デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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俺以外に誰もチェンソーマンカテゴリに投稿してなくて寂しいので初投稿です


USA! USA! USA!

 夏休みの宿題を全て提出し、アサは恙なく新学期を迎えた。

 

 もっとも、彼女の学園生活が概ね灰色なのは特段変わったりしない。

 今年の夏休みに起きた沢山の出来事はアサの中で綺羅星の如く輝いているが、そうした劇的な一夏を終えてしまえば、後に残るのは蒸し暑く退屈な日常ばかり。

 

 理解も覚悟もしていたつもりだが、げんなりするのは仕方がない。

 

「はぁ……」

 

 レゼ先輩がいればな、と時折思ってしまう。

 いやまあ、年齢が違う以上は同じ教室には居られないのだが、それでも放課後なんかは直帰以外の選択が生まれる。

 ジョージなら年齢も同じだが、やはり異性では出来ない事も多い。

 

 同性の同年代。そんな友人も欲しいと思わないでもないが。

 

「いちいち沈むなアサ。思いのほか詰まらんかったし、とっとと帰るぞ」

「分かってる……」

 

 こうして言い募ってくるヨルは、同性で同じ教室に居てくれるが物理的には存在していない始末。

 己の対人運の無さをひしひしと実感せざるを得ない。

 

 しかし、話を聞く限りではレゼ先輩とデンジは来年以降どこぞの高校に通う公算が高いらしい。

 具体的にどこの高校に行くつもりなのかは知らないが、そこと同じところに行けば、本当にレゼを先輩と仰げるわけだ。今のレゼを先輩と呼ぶのはアサの拘りでしかないのだし。

 

 であるなら、あの2人がどこの高校に行くとしても大丈夫な備えとして、普段の授業にもいくらか身が入るというもの。

 

 それはそれとして対人関係はカスや。

 

「うーむ、平和平和……支配の悪魔が殺されて幾ばくも無いだろうに、思いのほか何事もないな」

「何事って、例えば?」

「暴徒とか、悪魔とか……とにかく平和じゃない何かだ」

「ほんとそういうの好きだよね」

「当たり前だろう」

 

 ふんと鼻を鳴らすヨルの物騒な思考に困る所もあるが、その強気な態度が頼もしくもあった。

 

「それに、丁度良くお前に敵愾心の視線を向ける奴もいたしな。思わず期待もしてしまうというものだ」

 

 そう、それが理由で、こんな物騒なヨルに頼もしさを感じている。

 アサの何が彼ら彼女らの琴線に、或いは逆鱗に触れたのかは知らないが、ほんの1日2日で1学期の頃よりも刺々しい視線を感じるのだ。

 

 未だに手を出されるという段階には至っていないものの、それでもその一線が近づいているのは喜ばしい事ではない。

 もっとも、それは『アサにとっては』という枕詞が付く訳だが。

 

「ふぬぬ……あちらの方から手を出してくれれば、正当防衛を言い訳に出来るのだが……」

「止めてよねホント。騒ぎ起こして内申点下げたくないんだから」

「分かってる。だから正当防衛の言い訳が立つように我慢しているんだろう?」

「そこで変に頭回るのが逆に不安」

「戦争は勝った後の事まで考えるものだからな」

「ヨルが出ていった時点で過剰防衛みたいなもんだと思うけど……」

 

 悪魔との非認可契約自体を差し引いても、一般人相手に契約悪魔の力を使うのは犯罪に該当する。

 例えるなら、水鉄砲に拳銃で応戦した様なものだ。正当防衛というのは相手が拳銃を持っている時にこちらも拳銃を持ち出すから『正当』なのであって、相手が用意してきた戦力や行為以上で返したらそれは普通に過剰防衛である。

 

「なぁに、そのあたりまで含めて上手くやるさ……そうだアサ、生徒会や風紀委員に所属しないか? 体制側に回れば大義名分をもって正々堂々と」

「いや。レゼ先輩と同じ高校行きたいから勉強しなくちゃ」

「あの調子だと大した高校にはいかないと思うが」

「そ、れ、で、も!」

「わかったわかった……レゼの事になるとアサは聞かないからな」

 

 はぁ、とこれ見よがしに溜息を吐くヨル。

 しかしアサは気にしない。今の学校生活が灰色過ぎて、並み程度の交流でもアサには嬉しいのだ。文字通りに一心同体のヨルから苦言を呈されたぐらいで付き合いをやめるつもりはない。

 そこにソ連仕込みの人心掌握術が全く働いていないと言えば嘘になるが、極論すれば相手に好かれようという努力である。レゼに限らず誰でもやっていることだ。

 

 ともかく、この方向に発展性が無い事を悟ったヨルが話題を変える。

 

「そういえば、ジョージの事なんだが」

「……なに?」

「いや、大したことじゃないんだが、アイツが言う『スゴいデート』って……なんか不安じゃないか?」

「……否めない」

 

 元はアサが勢い100%で言い放ったリクエストだったのだが、どうもアサの『凄い』とジョージの『凄い』には隔(・)た(・)り(・)がある様な気がしてならない。

 

 相手がヨルの時だったとはいえ、『地獄へ行って悪魔をぶち殺しまくって武器化ショッピングしようぜ!』とか宣った男である。

 そもそもどうやって地獄に行くつもりだったのかもよくわからないが、ジョージの事だからなんらか手立てがあったのだろう。

 

 発想のスケールという意味で、アサはジョージに敵う気がしなかった。

 いやまあ、それ以外の意味でもそこそこそう思わないでもないが。

 

「言い出しっぺが私なのに、なんでこんなに不安なんだろう……」

「やっぱり相手が悪いんだと思うぞ。もっと安心感のある、幼馴染の様な相手をだな」

「ジョージがそうなんだけど」

「そうだったな。クソ、要素だけ見れば割と良い男であるはずなんだが……」

 

 ヨルは苦々しい表情である。

 

「まぁ、パスポート作れって言われたから、多分海外に行くんだろうけど……それってもうデートじゃなくて旅行だよね」

「夏休みが終わったから、確実に弾丸旅行になるだろうな。どこに行くのかは知らないが」

「どっちにせよ、絶対に私が想像している様な感じにはならない気がする……」

「想像?」

「なんていうか……うん……」

 

 言葉を濁して逃れようとするアサだが、脳を共有しているヨルにそれは通じない。

 言語化できるほどではない薄ぼんやりしたイメージを、薄ぼんやりしたままに読み取ることができるのだから。

 

 もちろん薄ぼんやりしていることに変わりはないので、もやがかったそ(・)れ(・)の解像度が上がる訳でもないが。

 

「あぁ……まぁ、言わんとすることは分かるぞ、うん……」

「……ヨルが内心を察して理解してくれるのは、嬉しく思うべきなの?」

「私が脳を共有していなかったら間違いなくそうだろうな」

 

 つまり、脳を共有している前提の理解なので、多分嬉しく思わなくてもいいという事だ。

 

 無駄に皮肉っぽいヨルに溜息を吐きながら、アサは校門から歩き出た。

 すると、すぐ隣に車が停められ、ゆっくりと開いた車の窓からジョージの顔が覗き込んでいた。

 

「よっ」

「うわ、どうしたの? ていうか車?」

「免許取ったんだー」

 

 ぴらぴらと新品の運転免許証を見せびらかすジョージ。

 年齢的に絶対無理なはずなのだが、当然の様に。

 

 公文書偽造罪なんて今更過ぎて気にしていないのか、裏から手を回してどうにかしたのか、身分証明のあれこれが偽造書類で免許証自体は本物なのか。

 いろんな可能性がアサの脳裏を駆け巡るが、その全てが『まあ今更か』という諦念によって片づけられた。

 

「じゃあアサ、ニューヨーク行こう!」

「へ?」

 

◆◇◆◇

 

 金曜夕方の便に乗り込んで、飛行機の上で一泊。

 北米大陸に渡り、ホテルに荷物を預けて街へ。

 

 もちろん、明確な目的地があっての移動だ。

 

「は、初海外がこんなに雑に……」

「え? あぁそっか。お前はずっと日本か」

 

 まあ、俺も『狂犬病の悪魔』を殺しに来た時以来、アメリカは来ていないが。

 それ以外の海外だったらそこそこ行く。主に仕事でだが、もはや海外渡航に感慨など覚えない。

 

 アサは衝撃を受けていたが、空港でスーツケースが信じられないほど雑に投げ捨てられるのも慣れたものだ。

 ちゃんと戻ってくるだけ優良ですらある。

 

「しかし……相変わらずだな、この国は」

 

 銃を持った悪人に対抗できるのは、銃を持った善人だけだ。

 

 自らの利権と善悪二元論にとらわれた妄言だが、同時に一理以上の真実を含む格言でもある。

 この思想が遍く広がっていると言う訳ではないのだろうが、ここに決して突き崩せない事実が1つ。

 

 銃の悪魔(おれ)にだけ分かる、銃の臭い。

 

 知覚範囲にあるだけでも、恐らくは千を下らない数の銃がひしめいている。

 その多くは決して抜かれることなく平和裏に沈黙を守るが、しかし中には火を噴いて敵を穿つものもいる。

 

 一億総中流社会ならぬ、一億総銃武装社会。

 

 それがアメリカだ。

 

「ねぇ、さっきからヨルがうるさいんだけど」

「ヨルが? ……あぁ、アイツはアメリカ大好きだからな。ただの戦争も代理戦争も経済戦争も世界中でやってるから、宜なるかなって感じだわ」

「まさにそんな感じ……ああもう、分かったから。ジョージ?」

「どうした?」

「ヨルが行きたいところあるって言ってるんだけど、いい?」

「どこだ?」

「ガンショップだって」

「ガンショップぅ?……そこらのデパートじゃダメなのか?」

「『そこらのデパート』には銃が売ってないでしょ?」

「売ってるぞ」

「えっ」

「クリスマスプレゼントぐらいのノリで売ってるぞ」

「アメリカって……」

 

 気持ちは分かる。

 

◆◇◆◇

 

 一旦銃砲店(ガンショップ)によってヨルをしばらく自由にさせてから、ようやく元の目的地に向かう。

 

 元々が異国の地という事で、時間には余裕を持っていたので別に良いのだが、『アサとデート』というお題目は既に半分ぐらい瓦解している様な気がする。

 まあアサの脳は既に半分ヨルなのだから、それもある程度は仕方の無い事だ。それを言い出すなら逆もまた然りであり、お題目自体が既に破綻しているというのは努めて気にしないとして。

 

「あー、やっと落ち着いてくれた……」

「おいおい、これからもっと騒がしい所に行くんだ。そんな調子じゃバテちまうぞ?」

「私そういうの苦手なんだけど」

「だろうな。アサって割とダウナー系だし、今回の所は少し趣味に合わないかもな」

「そうなの? ていうかどこ行くの?」

「あそこ」

 

 ほいっと指差した先には、とあるアーティストのバストアップと、その名前が英語で書かれていた。

 

「み……みかえる?」

「マイケルだよ。マイケル・ジャクソン」

 

 ちょっと地方が変われば確かにそう読まれることもあるだろうし、なんならそっちの方が近い発音なのかもしれないが、俺には『マイケル・ジャクソン』の方が馴染み深い。

 

 1995年9月のニューヨーク。

 ここでは、マイケル・ジャクソンの公演があるのだ。

 

 あのキングオブポップがご存命なのである。

 こりゃいつかは見に行かないと嘘ってもんだろうと、相当前から抽選に応募していたのだ。

 

 全部で大体1万口ぐらい応募して2人分しか取れなかった。

 ネットでは転売に転売を繰り返され、既にとんでもないプレミアチケットとなっている。この時代は転売対策とか全然されてないからな……。

 

 まあ『客が興奮し過ぎて失神する』とかいう覇王色の覇気みたいな事をリアルでやってのける男の公演となれば、そんな混迷の事態もそりゃあ起きるだろうというもの。

 

 しかし、こんな世界でもマイケル・ジャクソンは生まれて、チケットは売られてコンサートは開催されるんだから分からないものである。

 バタフライエフェクト的なアレで存在しないかもしれないと思っていたのだが。

 

 今なら『スターウォーズの続きが見たい』という理由で世界を滅ぼすのにも一理あると思ってしまうな。

 

「コンサートぉ? 私、ああいう騒がしい所嫌いなんだけど」

「知ってる。落ち着いたところで、自分のペースでゆっくりするのが好きなタチだろう?」

「分かってるなら」

「分かってるからこそ、対極なのさ」

 

 アサの好みに沿えば、なるほど確かに外すことは無いだろう。

 だが、それでは『ヨルより凄い奴』というクソアバウトなリクエストに応えるのは難しい。

 

 凄いというのは、予想を裏切り超越してこそ生まれる感動なのだ。

 

 ちょうどレゼにも『アサちゃん相手にはもっと冒険したら?』などと言われたことだし、そのアドバイスを活かそうという訳だ。

 

 まあ、肝心の『予想の超越』をマイケル・ジャクソンに外注している時点で情けないのはその通りなのだが。

 

◆◇◆◇

 

 レゼのアドバイスに従ったことを伝えると、それが決め手となってアサはコンサートへ行くことにしたようだ。

 使っておいてなんだが、俺と比較した時の信頼度が天と地過ぎないか?

 

 そして会場に入る直前。

 

「あ、わり。ちょっと電話するわ」

「どこに?」

「知り合い」

 

◆◇◆◇

 

「……」

「……」

 

 黒髪の幼女と、無精ひげを生やした中年男性が向かい合っている。

 

 世が世なら……というか、この時代であっても普通に事(・)案(・)を疑われるレベルの状況だが、生憎と保護者公認である。

 世も末だ。

 

 お互いにそれを自覚しているのか、2人の間に流れる空気はどことなく緊張感に包まれていた。

 

「……何か……食うか?」

「……何か、って?」

「そりゃあ……あー……プリンとか?」

「……あるの?」

「無い」

 

 一事が万事この調子である。

 

 ふと、中年男の懐に忍ばされていた携帯電話が着信音を鳴らす。

 幼女の方はその音に思わずびくりとするが、中年男の方がまるで逃避するかのような凄まじい勢いで電話に出た。

 

『もしもし岸辺さん? どーですか、そっちの様子は』

「針のむしろだ。お互いにな」

『お互い? ……ちょっと意外ですね』

「何が意外だ。俺に子守りを任せてどうにかなると思ってたそっちの方が意外だ」

『まあ、確かによく考えてみれば無理でしたね。そりゃそうだって話でしたわ』

「お前は俺の事を何だと思ってるんだ」

『レズの女に惚れて酒と煙草に溺れる中年男性』

「……お前ぐらい丁々発止ならこっちもやりやすいんだがな」

『良い子でしょう? ナユタは』

「だから困ってるんだ。よくお前のとこに居てこう育ったもんだ」

『隠し味は愛情です』

「知るか」

 

 そうして岸辺は、部屋の隅にいるナユタをちらりと見る。

 ナユタはいまいち感情の読めない瞳で、岸辺をじっと見つめていた。

 

 興味なのか警戒なのか知らないが、ともかく心安らかに、とはいかない様である。

 

「……なぁ、この子はその、何が好きなんだ?」

『食べ物で言うとピザが一番好きですね。ジャンクな感じの強くて派手な味わいを好みます。繊細な味も分からないわけじゃないんですが、好みとしてはジャンクな方です。行動で言うと、とにかく知識欲や好奇心が強いので、読書なんかも頻繁に。あと動物と触れ合うのも結構好きです。二元論で言うと犬派なんですが、犬猫に限らず動物全般が好きみたいですね。最近は料理にも興味を持ってましたが、危ないと思ってやめさせてます。監督してくれるんならやらせていいですけど』

「マジか、昨日牛丼食わせちまったぞ……逆に嫌いなものは?」

『あんまりないですけど、強いて言えば辛い食べ物ですね。ピリ辛ぐらいなら良いんですが。あと騒がしいのも嫌いで、クラシックやジャズは聞きますけど、ヘビメタとかは嫌がる感じです。運動もあんまりしませんけど、これは好き嫌いというより単純に機会が無かっただけというのが大きいかと』

「……めっちゃスラスラ出てくるな」

『親代わりですからね。これぐらいは当然の義務ですよ』

 

 電話口から聞こえるジョージの声からは、矜持も気負いも感じられない。

 コーラを飲んだらゲップが出るのと同じぐらい、当然の事象として受け入れている。

 

 支配の悪魔という特大の厄介事を抱え込んでいるとは到底思えない。

 事の重要性を理解していないだけのマヌケという可能性もあったが、そんな奴ならマキマを殺そうとはしないだろう。

 ジョージがマキマに殺意を抱いた経緯を知らないので、若干何とも言えないのだが。

 

 つまり、全て理解した上でこの態度なのだ。

 

『まあ、一晩は前情報なしで耐えたんですから、これだけ情報があれば残りの期間も大丈夫でしょう』

「だと良いんだがな……」

『あ、後ナユタに変わってくれます?』

「分かった」

 

 岸辺はナユタに向き直って。

 

「ジョージからだ」

 

 そう言って携帯を渡した。

 

「もしもしジョージ? 変わったよ」

『おぉナユタ元気してたか? そこの酒浸り髭面ヤニカス親父に何か変な事されなかったか?』

「元気だよ。岸辺はむしろジョージより無害まである」

『えっ』

「それよりアサお姉ちゃんは?」

『あ、あぁ……まあ、概ね楽しんでいるよ。カルチャーショックもままあったが、ヨルがいたおかげで上手くクッションになっている様だ』

「ジョージは?」

『うん?』

「ジョージは楽しんでる?」

『……あぁ、楽しんでるよ。楽しみにしている、といった方が正確かな』

「そっか、良かった」

『お前を連れていけなくて済まないな』

「物騒だもんね、アメリカ」

『まあそれもあるが、チケットがな』

「別に良い。私そこまでマイケル・ジャクソンに興味ある訳じゃないし」

『ありがとう。またどこかで埋め合わせをしないとな』

「無限ループじゃない?」

『嬉しい悲鳴だね。果報者さ、俺は』

「……ほら有害!」

『なんでだよ』

 

 ぷんぷんと怒りながらナユタは岸辺に携帯を返す。

 

「ジョージ」

『何ですか』

「俺は状況をいまいち把握していないが……」

『はい』

「多分お前が悪い」

『司法は死んだんですか?』

「生きてたらお前が真っ先に裁かれてるだろ」

『そりゃそうですけど……』

「ともかく、共通の話題が見つかりそうで助かった」

『……酒飲ませないでくださいよ?』

「お前は俺の事を何だと思ってるんだ」

『レズの女に惚れて酒と煙草に溺れる中年男性』

「そうだったな、クソが。じゃもう切るぞ」

 

◆◇◆◇

 

 せっかく衛星電話まで使ったというのに、なんか物凄く雑な感じで切られてしまった。

 

「うーむ、微妙に不安だ……」

「ナユタちゃんはどうだった?」

「元気にはしているらしい。声も聴いたが口調などにも変調はナシ。ご飯も食べてるようだし、ひとまず安心して良いだろう」

「ふーん……デビルハンターとしての知り合いって言うから、正直不安だったんだけど」

「それなりにプライベートな話をするぐらいには親しい相手だ。公務員だから身元もガチガチに保証されてる。酒でネジが緩んでるのが玉に瑕だが……」

「ちょっちょっと!?」

「基本は常識人だから……」

 

 ぶっちゃけ、岸辺に『公務員として求められるもの』があるかと問われれば否だ。

 しかし『デビルハンターとして求められるもの』であれば十分にある。

 

 そしてそれは、ある意味で支配の悪魔(ナユタ)を預けるのにこれ以上ない適性でもある。

 

 極端な話、ナユタがいきなり誰かを殺そうとしたときに、文字通り『殺してでも止める』ことができるだけの戦闘能力。

 同時に、必要に応じてそれを発揮できる精神性。

 そして、それを向ける相手を間違えない倫理観。

 

 確かに人間としてみれば若干信用ならない御仁だが、デビルハンターとしてなら諸手を挙げて任せられる。

 

 マキマみたいなのが現れて欲しくないという意味では利害も一致しているしな。

 真面目にやってくれるだろうさ。








なんかイイ感じのオチが付いてしまった前回で一旦終わらせて刺客編の構想でも練ろうかとも思ったんですが、余りにもアサちゃんのヒロイン成分が足りないので補充する話です。
なのになぜかナユタが正妻感を出しています。
一体何が起きたんでしょうか。
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