デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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なんでBlue-ray and DVDとか出さないんだろ商才ないのかなッ!?


舞台はまあ、見なくても良いかな……映画が完璧すぎて更新したくない


頂点の血族

「デンジ!」

「おー、どうした?」

「犬の散歩行くよ!」

「おー」

 

 散歩という言葉に反応した、多頭飼いの犬が2人に群がっていく。

 

 いずれも大型中型に類される犬であり、すべてが使役犬であった。

 愛玩犬とは別次元の生命力を掻き分けながら、全ての犬へ順番に首輪を付けていく。

 

 首輪を付け終わった犬は、まるでお礼を言うかの様に顔を舐め回して、少し後ろに下がって次の犬に譲る。

 

 デンジは躾に関わっていないので、このように調教したのは全てナユタの手腕だ。

 

 そこに『支配の悪魔』の能力は一切使われていない。

 ひたすらの根気と汲めど尽きぬ愛情、そして少しの知恵がこの多頭飼いを崩壊させずに成立させていた。

 

 『頭の悪い犬なんていないの』と、ナユタが熱弁したことをふと思い出す。

 

 通りかかる人に吠えまくったり、別の犬に喧嘩を売ったり、何かにつけてイタズラしたり……そんなものは、全てが全て飼い主が躾をちゃんとしていないから起きる事。

 つまりこの世にいるのは頭の悪い犬では無くて、『頭の悪い飼い主』だけなのだと。

 

 頭の悪い筆頭のデンジとしては正直な所ピンと来なかったが、ナユタが飼っている犬がその様な面倒を起こしたことが無い事実を考えると、まあ本当の事なのだろうと思う。

 それはつまり、ナユタはデンジなどでは及びもつかないほどに頭が良いという意味でもあった。

 

「ほら! リード半分持って!」

「おー」

 

 ナユタは未だ小学生の様な体躯でしかない。掌のサイズも体格相応だ。

 こんな十数匹のリードを一手に引き受けては、色々と見切れない面倒もある。

 故にデンジもある程度受け持つ必要がある訳だが。

 

 なーんか、これじゃあ俺も犬みてえだなァ……なんて思ってしまう。

 

 とはいえ、首輪を付けられているのは、ある意味では自分も同じこと。

 デンジは自分の首についた『おそろいのチョーカー』に少し触れて、犬の散歩へと繰り出した。

 

◆◇◆◇

 

「地元じゃ負け無し、か……」

 

 ジョージは小さくそう呟くと、ゆっくりを天を仰いだ。

 そしてその頬を、無駄に綺麗な涙が伝う。

 

「どうやら俺たちは……『親友』のようだな」

「何があったァーーーーッ!? 今お前の中で何がどうなってそうなったんだよ!」

「私の時とは感じ入り方が違い過ぎる……」

「ナユタちゃん大丈夫? 日常的って程じゃないけど、ジョージ君って多分そこそこの頻度で()()なるよ?」

「……大丈夫!」

 

 流石に言い淀んだ。

 

 実の所、デンジとレゼが絡まなければここまで我を失うことは無いので、その2人と離れて暮らす以上はこんな発作を起こすことは()()()無い。

 しかしレゼからすればそんな内部仕様なんて知る由も無いのだから、日常的にこんな言動を繰り返しているんじゃないかと思っているのだった。

 

 レゼがジョージを覗き込む時、ジョージもまたレゼを覗き込んでいるのであるからして。

 

「なぁに、どんな障害があろうと助け合って乗り越えるさ。それが家族ってもんだろ?」

「どんどんランクアップしていく……」

「家族も何も、血ィ繋がってねえじゃん」

「家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか? 私はそうは考えていません。慈しみ合う心こそがヒトを家族たらしめるのです。血はその助けにすぎません。愛です。愛ですよ、デンジ」

「なんかもう色々と気持ち悪ィなお前」

 

 と、ここでジョージはようやく落ち着いた。

 裏を返せばこれまでは錯乱状態だったわけだが。

 

「ふぅ……分かった。ナユタについては、こっちで預かることにしよう。良いんだな? ナユタ」

「うん、まあ……うん」

「よし。じゃあ……」

 

 茶封筒を開けて、中身を一枚取り出す。

 ナユタの戸籍だ。デンジとレゼが受け入れる事が前提で作ってあるので、そうでなくなった以上は使えない。

 

 ジョージはキッチンのガスコンロで、その紙を燃やした。

 

「これで完了だ」

「良かったの? 結構大変だったんでしょ?」

「なに、また少し公安で働けばいいだけの事さ……ナユタはナユタで戸籍が必要だしな」

「あ、そうだ」

 

 レゼが何かに気付いた。

 

「ちょっと圧倒されて忘れてたけど……結局ジョージ君のタイプってどんな人だったの?」

「あぁそれか」

 

 これは、レゼなりのアサへの応援であった。

 

 ジョージという男はイマイチ自分の正体を明かさない。

 打倒マキマの為に徹底した『情報戦による盤面の支配』が癖になっている所為で、その本意を詳らかにすることを避ける傾向にある。

 

 好意なのか信頼なのか、デンジとレゼの前では結構手の内を晒すあたり、周囲の人間次第で脇が甘くなったりもするようだが……それにしたって、全部を晒しているわけではないだろう。

 

 そんな秘密の一端を自白するというのだ。言い咎めなければ嘘というものだ。

 まして可愛い後輩には垂涎ものの情報とくれば尚の事。

 

「ちなみに俺は、身長(タッパ)(ケツ)のデカい女が好きです!!」

 

 レゼはちょっと後悔した。

 

 ジョージにはなんかんだで格好つけな所があると思っていたので『佇まい』とか『強い芯がある』とか精神面の話をしてくるもんだと思っていたが、まさかガチガチに外見だけの、しかも顔ではなく体の話が飛び出してくるとは思わなかった。

 

 アレだろうか、自分達(デンジとレゼ)がいたせいで脇が甘くなった結果とでもいうのだろうか。

 

 と、ここでデンジが要らない事に気付いた。

 

「……ん? それマキマさんじゃね?」

「よくわかったな! 実際、外見だけならマキマは結構タイプだったぞ。まあそれはそれとして精神面がアレだったから殺したけど」

 

 レゼは後悔した。

 

 外見とは無関係にその精神面を評価できるという事は、アサの外見がジョージの好みに合致していないことにも挽回の余地があるという意味でもある。

 それはまあ、確かにアサにとっては朗報かもしれない。

 

 だが。

 

「……」

 

 口をあんぐりと開けているナユタには、少なくとも衝撃のニュースであったことは想像に難くないのだから。

 

 ナユタはマキマそのものについて余り多くを知らない。

 

 だが周囲の物言いからして、『前の』支配の悪魔だったのだろうことは分かる。

 自分には、そのマキマと同等の存在になれるだけのポテンシャルがあるという事も。

 

 それは勿論能力(ソフト)の面だけではなく肉体(ハード)の面においても同様だろう。

 

 つまりナユタは『お前は将来、俺が好きな外見に育つことだろうな』と宣言された様なものなのである。

 シンプルに身の危険を感じる。

 

 もしかして自分は早まったのだろうかと、燃え落ちる戸籍を見ながらナユタは途方に暮れていた。

 

 いやしかし、単純な事実として、ジョージがナユタに何らかの形で危害を加えようとしたことは一切無い。

 それなりのスキンシップがあったことは認めるが、それにしたって『そういう』ニュアンスが含まれていなかったと断言できる。

 そのスキンシップに心地よさだって覚えていたが、勿論それも同様だ。

 

 そうしてナユタが自分の判断を正当化している頃、レゼの視界にのみ映る立ち位置で、アサが煤けていた。

 

「……ま、こんな所かな。もう他に残ったことは無いか?」

「おぉ、まあ大丈夫じゃねえか?」

 

 そんな女性陣を余所に、男性陣らは気楽なものである。

 知らぬが仏とはよく言ったものだ。

 

「じゃ、この書類は渡しとくぞ。復旧処理のタイミングはこっちから指示する」

「……ってかなんで二手に分かれる前提なんだよ。一緒に公安行けばよくね?」

「テメエが出した『学校に行かせろ』って条件の細かい所を詰めるのに、一回戻らないといけねえんだよ。ある程度は強引に通せるが、これぐらいの話になると流石に根回しが要る。まぁ、絶対に通すから前払いって感じだな」

「あー……? よくわかんねえけど、また今度って事か」

「そんなところだ。代わりと言っては何だが……」

 

 女性陣が煤けているアサを中心に固まっていることを視界の端で確認したジョージは、するりとデンジの懐に潜り込んだ。

 そして、ポケットの中からある箱を取り出し、デンジに手渡した。

 

「これを渡しておこう……連戦(くつう)に耐えきれぬ時、飲むがいい」

「連戦……?」

 

 デンジは漢字こそ読めないが、ひらがなカタカナであれば読める。

 しかしその文字が意味する事が即座に分かるという意味ではない。

 

 箱に書かれた文字を読めこそしたが、それが何を意味するのかは分からなかった。

 

「そのうち分かる。あと、これ携帯電話な。俺名義だからまず足は付かん。連絡はこれで取れるが、無理になったら上手くぼかしてブログに書き込んでくれ」

「分かった」

「一応岸辺さんの連絡先も入ってるから、俺の頭越しになんかねじ込みたいんだったら使って良いが……まあ、あの人は俺より手厳しいんで、止めといた方が良いと思う」

「俺も正直そこまで先生と連絡とりたくはねえかな……」

 

 実際、デンジとしては痛い思い出しかない相手である。

 

「……でもよ、その……」

「どうした」

「早パイ……早川アキって先輩と、パワーって奴がいんだけどよ……そいつらとは連絡取れるかなぁって……」

「パワーってのは知らんが……その早川って奴があの時喫茶店の前にいたチョンマゲ男の事なら……恐らく、戦闘の余波で死んでいるだろう」

「……そーかよ」

 

 デビルハンターに満足の死など存在しない。

 それでも長年追い続けた銃の悪魔との戦いに『消耗』されたのだ。

 

 本望ではなかっただろう。満願成就ともいえないだろう。

 むしろ後悔ばかりの中で死んだのかもしれない。

 

 それでも、せめて夢を追って死んだと解釈してやるぐらいしか、残された彼らに出来る事は無い。

 

「いいのか? デンジ」

「何がだよ」

「考えようによっちゃ、俺が殺した様なもんだぞ?」

 

 マキマを殺す。

 そのために手の届く多くを賭け皿に乗せたのがジョージという男だった。

 

 マキマとの戦闘の余波、銃の悪魔の暴虐、バラまかれた銃器、励起された恐怖に釣られた悪魔たち……すべて、ジョージが引き金になったことだ。

 それ等によって死んだのであれば、間接的にはジョージが殺したも同じこと。

 

 早川アキに限ったことではないが、早川アキも例外ではない。

 

「あー、んん……俺ぁよぉ、早パイに孫の顔見してやるって言ったんだよ」

「……」

「……約束、破っちまったなァ……」

 

 そう呟いて遠くを見るデンジの瞳には、怨恨や怒りは宿っていなかった。

 自分が約束を守れなかった罪悪感と、段々気に入っていた兄貴分を失った喪失感と、その時に何もできなかった無力感がごちゃ混ぜになった……それでも、不思議と澄んだ瞳だった。

 

「……俺は、謝りも償いもしないぞ。マキマに挑んだのも、その余波で死人が出たのも、単なる俺の我が儘。その果てに身内を失ったのがお前だが……お前たちに行った色々な措置も、ただの我が儘だ。罪悪感に駆られての賠償などでは決してない」

 

 もっとも、そうしてわざわざ宣言するあたりが、全く気にしていないわけでは無い事の証明でもあったりするのだが。

 

「わーってるよ。お前って、なんかずっと生き生きしてっからな」

「どういう意味だこら」

「いい意味で、いい意味で、だから」

「うーん目つきが悪い、有罪!」

「なんでぇ!?」

 

 それで誤魔化すことができるのは、レゼの顔面偏差値があっての事である。

 優秀な人間から手法を学ぼうという姿勢は褒められたものだが、同じことをやっても前提条件が違えば上手く行かないに決まっている。

 

 ジョージは流れるようにアームロックを決めた。

 

「ぐあああ!」

「それ以上いけない」

 

 どうやらアサが持ち直したらしく、レゼがアームロックを止めに来ていた。

 ジョージとしてはこのままぶち折っても良かったが、まあそこまでの事ではないので、素直に止めることにした。

 

「さて、こうなると新幹線の座席をもう1つ手配しないとな。指定席空いてるかなぁ……」

 

 手慣れた様子でジョージが携帯電話を取り出し、鉄道会社に電話をかけ始めた。

 その間に、極められていたデンジの関節をレゼが確認する。

 

 診察を受けながらデンジがレゼに問いかける。

 

「アサは何があったんだ?」

「……残酷な現実と、未来への希望に押しつぶされてたんだよ」

「なんだそれ」

 

 そんなトンチキな会話をしていると、電話が終わったジョージが声を上げた。

 

「席取れたぞ」

「そっか、じゃあ今回はお開きだね」

「そういう事になるな。アサ、ナユタ、40秒で支度しな! 愉快な遠足の始まりだ!」

「んな無茶な……もう終わってる!?」

 

 そもそもが『もうそろそろ帰るか』という状況だったのに、何故40秒もかかるというのか。

 

 そしてジョージ、アサ、ナユタが玄関に揃って。

 

「じゃあレゼ先輩! これからもよろしくお願いします!」

「ふふ、もう先輩じゃないのに」

「いえ、私にとってはずっと『先輩』です!」

 

 アサも随分と真っ当な青春っぽい事を言えるようになったもんだとジョージが感慨深く思っていると。

 

「ジョージ、じゃあまたな」

「あぁ」

 

 ガチャリとドアを開けて。

 

「またな、『早川』」

 

◆◇◆◇

 

 目の前でドアが閉まる。

 その光景を、デンジは呆然と眺めていた。

 

「……もしかして」

 

 数秒してから再起動したデンジは、猛然と茶封筒を開け、中の書類を確認する。

 流石に正式な公的書類という事もあって、大量の漢字に一瞬クラッとしたデンジだったが、しかしそれを食いしばって読み進める。

 

 そこには、表札で何度も見た『早川』の文字が、デンジの名前の前側に並んでいた。

 

「早川デンジ、か……」

 

 口の中でその名前を呟くと、何とも言えない『重み』が胸の中にのしかかった。

 だが、悪い気分ではない。むしろ何か、使命感というか……自らを駆り立てる何かが、デンジの中で燻っているような気すらする。

 

「なんでジョージはこう……分かってるかのよーに……」

「……」

 

 嬉しいような、悔しいような。

 或いはデンジ本人ですら自覚していない様な琴線を的確に揺さぶる、クリティカルな贈り物。

 それを敢えて自分で開けさせるニクイ演出。

 

 こみ上げるものを抑え込むかのようなデンジを見て、レゼは少し嫉妬した。

 

 自分では、まだデンジにこんな顔をさせることは出来ないから。

 

「……嵐みたいだったね」

「まあいつもの事だろ」

 

 いきなり来てはとんでもないことを言い出して、動揺したかと思えばさっさと退散するジョージは、ほとんど嵐というか災害に近い。

 

 だが、その『災害的』な言動は人の心を揺さぶる。

 

「……レゼはさぁ、ジョージの事どう思ってんの?」

「なにそれ、なんでまた?」

「なんとなく」

「そうだなァ……」

 

 レゼとしては。

 

 とりあえず、嫌いではない。

 『見てて飽きない』という意味でアレ以上は中々いないだろうし、アサが惚れ込んでいるのも人間性の証明になるだろう。

 ドライな利益計算で言っても、相当に貢がれている自覚はある。

 能力だって結構高いし、察する力もなかなかの物だ。

 

 そして何より、支配の鎖で全員が繋がった時に雪崩れ込んできた、無根拠な好意。

 恥ずかしげもなく愛だなんだと宣うだけの事はあると感心したものだ。

 

 むき出しの心でむき出しの好意を向けられて、それを迷惑に思うほどレゼは傲慢ではない。

 

 だが、好きかと聞かれると頷くのもイマイチ気が引ける。

 言動も能力も思考も発想も哲学も、どう考えたって色んな意味でレゼの手に余る。

 

 あれを狙っているらしいアサは相当なチャレンジャーだと尊敬すらするというのが本音だ。

 

「まぁ……仕事上でなら結構良いバディになれると思うけど、プライベートでは遠慮したいかな」

 

 纏めると、この辺りが素直な評価になるだろう。

 ただ、アサを相手に駆使していると思われる手練手管を考えると、いつの間にかプライベートまで浸食されてそうでもあるので、可能なら今ぐらいの距離感を保ちたいという想いもある。

 

 アサを見る限りは、それはそれで幸せなのかもしれないけど。

 

「どっちにせよ、家族って感じにはなれなさそう」

「ふーん……」

「それに、私はデンジ君の方が好きだしね」

「俺も好きィ!」

「ふふ、声デカ」

 

 と、ここでレゼが気付く。

 

「ん? 家族……? 血の繋がり……だとすると……」

「どうした、レゼ?」

 

 デンジの手から封筒を取って、レゼの分の書類を確認する。

 

「わぁ……」

 

 『早川レゼ』。

 

 それがレゼの次の……そして、最後の名前だった。

 そのことに気付いたレゼが、顔を輝かせた。

 

 そしてその表情を引き出したジョージに、デンジが若干嫉妬した。

 

「お、レゼも早川なのか。お揃いだな」

「デンジ君……意味わかって言ってる?」

「意味?」

「これさぁ、書類上の話だけど……私とデンジ君、結婚してるよ?」

「結婚? 結婚ていうのはつまり……結婚って事ですかァ!?」

 

 あまりの衝撃にデンジの語彙が爆散した。

 

「じゃあナユタ預かってたら娘になったって事?」

「多分そういう事だよね……もう燃えちゃったから何とも言えないけど……」

「娘……娘ぇ……?」

「まあちょっと無理あるよね、外見的に……でも」

 

 レゼは続ける。

 顔を赤らめ、小さな声で、デンジから目を逸らして。

 

「子供は、欲しいカモ……」

 

◆◇◆◇

 

 全く、予想外なことになった。

 

 まさかナユタからの好感度がこんなに高くなってるなんて思わなかったぞ。

 そりゃあ確かに親っぽい言動に気を付けてはいたが、それってどっちかと言うと嫌われるムーブだし。

 

 もしかして抱きしめたのが悪手だったか?

 この世界の悪魔、ハグに弱いからな……。

 

 昨日のスーパーじゃデンレゼの方に行ったから、てっきり順調だと思ってたんだけど。

 

「ちょっとジョージ、聞いてる?」

「んぁ? なんだっけ?」

「なんか気ィ抜け過ぎじゃない? これから部屋どうするかって話!」

「ああ、それな」

 

 気も抜けるってもんさ。

 折角マキマを倒したって言うのに、その目的は結局70%ぐらいで終わっちまったんだから。

 

 まぁ、生で絡むデンレゼナユが拝めただけでも良しとするか。

 

 何も死に別れた訳じゃない。

 あの3人が絡む場面を作ればその度に見れる光景だし、いずれは一種のホームステイの様な形にもできるかもしれない。

 

 そうすれば実質的に目的達成みたいなもんだ。

 なんだ、まだまだ努力と工夫の余地はあるじゃあないか。

 

「そうだなァ……素直にファミリー向けの物件借りて、ホテル暮らしは卒業かな」

「私、お風呂は広い所が良いんだけど」

「じゃあそれもだな。ナユタはなんかあるか?」

「犬、飼いたい!」

「犬か。まあクラムボンもいるし、ペット可にはするつもりだったが……どれくらい欲しい?」

「いっぱい!」

「そっかー、いっぱいかー……金は良いとして、近所迷惑まで考えるとだいぶ絞られちまうな」

「もういっそ借家って言うのは?」

「ったく、俺が払うからって好き勝手言いやがって……別に良いけど」

 

 朝日に向かいながら3人で歩く。

 すると、俺の鋭敏な聴覚が特徴的な音を聞き取った。

 

 衣擦れ、水音、建材の軋み……そして、俺が渡した『バイアグラ』の箱が開かれ、潰された音。

 

 俺は静かに聴覚を遮断して2人のプライバシーを尊重した。

 しばらく待っても邪魔が入った様な感じはしないし、今回ばかりは上手く行ったらしい。

 

 満願成就、か。

 

「ぐはぁッ」







と言う訳で、これにて本作は一旦の区切りとさせていただきます。

まあ何か理由があるって訳じゃないんですけど、敢えて理由を付けるなら、ここを逃すともう区切りを付けられる場面が当分先まで無いからですね。
本作はチェンソーマンの二次創作ですが、同時にレゼ編に強くフォーカスした作品でもあります。そうである以上は、要素の回収はともかく状況それ自体が刺客編以降までもつれ込むのはちょっと解釈違いじゃないかなという事で。

正直『デンレゼ』と『銃の武器人間』だけ決めて始めた連載でしたが、日間ランキングでは24位程度、原作:チェンソーマンの総合評価では35位程度という好評をいただきました。評価バーは赤のMAXと私史上の最高記録。

こんな見切り発射100%の作品を楽しんでくれてありがとうございました。

残る悔いがあるとすれば、文字数を半分ぐらいにして投稿頻度を倍にした方が最終的なポイントは高かったのではないかという戦略性の話でしょう。そのことに気付いた時には既にマキマが死んでいたので後の祭りもいいとこ。
まあ数字を追い過ぎるとモチベが下がるので程々に。

毎回感想を書いてくれるような方もいらっしゃったので、それを読み返してモチベ上げてます。名指しはしませんが、いつもありがとうございます。

今後についてですが、投稿頻度を下げてゆるーく続けるか、時系列とか無視して書きたいところだけ書くか、ちょっとした外伝なんかを書くかのどれかですね。
脊髄反射だけで書いてたおかげか結構動かしやすいオリ主ができたので、もうちょっと遊びたいところ。
まあ一応は完結済みという事で、今後も読んでくれるという方は気長にお待ちください。

ただし、ここからは『完結させる』という責任感を放棄した上で書くので、お気に入りの底で塩漬けでもしていてください。

重ねて長期間のご愛読ありがとうございました。
また機会があればお会いいたしましょう。

ではでは評価、お気に入り、感想ありがとうございました。
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