デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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難産でした。
なんでデンレゼを書くために始めた小説でアサの人格エミュを頑張っているんだ私は?


かぷかぷ

 私の人生に、良い事なんて起きないんだ。

 

 そんな風に思い始めたのはいつからだっただろうか。

 

 考えてみれば、ケチの付き始めは6歳の誕生日だった。

 あの日、まだまだ順風満帆だったころの私には友達が多くて、家に沢山の友達を呼んで誕生日会をした。お母さんが珍しく張り切って、私の顔よりも大きな誕生日ケーキを作ってくれたことを今でも覚えている。

 

 その誕生日ケーキを、私が転んで台無しにしてしまったことと一緒に。

 

 当時の絶望的なきまずさと来たら……登場人物全員が、私を含めて『どうすんだよこれ……』と言わんばかりの、地獄のような空気。

 今でも覚えている……というか、今でも夢に見る。

 

 リレーのアンカーで、いよいよ大詰めというタイミングで転んだりもした。その時も最悪の空気だった。

 そんな風に、ここぞという場面で転ぶ経験を積み続けていた。

 

 台風の悪魔によって何もかも奪われて、その時もクラムボンを助けようとして転んだ。

 クラムボンは助けられたが、その代わりにお母さんが死んで、私は施設へと移らされた。

 

 その施設では、珍しく私の転び癖が功を奏して、男の子の友達ができた。

 見た限りでの年齢は8歳プラスαといった所で、いつも部屋の隅で難しい本を読んでいる様な子だった。

 

 そこからの何か月かは平穏無事で、割と楽しい毎日だったように思う。

 間違いなく私よりも年下のハズ……だというのに、言動から滲み出る知性や教養は不釣り合いなほどで、こんな人間が居るものなのかと感嘆するばかりだった。

 

 だが、その平穏無事もすぐになくなる。

 悪魔だった。今となっては何の悪魔だったのかもわからない、恐らくは鳥獣の類をモチーフにしたような悪魔が、施設を襲った。

 

 まず、施設の先生が殺された。

 そのことに動揺した私は、案の定ここでも転んでしまって、悪魔の餌食になる所であったが……その友達に助けられた。

 

 そして、私が逃げる時間を稼ぐ為に、悪魔に襲い掛かって、死んだ。

 

 死んだ……と思っていた。

 

◆◇◆◇

 

 ある日、私が街を歩いていると、猫がこちらを見つめていた。

 

 白い長毛種の、美麗な猫。

 すぐに直感した。

 

「クラムボン……?」

 

 それは、かつての悪魔被害の折に失踪した、飼い猫の名前だった。

 目の前にいる猫は、記憶の中のクラムボンとは違う。毛並みからはツヤがやや失われ、足取りはどこかぎこちなさが残る。

 しかしその毛並みは人の手による手入れが色濃く残り、誰かの飼い猫であることが容易に察せられる。

 

 きっと、あの日のクラムボンが生きていて、今日まで年月を重ねればこうなるだろう。

 

 その猫はアサを顔と声と臭いをしばらく確認すると、ふいとどこかへ歩き出してしまった。

 

「あ、まって……」

 

 思わず猫を追いかける。

 わかっている。これはただの願望だ。

 この猫がクラムボンでいて欲しいという、私の願望。

 

 そんな幸運が自分の人生に降ってくるわけがないと心のどこかで思っていても、それでもそうであって欲しいと願っている。

 

 そして猫を追った先にいたのは、猫とは対照的に、あの日から何も変わっていないジョージだった。

 

◆◇◆◇

 

 立ち話もなんだから、という事で。

 『二道』探しのついでと言うかアリバイ作りの為にやっていた喫茶店巡りの中で見繕った、良い感じの喫茶店に入店する。

 

 ワンチャン吉田とデンジが入店したところだったりしないだろうかと思っていたが、まあそんなことあるわけも無く。

 いっそ残念なぐらい、普通の喫茶店だった。

 

 しかしこうした場に縁の無かったらしいアサは、この段階で店内を随分と物珍し気に見回している。

 考えてみれば、あれ以降のアサに経済的な余裕などあるわけも無く、こうした嗜好的な店に立ち入る機会などそうは無いのだろう。

 

 アサの器量なら、男を誑かして貢がせるぐらいは容易い事だと思うが……今がまさにそんな感じか。

 

「アイスコーヒーをお願いします。アサは?」

「えっ……そんなにお金ないから……」

「お詫びって訳じゃあないが、ここは俺が奢るから。好きなの頼んでいいぞ」

「じゃあ紅茶と……この、チョコバナナサンデーとショートケーキとフィナンシェとアップルパイと……あ、ケーキってホールでもらえます? じゃあそれで」

「おん……」

 

 かしこまりましたーなんて言いながら去っていく店員が、こちらに憐憫の視線を向けた気がする。

 「奢る」といったのは確かに俺なのだが、まさかここまで遠慮0の注文がかっ飛んでいくとは思わなかった。

 

 というか全く考える時間が無かったのだが、それまでの間に食べたいものリストとか作ってたって言う事だろうか?

 

「ジョージ、注文しといてなんだけど……本当にいいの?」

「本当に今更だな……大丈夫だよ。これでも結構稼いでるんだ」

「稼いでるって、どうやって?」

「デビルハンターだな。学歴どころか戸籍すらない人間には、これぐらいしかないさ」

「戸籍って……!」

「死亡届出しただろ? いや、まだ失踪止まりか? ともかく、書類上の俺と現実の俺は食い違ってるし、俺はそれを直すつもりもない。だから無い様なものさ」

「……なんで? なんで直さないの?」

「なんで、と来たか」

 

 実際問題、直した方が色々とやりやすくはなるんだろうと思う。

 例えば実際にマキマを倒したデンジは随分とヤクザな生い立ちをしているが、しかし別に戸籍が無いわけではない。武器人間になって以降は恐らく人権が剥奪されているので、在っても無くても同じかもしれないが、日本の戸籍制度は優秀である。追跡は出来るようになっているだろう。

 そもそも、いくら支配の悪魔が強大だからといって、本当に日本全土への完璧な監視網を構築できているとは思い難い。小動物の耳を借りる、というのだって、いくら増やしても同時に聞き取れる数が変わるわけではないのだから、むしろ変に増やすことは監視の目に穴をあける事にも繋がりかねない。

 

 戸籍を得れば、身分証が手に入る。

 身分証があれば、デビルハンターとして正式に活動する事もできるし、そうなれば上前を撥ねられることが無くなる。

 より安価で安定的な拠点を構えることができるし、クレジットカードだって作れる。

 

 単純な脅威度分析で行けば、間違いなく戸籍は復旧した方が良い。

 

 それでも、敢えてそうしない理由は何なのかと言えば。

 

「……願掛け……かな」

「願掛け?」

 

 ちょうど届いたコーヒーを口に運んで、続ける。

 

「なんつーか、機密事項的なアレも多いからあんま言えないんだけど……仕事の目標? みたいなモンがあってさ。その目標を達成するために、どうしても必要って訳じゃあないんだが……そういう状態である事そのものが、ある意味吉兆? みたいな感じだから、あんま崩したくないって言うか……」

 

 俺はマキマを……支配の悪魔を殺すことを目標にしているわけだが。

 

 支配、とは何か。

 これを考えた時、俺は「ルール」だと結論付けた。

 

 自らのルールを相手に強要する。それこそが支配であると。

 

 故に既存の、つまり、マキマのルールから逃れておくことが、同時に支配の悪魔から逃れる術ではないか。

 そして逃れる術とは、そのまま対抗を意味するのでは。

 

 そんな合理性の欠片も無い、或いは有害ですらあるかもしれない、願掛け。

 

 結局の所、自信が無いのだ。

 内閣総理大臣との契約さえなければ、”あの”マキマを確実に殺せるのは、多分客観的な事実だと思う。

 だがそれはそれとして、”あの”マキマを本当に殺せるのかと疑問に思っている自分もいる。

 

 だから、マキマの本質である、『支配』から逃れておきたいと思っている。

 

「それって本当に必要な事?」

「いや、多分必要じゃない。というか、もしかしたらやらない方が良いかもしれない」

「だったら」

「だが、これがどうも、感情の話でな……理詰めの説得では、どうにもならないことを分かってくれ」

 

 その言葉を聞くか聞かないかぐらいのタイミングで、アサが勢いよく立ち上がる。

 

「感情のッ……! 感情の話なら、私だって……!」

 

 テーブルの上に着いた手は握りしめられ、あまりに強くそうしているものだから、プルプルと全身が震えている。

 瞳には、わずかに涙も浮かんで。

 

「私だって、1人だった!」

 

 この最悪のタイミングでやって来た店員を手で制止して、一旦厨房に引っ込んでもらう。

 完全に痴話げんかにしか見えない状況だが、こんなことになるなら潔く(ねぐら)にしているホテルに案内すればよかった。そこならクラムボンもいられるし。

 

「1人で、ずっと1人で……私が、私が殺したんじゃないかって……それで……ずっと、ずっと……」

 

 アサは整理がついていないのか、支離滅裂な言葉が続く。

 弱々しく、まるでへたり込むかのように椅子に座り直す。

 

「……寂しかった」

 

 絞り出すようにこぼれたその一言には、アサがこれまで過ごした『1人』の時間が、全て凝縮されているかのように思えた。

 

「そう、か……それは……すまなかった」

 

 どうにかこうにか絞り出せたのは、そんな何の役にも立たない様な謝罪ばかり。

 

「だがその、俺にも事情と言うか、お前に内々にでも連絡できない様な理由があった事は理解して欲しいと言うか」

「今はそんな話してないでしょ!?」

「そっすね」

 

 いかん、理屈が通じないモードに入ってしまった。

 他の女性がどうかは知らないが、アサはこうなると長い。

 

「ま、まあとりあえず声を小さくしろって。ここ喫茶店だぞ」

「あっ……」

 

 完全に痴話げんかのワードチョイスを大声で叫んだ自覚はアサにもあった様で、少し顔を赤らめて周囲をちらりと見回す。

 そして周囲はお手本の様に一斉に顔をそらした。その動きがアサに追撃を加えていた。

 

 アサが縮こまったタイミングを見計らって、店員に目配せして、先程引っ込めさせた注文を持ってくるように促す。

 ここの店員は優秀な上に察しが良かったらしく、面倒ごとに絡みたくない時の人間特有の俊敏さで、テーブルにコーヒーと紅茶とショートケーキ(ホール)が並べられた。

 

「オユックイドウゾー」

 

 店員は2倍速で厨房へと引っ込んでいった。

 

 本音と建前が食い違う様をここまで忠実に体現した人間がかつていただろうか?

 そんなにせわしなく脱出されたらごゆっくりできる訳がないだろうに。

 

「まずはほら、折角注文したんだから食べてくれよ、な?」

「……食べる」

 

 備え付けのナイフでケーキを6つに分けたアサが、その内の1つをもそもそと食べ始める。

 今更ではあるのだが、本当に食べきれるのだろうか? スイーツは別腹なんて話は良く聞くが、物理的な容量は流石にどうにもならないと思うのだが。

 

 拗ねた子供みたいになってしまったアサだが、その頬には先ほどの羞恥とは別種の赤みが差している。

 どうやらお気に召したらしい。チラッとメニューを確認したところ、1切れで800円を超えていたので、さもありなんといった所。

 令和の世界でもなかなか見ない値段設定だが、それだけ自信ありという事か。

 

 じゃあもうちょっと店員の質を上げてくれないか?

 ……いやむしろ、上がってるからこうなのか?

 

 アサにバレないように気を付けつつ、財布の中身を指差し確認……ヨシ!

 

「……おいしい」

「それは良かった」

 

 食事を勧める程に、アサは段々と機嫌を直してくれた。

 これを機と見て、店員が注文を次々と持ってくる。

 

「以上でおそろいですか?」

「はい」

 

 立ち去った店員を見送って、よくわからん筒に差し込まれた伝票を盗み見る。

 

 ……何を見て『ヨシ』って言ったんですか?

 

 普通に今のホテルをもう一泊できるぐらいの値段がそこに書いてあった。

 一応、一応今の財布の中身だけで払える金額ではあるが、解散したらすぐさまホテルにとんぼ返りして、資金を補充しなくては。切実にクレジットカードが欲しい。

 

「デビルハンター、かぁ……」

 

 ぽそりと呟いたアサ。

 

「一応言っておくけどな。お前は止めとけよ。結局は切った張ったのヤクザな仕事……お前には似合わん」

「でも、女性のデビルハンターも居るんでしょ?」

「居ない事は無いが……悪魔と契約して、意味不明な能力を持ってる様な奴ばっかりさ」

「契約……」

「契約ができるぐらい知能があって、契約するだけの価値がある能力を持ってて、契約をする必要がある状況にある悪魔なんざまずいない。ハッキリ言って、探すだけ時間の無駄だ」

 

 それこそ、チェンソーマンとデンジの出会いは運命的としか言いようがない。

 あれほどまでに複雑怪奇に入り組んだ状況でも無ければ、デビルハンターになれる悪魔との契約なんてありえない。

 

「じゃあジョージは……」

「俺は古き良き、武器を振り回すクラシックタイプのデビルハンターだ」

「ふーん……」

「……なんか含みを感じるが、何か疑問でも?」

「その割には小柄じゃない?」

 

 アサの指摘はある程度正しい。

 デビルハンターなんて言っても、その実態は民間軍事会社と大差無い。である以上は骨格の大きさはリーチに直結し、搭載できる筋肉量はパワーに直結する。

 ならば戦闘において、これらはあればあるほど良い。

 

 ここまでは正しい。

 

 問題は、俺達デビルハンターが相手にする敵は『悪魔』という文字通りに人間離れした存在であることだ。

 岸辺の様によほど特異な先天性の体質でもない限り、人間のスケールにおけるリーチやパワーなんて通じない事の方が多い。

 

 そのため、民間のデビルハンターとしては、むしろ被弾面積の小さい小柄な状態こそがちょうどいい時もある。

 

 ちなみに、悪魔と契約できる様なチャンスが極稀であることも間違いない事実である。

 故に、民間のデビルハンターは体一つで悪魔に挑み、人間業ではどうにもならない悪魔を、悪魔と契約した公安が始末する。

 公安のデビルハンターが『悪魔との契約が必須』とされているのはそういう理由だ。

 

 余談だが、俺は岸部の事をミオスタチン関連筋肥大症候群……俗称、超人体質の持ち主ではないかと考えている。筋力や動体視力について、そうでもないと説明が付かないシーンが多い。

 

「小柄でもいいんだよ。要するに、悪魔を殺しさえできるなら」

「じゃあ私でも」

「だからやめとけって……更に言うけど、俺の小柄は契約の一環みたいなもんだからな?」

「えっ、さっき滅多に出来ないって」

「俺は出来た。けど再現性が無さ過ぎるから、おススメしないってこと」

 

 性格的な適性で言えば……アサは、多分向いているタイプだ。

 それは原作でそうだったからというのもあるが、彼女には本質的にエゴイストな側面があるからだ。

 

 別作品の話になるが、『自分が嫌いな人間が死ぬボタンは押せない。しかし、自分の事が嫌いな人間が死ぬボタンなら押せる』と述懐したキャラがいる。

 

 物凄く大雑把だが、アサはこのキャラと概ね似たような性格をしている。

 

 自らと他者を呪う素質、とでも言おうか。

 

 自らを呪う故に、自らへの害を過大評価せず。

 他者を呪う故に、他者への害を過小評価する。

 

 こうした側面を持つのであれば、悪魔からの攻撃を恐れすぎることなく、同時に悪魔への攻撃に躊躇う事も少ない訳だ。

 

 しかしこれはあくまでも精神的な話。

 結局、悪魔を倒すだけの戦力がアサには備わっていないのだから、デビルハンターにはなれないのだ。

 

 まあ、デビルハンターになってから実力をつけていく、という方針もあるが……分の悪い賭けだ。

 

 それこそ、戦争の悪魔と同居するようになったのであれば話は変わってくるが。

 

「お前がよっぽど必要に駆られて、よっぽど強力な悪魔と契約ができたら、その時に初めて考え始めるってぐらいの仕事だよ。お前には、まだまだ選択肢がある」

「……」

「……あるよな? 実は今不登校なんですとか言わないよな?」

「そんなことは無い、けど……」

 

 沈黙が怖いなぁ。

 アサは言っちゃあなんだが根暗なので、孤立してるぐらいだろうか?

 どっちにせよ、それぐらいで選択肢に入れるような仕事じゃない事は確かだが。

 

 まあ、ここは深堀りしても余り意味は無さそうだ。

 

「じゃあデビルハンターなんて止めとけ。働くにしても、バイトとかにしといた方が良いぞ」

「バイト……ってどんな?」

「接客業じゃないか? 折角顔も良いんだし」

「……ふーん」

 

 褒め言葉で少し機嫌が良くなった様だ。

 しかしそれだけで、渋る様子に変わりはない。

 

「……まあ、何かあれば俺も相談に乗るさ。携帯持ってるか?」

「あ、うん」

「じゃ電話番号交換すんぞ。なんかあったら言え」

「……分かった」

 

 アサからの頼みなら、勿論それが可能な範疇である場合に限るが、まあ金貸しと傭兵の真似事ぐらいならしてやれるだろう。

 

 それで大なり小なり満足したのか、アサは食事を再開した。

 

 ……多分だが、アサは学校で孤立している。

 デビルハンターというか、「今ここではないどこか」に望みを抱いているのはその典型だ。

 

 確か原作の年代が1990年代後半とのことだったので、仮に第1部スタートを1995年、第2部スタートを1999年と仮定するなら、今のアサは中学生になるかならないかといった所。

 

 これぐらいの年代になると、自らのステータスにモテるかどうかという新しい項目が追加される。

 この項目が他の項目と同程度の水準だった場合は良いのだが、突出して高い場合はイジメに発展する可能性がある。女子の場合は特にそうだ。

 

 アサから聞き出したこれまでの人生経験からして、彼女は恐らく対人能力が高くない。

 しかしそれを補って余りある『顔の良さ』という要素が、彼女にモテを呼び込んでしまう。

 

 元々孤立気味だったなら多少それが深まるだけなのだが、何かが1つ後押しすればそのままイジメにもつれ込んでしまうだろう。

 特に狙われがちな顔面が無傷なあたり、現時点でそういう事態にはなっていないようだが……今の内に、頼りになる外部の人間を作っておくことは彼女の精神衛生上も良い事だろう。

 

 究極的に纏めてしまえば、「寂しかった」の一言で済む話ではあったか。

 

「デビルハンターじゃ安定感も無いだろうし、生存報告ぐらいは入れるよ」

「絶対入れて」

 

 デビルハンターはローンを組めないし保険金も高い。

 如何に持続可能な仕事ではないかを象徴する話である。それこそ、老後なんて存在しない前提だ。

 

 更に言えば、俺は戸籍も持っていないので、実はこの携帯は他人名義(トバシ)の携帯だったりする。

 つまりいつ止まってもおかしくないので、別の形でも連絡が付くようにしておかなくてはならない。リアル側を改善することは出来ないので、ネット側で解決する事を考えた方が良いだろう。

 

「後は……なんだ、たまにどっか出掛けるか?」

「お金無駄じゃない?」

「女の子と出掛ける為の金は無駄じゃねーよ、その女の子に奢る為の金もな」

「いや、そういう事じゃなくて」

「民間デビルハンターの金の高さを舐めるなよ? 案件次第じゃ、一発で高校の学費ぐらいは出るんだよ」

「えぇ……」

 

 流石に相当珍しい話だし、本来は公安が処理するぐらいの難易度だが、0ではない。

 月に1~2回デートするための費用を全部出しても、誤差と断言できるだけの稼ぎはある。

 

 安全が無いだけで。

 

「じゃ、決まりな。初回のデートコースは俺が考えとくぜ」

 

◆◇◆◇

 

 強引にデートの約束を取り付けたは良いものの。

 実際問題、現時点の蓄えはそれなりにあるが、今の俺はデビルハンターを休業しているため、蓄えそのものは減る一方である。

 

「……働くか」

 

 正直、アテも無く街を放浪する事に停滞感を覚えていたことも事実。

 情報は岸辺から受け取れるという話だし、ここは実弾の補充にシフトするとしよう。




頑張ったとか言っといてなんだけど、そんなに高精度のエミュでは無いような気がする。
まあそこはまだまだ人格形成期って事で……正直アサはデートする度に蛙化現象起こして喧嘩してそうと思っている。
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