デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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武器、支配、鏡花

 起床して寝室から出てリビングに入ると、少し珍しい奴がソファに座っていた

 

「お前が表に出てくるのは珍しいな」

 

 そう言って声をかけると、長い黒髪がくるりと翻ってこちらを視界に入れる。

 露わになった顔にはやはりいくつかの傷跡が浮かび上がっており、同心円状の瞳は人間離れした存在であることを克明に訴えていた。

 

「よく後頭部だけで私だと分かったな」

「……? 見ればわかるだろ」

「……そうか」

「アサはどうした? まだ寝てるのか?」

「お前なァ……昨日一昨日と、アサがどれだけ感情のジェットコースターだったと思ってるんだ……」

 

 ヨルは呆れた様な表情をして、クロワッサンを口にした。

 ルームサービスの朝食だろう。ベーコンエッグとコーヒー、あとキャベツが主軸のサラダも見えた。

 

 コイツ、勝手に注文しやがって……だから地雷女とか言われるんだぞ。

 

 アサが目覚めていればこの食事が如何に割高であるかをヨルが根負けするまで延々と語って引き留めてくれたかもしれないが、そうでないとこうまで傍若無人か。

 

 流石戦争の悪魔、そこにシビれる憧れるゥ!!

 ……いや憧れはしないわ。言い過ぎた。

 

妹分(ナユタ)を預ける相手を見極めてやろうと気合を入れたら、出てきたのは碌に話もできずに物別れに終わった憧れの先輩(レゼ)で、悪魔が襲い掛かって来たと思ったら足を引っ張って、かと思えば自分が美味しい所(トドメ)を譲られて、結局妹分は元の鞘ときた」

「ははぁ、確かに徒労感も凄そうだな」

「しかもその間ずっと隣にお前が居たんだ。1日中泥の様に眠っても罰は当たるまい」

「あれ? その言い方だと、なんか俺がアサの心労の根源みたいじゃん」

「自覚無かったのか?」

「……」

 

 まぁ、そこまで悠々と断言されたら正直返す言葉も無いけどさ。

 なにがアサの心労になるかなんて結局アサの胸先三寸なのだから、俺が把握できないのはある程度しょうがないのだし。

 

 でもそんな変な言動はしてないはずなんだけどな……?

 

「ま、まあ良い。ヨルがいるんなら、丁度相談したいことがあったんだ」

「ほう? この戦争の悪魔に相談とは酔狂だな」

「別に人生相談じゃねえぞ? 専門家の意見が聞きたいって話だから」

「専門家?」

 

 疑問符を浮かべるヨルの隣に、どさりと腰を降ろした。

 

 おや、対面にはナユタがいたのか。

 俺のレアマンガコレクション(積読)を、ソファに横になりながら読んでいる。

 頭の上にクラムボンを乗せているが、アレは重くないのだろうか。というかクラムボンもマンガを見ているけど、理解できるのだろうか。

 

 こうして座ると流石にコーヒーの香りが漂ってくるな。

 余り良い豆ではなさそうだが、俺もご相伴に預かろうかね。

 

 いや、ご相伴も何も俺の金なんだけどさ。

 

 ヨルの更に近くへと移動して、コーヒーが入ったピッチャーと空のカップを取った。

 あまり薫り高くないコーヒーを注ぎながら、話を続ける。

 

「まず、俺が日本の公安に所属することになったのは知ってるな?」

「あぁ、言っていたな」

「そして日本では銃の規制が非常に強い。体制側である公安ですら、『日本は銃撃つ時許可制なの?』ってなもんだ」

「らしいな。愚かな事だ」

「同感だが、そこに混ざる以上は合わせないといけないわけでね。何かちょうどいい武器に心当たりは無いかって話さ」

「……ナイフじゃダメなのか? あのけったいな仮面を着けている時はそうだったんだろう?」

「悪くはないんだが、出来るだけ『公安』と『ジョージ・スマイルズ』は無関係にしておきたいんだ。どこの紐付きでもない、金だけで動いてくれるってのが売りだからな」

「ちなみに他の……一般の職員は何を使っている?」

「基本的には日本刀と契約悪魔の力だな。素手(MMA)も多少かじってて、場合によっては拳銃」

「許可制のな。くくく……何回聞いても笑えるな」

「ふふ、そう言うなって」

 

 こぼれた苦笑をコーヒーと一緒に飲み込む。

 

 『イレイザーヘッド』などを手掛けた映像作家のデヴィット・リンチに曰く、『どんなに不味いコーヒーでも、全く無いよりはましだ』だそうだ。

 

 ちょうどそんな感じのコーヒーだった。

 まあ別に吐き捨てるほどではないけども……ヨルは眉1つ動かさずに飲んでるあたり、流石と言うかなんと言うか。

 

「では日本刀で良いだろう。目立たず、使い勝手がよく、おまけに刃物だ。ナイフを使えるのだから刃を立てる心得ぐらいはあるだろうし、何の不足がある?」

「強度」

「……あー……」

 

 クァンシは青龍刀を4本も携行していた。

 一本口に咥えて三刀流……なんてロロノアな話ではなく、彼女の身体能力で武器を振ると、簡単に刃がズタボロに欠けてしまって使い物にならなくなるからだ。

 

 そして今の俺の身体能力は、そんなクァンシを圧倒できるほどに高い。

 必然、武器にかかる負荷はクァンシ以上。もはや一振りごとに使い捨てる勢いだ。

 センスのない奴がオマージュした雲雀〇弥みたいになっている。

 

「だったら構造が単純で使い勝手の良い打撃武器……と言うのも、デビルハンターには問題か」

「あぁ、あくまでも『人間の力を主体にして戦っている』という絵面がいる。棍棒振り回して悪魔を倒してちゃあ、どっちが悪魔か分からん」

「なるほど、これは確かに難、し……い……」

「……ん? どうした?」

 

 突如止まったヨルを見ると、こちらを凝視して固まっていた。

 

 ふむ、改めてこうして近くで見ると、やはり整った顔立ちだな。

 顔にいくつか走っている傷跡は一見するとその美貌を台無しにしているが、元の素材が良いおかげか、アクセントや外連味として違和感なく調和している。

 

 同心円状の瞳や少女ながらに尊大な言葉遣いも相まって『人ならざる何か』という印象を強く受けるのも、その調和に拍車をかけているのだろう。

 

 美人は三日で飽きると言うが。

 さて、美しくとも人ではない存在に飽きるのは、一体いつになることやら。

 

「……近くないか?」

「そうか? スマンスマン」

「あぁいや、別に離れなくても……」

 

 ヨルがそう言った時には、既に俺は席を距離を取っていたので、ここからもう一回距離を詰めるのもなんかなぁ、ということで話を再開する。

 

「で、どう思う?」

「……まぁ、そうだな。うん……強度さえ足りれば、日本刀で良いんだな?」

「そうだけど、わざわざ頑丈なのを特注したりするつもりは無いぞ。所詮隠れ蓑だからな」

「おいおい、お前は目の前にいるのが誰なのか忘れたのか?」

 

 ずずい、とヨルが近寄って来た。

 

「契約だ。戦争の悪魔(わたし)の力を使わせてやる」

「……そう来たか。対価は?」

「代わりに、アサを大切にしろ」

 

 大盤振る舞いだな。

 それじゃあ実質的に無条件みたいなものじゃあないか。

 

 だが。

 

「断る」

「え……何故だ? 別に大した条件でも無いだろう。というか、実質無条件みたいなものだと思うが……」

「その理屈だと、なんか契約を維持するためにアサに貢ぐみたいになるじゃん」

「……それの何が嫌なんだ?」

「なんというか……打算ありきでやってない行動に打算を混ぜるとさぁ、俺の中の軸がブレるから……」

 

 ちょっと主観的で申し訳ないのだが、そうとしか言えない。

 自分の行動を善行だなんて思うほど傲慢になったつもりはないが、それはそれとして明確な利益が戻ってくるのはなんか違うのだ。

 

 良い感じに翻訳するのであれば。

 

「アサの事はもっと無条件に大切にしたいんだよね」

「なんだその拘りは……」

 

 ヨルがなんだか複雑そうな顔をしている。

 そんなにおかしなこと言ったか? めっちゃ主観的な話で正確に伝わってない可能性もあるから、まあしゃあないか。

 

「うん? そうなると、ナユタの事はどうなんだ?」

「なぜ急に……まあ、同じ様に無条件に大切にしたいな」

「……あと、他にその枠に入っている奴は?」

「あー、アサとナユタって事だと……ヨルとレゼとデンジと……クァ、いやあの人はまたちょい違うか」

「待て、私もなのか?」

「当たり前だろ」

「……なぜだ?」

「理由がいるのか?」

「要るだろう。私は悪魔で、アサの体を半分乗っ取っていて、お前の体も……」

「俺が価値あると信じたものに、お前の同意など必要無い」

 

 まあ実際には、説明してもあんまり意味が無い理由しか無いのをカッコつけて誤魔化しているだけだが。

 神は全能だ。当然、煙に巻く事もできる。

 

「……おまえ、いつか刺されるぞ」

「なんでだよ」

「何なら私が刺すぞ」

「なんでだよ」

 

 まあ、俺が刺し殺されるのはこの際良いけどさ。

 どうせ復活するし。

 

「とにかく! 対価の払い先はあくまでもヨルにしてくれ」

「むぅ……難しいな……」

 

 悩んだアサを見かねてか、ずっと対面で『寄生獣』を読んでいたナユタが手を上げる。

 おいおい、名作をピンズドで引き当てるじゃねえか。

 

「じゃあ私が契約したい」

「ナユタが?」

「私もジョージのお仕事手伝いたい」

「しかし、別にそんなことしなくても」

()()、嫌なの。ずっと養われているだけだと、いつ切られても文句を言えない」

「切らんぞ?」

「出来るだけ、でしょ」

 

 まあそうだけど。

 

 ナユタの主張は一理ある。

 現時点では一切の『人権』が存在しないナユタにとって、俺という庇護者はまさしく生命線。

 その生命線を維持するために自らの価値を主張しておくというのは、生存戦略として何も間違っていない。

 

 以前アサにも言ったが、アサの優先順位が低かったのは、アサという存在が打倒マキマという最優先課題に対して何ら有用な存在ではなかったからだ。

 逆に言えば、有用な存在であれば必然的に優先順位を上げざるを得ない。

 

 そして『自らには価値がある』と証明できれば、それはそのまま安心に繋がる。

 同時に自己肯定感もアップして情操教育にもよろしいとくれば、いよいよ断る理由が無い。

 

 まあ支配の悪魔としてのナユタだけではなく、一個人としてのナユタにこそ価値があるというのは別途強調しないと拗らせてしまいそうなので、そこは要注意だな。

 

「で、対価は?」

「週に1回、一緒の布団で寝て。代わりに鎖一本分だけ貸してあげる」

「それは……」

 

 どうなんだ?

 なんというか、教育的に。

 

 ……いや、むしろ逆に良いかもな。

 

 思春期や反抗期と言うのは、あれはあれで1つの健全な精神発達の段階だ。

 裏を返せば、その過程を踏まないという事はやや不健全という事でもある。

 

 それを誘発するためには、反骨心を抱くほどに管理する事。

 管理は抑圧を生み、抑圧は反発を生み、反発は反抗へと至る……ハズ。

 

 ナユタは悪魔だから、精神構造が人間と違う可能性があるんだよな。

 だが支配の悪魔が支配されるというのは激しいストレスだろうし、反抗の誘発という意味では間違っていないような気もする。

 

 であれば、彼女が望む限りにおいては、ベタベタしまくるぐらいでちょうどいいのかもしれない。

 多分、思春期に差し掛かったら『一緒の布団で寝るとか無理。週1で血液100ml頂戴』とか言い出すだろ。

 

 懸念点はこの世界の悪魔がハグに弱い事だが……まあ、成長を完全にどうこうしようというなら、それこそまさしく支配になってしまう。

 

 ナユタはどう育ってもいい。

 それぐらいの気持ちで接した方が、きっとお互いの為だ。

 

「分かった、契約する」

「わーい」

「これでもう使えるのか?」

「うん」

 

 ……ふむ。

 特に、何か変わった様な感じはしないが。

 

 なんだかんだで契約悪魔の力を使うの初めてだからな。勝手が分からん。

 適当に振って間違えて銃の力が出てきても困るし。

 

 一般的に、契約悪魔の力は実際の発声で制御するものだ。銃の『ばん』とか、狐の『コン』とかが代表的だな。

 ここは一つ基本に立ち返り、その方法で制御を試みるとしよう。

 

 となると技名がいるな。

 

 支配、支配の技か……シンプルに『ドミネイト』とかでも良いが。

 いっそのこと、色んな意味で悪名高いフレーズにしてみようか。

 

「『黒転支配(ドミ・リバーシ)』」

 

 窓の外にいた『ワタリガラス』に向けて、そう唱えてみる。

 命令は……そうだな、『夢現のまま、自分の(ネスト)に帰れ』なんてどうだろう。

 

「……」

「……」

「……」

「……にゃあ?」

 

 しかし なにも おこらなかった !

 

◆◇◆◇

 

 まあとりあえず支配の力については『要練習』という事で。

 

 やっぱポッと出の後付け設定なんか当てになる訳ねえよなァ!?

 んだよ魔気って! 知らねーよ軍事力とか! テメエがやるべきはオーメンじゃなくてゴーメンだろうがよ!!大体ワンピに求めてるのってそう言うのじゃねえから!! ていうか考えてみれば俺ワンピースの正体知らないんだけど!? こっから後40年後には分かるのかなぁ!? 50年後じゃないと良いなァ!!!

 

 こほん、少し私怨が漏れた。

 

「ふむ、ラッピングはこんなものかな……」

 

 デパートで購入した適当な包装紙でプレゼントの箱を包み、その箱を更にリボンで結び、出来栄えを評価する。

 素人仕事にしては、まあマシな方ではなかろうか。

 

 余った分については部屋の装飾に使うつもりなので、決して無駄になるという事はあるまい。

 

「次はクラッカーだな。確実に爆ぜるように30発は買っておくか」

 

 3発いっぺんに鳴らすぜぇ! みたいな煽りして、3発ともしけってて不発で最終的にお通夜の様な雰囲気になってしまうロックバンドで探したらいるだろうしな。

 いや、ザ・マッドサタンについては他の連中も悪いんだけどさ。

 

「後やっぱ、お祝いと言えばケーキとたっぷりのロウソクだぜ」

 

 向こうで用立ててもいいが、土地勘が無いからな。調達に手間取って機を逸しては本末転倒だ。

 東京で用意してから、向こうの冷蔵庫にぶち込む想定で良いだろう。

 

◆◇◆◇

 

 買い物を済ませ、能力で空をかっ飛んで山口県へ。

 向かうのは勿論デンレゼ宅である。

 

「ギャワワ!!?」

「あ、わりぃ」

 

 庭先に着弾したら、ビームに至近弾だったようだ。

 そこそこ激しい衝撃だったが、荷物は無事なのでまあ良いか。

 

「ビーム、チェンソーは?」

「出かけた……ボムと一緒……」

「よしよし」

 

 拳銃の位置情報からして揃いで出かけているとは思っていたが、ドンピシャリだ。

 

「じゃあ今から嬉しいサプライズってのをやるからよォ。俺が来てる事内緒な?」

「ギャギャ……でも」

「大丈夫だ、チェンソーが喜びの余りエンジン吹かして大迫力血みどろバトル待ったなしの、とんでもねえサプライズだから。もしかしたらお前にもお呼びがかかるかもしれんぞ」

「……」

 

 ビームはしばらく考え込んでから。

 

「分かった……黙ってる」

 

 よし、これでサプライズが台無しになることは避けられた。

 ……しかし、なんだろうな、この……幼子を言いくるめたかのような後味の悪さは。

 

◆◇◆◇

 

「……うし、開いた」

 

 ピッキングツールで5分くらいカチャカチャして、ドアの鍵を開け、ガッツリ不法侵入する。

 

 というか素人仕事でも開錠できたんだけど、これセキュリティ大丈夫なのか? 

 俺が散弾銃(マスターキー)の悪魔の力を使ったとかならまだしも、マジでただの人間技だぞ?

 

「うっ」

 

 ドアを開けて真っ先に感じた性臭。

 鋭敏な嗅覚には不快が過ぎる。

 

 臭いもんは臭い。

 流石にこれで興奮できるほど上級者じゃねえぞ。

 

 まあ俺の嗅覚が鋭いだけで、人間レベルならそうでも無いのだろうが。

 ひとまず窓を開けて、銃撃の創造で室内の空気を思いっきりかき混ぜて換気する。

 

「ったく、相当に盛り上がったらしいな……焚きつけた俺がいうこっちゃねえかもだが」

 

 銃の位置情報はまだ遠い。

 飾りつけのついでに掃除もしておくか。

 

 余り露骨だと言外に『臭いぞバカップルども』と言ってるようなもんなので、飾りつけで誤魔化せる程度にした方がよかろう。

 

「……ていうか、ちゃんと気付いてるのか? 気付いてなかったら、マジでただの奇襲になっちゃうけど……」

 

◆◇◆◇

 

 銃の位置情報が近づいてきたので、とりあえずシャッターを閉めて暗闇を演出。クラッカーも抜かりなく配置し、糸で延長して一括管理できるようにしてある。

 視線誘導の為にライターを使って顔をわずかに照らしてから照明を一気に点けて驚かせ、その後のクラッカーという計画だ。

 

 ……暗闇にする必要は無かったか?

 

 いや、もう庭先にいるし、今からシャッター開けると気づかれそうだし止めとくか。

 

 お、ドアが開いたな。

 レゼだけがそろそろと部屋に入ってくる。デンジは周囲の警戒か?

 

 これまでの逃避行での苦労が垣間見える連携ぶりだな。

 正直こっちの方が興奮する。

 

 レゼが良い塩梅の所まで来たので、ライターを灯して視線を向けさせる。

 

「ハッピーバースデーって奴さ」

 

 そう呟いた瞬間、暗闇の中でレゼの腕が閃光の如く動き、尋常ならざる早撃ち(クイックドロウ)が襲い掛かってくる。

 これだけでもほぼ全ての人間は為す術無く撃ち殺されるだろう。

 俺に銃撃なんぞ効くわけないが、流石に機先を制され過ぎて思わず防御態勢を取ってしまった。

 

 クラッカーの糸を握ったまま。

 

「あ」

 

 パパパパパパァン!!

 

 幸か不幸か調達してきたクラッカーは一発たりともしけって不発なんてことは無く、30発全てが完璧に炸裂した。

 

 これもう完全に応射の音だぁ!?

 しかも拳銃だけでやるなら5、6人は必要な連発である。

 

 となれば。

 

 ピィン。

 

「ですよねー」

 

◆◇◆◇

 

「本当にハッピーバースデーなことある?」

「いやこれについては本当に申し訳なかったとしか……」

 

 俺の諦めの声を聴いたレゼが咄嗟に威力を絞ったおかげで、『匠の大胆なリフォームにより、最高の解放感を演出』なんて悲劇的ビフォーアフターは避けられたが、それでもまあ爆発は爆発なわけで。

 相応の熱と衝撃と騒音により、丹精込めた飾りつけと掃除は完全に無為に帰したのだった。

 

 そもそもの話、何故俺があんな行動を取っていたのかと言うと、本日8月28日はレゼの誕生日なのだ。

 

 なのでちょっとサプライズパーティをかましてやろうと思い立ったのが約4時間前。

 で、適当かまし過ぎてレゼに若干爆破されたのが3分前だ。

 

 そして今回の経緯について供述しながら説教を受け、今に至る。

 

「え、私って今日が誕生日なの?」

「実際の所は知らないが、お前に渡した戸籍書類ではそういう事になってる」

「でもそれって、お祝いする様な事なのか?」

「確かに祝福されて生まれたわけじゃあないかもしれない。だがお前が生きていることを確かに祝福する人間が、少なくともここに2人いる」

「……え、俺も?」

「レゼの事大好きだろ?」

「まあそうだけどよ」

「じゃあそれでいいんだよ。だからその人生の1つの節目として、生まれた日を祝うんだ」

「でも、私は生まれた日なんて……」

「皆同じさ。自分の生まれた日が何時かなんて憶えてる人は誰もいない。ただ自分の信頼する人が告げた日を、そのまま信じるしかないんだ。本当かどうかは問題じゃない。『自分の誕生日を知っている』こと……それ自体が、既に幸せなんじゃないかと僕は思うんだよ」

「口調と一人称が変わってる時のジョージ君って大抵ろくでも無い事考えてるんだよね」

 

 あれぇ?

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