デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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デンレゼの行く末に障害が多すぎるんじゃないか?


石火矢

 アサヨルになぜか女の敵認定された俺は、別の女の敵へ会うことにした。

 まあ、あいさつ回りみたいなものだ。その後の『残業』にも関わることだし。

 

「あぁ岸辺さん、今大丈夫ですか?」

『……なんだ?』

 

 心底嫌そうな声だった。

 

「ちょっとお会いして話したいことがありましてね」

『意外だな。お前は俺の事嫌ってるもんだと思ってたぞ』

「奇遇ですね、俺も一言一句同じことを思ってましたよ」

 

 ちなみに、俺は岸辺の事は……というか原作キャラの事は大体みんな大好きである。

 

 ぶっちゃけマキマの事も別に嫌いな訳じゃあない。ただ相容れないだけで。

 それこそ、別の次元に住んでいたころは『理想的なファム・ファタール』として大好きだったしな。峰不〇子みたいなもんだ。

 

 やはり、共生とは線引きだと強く思う。

 

 互いが敵意を持ちながらも、手を出さずに睨みを合わせ続ける

 平和とは、つまり全くそれで良いのだ。

 

「何も祝勝会をしようって訳じゃあありません。ちょっと紹介して欲しい人が居ましてね……まぁ、顔見知りではあるんですが」

 

◆◇◆◇

 

 役立たずの老いぼれがよォ……なんで連絡手段の1つも持ってねえんだよ。

 そんなんだから『なにも見たくねぇ』とか言う羽目になるんだぞ。

 

 なんて罵倒を全て飲み込んで、俺はピカピカの日本国旅券(パスポート)で海外に出た。

 

 残念ながら偽造品である。

 戸籍は復旧している最中だが、流石に復旧開始から2日未満で正規パスポートは時間が足りないので、ここは新品の偽造パスポートだ。

 

 いやぁ、外見めっちゃ変わったからなぁ……多分もう二度と使わない偽造品を新品で調達する必要が出てきてしまった。

 とにかく金を積んで特急で作らせたが、問題無く通過できて何よりだ。

 

 デンレゼに課金して闇バイト雇って特急料金払ってホテル食費etcetcと払って俺の蓄財もいよいよ底をついてきた……なんてことは実は一切無い。

 

 銃の悪魔のトラウマは想像以上に全世界に色濃く残っており、銃の悪魔の再臨によりアメリカドル、中国元、日本円、ソビエトルーブルの価値が暴落した。

 世界中の資産がごく一部の安全資産に雪崩込んだからだ。

 生き残った国際通貨のユーロも大きく値上がりしたが、安全資産の金字塔である(ゴールド)が特に暴騰。

 24金が1gにつき2万円ほどという令和の世を彷彿とさせるレートにまで跳ね上がった。元は1300円ぐらいだったものが、である。

 

 この流れがおおよそ分かっていたので、24金を事前に出来るだけ買い込んでおいた。

 数字を出すと、600万円が大体1億円ぐらいになった。ちなみに、1995年のドル円為替レートは大体98円とかの超円高状態である。

 大半は現物で持ったままなので、実際に売却するまでは変動もするが……正式な身分証ができたら銀行口座を作って、そこに振り込んでもらうつもりだ。それまでは持っておくしかない。

 

 俺からすれば、まさしく神懸かり的な金相場だったわけだ。

 いわば……ゴールデンカムイ、か。

 

 ぶっちゃけ、資産的にはもう働く必要が無い。

 だがノストラダムスの大予言とか知ってる身からすると、人間社会での資産がいくら増えても正直虚しさが勝る。

 おかげでいくら御大尽しても気が引けるという事が無いのがせめてもの救いかもしれない。

 

 ……そういえば二部ってもう終わったのかな?

 俺、『キラークイーンは既に吉田ヒロフミに触っている』ってところまでしか読んでないんだけど。

 あの流れで行くと、最終的にはデンヨルが物理的に喰らい合いながら、デンアサが性的に喰らい合うとかそういう感じなんだろうか?

 

「っと……手間が省けて助かる」

 

 『中国』の空港に降り立った俺には、出迎えが待っていた。

 

 銀の髪を乱雑に纏めた頭。

 気だるげな瞳は片方が眼帯で隠され、鉄面皮と合わさって何を考えているのか分からない顔。

 動きやすさを重視したタンクトップと4本の青龍刀は、まさしく完全武装の構え。

 

「お久しぶりですね、クァンシ様」

「……なんかお前、随分と成長したな、ジョージ……前はもっと、可愛い男の子だったんだが」

「そういうアナタは……いくらなんでも変わらなさすぎでは?」

「お前が変わりすぎなだけだろう」

 

 クァンシ。弓矢の武器人間。

 『素手の殴り合いなら世界一』と岸辺が太鼓判を押すだけのことはある身体能力と格闘技術を併せ持ち、変身すれば飛び道具も使えて、必要なら気配を消すなんて芸当までできる。

 しかも戦闘だけではなく寝技(意味深)も熟練の手際というパーフェクトオールラウンダーである。

 

 なお寝技は女性限定技能な模様。

 なんか最近、中国での同性愛が犯罪になるかもってニュースをテレビで見た覚えがあるんだけど、政府お抱えの立場で何やってるんだろうなこの人。

 

 人類最初のデビルハンターの名は伊達じゃあない。

 ジョージ・スマイルズなら……100やって30拾えれば上出来って所かな。

 

 で、そんなクァンシと俺の関係性だが。

 

「よし、じゃあ飲みに行くぞ。お前のおごりで」

「ヘイヘイ年上ぇ、そっちの方が貰ってるでしょ」

「丁度気になっている店があってな。女一人では入れないから丁度良かった」

 

 意外な事に、結構悪くない。

 何かしらの好感度イベントを踏んだというよりは、嫌われるほどの関係性が特にない、と言った方が正しい。

 

 そもそも俺とクァンシがどういう知り合いかと言うと、少し前に中国で行われた『(イナゴ)の悪魔討伐作戦』で一緒にアサインされたメンバーというだけだ。

 

 中国政府としてはできるだけ身内だけで始末を付けたい。しかし悪魔の特性で、ある程度実力者の人手がいる。そして政府が統制できているデビルハンターの損耗はできるだけ避けたい。

 という風ないつもの思惑が働いてジョージ・スマイルズの出勤と相成った訳である。

 

 で、不死身のクァンシと死んでもいい俺が一番しんどい所にセットで投入された。

 

 当時の俺の肉体年齢は8歳程度。

 二次性徴が訪れておらず、男女の境が曖昧な時期の肉体という事もあって、クァンシもどっちなのか判断に困っていたのか、とりあえず女性を守るナイト的な立ち回りをしていたぐらいだった。

 その後、作戦終了後の打ち上げで普通に俺の性別が分かった訳だが、8歳は8歳。クァンシもそう無碍にしづらかったらしく、多少は気を回してくれていた。

 

 しかし今の俺は18歳そこそこである。

 二次性徴どころの騒ぎではない。地域によってはもう酒が飲める年齢だ。

 おかげで当時と比べてかなり粗雑な扱いだが、正直これぐらいの方がやりやすくて助かる。

 

◆◇◆◇

 

 クァンシに連れていかれた店は、要するに”そういう”店だった。

 具体的には店員と書いてキャストと読む感じの、年齢次第では摘発されかねない感じのアレだった。

 

 冗談交じりに二道を揶揄しておいてなんだが、本当にこんな店に入る日が来るとは思わなかった。

 

「咦,是情侶來光顧嗎?」

「沒錯,可愛的小姐」

 

 何言ってるんだろう。

 あ、でも小姐(シャオジェ)は聞き取れたぞ。

 

 オタクやってるとなにで取得したのかよくわからない知識が脳内からたまに発掘される事、あると思います。

 

 さておき、店内の装いをある程度見回して雰囲気を見ておく。

 ふむ、天井に下がるシャンデリア、豪勢なソファ、透明なテーブル、そしてどことなく香るラグジュアリーな世界観……。

 

「クァンシ様? 言っておきますけど、そんなに手持ちありませんからね?」

「奢れというのは冗談だ」

「クスリともしないんで分かりづらいんですよ……」

「お前は既に入場券という役割を果たしたから、むしろ私が奢ってやる」

「やったぜ」

 

 俺あのー、アレやりたいアレ。

 急須(?)の蓋をずらしてお茶のお代わりを頼んで、実際にきたらテーブルトントンしてお礼する花〇院がやってた奴。

 それで『あっこいつ、ジョジョ読んだんだな』って目で見られたい。

 

 いや、今のジョジョはそこまで有名でも無いか? 日本じゃともかく中国では。

 

「你的男朋友是日本人嗎?」

「是啊,他就是不聽勸,非要親眼看看正宗的中國美女不可」

「欸!?明明有這麼漂亮的女友了!?」

「謝謝。不過,說真的,你是不是比我更漂亮呢?」

「是嗎?你的皮膚明明很漂亮啊……」

「不過,因為有在鍛鍊,肌肉比較多,所以看起來不太像女人吧?」

「真的嗎? 看起來倒不像呢」

「真的啦,摸摸看吧」

 

 こいつ等さっきからずっと何話してるんだろうか。

 

 あ、キャストの人がクァンシの二の腕触り始めた。

 もしかしてもう時間始まってる感じ? ここ受付じゃないの? いや、単に同性だからノーカンなのか?

 

 くそ、せめて文章に起こしてくれたら漢字からアタリを付ける事もできるんだが、口頭ではそれだってどうにもならないぞ。

 

◆◇◆◇

 

 席に案内され、メニューと睨めっこして適当な飲み物を頼んだ。

 そしてメニューから目を上げると、先程受付に居た女性が既にクァンシに誑し込まれていた。

 

 バ、バカな……か、簡単すぎる……あっけなさ過ぎる……!

 

 アサヨルは俺の事を女の敵がどうのこうのと罵って来たけど、絶対にクァンシの方が女の敵だと思う。

 

「……中国(ここ)って同性愛は犯罪じゃなかったですっけ?」

「その法案はまだ審議段階だ。ちゃんとニュースを見ろ」

「まぁ、良いんなら良いんですけど……」

 

 ちらりと俺に付けられた嬢を見る。

 

 顔の方は……まぁ、言ってしまえば『化粧で誤魔化している中の下』って感じ。銃の悪魔で肉体を作ってから鋭敏になった嗅覚には、化粧臭すぎて近付こうとも思わない。

 あと単純に不健康だな。化粧臭から垣間見えるこの腐臭は、多分、肝臓と肺……酒と煙草が原因か? 案外アヘンもやってるかもな。なんか病気持ってそうだわ。

 笑顔もイマイチ箔が無いし、声も微妙。

 

 総評、頼まれても嫌。

 

 ここ最近はレゼにアサにマキマにと、美人と触れ合う機会が多くて目が肥えたのも原因かもしれないな。

 

「……この店の何が琴線に触れたので?」

「受付のこの子」

 

 コイツ……入ったことないみたいな風に装っておきながら、下調べは入念にやってやがった。

 

「で、ジョージ。なにしに来た?」

「……ちょいと探し物をしてましてね。小学生、じゃなくて……大体11歳から12歳程度の、黒髪で、瞳が黄色やオレンジの様な暖色系の女の子です」

「お前ロリコンだったのか?」

「あー……」

 

 どうしよう。

 普通に説明しても信じてもらえるか分からないし、信じられたら多分中国政府が接収するだろうし、かといって何も話さないでは通してくれるか分からないし……まあいいか。

 

「そうです」

「……」

 

 なんだろう。

 こころなしかクァンシが距離を取ったように感じられる。

 

「小姐,我有東西想請妳幫忙買,可以拜託妳嗎?」

「沒問題。您想讓我買什麼呢?」

「請幫我買一雙90丹尼爾的絲襪」

 

 受付の子がどこかへと歩き去っていった。

 

「何を言ったんです?」

「女の秘密を探るな」

「……まあいいですけど」

「で、お前の探し物はリストにして渡せばいいか?」

「え、なんで急に人身売買に話が飛ぶんです?」

「違うのか?」

「それだったら『探し物』じゃなくて『買い物に来た』って言うでしょう」

「……なんだろうな、この……文化の違いなのか?」

「9年以上日本に居た人がそんなもん感じるわけないでしょ」

「じゃあこれはお前がおかしいだけか」

 

 クァンシがどこかほっとしている。

 例えるなら、初対面の同年代がマルフォイだったせいでホグワーツに不安を抱くハリーが、ロンに出会った時のアレを彷彿とさせる安心感だ。

 

 つまり俺はマルフォイ級に何かやべーことを言ったのか?

 

「探してるのは一個人なのか?」

「そうです」

「じゃあお前ロリコンじゃなくないか?」

「そうですね」

「……」

 

 絶句の仕方が岸辺とそっくりだなぁ。

 岸クァ来たか?

 

「で、その一個人を探すために中国国内を自由に動きたいので、そのご挨拶をしたいと思っていましてね。そちらから来てくれて手間が省けましたよ」

「……私は別に、国内を庭と思っているわけでもないが……挨拶1つで好き勝手に嗅ぎ回れると思われても困るな」

 

 クァンシがゆっくりと立ち上がる。

 気だるげな様子は平生と変わりなく、しかし熟練者でも感じ取れぬほどに穏やかで静かな殺気を纏う。

 

「なるほど、さっきの女の子は逃がしたって訳でしたか」

「お前相手なら100やって100勝てるが……周囲の被害を0にする、と言うのは流石に骨だ」

「ほうほう、なるほどなるほど……このジョージ・スマイルズも甘く見られたものだな」

 

 こちらもゆっくりと立ち上がり、少し首元を緩めた。

 

「気に入らない奴をぶち殺したことはあるか? ……思っていたより、気分が良いぞ」

 

◆◇◆◇

 

 武器人間の戦力は、主に3つのファクターからなる。

 

 心臓になった悪魔の力。心臓が悪魔のものになった時の素体の性能。

 そして、悪魔の心臓から力を絞り出す効率。

 

 1つ目と2つ目は運否天賦。決まってからではどうにもできない、先天的な部分。

 

 だが3つ目。心臓の稼働効率は努力で改善できる。

 

 『心臓で考える』などという離れ技も、この努力の延長線上にある技術だ。

 武器人間の肉体は想像以上に奥が深く、また応用力に富んでいる。

 

 クァンシは最初のデビルハンターと呼ばれるほどに、長くデビルハンターを続けてきた。当然、それだけ長く武器人間の肉体と付き合い続けている。

 その為、クァンシが有する弓矢の悪魔の心臓の稼働効率は100%に近い。変身することなく悪魔的な身体能力を発揮できる。

 

 百戦錬磨の経験と、己が肉体に対する理解。

 それがクァンシの実力の骨子と言えるだろう。

 

 だが、敵は『銃』。

 

「……プッ」

 

 クァンシが口元から血を吐き捨てる。

 既に変身は完了している。それでも動きについていけない。

 

 店から一瞬で外に移動し、それ以降続いた格闘戦。

 最初五分五分に見えたその戦いの趨勢は、それ以降ジョージに傾き続けていた。

 

 百の100%と、千の10%は等価。

 

 それだけの理屈だ。

 搭載している心臓(エンジン)が違う。搭載されている肉体(シャーシ)も違う。

 ドライバーがどれだけ腕利きであろうとも、単純なスペックの差を覆すことは出来ない。

 

 それでも未だにダメージレースが成立しているのは、要所要所でクァンシがきっちり取り返しているからだ。

 馬力だけで決まる直線勝負で無理に張り合わず、失策や悪手から盛大にぼったくる。

 

 そうした戦法に徹することができる冷静さも、そうした戦法を実践できる技量も、流石はクァンシという他ない。

 

「いい加減さっさと諦めてくれると、手間が省けるんですがね……」

 

 全身が矢玉でハリネズミの様になったジョージが、悠々と話しかける。

 普通、クァンシの矢を喰らえばその部位が消し飛ぶはずだが……それだけで、ジョージの肉体強度が尋常じゃない事が察せられる。

 ジョージは未だに変身すらしていないというのに。

 

「……別に国家に忠誠を尽くすとか、そういうタイプじゃないでしょ? なにを意地張ってるんですか?」

 

 刺さっている矢を引き抜いては投げ捨てながら、ジョージは問いを重ねた。

 それは戦闘開始の頃から抱いていた疑問。

 

 クァンシは確かに中国政府お抱えのデビルハンターとしてこの国に居るが、別に中国に忠誠を誓っているわけではない……と思っていた。

 レゼの様な『生え抜き』ではない事は確かだし、原作で役人と話すときもビジネスライクと言うか、対等な感じだったからだ。

 蝗の悪魔討伐作戦の時も、軽口や例え話なんかを交えることなくただ淡々と必要事項を交換するだけ。とてもじゃないが、忠義の士という印象は受けなかった。

 

 にもかかわらず、この戦闘。

 

「それを言ったら、お前は引いてくれるのか?」

「物によりますね。別に話し合いで解決できるのなら殺し合う必要は無い」

「意外だな」

「クァンシ様にはお世話になりましたし、狂犬さんとも顔見知りですからね」

 

 もっとも、ジョージとしては捜索を譲るつもりはないが。

 

「……お前、女はいるか?」

「保護者の真似事ならしてます」

「そうか。私にはいる」

「……? あぁ、そうか! クァンシ様ってレズか!」

「あけっぴろげに言うな」

 

 あけっぴろげに口説いておいて何をいまさら。

 

 悪魔の頭が泥の様に溶け、中からクァンシが出てくる。

 武装解除、という事だろう。

 

「その女が人質に取られていてな。それで勤勉にならざるを得ないわけだ」

「なるほど、それはそれは……」

「人手が足りないと私にも零すぐらいだった。銃の悪魔によっぽど殺されたらしい。なりふり構わずだ」

「おん……」

 

 ジョージの所為だった。

 

 銃の悪魔を使って公務員を虐殺したが、そりゃあそれで全滅しているわけはない。

 首都に詰めているのは基本的に管理職であり、現場で動く人間は首都近郊にいないケースも多い。それこそレゼだってその一人だ。

 むしろ『鬱陶しい上層部が消えて動きやすいぜ!』ぐらいの場合も全然あり得る。

 

 幸か不幸か、中国は社会制度を維持できるぐらいの頭数が残っていたらしい。

 

「ちなみに本日受けていた命令は?」

「空港の臨検。怪しい奴がいたら目的を聞き出して、場合によっては叩き潰す」

「不可能な場合は?」

「……特に何も言われてない」

「じゃあ潰そうとしたけど無理だった。しかしクァンシの監視ぐらいなら付けてもいい、みたいな妥協点を探ったっていう事に出来ませんか?」

「私が勝てなかった、と言うのを信じるかどうか……」

「まあそこは言い張るしかないでしょう」

 

 ジョージが正体を明かせば説得力は増すだろうが、それ以上に面倒も増す。

 今のところまだ来ていないが、『騙して悪いが』案件が来る可能性を増やすことは無い。

 

「8歳から18歳にジャンプアップした肉体があるんです。多少は説得力もあるでしょうし……あ、人間の悪魔と契約したって事にしましょうか。多分そっちでも警戒対象でしたよね?」

「いくらか話題にはなっていたな」

 

 絶対的な権力者が次に考える事と言ったら、不老不死とは定番だ。

 出来るだけ多くの健康寿命が欲しい、という言い換えるとなんだかとても庶民的である。

 

 人間の悪魔は、その夢を実現し得る能力を持った悪魔だった。

 

「あ、こういうのはどうです? 今からクァンシ様の首刎ねるんで、新しく生やしてもらえれば……」

「正気かお前?」

「できないんですか?」

「できるのか?」

「できますよ?」

「できるのか……」

 

◆◇◆◇

 

 クァンシと一緒に中国の街を適当に練り歩く。

 

 そうはいっても中国は広い。この広大な国土の中から、1人の子供をピンポイントで探すなんて土台無理な話である。

 ましてや形だけとはいえ監視付きでは、表通りを適当に散策して帰宅することになるだろう。

 

 一体岸辺はどうやって見つけたのだろうと思いながら、眷属を生み出して路地に走り込ませる。

 どマイナーな銃の名前を持つ悪魔だ。流石に国土全てにバラまけるほどではないので、街ごとにしらみつぶしだ。

 

「そういえば」

「なんです?」

「お前、日本の電ノコ狩りには参加するのか?」

「ゑ?」





ちなみに1990年代後半の中国で同性愛が犯罪化されるかどうかの瀬戸際だったのはマジです。
正確には元々犯罪だったのが犯罪じゃなくなるかどうかだったのですが、ただの犯罪よりも国家お抱えの立場でグレーゾーンを爆走してた方が面白いと思ったので変えました。
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