デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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支配、銃、戦争、爆弾、チェンソー

「で、結局バスは運休して、民宿で一泊か」

「そーだよ! レゼもバス停もそのままどっかに流されてちまって、宿の人が車出してくれてよォ」

 

 デンレゼ逃避行の一部始終をデンジから聞き出すという厄介オタク垂涎の状況にあった。

 勿論『そういう所』はデンジも省いて説明しているものと思われるが、俺ぐらいの厄介オタクになると脳内補完余裕である。というか割と語るに落ちるって節もあるし。

 

 まあ、それでも2人の距離感や言動を見る限り、未だに『致して』はいないようだが。

 

 というかそういう雰囲気になる度に、物の見事に妨害が入って熱が冷め、なんだかんだでお流れになるというくだりが何度も繰り返されている様だった。

 正直だいぶ面白い。

 

 ちらりと別の方向を見る。

 

「で、いきなり親戚の子だーって言って連れてきたんですよ!? ジョージ天涯孤独なのに! もう隠し子かと思って本当に怖くって!」

「……ジョージ君ってやっぱり爛れてるの?」

「たっ、爛れてません! ていうか『やっぱり』って何ですか!?」

「だってなんか……すっごい手慣れてる感じするから……」

「……それはそうですけど!」

 

 部屋の片隅ではレゼとアサが何か話している。

 漏れ聞こえる内容からするに、恐らく俺の愚痴だ。あの2人が仲良くしているだけで俺のSAN値が回復する気がするので、なんでも好きに話して欲しい。

 

 そして少し上の方を見る。

 

「むふー」

 

 そこには三千年チェンソーを手にしてご満悦のナユタが、デンジに肩車されてさらにご満悦だった。

 デンジは特に気にしていないようだが、若干バランスに気を使ってはいるようだった。

 

 どうしてこうなったのかは、5時間ほど前にさかのぼる。

 

◆◇◆◇

 

 ひし。

 

「……」

「……」

「……」

「にゃあ」

 

 拮抗した実力と錯雑した相性による、三竦みの四つ巴。

 

 つまり、『先方』が落ち着いたようだからナユタを引き渡しに行きたい俺と、『飼い犬と玩具』の行方を知りたいナユタと、もうこのまま一緒に暮らしたいアサと、ちゅーるが美味いクラムボンである。

 

 アサはナユタを抱きしめる事で、無言の主張をしている。

 

「いやまあ、別にアポを取ってるわけでは無いから、時間はいくらでもかけて良いけどさ……」

「ナユタちゃんはもううちの子です!」

「いくら何でも秒速で絆され過ぎじゃないか?」

「むしろ今なおそこまでドライなジョージが信じられないんだけど」

 

 最初からそういう話だっただろうが。

 

「当初のスタンスを変えてないだけだ。初志貫徹って奴だな」

「あと私がチョロいみたいな言い方止めてくれる? 体感的にはもう1週間近く一緒だからね?」

「ああそうか、永遠の悪魔の分が勘定に入ってなかったな」

 

 時間が歪んでいたという事もあって分かりづらかったのだが、客観的な時間軸において、あの水族館に閉じ込められていた時間は0秒だったらしい。

 しかし主観的には3日も4日もあのままだったのだ。

 

「もういいじゃん? もうナユタちゃんをうちの子にして暮らそうよ。別に相性だって悪くなさそうだったしさぁ」

「まあそこについては特に反論は無いが」

「でしょ?」

「だが、相性の他にどうしても悪いものがある」

「何?」

 

 俺は自分自身を親指で『ビッ』と指差して。

 

「教育に悪い」

「……」

 

◆◇◆◇

 

 アサを完全に言いくるめた俺は、ナユタを伴って新幹線に乗っていた。

 

 は? 傷ついてないが? これは心の汗だが?

 

 しかしアサが『自分も付いて行って相手の事を見極めてやる』と言って聞かないので、新しく新幹線のチケットを手配した。

 結果としてちょっと離れた位置の座席になったので、結局アサとナユタが隣の席で座っている。

 

 駅弁にはしゃぐ2人の貴重なカットを拝みつつ、新しい技術の実証実験を手元で続ける。

 

 つまり、領域展開(仮称)についてだ。

 まず、そもそもアレがもう一度使えるのかという再現性の実証。これは割と簡単に終わった。

 次にパチンコ玉サイズにまで超圧縮した領域を生み出しては握り潰すという反復練習。巻き込んだ中身ごと小さくするならまだしも、ただ小さくするだけならそう難しいことではない。

 この練習を通して発動の感覚を確固たるものにしつつ、更に他の応用技を検証してみる。

 

 一度の発動ですさまじく消耗するとはいえ、それは本番環境での話。実用性が無さ過ぎて逆に難しいというレベルにまでに矮小化しておけば、一回当たりの消耗は微々たるものだ。

 

 それこそ、駅弁でも食べておけばそのうちに回復する。

 

 あと異空間のルールだが、これはかなり自由に設定できそうだ。銃の悪魔というよりは、支配の悪魔の心臓を喰ったことが原因臭い。支配とはルールの強要だからな。

 とはいえ一度設定すればそうそう変えられるものでもないだろうし、慎重に考えるべきだろう。

 

 となると……ふむ、銃の悪魔の能力は『シンプルな殺傷』に特化している。

 そのため、どうしても搦め手のバリエーションが少ない。地力で勝る相手には盤石に勝てるが、格上殺しが成立しづらいという事。 

 

 言い換えれば、順当にしか勝てない。

 

 これを改善するためには手札を増やすしかないが、悪魔を生け捕りにして契約を結ばせるなんて言うのも難しい。

 ナイフで殺せるような奴なんぞと契約しても意味が無いし、銃の悪魔の力を使うと殺傷力が高すぎてそのまま殺してしまうからだ。

 

 これまでは眷属の悪魔の力で誤魔化してきたが、抜本的な改善をしたいところだ。

 

 領域そのものを格上殺しの札にするか、手札を増やすドローソースと割り切るかって2択か。

 拡張性の事を考えると後者の方が良いか……? でも格上殺しができる搦め手系の悪魔が見つかるかって所は運否天賦だしあんまり頼りたくないな。

 

「後は名前だな……シンプルな奴にするか、いっそクソうるせぇ名前にするか……」

 

 元ネタの方は色々名前が付いていたが、あれは自分で考えているのだろうか。

 術式に刻まれた名前が展開と同時に浮かび上がってくるとかだったら楽そうでいいが、自分で考える必要があるならその現場を想像するだけでもちょっと面白いじゃねえか。

 

 そんなことを考えながら、俺たちは新幹線に揺られていた。

 

◆◇◆◇

 

 特殊拳銃の反応がある街に到着し、駅からゆっくりと歩いて向かう。

 駅弁で満腹になったナユタが眠っているので、起こさないように牛歩の歩みだ。

 

 子供体温であったかいナリィ……。

 

「しかし、こうしてみると本当にただの子供だな……」

 

 ちなみに当初はアサが抱っこしていたが、子供とはいえそれなりに重いので途中でギブアップした。

 低く見積もっても30㎏は超えてるからな……アサの細腕では短距離ならともかく、それ以上は厳しかろう。

 

「ジョージはそうしてると本当にただのお父さんだけどね」

「そりゃまた、随分と悪魔的なご家庭だこと……」

 

 銃が支配を育てるって、何かの寓話かよ。

 いやチェンソーと爆弾に育てさせようとしてる俺が言えたことじゃないかもしれないけどさ。

 

 電柱にでかでかを張り出してある『訳アリ物件』のチラシを横目に見ながら、のんびりと歩く。

 なかなか長閑(のどか)で、そこそこ便利な地域に居を構えたもんだ。理想郷には程遠いだろうが、新天地には十分だろうな。

 

「じゃあこのトリオは何か? デキ婚した年の差カップルにでも見えてるってか?」

「……まあ、そうなんじゃない!? 私はそうは思わないけど!」

「大きな声出すなよナユタが起きるだろ」

「やっぱりお父さんじゃん……」

 

 ……アサの親父ってどんな奴だっけ?

 母親は確か出てたと思うんだが、父親は画面外でナレ死したっけ?

 

 まぁ、あの時アサが施設にいた以上は、『居ない』か『居て欲しくない』かのどっちかだったのだろう。

 なんにせよ愉快な話題ではなさそうだし、敢えて触れる事もあるまい。

 

「ジョージはさ、なんだかんだ良い父親になりそうだよね」

「……その観点で行くと、正直アサはそこまで良い母親にはならないと思う」

「は、はぁ!? なにそれどういう意味!?」

 

 今度の大声は予見出来ていたので、ナユタの耳を塞いである。

 

「なんか……対戦ゲームとかで娘に負けてガチ凹みしてるところを娘に慰められてそう」

「なにを根拠にしたどんな偏見? 無駄に解像度高いし!」

「まあ、それはそれで逞しく育つだろうから、結果的には良い母親なのかもしれないけど」

 

 大抵の物事は結果1つだ。

 子が立派に育ちさえすれば、それだけで万々歳が親というものだろう。

 

 結局のところ、人の在り方に模範解答などありはしないのだから。

 

 勿論、厄介オタクになって何千人か殺すのだって立派に育った結果だ。

 俺も親に感謝しないとな。もう居ないけど。

 

◆◇◆◇

 

 途中で見た『訳アリ物件』のチラシ。その広告が指し示す物件こそ、今の2人の塒であるらしかった。

 一応、銃の反応はどちらも同じ部屋からだ。

 

「まずは俺が顔を出す。ドアスコープから見えない位置にいろ」

「分かった」

 

 インターホンを押すが、どうも音が鳴った気配がない。

 流石訳アリ物件。設備と引き換えに曰くが付いているとは。

 

 へし折れたりしない事を祈りつつ、ドアをノックする。

 ぎしぎしとちょっと怪しい音を立てたが、問題無く済んだ。

 

 おっ、結構イイ感じに足音を殺しているな。

 片方がドアでもう片方が窓に……おそらく前者はデンジで後者はレゼだな。刺客か何かならレゼの能力で緊急脱出と言う訳だ。となると別の所にビームもいるのか?

 

「……どちらさま?」

 

 ドア越しで分かりづらいが、やはりデンジの声だ。

 この状況では、たとえドアスコープ越しに俺が見えても誰何はするか。ましてや小さな子供(ナユタ)を抱えているとあれば、見間違いの疑いも濃かろうて。

 

「銃の悪魔だ」

 

 しばらくひそやかな物音が部屋の中からしていたが、やがてそろりとドアが開く。

 そこから覗く顔はやはりデンジのものだ。

 

「……ジョージ」

「久しぶり……って程の日数でも無いか。なぁデンジ」

「なんでここが分かった?」

「あんだけ派手にやっといてバレてねえは無理があるだろ。少なくとも俺には」

 

 ハッタリである。

 

 実際2人は結構上手くやっていて、色々と騒ぎを起こしてこそいるっぽかったが、それぞれの事件が何かしらの形で関連付けられることは無いだろうというぐらいには証拠を隠滅し続けていた。

 これらから2人の存在を嗅ぎ取ることは不可能に近いだろう。

 

 だが最初から2人の存在を念頭において推理ができるなら、どうだろうか。ましてや足取りや目的、思考形態などまで理解した上でなら。

 とりとめのないヒントの羅列は、簡単にその裏側を覗かせるだろう。

 

 まあ実際にはそんな情報精査はしていないけど。

 

 ともかくデンジは納得したのか、溜息を吐いて話を変えた。

 

「……で? なんの用だよ。つーかなんだよこのガキ」

 

 そこでデンジが無遠慮にナユタの頭に手を伸ばして、寝ぼけたナユタがデンジの指を噛んだ。

 

「いてえ……え!? この噛む力は……マキマさん!?」

「なわけねえだろ、ちゃんと俺が殺したわ。ほらナユタ、起きてあいさつしな」

「ん……んぅ~~~……」

「すまんな、さっき眠ったばかりだからぐずっておるわ」

「それは別に良いけど……」

 

 少し揺さぶって起こしてから、もう一回挨拶を促した。

 

「ナユタです、よろしくお願いします」

 

 ぺくりと一礼。

 

 えらいえらい。

 

「……で、こいつが何?」

「オイ挨拶されたんだから挨拶を返せよ。教育に悪いだろ」

「お前が言うの? ……え~、デンジです、よろしく」

「で、こいつは支配の悪魔なんだけど」

「え? マキマさんってこと?」

「多分そう、部分的にそう」

 

 ごりっ。

 

「え?」

「落ち着けアサ、そいつは脅しの道具じゃねえぞ」

 

 デンジの眉間に銃が押し付けられていた。

 

「アサ? いやアサさん……?」

「デンジどいて、部屋に入れないでしょ」

「ウィッス」

 

 横にどいたデンジを避けて、アサが部屋の中に入っていく。

 全くもう、立派な戦争の悪魔になっちゃって……それでもちゃんと玄関で靴を脱ぐ当たり、律儀と言うかなんと言うか。

 

 猛然と中に入っていくアサの後姿を呆然と眺めるデンジを、ナユタが指さして一言。

 

「わんわん」

「……勘弁してくれ」

 

 俺もそう思う。

 

◆◇◆◇

 

 ひとまずデンジにナユタを預けて、俺も部屋の中に押し入る。

 

 言ってしまえばここも仮宿に過ぎないのだろうから、訳アリ物件なんぞに住んでいるのかと思ったが……思いのほか充実しているな。

 結構広いし、日当たりも良好。家具家電も揃ってる。

 寝室は無いようだが、ベッドは2つはあるな。使われた形跡があるし、同衾もしてないのか。

 

 さて、その部屋の一角では……アサがレゼに抱き着いていた。

 

 ので、俺はデンジを蹴って更に別の一角へ追いやり、そこで『アサが落ち着くまで』という名目でデンジから逃避行について聞き出し始めた、と言う訳だ。

 ちなみに、ナユタはこの時点で既にデンジの上に乗っていた。

 

「その異空間出してきた……深海の悪魔、だっけ? 異空間の仕様が後から変わったってマジか?」

「そーだぜ? 最初はめっちゃ魚飛ばしてくる感じだったけど、途中から海水で一杯になったし、そっからは魚が全然出てこなかったし」

 

 ……これは俺のメタ知識が悪い方向に出たな。

 

 メタ知識に引っ張られ過ぎて、そのレベルでの仕様変更ができるっていう発想そのものが無かったんだ。

 基本的には、それこそ領域展開みたいな応用力をもたらしてくれるだけに、結構な頻度で頼ってたからな。

 あっちは理屈っぽい世界だけど、こっちは結構ファジーだから、その辺のギャップも原因か?

 

 ここからはいよいよ俺の知らない展開だし、頼るにしてもそれなりに気を付けておかないといけないな。

 

「結局チタタプにはしたのか?」

「レゼがどっか行っちまってそれどころじゃなかった……あの海水、悪魔と一緒に消えてくれりゃあ良かったのに」

「はは、現実の液体を持って来ていたって訳だ。イタチの最後っ屁って所か」

 

 海水を自力で生成しないなら、その分だけコストは安くなる、か。

 となると注水口と排水口は魔法陣か何かで事前にマーキングしてある感じか?

 

 結構参考になりそうな悪魔じゃねえか。死んだのがもったいなかったかもしれん。

 

「イタチ? なんでイタチ?」

「知らね。なんかイメージあるんじゃね?」

「悪魔になってるかな?」

「イタチの悪魔か……少なくとも、銃とチェンソー(せいこうほう)で解決する様な手合いではないだろうな」

「うげぇ……」

「やっぱりデンジも仕事は楽な方が良いか」

「ったりめーだろ。今は悪魔ぶっ殺したって何の得にもならねえし……」

「くはっ。お前もなかなか、打算ってもんができるようになったらしいな!」

「全部レゼにまかせっきりって訳にも行かねーからな。考えんのは苦手だけどよォ」

「良いじゃねえか、そうして相手を慈しむのは愛の基本だ」

「愛、ねぇ……テメエの口からンなこっ恥ずかしいもんが出てくるとは思わなかったぜ」

「ぐはあっ! そう言われると痛いな!」

 

 俺が呵々と笑えば、デンジも口角を上げて小さく笑う。

 いいねいいね、やっぱり野郎同士だと気兼ねが無くていい。

 

「んじゃちっと真面目な話でもするかね……あの三千年チェンソーはどうだ? つーかまともに使えてるか? 正直ただの荷物になるかもって思ったんだが」

「じゃあなんで渡したんだよ……」

「あれが使えそうなやつが他にいなかったからな。チェンソーマン」

「その名前で呼ぶのはお前ぐらいのもんだよ」

 

 そう言えば基本は『電ノコ悪魔』とかだったか。

 あとはマキマもそう呼んでたけど、デンジが聞いたことは無かったんだろう。

 

「で、使い心地は?」

「おー、最ッ高だぜ! 手に馴染むっつーのかなぁ、なんか腕がもう一本生えたみてえな、なんでもできるって感じ!」

「マジ? 威力高すぎて余計なもん壊したりするだろ?」

「あ? んなこと一回もねーよ? ちゃんと斬りてえ所を斬りてえ分だけ斬りてえ様に斬れるぜ?」

 

 なにその初期のゾ〇みたいな評価。

 

「……そんな名刀だったか? 俺が試しに振ってみた感じじゃあ、どっちかというと妖刀魔剣の類だったが」

「そうかなぁ……そうかぁ?」

「後あれ、手入れとかどうやってんの?」

「お、じゃあそろそろやろうかと思ってた所だからよォ、見してやんよ」

 

 するとデンジは新聞紙の塊を破き、中から三千年チェンソーを取り出した。

 そしてナユタがそれを掠め取った。

 

「とったどー」

 

 デンジに肩車されながら、無駄に姿勢よく掲げている。

 危ないからやめろ、と言おうと思ったが、別に振り回すとかでもなくただ持ってるだけの様だったし、特に負担に感じている様な筋肉の動きでも無かったので、させたいようにさせておくことにした。

 

「うわ、何してんだ!」

「むふー、私の玩具」

「俺の仕事道具だよ!」

 

 あぁ、ナユタが言ってた『飼い犬と玩具』って、やっぱりデンジと三千年チェンソーの事か。

 前世(マキマ)の記憶がどれぐらい残ってるかはよくわかんないけど、あれだけ執着してればそりゃあいくらかは残るか。

 

「はやらせコラ! はやらせコラ! ジョージ、お前からも何とか言ってくれよ」

「ナユタァ、一応それ刃物だから気を付けろよ」

「うん!」

「なんていい返事なんだ……」

 

 これで持ってるのがチェンソーじゃ無けりゃいくらか可愛げもあったんだが。

 

「まあ、俺は『いくらか怪我して覚えろ』って方針だからあれで良いだろ。で、結局バスは運休して、民宿で一泊か」

「そーだよ! レゼもバス停もそのままどっかに流されてちまって、宿の人が車出してくれてよォ。それでやっとバスに乗れるーって思ったら、今度はバスジャックだぜバスジャック!」

 

 波乱万丈すぎるだろ。

 これが主人公補正って奴か……俺はゴメンだね。

 

「どっから持ってきたのか知らねえけど、銃も持ってたしよォ」

「あー……東京から流れてきたのかもな」

「マジか、今の東京どうなってんだ」

「まあ俺が流したんだけど」

「なにしてんだオマエ」

 

 HAHAHA、ただのバフのつもりだったが、思いのほか後遺症が残るバフだったな。

 

「ま、ちゃちかったみたいだから、レゼが取り押さえて終わったんだけどさ」

「『みたい』ってなんだよ」

「だってどの銃がどんな銃なのかとか、俺にはわかんねーもん」

「……俺の渡した銃、使った?」

「俺は使ってないけど、レゼはたまに使ってるみたいだぜ?」

「……まあ、元々お前が使うとはあんまり思ってなかったけどさ。じゃあ銃の調子はレゼに聞いた方が良いか」

 

 レゼの方を見ると、アサはひとまず感情を吐き出し切ったらしく、表情が随分柔らかくなっていた。

 2人の間に流れる空気は穏やかで、まあ恐らくは和解的な事が出来たのだろう。

 

「……後にするか」

「そうだな。茶ァ淹れてやるよ」

 

 デンジも『分かって』きたじゃないか。

 百合の間に挟まると天罰が下るからな。

 

 まあこの調子でいくと、一体いつになるのか分からないという問題もあるんだがな……。

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