随分と『らしい』逃亡生活になってしまったものだ。
レゼはそう自嘲せざるを得なかった。
隠し金と特殊拳銃、後は着の身着のまま。
そんな状態で兵庫県を飛び出したデンジとレゼは、鈍行とバスを乗り継いで山口県まで移動した。
ここまでくれば銃の悪魔も対岸の火事。
都心の人間が地方に出たヒグマに向かって保護を叫ぶのと同じ様に、『当事者で無いからこその楽観論』が根強く、また人が少ないゆえに悪魔も少ないという平和裏の世界。
さりとて、ここに至るまでの道中はそれなりに過酷であった。
◆◇◆◇
「えーっと、バスって後どれくらいで来んだ?」
「……3時間」
「うげぇ……」
デンジは時刻表が読めなかった。
能力的には2桁の数字ぐらいは読めるのだが、それが縦横の表になってずらりと並んでいると、どうにも頭がくらくらしてよろしくない。
「……トーキョーって便利だったんだな」
「流石都会って感じだよねぇ。しかも正確に来るんだからびっくりしちゃった」
東京であれば、電車なんてものは分刻みでやってくる。
一本逃してもまた次のを待てばいいと気長に本の一冊でも取り出せることだろう。
だが田舎は違う。
田舎の電車は数時間に一本。それに間に合わないという事は、すなわち予定の全てが吹き飛ぶことを意味する。
取り出すのは本ではなく携帯電話。無意味と分かりつつも思わず電話越しに頭を下げることになるだろう。
「正確じゃねえもんなの?」
「そうだよ? 普通に5分10分ズレるなんて当たり前だし、それで気にしてるの日本以外じゃ見たことないもん」
「ほーん」
実際、デンジも10分そこらで何が変わるのか疑問である。
レゼはレゼで『まともに運行してるだけで儲けものだろうに』と思っている。
「じゃーどっかメシ食いに行こうぜ。3時間も突っ立ってらんねーよ」
「目立っちゃうしね。えーっと……」
レゼが周囲を見回して良さげな店を探すが、まあ即座に見つかるわけもなく。
しかし代わりに案内板を見つけることができた。
案内板に曰く、ちょっと山道を進んだら良い感じの個人店があるようだ。
距離は徒歩15分……駅チカというには無理があるが、一番近いので多分この店が駅チカなのだろう。
「一応、歩いて15分ぐらいの所にあるね」
「おっ、じゃあそこ行こうぜ」
◆◇◆◇
女心と秋の空。
移り変わりやすいものの例えである。
そしてそれは山の天気も同じこと。
「うわうわうわうわ!」
「おぉいレゼ! なんかあっちに家あるぜ家!」
突然の大雨に襲われた2人は、山小屋を見つけてそこに駆け込む。
民家の軒先でも借りられれば十分と思ったが、どうやら作業小屋か何かの様で、普段は使われていない様だった。
オマケに鍵までかかっていないという不用心っぷり。好都合だが、大丈夫かとも思う。
まあ、住み込むようなホームレスや外国人なんぞの心配が無い地域柄だし、盗みに入った所で盗んでいく物が置いていないのだから、こんなザルでも特に問題は無いのだろう。
新聞紙でグルグル巻きになった三千年チェンソーを床に置き、窓から空を仰ぎ見る。
「はぁ~……いやいや凄い雨ですね」
「……そーいや、初めて会った時も雨だったなぁ」
にわか雨に襲われたデンジが咄嗟に逃げ込んだ電話ボックスに、後から逃げ込んできたのがレゼだった。
それが今や、一緒に雨から逃げて、一緒に小屋へ逃げ込んでいるのだから分からないものだ。
「そうだったねぇ……あの時は、こんなことになるなんて思ってなかったなぁ……」
しみじみと呟く。
時間を置き、冷静になった今だからこそ『雨で湿気ってボムの能力が使えなかった』なんて言い訳の1つも思い浮かぶ。
しかし同時に、あの時点で既にデンジの事がちょっと好きだったのだろうという自己分析も出来ていた。
ボムの能力が使えないなどと言うが、あんな至近距離、しかも逃げ場のない閉鎖空間であればボムの能力など不要を超えて邪魔ですらある。
デンジが体術において素人であることはレゼも知っている。そして心臓が悪魔のモノになった人間……ジョージの表現を借りるなら『武器人間』の特性として、負傷に対する再生能力があっても、脳震盪などからの復帰能力は大したものではない事も知っている。
その気になれば、それこそ初めて会った時に『仕留められた』のだ。
だが実際に『仕留められた』のはレゼの方だったというのだから人生とは分からない。
「そうだよなぁ、一ヵ月も経ってねえのになんかずっと昔な気がするぜ」
「私も。ここ最近は色々あったからかなぁ」
恋、花、チェンソー。
レゼの人生を塗り替えた三原色。
かつての日々のなんと灰色な事か。
「おー……レゼだろぉ、ジョージだろぉ、アサと……早パイ……」
「はやぱい?」
「なんてーかな……すっげえ気に食わねえ、嫌~な先輩なんだ。いっつもうるせぇし、エラソーだし、パワーが食わねえの分かってんのに絶対に野菜入れるし……でも、その……」
「……聞かせて? デンジ君の事」
雨が強まって来た。
レゼは雨が好きだ。雨が降っている間のレゼは、ボムの能力が使えない普通の女の子だから。
情緒的ではない理由も付け加えるなら、諸々の痕跡を洗い流してくれるので、隠密行動をするには絶好の天候だからだ。
そして、激しい雨音は内緒話をかき消してくれる。
「……兄貴、みたいな?」
「……そっか」
「今どーしてんのかなぁ……」
レゼはその『早パイ』なる人物について余り覚えが無かったが、視界の端に捉えたことはある。
顔立ちから誠実さ、真面目さになんとなく察しがついたし、表情には特有の陰鬱とした雰囲気を内包していた。
そして腕や目という重要部位を契約に差し出していたのは、恐らく自棄を含んだ自己犠牲精神に由来するもの。
言ってしまえば『ありがちな復讐者』というのがレゼの抱いた印象だった。
だが復讐者が四六時中復讐ばかり考えているわけでもない。むしろ、優しく善良で世話焼きであるからこそ、復讐なんて真面目な事をするのだ。
そんな人間の復讐以外の側面。頼れる大人というものに縁が無かったデンジには、それこそ兄貴分だったのだろう。
「パワーっていう子は、前も話してくれたよね」
「そうだっけ」
「すっごく仲良いんだってね」
今と思うと、当時のレゼはなんであんなに不機嫌になっていたのか。レゼ自身にも分からないぐらいだ。
「仲良い……仲良いかなァ? しょっちゅう殴り合いの喧嘩してるし……」
「殺し合いではないんでしょ?」
「サツバツ!?」
実際、喧嘩ができるというだけでレゼには縁の遠い話だ。
そんな相手がいなかったといえば嘘になるが、少なくとも『今は』いないのだから。
「いや、最初の方は確かに殺されかけたしなぁ……」
「凄い名前だけど、もしかして魔人?」
「なんだっけ、血の悪魔がどうこうとか言ってたかな」
「つよそう。それじゃあ殺伐ともするか」
「んでもそんなコエェ奴じゃなかったけどな。野菜食わねーし、猫が好きだし、風呂入らねーし、トイレ流さねーし」
「トイレは流そうよ……」
前者3つは、まあ人の好き好きと言えなくもないが、最後のだけは擁護できない。
「あん時は血抜きとかで一緒じゃなかったけど、今どうなってんだろ。もう終わったのかな」
「……デンジ君はさ、色んなものを捨てて、私と逃げてくれたんだね」
少し、レゼの指に力が入る。
だって、これではなにも釣り合っていない。
デンジはレゼと一緒に逃げる為だけに、金も家も立場も仲間も家族も仕事も、そしてそれらが織りなす”平穏”という値千金を全部投げ捨てたのだ。
全部投げ捨てて、それら全部よりもレゼの方が大切だと、言葉ではなく行動で示した。
その事実にある種の優越感を覚えなかったと言えば嘘になる。
それでも、魚の骨が喉に引っ掛かる様な、罪悪感もまた同じ様に覚えていた。
「んお? まぁ……確かに、そうか。昔の俺からすりゃあ、マジで信じらんねえぐらい良い暮らしだったもんなぁ……」
「……」
「でも、あの生活にゃあレゼがいなかったからな」
デンジは回想する。
ポチタさえいればよかったあの頃を。
身近すぎる『本当に大事なもの』を見誤って、それ以上を望んだ末路を。
今のデンジにとって、『本当に大事なもの』はレゼだ。
だから、それ以外のすべてを捨てても惜しくない……とは流石に言い過ぎだが、まあ割り切れなくもない。
過去の学びから自分を省みるだけの素直さがデンジにはあった。
「だからまあ、しょうがなくねえけどしょうがねえよ」
「……そっか」
雨が降っている。
レゼをボムガールから普通の女の子にする雨が。
「デンジ君」
「なんだ?」
「ホントはね……私も学校行ったことなかったの」
そう一言置いてから、レゼは話し始める。
「ソ連の母親が子供を叱る時にするおとぎ話があるの」
「それん?」
「北の方の、おっきな国だよ……私の、地元」
レゼは語る。ソ連のおとぎ話。
曰く、軍の倉庫には秘密の地下室があって、親のいない子供が大量に集められている。
その子供たちは人間として扱われることは無く、死ぬまでその体を実験に使われる。
実験動物……モルモットとしての生。
「その子供の中の1人が、私」
「……」
「私は『悪魔の体を移植して強化人間を作る』っていう実験をされた」
これは心臓に限ったことではなく、腕や足といった外部器官から、肺や肝臓といった内臓までが対象となる実験だった。
心臓という本命的な部位が使われることになったのは、事前にパッチテストか何かで相性を測っていたのだろう。
結果は大成功。
『モルモット』は『ボムガール』になった。
「そこからずっと訓練の毎日だった。顔を赤らめたり、涙を出したり、表情、仕草、声色、反射……自分の全部を手作りする毎日。たまに実験もされたけど」
「……クソッタレな人生だなぁ」
「ふふ、そうかもね」
小さく笑って、レゼの心が少しだけ和らいだ。
だが、まだ半分だ。
ここからの言葉の言わなければ、レゼの告解は完成しない。
「デンジ君、私はね。
「そーなの?」
「だって、私の毎日は、ずっと
微妙なニュアンスである。学の無いデンジに伝わるかは分からないぐらいに。
しかし、いやだからこそ、というべきか。デンジは獣染みた嗅覚でその微妙な違いを感じ取っていた。
「だから私……デンジ君に捨てさせてばっかりで、釣り合ってないんだ」
捨てたくないものを捨てたデンジと、捨てたくてしょうがないものを捨てたレゼ。
これで行き着く先が同じでは、まるでデンジの捨てたものが無価値であったかのようではないか。そのように差し向けた自分が、まるで詐欺師のようではないか。
「いや、釣り合ってねえのは俺の方だと思うけど……?」
「……どうして? デンジ君は兄貴分も妹分も捨てちゃったんでしょ? なのに私は何も捨ててないんだよ?」
「そうだけど、そうじゃなくてさ……俺みてえな奴がレゼと一緒にいられるってこと自体、っていうか……」
ちょうどいい言葉が見つからないのか、デンジが少しもじもじする。
「俺って頭よくねえし、顔もそんなだし、気も回らねえし……」
「デンジ君、顔は愛嬌あって良いと思うけど」
「そっそーいう事じゃなくてよぉ!」
「ふふ」
何なら言動にも可愛げがある。
それは流石に男の子相手に言う事ではないので黙っておいたが。
「出来る事っつったら、そりゃあ戦えるけど、それだってぶっちゃけレゼの方がつえーし……」
「……本当にそうなのかな?」
「あえ? なにが?」
「私って元々ソ連のスパイで、デンジ君の……つまり、『チェンソーの悪魔』の心臓を奪ってくるように言われてたわけだけど」
「改めて言われるとスゲー話だ……」
「ソ連って言ったら、本当にすっごく強い国なんだよ? 武器も兵士も『畑から取れる』ってぐらい沢山あるし、銃の悪魔の肉片だってたくさん持ってる」
銃の悪魔の肉片については、今はもう全部持って行かれた後だが、レゼは知る由も無い事だ。
「そんな国が『心臓さえあれば十分』って言うぐらいの悪魔って事は……デンジ君、本当はもっと強いのかもよ?」
何気ない疑問といった風のレゼだが、それを聞いたデンジは難しそうな顔をしている。
「んー……ポチタがァ……? んなことねえと思うけどなぁ……」
「ぽちた?」
「俺が昔一緒に暮らしてた悪魔でさ。そりゃチェンソーの悪魔ではあったんだろうし、一緒にデビルハンターしてたりもしたけどさ。本当にただの犬みてーで、そんなすんげえ悪魔じゃねーよ」
「……一緒にデビルハンターってどういう事? 鷹匠みたいな話?」
「いやタカジョウは知らねえけど。こう……」
デンジが床を指でなぞるようにして、ポチタの輪郭を描く。
床に溜まっていた埃が掻き分けられて、ちゃんと線として残っているので非常に分かりやすい。
デンジには思いのほか絵心があるようだった。
「この、額の所からチェンソーが飛び出しててさ。尻尾の紐を引っ張ると切れるようになんだよ。で、俺はこの辺の取っ手を掴んで振り回すんだ」
「……思ったよりチェンソーそのまんまだね。どおりで
ちらりとレゼが視線を向けるのは、ジョージからの餞別こと三千年チェンソー。
今の所、デンジが変身を使わずに済んでいるのはあの神器の存在が大きい。
威力も攻撃範囲も文字通りに桁が違う。熟練のデビルハンターであろうジョージをして『とんでもないじゃじゃ馬』と評されたピーキーな代物だが、デンジはこれをまるで手足の延長であるかのように、自由自在に操っていた。
その時のデンジは『馴染む! 実に馴染むぞぉぉぉおお!!』なんて柄にもないテンションの上がり方をしていたのをレゼは覚えている。
難点と言ったらデカい上に物騒なので運搬に困るぐらいで、2人はこれを新聞紙でグルグル巻きにすることでなんとかしていた。
目立つは目立つが、実際手放せないぐらいの逸品だし、銃に比べれば違法性も薄い。その薄い違法性だって『即座に使用可能な状態』でなければ銃刀法には引っ掛からない。
「ポチタが
「そうかな? 私はライバルだと思ってずっと威嚇してるような気がする」
「んだよそれ!」
多分、ポチタがオスかメスかで反応が変わると思う。
「だって、デンジ君が他の女の子と仲良くしてたら私も威嚇するもん」
「おぉ……その発想は無かった」
「は? なんで?」
「なんでって言うか……なんか、レゼがそういう感じになってるところあんまりイメージできねえから」
「あのさぁデンジ君。そりゃあ私はどっちかと言うと寛容な方だと思うけど、ボムガールである前に一人の女の子なんだよ? 浮気なんかされたら普通に傷つくし、その原因に復讐したいと思うし、多分実際にするし、デンジ君にも罰だからね?」
寛容……?
ちょっとわからない言葉があったので、デンジはひとまず流して心の辞書に追記した。
寛容:あらゆる障害を乗り越えて、絶対に撃滅せしめる決意の表明。
「そりゃあ話したりするのは必要だし、場合によってはじゃれつくぐらいは良いけどさ。それ以上は絶対にダメだからね」
「それ以上って言われてもよくわかんねえよ」
「とにかく! デンジ君は私だけ見てればいいの!」
「なるほど!」
じっ。
「……」
「……」
この流れで字面の通りに『凝視する』という選択を取ったデンジ。
違う違う、そうじゃ、そうじゃなーいと思わないでもないレゼだったが、別に悪い気はしないのでそのまま見つめ返すことにした。
「……」
「……」
結果として訪れる、お互いがお互いを無言で凝視する謎の時間。
別に話す内容については何も言及していなかっただけに、逆に何を話して良いかわからなくなっていた。
「……」
「……」
雨が降っている。
その雨音は2人の会話を周囲からかき消すとともに、同時に周囲の音を2人に届けない防波堤の役割も担っていた。
まるでこの世界で2人だけみたいだね。
なんてことを、心の中でレゼは唱えた。
「……」
「……」
段々とデンジの顔が呆けた様な表情になっていく。
「……ツラ良すぎんだろ……」
「ん”ッ!?」
思わず、と言った風に零したその言葉は、勿論キッチリとレゼにまで届いた。
折角の静寂を破ってまで言った言葉がそれとは、不意打ちにもほどがある。
咳き込んで顔をそむけたレゼに対して、デンジはとても心配そうに言い募った。
「おいおい、どうしたレゼ!? なんか変なもん食ったか!?」
「な、わけないでしょぉ……」
弱々しく返すのが逆にデンジの心配に火をつけたのか、デンジはレゼの顔色を確認しようと体を動かす。
しかしレゼはレゼで歪んだ口角を見られたくなくて、必死に顔をそむけるので、その表情を覗き見ることは出来ない。
「い、いきなり口説いたりするのは反則でしょ」
「んなことしてねえよ!」
「『ツラ良すぎんだろ』って言ったのはどこのだれかなぁ?」
「声に出てた!?」
「出てた!」
レゼはようやく表情を引き締め直すことに成功したので、デンジに顔を向けて続ける。
「もー! デンジ君がそんなに女たらしだったとは思わなかった! ジョージ君と違って一途な人だと思ってたのにっ!」
東京にいる銃の武器人間が謎の流れ弾を喰らった。
「あぁ!? 俺ぁずっとレゼにイチズだぜマジで!」
「分かってるけど手慣れてるとなんか不安なの!」
「でも俺レゼ以外の女の体とか触ったことも……」
瞬間、デンジの脳内に駆け巡る、『存在する記憶』―――。
『どうじゃ! 塩梅よかったじゃろぉーー!』
『エッチな事はね、お互いの事を良く知っているほど気持ちよくなるんだよ』
「触った……ことも……」
「あれ、デンジ君ちょっとまって? なんでそんなに歯切れが悪くなったの?」
瞳孔バチ開いてガン詰めしてきたレゼを前に、デンジはたじたじである。
レゼは首元をちゃりちゃり言わせている。勿論ピンの音である。
ちなみに、現在のレゼは濡れていないので、十二分に爆弾の能力を使うことは可能だ。
「……」
「デンジ君? 黙ってたらわかんないよ?」
寛容な方とか言っていた女の姿か、これが……?
デンジの中における『寛容』の単語の意味がどんどんと歪んでいく中、デンジは頑張って告解することにした。
「その……パワーと、マキマさんの胸を……揉んだことが、あります……」
不慣れな敬語。
しかしデンジの中の直感は、今こそこいつを使うべき時であると豪語していた。
「ふーん……」
「……」
デンジはもう、判決を待つ死刑囚の気分だった。
「……まぁ、私と会う前の事だし……しょうがないかな」
「お、おぉ……そうか?」
「ただし! これからもう絶対にダメだからね!」
ここでデンジ、ふと気付く。
「なぁ……それだったら、レゼの胸だったらいーってこと?」
「……」
今度はレゼが固まる番だった。
そしてたっぷり10秒経ってから。
「……デンジ君なら、胸はいいよ?」