悪魔は多いし、俺を銃呼ばわりする悪魔もそりゃあいるか。

 

 だが、マキマは何をしたいんだ?

 

 これじゃ時間稼ぎにしかならないぞ。

 無尽蔵に湧き出るという事は契約の代価にも使えなさそうだし、そもそもこれを呼び出すために消耗もしているだろう。

 

 ……一応、国会議事堂の方にも攻撃を打ち込んでおくか。

 

 ロシアの銃の悪魔に日本の国会議事堂を吹っ飛ばしてそのまま太平洋まで移動する命令を下し、ついでにアメリカの銃の悪魔に太平洋でロシアの銃の悪魔と合流する命令を下す。

 その場にずっと留まってでも、また攻撃されてこっちのリソースが目減りするだけだからな。そのまま戦闘領域の外まで逃がしておく。

 

 命令を下した瞬間、視界が真っ暗になった。

 

「なんだ!?」

 

 咄嗟に両腕を伸ばして空間を把握する。

 狭い。体をねじるのにも難儀するほどに狭い。

 

 浮遊感。

 いや、これは落下だ。箱が丸ごと落下している。

 

「ふん!」

 

 少し力を籠めれば箱は簡単に壊せた。

 そのまま脱出すると、どうやら結構高度を落とされたらしい。鼠の悪魔の射程距離内だ。

 

「散弾銃の悪魔」

 

 だが、所詮鼠は鼠。獣は獣。

 銃には敵わない。

 

 殺到した鼠の悪魔を適当に減らして、空に飛びあがる。

 

 するとまた暗闇。

 

「またか!」

 

 即座に箱をぶち破って脱出するが、脱出した先でもまた閉じ込められる。

 

 それの繰り返しだ。

 箱に格納、一拍置いて落下までは確定か。

 

 何の悪魔だ?

 破った箱から見て、棺桶……いや、土葬か。

 

 土葬の悪魔。

 

 日本(ここら)じゃ腐るわ傷むわ臭うわで馴染みのない文化だが、もっと渇き切った地域では採用される葬送だ。

 

 だがそれ自体は大した恐怖を抱かれているわけでもないはず。

 疫病を生み出すことになるから日本では廃れたが、廃れたという事は認知されていないという事。認知されていなくては恐怖されることなど無い。

 廃れていない地域でも土葬することになった原因や、積み上がった死体には恐怖すれど、土葬そのものは恐怖されていないはずだ。

 

 という事は、こいつの能力自体は恐らく大したものじゃない。

 

 棺桶に閉じ込める必中効果と、その棺桶を土に埋める効果。

 この2つは確定として……埋まった後にも何かあるかもな。即死、は無いだろうが、何かしらのデバフぐらいは喰らうだろうな。

 

 能力発動の条件は……視認だな。

 鼠の悪魔から飛び出した時に発動してくる。

 

 そう言えば狐の悪魔も同じ発動条件だ。

 って事は、対象を視認するための視界ジャックの力の他に、契約者に視認させるための視界共有の力もある。

 

 だがマキマの能力は聴覚にのみ作用するはず……別の悪魔の能力?

 いや、単純に情報処理の都合上、広範囲かつ同時並行的に展開する監視には聴覚しか使えなかったとかか? 単体に特化するのであれば視覚も可能?

 

「まぁなんでも良いか」

 

 土葬の悪魔の所為で俺の秒間火力は激減。鼠の悪魔を減らせなくなっている。

 

 国会議事堂をひっくり返したとはいえ、あんなのはただの箱物。無視して青空国会を開かせるぐらいは訳ないだろう。

 必要なのが正式な内閣総理大臣である以上、軍事クーデターをはじめとする超法規的措置による任命は無意味だが、正規の手続きと言い張れるだけの体裁さえ整えれば問題無く契約は再起動してしまう。

 

 仕方ない。

 時間はこっちの敵だ。

 

 脳と心臓を弾頭に加工し、肋骨を銃身に変えておく。

 炸薬は肉片を消費して生み出す未来の高性能品。ジャケットも同じだ。

 

 これで、緊急脱出の準備が整った、と言う訳だ。

 

「肉体の操作にも特に違和感はない……行ける」

 

 一度空に飛んで土葬の悪魔の能力を誘う。

 閉じ込められ、地面スレスレまで落下してから脱出し、鼠の悪魔を掻い潜って、公安地下へと入っていった。

 

◆◇◆◇

 

 公安の地下は、思ったより入り組んでいた。

 しかしあっちこっちからトラップが飛び出してくるようなことは流石に無く、適当に目印を付けておけば簡単に突破できる。

 

 物陰からいきなり現れ、恐らくは携行品の拳銃を撃ってくる奴もいたが。

 

「日本は銃撃つとき許可制だろぉ!?」

 

 突破は容易。射撃自体を無効化するのもそう難しくなかった。

 しかしなんで出てきたんだコイツら。こんなんでも一応は貴重な残機のハズなんだが……残機に出来なかった奴もいたのか?

 

 マキマに付けた発信機がバレない様、偶然の範疇でマキマの所へと直行する。

 徹底的に地下開発がされていたわけでもない様で、割とこじんまりとした部屋にマキマは居た。

 

 会話は無い。

 お互いが速攻をかける。

 

 俺はどさくさに紛れて拾っておいたスモークグレネードを投擲。

 なにせ街中にバラまきまくった上に、その大体の配置を把握しているのだ。銃の悪魔がこの場所に来た時に吹っ飛ばした瓦礫の中から見つけるのはそう難しくも無い。

 

 対するマキマは。

 

「コン」

 

 狐の悪魔で俺を丸呑みにした。

 そのままに飲み込まれてくれるなら良し、突破してくるならそのスキをついて良し、という寸法か。

 

 ある意味、お互いの初手は眼晦ましで一致したわけだ。

 

 だが、ちょっとホウレンソウが行き届いてないんじゃないか?

 

『ウ! この味……この味もう嫌い、帰る』

 

 狐の悪魔の頭が溶けていく。

 その瞬間、狐の悪魔の口の中で作っていた銃をマキマに放った。

 

 名付けて、右腕銃、といった所か。

 俺の右腕をそのまま銃弾にした、大変チャレンジングな銃である。

 

 この銃は突き刺さった所で逆棘が花開き、串刺しのまま安定して対象を殺し続ける。

 

 残機30個ぐらいなら、これだけで十分殺し切れるはずだ。

 ちゃんと中枢神経系をズタズタに貫くようになっているからな。

 

 音速を超え、スモークグレネードの粘っこい煙を掻き分けて、俺の右腕が飛翔する。

 

 そして、マキマの手前で止まった。

 

「なん……だと……!?」

 

 右腕が何も無い空中で虚しく花開いた。

 

 マキマの顎に、一筋の汗が流れ落ちる。

 

「これは……当たりさえすれば、私を殺し切れていたでしょうね……」

 

 マキマが悠々と歩く。

 しかしその歩みは、俺を中心にした一定の範囲から近付いてこなかった。

 

「銃の心臓の持ち主……なぜ私にここまでの殺意を向けるのかは知りませんが、まあ構いません。すぐに分かることですからね」

「支配の悪魔……何をした?」

「まあ答える義理は有りませんが、答えてあげましょう。床を見なさい」

 

 床?

 

 そうして目線を下にやると、薄暗くて分かりづらいが、紫色の塗料で何か……円の様なものが描かれている。

 

「これは、魔法陣か!」

「その通りです。この魔法陣の上に10秒滞在する。それが『監獄の悪魔』の能力発動条件」

 

 監獄の悪魔!

 そんなのが居たのか。

 

「発動さえしてしまえば、対象は監獄の悪魔が持つ異空間に取り込まれる。そして、その中で50年の懲役を全うするまで出られない……ただし、監獄の悪魔の契約者は、囚人に対して『面会』、『司法取引』、『恩赦』ができます。今は『面会』中と言う訳です」

「……何が言いたい?」

「降伏しなさい。そうすれば私が『恩赦』で解放してあげます」

「なるほど、調伏(ちょうぶく)した悪魔に、懲役50年分ぐらいの働きをさせられるって能力な訳だ。懲役と寿命は大体等価かな?」

「そんな所です。ちゃんと公安の悪魔として、デンジ君と一緒に働いてもらいますけど」

「デンジ? レゼは?」

「ああ……確かに、レゼちゃんも居た方が良いか……じゃあ、基本的にデンジ君とレゼちゃんがバディを組む形で、貴方と更に別の人が保護監督という形になるでしょうね」

 

 うーん、岸辺隊長が適任かな?

 マキマはそんなことを言っている。

 

 悪魔のささやきとはまさにこのことだな。

 

「……俺は……」




オ リ ジ ナ ル 悪 魔
鼠の悪魔:何でも食べてどこにでもいてジャンジャン増える。同族喰らいで力が増し、一定以上になると分裂する。全ての個体を殺さないと地獄に転生しない。疫病にまつわる悪魔が傍に居るとパワーアップする。
土葬の悪魔:本当の名前は疱瘡の悪魔。棺桶→埋葬→疱瘡発症→即死という凶悪すぎる能力を持つが、疱瘡を何らかの形で克服すると能力の対象に出来なくなる。対象に出来るのは人間サイズの棺桶に入る存在のみ。呪術廻戦のオマージュ。
監獄の悪魔:生け捕りにした悪魔を異空間送りにする。契約者は『面会』『司法取引』『恩赦』の権限を持ち、50年の懲役を武器にして交渉を行うことができる。某二次創作のオマージュ。
ハクビシンの悪魔:第1話でジョージと戦った奴。銃、銃と鳴いていた。
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