デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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評価バーMAXで赤色になりました。感謝感謝。
やっぱ流行りの人気作に絡むと数字がデカい。あとデンレゼを書くと露骨に評価が伸びて草なんだ
でもまだまだ処理する問題があるからデンレゼだけを書くことは出来ないんだ


アサとヨルの死神

「アサ、これは本当にお前のためを思っての事だぞ」

「そんなの文字通りただの悪魔の囁きでしょ……」

「いやいやこの私にしては実に珍しく、純度100%の善意なんだが」

「悪魔が善意? 信じられるわけないじゃん」

「その点については自分でもびっくりしてるよ。私も女なんだなってこんな形で実感したくなかったぞ」

 

 銃の悪魔が襲来したことによる被害は、実の所そこまで大きくなかった。

 いや、勿論国会議員が大体死んだという意味では相当に致命的なダメージを受けたのは事実なのだが、それに対して民間に対する被害は相対的に少なかったのだ。

 

 あくまでも相対の話ではあるし、中国の首都である北京から東京の直線状にあった建造物は大体更地になっているが、それでもそれ以外の被害は少なかった。

 ジョージが『首都移転も視野に入る』と言ったのは行政機能だけの話だ。責任者になれる人間が大体全部死んだのだから、責任者になれる人間が居る別の場所に移転するかもしれない、という話。

 

 日本にまだまだ活気あるこの時代、民間の自助努力だけでも十二分に復興可能な範疇だった。

 結果として、ジョージとアサが同棲していたホテルは、必然的に無事だったのだ。

 

 そんなホテルの一室で、アサが一人で……つまり、アサと戦争の悪魔で話し合っていた。

 

 議題は。

 

「やっぱりあの男(ジョージ)は止めておいた方が良いと思うぞ?」

「余計なお世話!」

 

 アサの男の趣味が悪い問題だった。

 

「まあ聞け、な? 実際に話した時間は短いが、これでも私は人生経験が豊富だ。色んな人間を見てきた」

「悪魔の視点で見れても」

「その私に言わせれば、あの男は非常に珍しいタイプの狂人だ」

「狂人に珍しいも何も無いでしょ。っていうか狂人扱いしないでよ」

「……そうだな、確かに狂人というのは少しズレているな。より正確には……」

 

 考え込む戦争の悪魔を見て、なんでこの悪魔はこんなに親身になっているんだと今更ながらに疑問を抱くアサだった。

 

「あれだ、超人だ」

「ちょーじん?」

「そう、あの男を表現するに一番ふさわしい言葉は、恐らく超人だろう」

「……そりゃあ、なんか第二形態があったのは認めるけど」

「いやそういう意味じゃなくてだな」

 

 なぜか正座でアサに向かい合ってきた戦争の悪魔。

 

「ここでいう『超人』とはニーチェが唱えた概念でな。自らの中に絶対の価値基準を有し、それに殉じることができる人間の事だ」

「……?」

「分からないか? 一言で言えば、奴は何でもできるんだ」

「なんでも?」

「そう、なんでもだ。奴は自分がそうしたいと思ったら、本当に何でもできる。聖人君子にも独裁者にも、それこそ悪魔にだってなれる。能力があるから、じゃない。ブレーキが無いから、だ」

「……」

「ピンと来ないようだな。だが窓の外を見ろ」

 

 アサがのろのろと窓に向かう。

 体が乗っ取られているからではない。戦争の悪魔の言葉を、理解しなければならないと察しているからだ。

 

「『これ』が、何よりの証明だろ?」

 

 窓から見えた景色は、まるで終末。

 眼下の道路には暴徒が列を為し、奥ではビルが倒壊して、耳をすませば稀に銃声も聞こえる。

 集まった人間を狙った悪魔が出てくれば、それを倒そうとデビルハンターもやってくるが、どちらも数が多すぎてまともに行動できていない。

 

 めちゃくちゃだ。

 

 幸い、このホテルは高いだけあってセキュリティもしっかりしているが、それでもその光景が無かったことにはならない。

 

「あの男が何を目的に動いていたのかは知らん。だが、その目的の為にこれだけの事態を引き起こせるんだ。そして恐らくその目的、或いは価値基準において……お前の優先順位はそう高いものではない」

「う……」

 

 ぐらりと足から力が抜けたアサは、窓から逃げるかのように床へ座り込む。

 

「別に絶交しろなんて言うつもりはない。愛着があるのもわかるし、一種のパトロンとしてあの男の価値は計り知れないというのもあるからな……だが、いつか絶対にお前は『切られる』。必要ならば今日にでも、だ」

 

 必要ならば。確かに、ジョージはたまにそういう事を言う。

 アサも言われたことがあった。

 

「だから……一時の恋や気の迷いなら良い。だが長く付き合うのは止めておけ」

 

 戦争の悪魔が囁くその言葉に、アサは何も言い返せなかった。

 

◆◇◆◇

 

「はぁー、乱世乱世」

 

 そんなことを呟きながら、ジョージは部屋に帰って来た。

 

「……おかえり」

「ただいま。お互い無事で何よりだな」

 

 ビニール袋からいそいそと菓子や紅茶を取り出し始めたジョージ。

 

「いやぁ、しぶといというか、商魂たくましいというか、営業してるもんだな。紅茶は趣味じゃないが……まあ、たまにはいいだろ」

「それ、何処から買ってきたの?」

「洋菓子店からテイクアウトしてきた。アサも食べる?」

「……食べる」

 

 先ほど戦争の悪魔に言われたことも相まって、やや暗いながらもアサは応じた。

 普段であれば敏感にその差異を感じ取るはずのジョージだが、今日は違った。

 

「いやはや……こんなに晴れ晴れとした気分でアフタヌーンティーとしゃれこむのは何時ぶりだろうな」

「そうなの? 二道の時とかも……」

「二道に居た時も楽しくはあったが、決戦の気配が色濃くなるにつれて、下準備も増えたからな。消化していない宿題がずっと頭の片隅に居座っている様な感覚だった」

「あぁ、なんかわかるかも」

「だが! 本日めでたくその決戦に勝利し、こうして勝利の美酒を味わっているわけだ。紅茶だけど」

「そう言えば、なんかその、めっちゃ成長してるけど……飲めるの?」

「レゼの見立てじゃ18そこらって話だったから、まだ飲めないな」

「いよいよどんな生態してるんだオマエ」

 

 顔を出した戦争の悪魔がツッコミを入れた。

 

「えっ待ってその状態でレゼ先輩と会ったの!?」

 

 そして戦争の悪魔は即座にアサに押しのけられた。

 

「会ったぞ。五体満足でピンピンしてたよ」

「無事なんだ……良かった……」

「良かった、か……そうか、それなら良いが」

「今どこにいるの?」

「知らね。デンジと駆け落ちするんだってさ」

「えぇ~~ッ!? レゼ先輩とデンジって、そんなに……?」

「まさしく相思相愛って感じで、見ているこっちが胸焼けしそうだったぞ。まさに、ザラメが溶けてゲロになりそう、って奴だ」

 

 ちなみに、知らないというのは嘘である。

 目的地を聞いたわけではない。しかしあの2人に渡した高分子ポリマー銃にはマキマの体内に埋め込んだのと同じような発信機の働きをする肉片を組み込んであるため、あれを持っている限り2人の現在位置が分かるのだ。

 

 銃の悪魔の肉片を消費するというコストをかけたのも、手間暇かけてその銃の有用性をプレゼンしたのも、懇切丁寧に取扱説明書や火薬などのレシピを惜しげもなく渡したのも、再会した時に携行を念押ししたのも。

 

 全てが全て、このための仕込み。

 

 流石に盗聴の様な真似はできないが、これでいつでもデンレゼを補給できる体制が整ったのである。

 マキマを倒して人生がアディショナルタイムに入りつつあるジョージからすれば、これからの人生にハリが出てくるというものだ。

 

「で、俺からは餞別渡して、それっきりさ」

「はぇ~……レゼ先輩、そんなに……」

 

 ちなみにジョージは例の『手土産』一式の他に、餞別として『三千年チェンソー』をデンジに渡していた。

 マキマの墓標としてあの場所に埋めてしまうという案もあったが、死蔵するよりは活用した方が良いだろう。武器に使うのか林業に使うのかは知らないが。

 

 その渡し先がデンジというのはやや尊厳破壊の様な気がしないでもないが、死者は決して傷つかないし、原作のそれよりはマシだ。

 チェンソーマンに食べられたがっていたマキマが、チェンソーマンのなりそこないと唾棄するデンジに喰われるあの構図は、単純な攻略以上にそういう意味があったとジョージは思っていた。

 

「二道も多少巻き込まれた様でな。まぁ、窓が吹っ飛んで店内が滅茶苦茶になったぐらいで、十分元に戻せるだろう」

「あ、そうなんだ……」

「看板娘が居なくなって客足は遠のきそうだし、後で顔でも出してきたらどうだ?」

「そうする」

「とはいえ窓を吹っ飛ばしたのは俺だから、あんまりいい顔はされないかもしれないけど」

「何やってんの!?」

「い、一応修理代金と迷惑料は渡したから……」

「だとしても何やってんの」

「あの状況だと壁抜きするのが一番だったから、つい」

 

 『つい』で大きめの窓ガラスを吹っ飛ばすジョージは、確かに戦争の悪魔が言う所の超人であった。

 必要ならば、何でもできる人間。

 

「……」

「おかげで二道には、気まずくってとてもじゃないが顔を出せんよ。まぁ、行くというなら送り迎えぐらいはするがね。随分物騒になったし」

「物騒、か……」

 

 アサは先ほど見た窓の外の景色を思い返す。

 確かに、あれは物騒としか言いようがない光景だった。

 

「なん、で」

「おん?」

「なんで、そんなに他人事な感じで話せるの?」

 

 僅かな沈黙。

 その間にアサが見たジョージの顔を最小限の文字数で表すなら。

 

 『?』。

 

「だって、この物騒さって、ジョージがやったんでしょ?」

「……まぁ、確かにある程度はその通りだな」

 

 ジョージは改めて紅茶を啜る。

 その所作には、焦りも動揺も、ましてや罪の意識すら垣間見えない。

 

「だったら、もっと罪悪感とか無いの?」

「……聞きづらい事を単刀直入に聞いた勇気に敬意を払い、俺も単刀直入に言おう。無い」

 

 多少は神妙な顔をしているが、その表情と放つ言葉に相関性はなく、あくまでも穏やかなままだった。

 

「俺は俺のやりたいようにやった。結果として、多くの人間が不幸になった。それ以上でもそれ以下でもない」

「……そんなことまでやって、ジョージがやりたかったことって、なんなの?」

「簡単さ、『支配の悪魔』を殺したかった」

 

 もう終わった事だからなのか、以前と違ってジョージは簡単に話してくれる。

 

「全ての悪魔は名前を冠して生まれ、その名前が恐怖されているほどに力を増す。『支配』といえば、『死』『飢餓』『戦争』と並び称されるほどのビッグネームだ」

「戦争の悪魔……」

 

 ちら、と視界の端に映る戦争の悪魔を見る。

 

 正直な所、アサとしては『これ』がそれほどまでに恐ろしい存在である様には思えなかった。

 もちろんその名前が恐ろしいものであるというのは分かるのだが。

 

「まぁ、一部の超越者を除けば基本的に最強の悪魔だ。特に、支配の悪魔は日本の権力構造に深く根を張っていたからな。これを殺そうと思ったら、こちらも常軌を逸した手段をいくつも使わなければならない。治安崩壊もその内の1つだ」

「……」

 

 ジョージに気負った様子はない。

 むしろ、友達にドッキリのネタバラシをするかのような、楽し気な様子でさえある。

 

「人間というのは不思議なものでな。こういった大規模な混乱状態が起きると支配を望むんだ。支配という単語に対する恐怖が目減りする事で、支配の悪魔の力もまた減衰するという寸法だ。その為に『銃の悪魔、再臨』を演出し、若干量の拳銃をばらまいたと言う訳だ。同時に、銃の悪魔に対する恐怖を喚起できて、俺の戦力も増したしな」

「それ、って……もう、テロじゃん」

「支配の悪魔は政府の要人になっていたからな。実際テロだよ」

「そういう事じゃなくて!」

「分かってる。だが、俺が思い付く限りでは必要最小限の影響で留めたつもりだとは言っておく」

 

 仮に、本当に何もかも無視して、銃の悪魔の力を増すことだけに注力するのであれば。

 

 ジョージが取るべき手段は『密造銃の大量生産』だった。

 

 二束三文の捨て値で捌いても数が数。資金調達もできて一石二鳥だ。

 デビルハンターで培った人脈も多少は役に立ったが、武器商人としての人脈で十分カバーできただろう範囲でしか無かった。岸辺にしたって、結局役に立ったのは『現首相が契約を知らない』という突破口の糸口を持ってきただけだ。結果論にはなるが、岸辺である必要は無い。

 あとは実戦経験ぐらいだろうが、銃の能力はひた隠しにしていたし、その状態での経験がいくらあっても銃の能力を使う全力戦闘にはあまり意味がないだろう。

 

 この手段を取らなかったのは、ひとえにジョージの良心でしかないが……勝利の確率を減らす選択であったことも事実。

 

 また、実際に東京にバラまかれた拳銃も、本物はほんの200丁ほどであり、それ以外の90%以上はただのモデルガンだ。

 その実銃でさえも装弾数は6発で、弾薬は一般流通していない特殊な口径。事実上、最初に入っている6発を撃ち切ったらそれで終わりな様に設計してある。

 1発当たりの殺傷力は本物だが、本物の殺傷力であろうと1発で絶命まで行くのは比較的稀だ。確実に殺すなら立て続けに3発は撃ち込まなければならない。

 

 仮に全ての弾薬が人間に向けて発砲されたとして、3発につき1人死ぬという計算なら、死者数は400人。

 悪魔に向けて撃った弾薬、自衛の為に死蔵した弾薬、撃ちはしたが当たらなかった弾薬、そもそも人の手にわたらなかった弾薬などもあり、実際の死者数は多くても250人程度か。

 

 勿論、悪逆非道の大罪人ではある。

 

 だが同時に、完全になにもかもオールインしたわけではなかった。

 ただ、常人では出来ないところまでベットしただけで。

 

「弁明はしないさ。正当化も、善悪を腐す様な事もな。どれだけ犠牲を抑えたと言っても、犠牲になった方からすれば知ったこっちゃないだろうし。だがその犠牲の上に、俺というデビルハンターは『支配の悪魔』を殺した。それが全てだ」

「……」

 

 同じ様な犠牲者を出せば『銃の悪魔』を殺せますってなったら、頷くデビルハンターは多いだろうな。特に、公安に所属するような連中には。

 

 流石にそうは言わなかったが。

 

「わた、私も……私も、そうなの?」

「ん? どういうこと?」

「ジョージが、何か……何かの目的で、私を見殺しにするのが必要になったら……そうするの?」

「ふむ……」

 

 ジョージは少し考え込んで。

 

「戦争の悪魔だな?」

「!!」

「チッ!」

「大方、アイツが何かしら囁いたんだろう。アイツはアイツで肉体の保全は死活問題だからな」

 

 悪魔的。

 そうとしか言えない洞察。

 

 考えてみれば、アサには自分自身ですら分からない様な精神状態を、ジョージは容易く見抜いて適切な処置を施した。

 その洞察力の使い方を少し変えれば、こうなるのだ。

 

 流石に触れた時間の長いアサだからこそ出せる精度だが……そうとは知らない戦争の悪魔からすれば、もはや恐ろしくすらある。

 

「だがまあ、その指摘はある程度正しい。しかし同時にいくつかの前提をはき違えている」

「前提?」

「まず俺は仕事をはじめとした多くのタスクをこなし、残った『余裕』でアサの相手をしている」

「……なんか、子ども扱いされてない?」

「そんなつもりはなかったが……まあともかく。で、この余裕が足りなくなった時、俺はアサの相手というタスクを最初に削る。そういう意味で、確かにお前の優先度は低い」

「ッ!」

 

 ここはハッキリと伝えた。

 誤解が生まれても誰も幸せにならない。

 

「しかし問題はここからだ。支配の悪魔を殺すという目標が達成された今、俺にはこれまでと比べて余裕が非常に多い。根回しや下準備といったタスクが消滅するからだ。よって、アサの相手というタスクが俺の処理能力を超える可能性が大きく減っている。だから心配の必要はあまりない」

「……なんか嫌な言い方」

「スマンな、的確な話をするためにはどうしてもシステマティックな表現が多くなる」

「それに、それってあくまでも可能性が減ったってだけの話だよね?」

「その通りだ。これは言い換えれば、支配の悪魔と同格の最優先事項が生まれれば、元の木阿弥という事だからな」

 

 しかし、と言いながらジョージが指を立てる。

 

「ここからが2つ目だ。そもそもなぜアサの優先度が低かったのかと言えば、その『最優先事項』に対して何ら有効な存在では無いからだ」

「結構酷い」

「だが実際、俺が『ちょっと支配の悪魔殺しに行こうぜ』って誘った所で首を縦に振る様な状況でも無かっただろう?」

「まぁ、それはね……」

「精神的に、肉体的に、立場的に、戦力的に、ハッキリ言ってお前は役立たずだった」

「かなりひどい」

「だが今は違う。お前は戦争の悪魔と……契約? 同居? 共生? しているわけで、その分有効な存在になった」

「ちょっとひどい」

「つまり、アサになんの戦術的優位性(タクティカル・アドバンテージ)も無いという前提が間違っている。その為、アサの優先度がこれまでと違って高くなっている訳だ」

「……本当に?」

「戦争の悪魔なんてじゃじゃ馬と共生関係を築けていて、気心知れている。機密事項も喋りやすいし、外から傭兵を雇うよりずっと良い……それじゃダメか?」

 

 アサは少し考えて。

 

「根本的に私が『切れる』存在なのは変わって無くない……?」

 

 あんまり惑わされなかった。

 

「うん、まあ……それはそうだな」

「肯定した!?」

「いやいや、落ち着け。冷静に考えてさ、これってある意味普通の事じゃないか?」

「普通ではないでしょ!」

「ちょっと情けないこと言うけどさ、『何の対価も無く守ってくれるナイト様が理想』とか言われても『は?』ってのが男の本音な訳よ」

「……そうなの?」

「一回男女取り払って考えてみ? 関係性とか情だけで『かけがえのない存在』になるとか無理難題にもほどがあるだろ」

「……」

「現実問題、相手を完璧にグリップするのってまず利害だろ。関係性ってその上に積み重ねるものじゃん」

「すっごいドライ」

 

 ジョージも酷いことを言っている自覚はあるが、性分だから仕方ない。

 だからこそ、そういう利害をぶっちぎったデンレゼが大好きなのである。

 

「だからまぁ、アサの事は出来るだけ切らないようにするって、この場で誓うぐらいしかできないな」

「……できるだけ?」

「できるだけ」

「絶対とか言わないの?」

「出来ない約束はしない」

「……じゃあその、約束とか抜きで、演技って体で一回言ってみてくれない?」

「演技? ……まあいいけど」

 

 演技、演技ね……と言いながらジョージが立ち上がる。

 一体どうしたのかと考えるよりも先に、手が引かれてアサも立ち上がる。

 

 流れる様な動きでアサの体を誘導し、背中と腰に腕を回されて抱きしめられた。

 

「何があっても、たとえ世界の全てが敵に回ったとしても、アサの事は俺が絶対に守る」

 

 誰にも、或いは戦争の悪魔にすら聞き取れないのではないかと錯覚するほど小さく、アサの耳元にジョージはそう囁いた。

 

 へたりこむアサを椅子に誘導したジョージは、そのまま元の椅子に戻った。

 

「で、個人的に気になってたことあるんだけど、戦争の悪魔」

「……なんだ」

 

 アサの顔は元々真っ赤だったが、戦争の悪魔に入れ替わってからも真っ赤だった。

 

「戦争の悪魔って呼びづらいから名前決めない? 支配の悪魔がマキマだったみたいに」

「……何か案でもあるのか?」

「アサの反対側だから、『ヨル』とかどうだ?」

「安直だな」

「そうか? なら……メキシコに吹く熱風という意味の! サンタナというの―――」

「却下、メキシコの意味が分からん」

「ならば……隻狼(せきろ)、お主をそう呼ぼ―――」

「分かった、なんとか『ヨル』で勘弁してくれ」




追記:ニーチェの『超人』については解釈が間違っているかもしれません。話半分ぐらいでお願いします。
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