デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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チェンソーマンが食傷を感じるレベル

 手元資金が乏しいだろう2人の食卓に上がり込み、更にご相伴にあずかろうという話である。

 そのため、俺は完全にやっすい業務〇ーパーみたいな所に行くつもりだったのだが、レゼが案内してくれたのは成城〇井みたいなお高めの所だった。

 

「……大丈夫なのか?」

「何が?」

「なんていうか、こう、資金的に」

「そうは言うけど、お礼だからちょっとは奮発しないと」

「レゼが腕を振るうってだけで俺からすれば十分なんだがな」

「なにそれ」

「ホテル暮らしじゃ手料理の温かみに飢えるものさ。覚えがあるだろう?」

「……まぁね」

 

 苦笑交じりにそんな話をしながらいくつかの生鮮食品をカゴに入れていると、後ろからデンジが間に入ってきて。

 

「レゼ、それ重いだろ。俺が持つよ」

「そう? ありがとうデンジ君」

 

 人参の品定めに戻ったレゼの視界の外で、こっちを一瞥するデンジ。

 

 オイオイ、そんなイイ感じのデンレゼをいきなり見せるなよ。

 興奮しちゃうじゃないか。

 

 俺がレゼを口説いて、それに対抗するためにデンジがレゼといちゃついて、それを見た俺が元気になってレゼを口説く……。

 永久機関が完成しちまったなぁ!? これでノーベル賞は俺のモンだぜぇ!!

 

「女の敵」

 

 次の瞬間、俺の肩はすさまじい握力で締め上げられた。

 振り返ると、そこには戦争の悪魔みたいな形相をしたアサが立っていた。

 

「アサ? いやアサさん? あなたさっきまでナユタとお菓子コーナーに居たはずでは……?」

「なんとなくこっちに来たの。そしたらなんかジョージがレゼ先輩口説いてるからさぁ……」

「口説いてない口説いてない。ただちょっと情緒的に共感を煽っただけだから」

「それを口説いてるって言うんじゃないの?」

「おんなのてきー!」

「もー、ナユタってばそんな言葉ばっかり覚えちゃって」

 

 やっぱり小さくても女の子ってことかしらん?

 男女問わず昼ドラは教育に良くないと思います。

 

「分かったら一緒に調味料見に行くよ」

「え? 今日のこれってスパイスから作る系の本格派だっけ?」

 

 確かにこの価格帯の店ならそういうのも置いていそうではあるが。

 

「ジョージが手料理食べたいって言ったんでしょ! だったら私のでもいいでしょ!」

 

 それだけ言って、アサはずかずかと調味料コーナーに向かった。

 

 なるほどそういう意図であったか。確かにここで生鮮食品を買っても傷んでしまうし、かといって出来合いの物を買っては意味が無い。

 消去法的に、今手配できるのは調味料だけなのだ。

 

 歩き去るアサの耳が赤らんでいることに気付きつつ、ナユタに問いかける。

 

「ナユタはどっちに付いて行く?」

「デンジ!」

「ほい、じゃああっちな」

 

◆◇◆◇

 

 アサに付いて行って調味料のコーナーに向かう。

 なるほど流石は高級店。塩1つとっても種々雑多に取り揃えられており、双璧を為すが如き棚は威圧感すら醸し出している。

 

 いやまあ、威圧感の根源はいずれにも付いている『え、これ本当に塩?』みたいな値札のせいかもしれないが。

 

「……」

「にらめっこしてても値札は変わんねーぞー」

「汗!」

「外科医か」

 

 確かにちょっと変な汗をかいている様なので、ハンカチで横から拭う。

 

 うーむ、流石10代。撥水コーティングでもしてあるのかと思いたくなるほど水を弾いている。

 おかげで拭うのが簡単で助かる。

 

 拭い終わったハンカチを超スピードでそこらにあったゴミ箱にシュートしてから視線を戻すと、アサがショックを受けた様な顔をしていた。

 

「……どうした?」

「いや、別に……何もそんな……見るのも嫌、みたいな捨て方しなくても……」

 

 後半は小声故によく聞こえなかったが、アサがかいていた冷や汗を拭うためにハンカチ´を取り出そうとすると、腹に響く爆発音と衝撃が生鮮食品コーナーの方から轟いた。

 思わず取り落としたハンカチ´は安い奴だったのでそのまま放置するとして。

 

「……痴話げんかでもしたのか?」

「最初の感想がそれ!?」

 

 流石に冗談だ。レゼの能力ならあるはずの熱が来なかったからな。

 だが何か、尋常ならざる事態が起きていることは冗談ではない。

 

「俺は様子を見に行くけど、アサはどうする?」

「……こうなったらジョージの側が一番安全でしょ」

「かもな。だがお前も警戒はしておけ」

 

 無言で頷いたアサが俺の体を武器化した拳銃(ジョージ・ピストルズ)を取り出すのを見てから、俺は先導して歩き始めた。

 

◆◇◆◇

 

 時間は少し遡り、ナユタが合流してくる前のデンジとレゼ。

 

 デンジがカゴを持ち、レゼが生鮮食品の品質を見極める役回りである。

 ジョージが見ればそれだけでちょっと咳き込みそうな光景であったが、2人の間に甘い空気は流れていなかった。まあジョージが発作を起こすのに甘い空気が流れている必要は無いが。

 

「ジョージ君の話、どうする?」

「……公安に行くかって事?」

「そう」

 

 真面目に今後の進退の話をしているからだ。

 

「俺ぁ……どーだろ、どっちでも良いかな……ぶっちゃけ、レゼがいりゃあ俺はそれでいーし」

「……ぷっ、なにそれ、色々考えてた私が馬鹿みたいじゃん」

 

 逃亡を続けた先とか、レゼの消耗とか、公安の信用とか、ジョージの裏切りの可能性とか……本当に色々と考えて、リスクとリターンを天秤にかけていたのに。

 当のデンジと来たら、レゼの事しか考えていないと来ている。

 

 一瞬で甘い空気になった所で、ジョージから放たれたナユタが2人に合流する。

 

「デンジ! 肩車!」

「おー、良いぜ」

 

 一旦かごを地面においてから、デンジはナユタを肩に乗せて持ち上げた。

 

 ナユタの身長にデンジの身長が加算され、これまでとは全く違う景色がナユタの視界に飛び込んでくる。

 

「おぉ~」

「……そう言えば、この子(ナユタちゃん)も預かるんだっけ」

「あー、ンな事言ってたな。あんまりピンと来ねーけど……」

「でもそれもいいんじゃない? 結構相性よさそうだし」

「そうかなぁ、これ単純にナユタが誰にでも合わせられるだけじゃねえか? つーかそもそもさぁ、ジョージって言うほどマキマさんに……」

「デンジデンジ」

 

 ナユタがデンジの頭をてしてし叩いて注意を引く。

 

「どうした?」

「なんか、変なのが来る」

「へんなの?」

 

 ナユタの視界にデンジの身長が加算されたからこそ得られた高い視点の功績であった。

 林立する棚やポップを掻い潜った視界が、迫りくる異形を捉えた。

 

「ん……多分、悪魔」

 

 次の瞬間、全ての棚をなぎ倒して、大量の木の根が3人に襲い掛かって来た。

 

◆◇◆◇

 

 聴覚が遠くから響く爆発音をわずかに捉える中、生鮮食品コーナーは馬鹿でかい樹木で埋め立てられていた。

 

「なんじゃこりゃあ……」

 

 樹木に手を触れて感触を確かめると、どうやらこの樹木自体に特別なトラップがあるとかではない様で、掌に返って来た感触は本当にただの樹木だった。

 この異常な成育具合からして、恐らく悪魔の力によるものなのだろうが、この規模感からして実在する樹木を操っているものと思われる。

 

「アサ、ちょっと撃ってみて」

「うん」

 

 アサが一発だけ発砲する。

 それは小手調べに一発、というよりは、反動を制御しかねて単発に終わった、といった風であった。

 

 実際、撃った後のアサはどこか驚いたような表情で銃を見ていた。

 

「反動ってこんなにすごいんだ……いやっ、でも来いって言われたのは私だし」

「何言って……あぁ、ヨルか」

 

 別に来いとは言ってないんだが、なんて思いながら飛び散った木くずをつかみ取る。

 どっちかと言えば戦場慣れしているヨルの方が安心だが、この間の水族館の様にヨルが隔離される可能性も考えると、アサもある程度場数を踏んだ方が良いのだろうか?

 

 まあその辺は結局アサとヨル2人の問題なので俺が介入はしないとして、今はこの樹木だ。

 

 銃声からして発射されたのは大口径弾。拳銃で撃てる上限と言ったらいわゆるマグナム弾だろうが、それの単発でこの穴……硬度は現実の木材と同じぐらいか?

 穴のフチからは樹液も出ている。

 木くずを指でこすったりして感触を確かめると僅かな水気……これも生木っぽさを感じる。

 

 総じて、やはり現実の樹木としか思えない。

 

 これが悪魔の能力なら、レゼとは若干相性が悪いな。

 生木というのは水気があるので想像以上に燃えにくいのだ。硬くはないがこの厚みなら爆発の衝撃も耐えきるだろうし、恐らくレゼが吹き飛ばすのよりも生成される方が早いだろう。

 

 デンジも物量に押されるかな?

 でも樹木にチェンソーはメタ的に見て特攻っぽくもあるので、案外そうでも無いか?

 

 後は……

 

「アサ、この木って武器に出来るか?」

「やってみる。『大木投げ槍』」

 

 ……特に何も起こらない。

 

「無理か」

「……ごめん」

「ただの検証だ。どっちでもよかった」

 

 できた方がよかったのは間違いないがな。

 どれだけ繁茂させられても、戦争の悪魔の能力でその都度武器に変えてしまえば物量は関係ないのだから。

 

「さて、そうなると……」

「おぬしら、デビルハンターか?」

 

 脇から突然かけられた声に振り向くと、そこには悪魔がいた。

 

 一言で言えば、頭富士山って感じの悪魔が。

 

「……いいや? ただの物見遊山の一般人さ」

「そうか。では死ね」

 

 足元から異音。

 何かが沸騰するかのような……否、まさしく地面が沸騰している。

 

 足元に生え揃うフジツボの如き極小の火山群。

 

「これは……」

 

 噴火。

 

◆◇◆◇

 

「だァクソォ! 鬱陶しいなぁ!!」

 

 両腕のチェンソーを振り回して迫りくる木の根を切り払いながら、デンジが悪態をつく。

 四方八方から飛び込んでくる木片を全てチェンソーで叩き落とす絶技を見せながらも、その心境は全く晴れない。

 

 その理由は、視界に捉え切れないほどの上空で、ボムの能力をフル活用したドッグファイトを繰り広げるレゼである。

 

 樹海の悪魔。

 突如現れ襲い掛かって来た悪魔は、前口上の中でそう名乗った。

 

 木の根による刺突攻撃を主軸に、圧倒的な手数で押しつぶす。

 それが無理なら、木製の案山子や大質量攻撃で崩しを入れる。

 本体は球状に固めた根を空中浮遊させて高みの見物。

 

 以前戦った深海の悪魔と同様、かなり練り上げられた戦い方だ。

 

 これを不利と見たレゼはデンジを伴い上空へ退避。

 しかしナユタがいる以上はそう激しい機動もできず、大規模発破で盤面をリセットしてからデンジとナユタが地上に降りた。

 

 そこからはずっと今の状態だ。

 

「デンジ!」

 

 肩車されたままのナユタが警告を発する。少し落ち着いていたが、また攻撃が来たらしい。

 そしてデンジの脳裏に描き出される3()6()0()()()()()

 

「さっすが支配の悪魔だぜぇ」

 

 支配とは奪うだけに非ず。

 むしろ、与える事こそ真の支配に近しいと言える。

 

 ナユタはデンジに自らの視界を与える事で、デンジの死角をカバーしていた。

 後はチェンソーで斬り落とせばいい。幸い、斬った後の残骸が動き出すことは無いので手は足りている。

 

 デンジの方に意識を向けたことでレゼへの攻撃が薄まり、それを好機と見たレゼが攻め立て、結果デンジへの攻撃がなくなる。

 

「あんなに上にいるんじゃあチェンソーも届かねえしなぁ……どうすっか……」

 

 戦うとは思っていなかったので三千年チェンソーは家に置いてきた。

 ビームも同様だが、こっちは呼べば来るだろう。しかし来たところである程度の足場が必要なビームではあまり役に立たない。ナユタを守らせてもいいが、そうなったらむしろデンジの方が危ないかもしれない。

 例の拳銃は一応持っているが、デンジの腕では悪魔よりも先にレゼに当たりそうだ。

 

 すると、デンジを囲んでいた木の壁の一部が焼け溶ける。

 

 それを見た樹海の悪魔が得意げに語り出す。

 

「ふっ、どうやらお仲間がいたようですね。しかし私も仲間に周囲を警戒させておいたのです。さぁ、ここからは2対2の団体戦と」

 

 どしゃあ。

 

「……ん?」

「オイそこの豚屑」

 

 先ほどまでジョージとアサを攻撃していた『火山の悪魔』の首を、樹海の悪魔の足元まで投げ捨てたジョージが、どこかイライラしている様な口調で現れた。

 

「テメエの頸動脈をバチ開いて噴き出したI LOVE YOUで溺れ死にさせてやるから覚悟しろ」

 

 何言ってるのかよくわかんないけど、なんかめっちゃ怒ってる事だけは分かる。

 

 そんな思いを、ジョージ以外の全員が共有したのだった。

 

◆◇◆◇

 

 噴火の予兆が臨界点に至った瞬間、アサにテレキネシスを使って危害範囲から脱出させつつ、腕から銃剣を生やして悪魔に斬りかかる。

 油断していたのか動きは鈍い。しかし防御のために腕を動かし始めたので関節に射撃を入れて行動を阻害。

 

 無防備になった首を刎ね、心臓に刃を突き立てる。

 

「アサ!」

 

 残心よりも先にまずはアサの状態を見に行く。

 咄嗟に能力を使ったから加減が利いていなかったし、火傷をしている可能性もある。

 肉体強度が違い過ぎてよくわからないんだよな。

 

 いずれにせよ迅速な状態確認は必須だ。

 

「ったぁ……」

「大丈夫か? どこを打った?」

「頭……あと足が熱い」

 

 頭か。となると素人の俺ではどうにもならんな。

 あとで病院に連れて行こう。

 

 足の方は……これ火傷だな。冷やすか。

 

 冷凍食品のコーナーから冷凍食品を適当に持って来て、ハンカチ’’で包んで簡易的な氷嚢を作り、更にハンカチ’’’とハンカチ’’’’を繋いで括りつける。

 

「……何枚ハンカチ持ってるの」

「役に立っただろ? ほれ終わり」

 

 敷物にしたハンカチで顔を拭うとかエスコートになってないしな。

 

「ちょっと拳銃だけ貸してくれ」

「良いけど、何に使うの?」

「一発撃ったらすぐ返すさ。自衛も必要だからな」

 

 さて、悪魔の死体に手をかざして。

 

「『炸裂溶岩弾(マグヌス・ヴォルケニクス)』」

 

 悪魔の死体を弾薬に変える。

 戦争の悪魔を見ていてなんとなく『俺もできるんじゃね?』感があったのでやってみたが、案外できるものだな。

 

 だが、感触としては消耗品の弾薬しか作れそうにないな。

 贅沢は言うまい。そもそも作れるだけで望外というものだ。

 

「もう私より戦争の悪魔じゃん」

「何言ってんだおめーは」

 

 借りたジョージ・ピストルズに弾薬を込め、木の壁に撃ち込む。

 

「ひゅう、こりゃすげぇ」

 

 大口径弾薬をぶち込んでも貫徹はしなかった壁が、たった一発で消し飛んでしまった。

 樹木でありながら、砕けるでもなく燃えるでもなく『溶け落ちる』というあたりに、凄まじい熱量を感じざるを得ない。

 

 拳銃をアサに返して。

 

「じゃあ俺、仕事行くから。いざって時はちゃんと助けを呼べよ」

「……いってらっしゃい?」

「……いってきます」

 

◆◇◆◇

 

 で、残飯の首を投げ捨てて名乗りを上げたわけだが。

 

「……ちなみにこれどういう状況?」

「何も分からないであんなにキレてたのかよ」

「あーいや、言葉が足りなかったな。つまり、この悪魔連中の目的は何かって事だ」

「目的?」

「特に使役されてるわけでもない悪魔が俺たちを襲うって事は、チェンソーか銃の心臓、あとは支配の悪魔だろ。どれか言ったか?」

「……そういや、なんも言って来てねえな? 樹海の悪魔とかは言ってたけど」

「沈黙、か……狙いを読ませないという意味では正しいが……」

 

 問題は、それができる程の自制心があの悪魔にあるのか、という所だ。

 

 総じて、悪魔は自己顕示欲が強い傾向にある。

 自らに向けられた恐怖が成長の糧になるという生態ゆえに、本能的に知名度を求めるのだろう。

 

 特に第一印象が大切という意識でもあるのか、相手をビビらせる登場演出に余念がない。

 自分の名前を高らかに名乗る事が多いし、前口上みたいなのもちゃんと考えてるし、その辺全部代弁されたからってちょっと宇宙飛行士を敷いてみたりもする。

 

 だからこそ偽名を使ったシーちゃんの異質さが際立つわけだが、根源的恐怖の悪魔なシーちゃんはこれ以上の力を求めてはいないのだろうとまだ頷ける。

 だが、あの悪魔はそう超越的な存在ではない。それは肌で感じる。

 

 となると、あの悪魔には相当強い目的意識があるという事だ。プラスアルファを即座に切り捨てられるぐらいに強い意志が。

 

「おっと?」

 

 火山の悪魔の首が木の根に取り込まれていく。

 大部分は銃弾にしたが、せめて残っている所だけでも糧にしようってハラか?

 

 かと思いきや、そうしてできた木の根の塊が凄まじい勢いで枯れていく。

 そして内側から燃え上がり、中から火山の悪魔が出てきた。

 

「くぉんのォ……よくもやってくれたなァ!!」

「おー、すげ。不死鳥みたいじゃん」

「あんな鳥公と一緒にするなぁ!!」

 

 不死鳥の悪魔っているのかな?

 あんまり強くなさそう。

 

「復活する感じか」

「だが明らかに弱っている。お前ほど不死身じゃない」

「だよな」

 

 見た感じは火山の悪魔って感じだが、恐らく火を浴びると再生・回復する。

 そのための火種は自分自身。故にいつ如何なる時でも、可燃物が周囲にあれば復活が可能って所だろう。

 

 だがこいつは『火の悪魔』ではない。

 

 だからいくらを火を得た所で一時の力。ちょっとしたドーピングぐらいにしかならない。

 まして力の源である心臓を失い、再生させているのだ。

 

 5回も殺せば済むだろう。

 なに、俺はマキマを30回は殺したんだ。慣れたものさ。

 

「さて……こうなると盤面がごちゃつくな」

 

 構造的には3対2の団体戦。しかも相手は手数型と火力型。

 分断ができる様な状況でも無いし、こういう時はとにかく広い視野が必要になる。

 そしてそれは、多分デンジに期待できるものではない。

 

「よしデンジ。合わせるから好きにやれ」

「あぁ? ナユタは?」

「俺が預かる。こっちおいで」

「はーい」

 

 肩車to肩車でこっちに来た。

 身軽だな。

 

「で」

 

 両手を合わせる。そして右人差し指を伸ばし、左手で掴む。

 そして思いっきり、引きちぎる。

 

 ブチィ。

 

「うわ……何してんだオメェ」

「ナユタ、『繋げ』」

 

 ナユタはしばらく考えてから、指を受け取った。

 

「分かった」

 

 指から滴る血を舌でなめとり、断面を加えて中にある血液を吸い上げる。

 そしてゆっくりと指を口の中に迎え入れて、丸呑みにした。

 

 なんとなく笑顔になっている俺を無視して、俺とデンジの頭へと、ナユタは鎖を打ち込んだ。

 更にナユタは空中にも指を向け、レゼにも同様に鎖を打ち込む。

 そして悪魔たちの死角から、アサに向けても鎖を打ち込んだ。

 

 都合、4本。

 

 本来のナユタの分を大きく逸脱した鎖の本数。

 それを実現するのは、今まさに与えられたばかりの『銃の悪魔の肉片』である。

 

 全ての悪魔は、自らより強大な悪魔の肉片を喰らう事で、その力を増すことができる。

 今のナユタにとって、銃の悪魔の肉片はその条件を満たしている。

 

「もうちょい浅く……よしいいぞ。良い塩梅だ」

 

 デンジの思考が薄ぼんやりと伝わってくる。レゼのも、アサのも、勿論ナユタのもだ。

 そして、俺の頭の中が覗かれている気配もする。

 

 ナユタを中継機にしたコマンドリンクって所かね。

 

「これで、俺たちはさしずめ一心異体。最低限の連携ぐらいはできるだろ」

「無茶苦茶考えるなァ~……これナユタがその気になったらどーすんだよ」

「その気にはならねえから大丈夫だ。じゃ、改めて……」

 

 ブゥン。

 ピィン。

 ジャキン。

 

「派手に行こうか」




マグヌス・ヴォルケニクス←響きだけで決めたけどどういう意味なんだろう
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