デンレゼ過激派転生者   作:翁。弁当

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実はコレ書いてるの31日なんですが、存在しないはずの劇場特典第8弾が現れてて戦慄してます。
この調子でウェディングIFとかも書いてくれないだろうか。


ほんへ
未来、コーヒー、本尊


 公安のデビルハンターの仕事。

 これを一言で言えば、民間のデビルハンターでは手に負えない強力な悪魔を始末する事だ。

 

 人間離れの偉業を日常的に求めてくるこの職場の良い所といったら、精々が福利厚生。

 あとは『銃の悪魔』に対する復讐の可能性がある、ということぐらい。

 

 どんな有望株も、1年で死ぬか民間に行く。

 残っているのは、ラッキーな上にネジが外れた実力者という、どうにも質が悪い連中ばかり。

 

 当然、そんなこと人間業で出来る訳がない。ならば必然的に、人間以外の力を借りなくてはならない。

 

 故に、公安のデビルハンターは悪魔との契約が義務化されている。

 

 それが無いという事は、戦場で丸腰の棒立ち。

 ただでさえ公安のデビルハンターは常に人手不足。死傷率が高い割に儲からないなんて誰もやりたくないのだから、志望者すら枯渇気味だ。

 むざむざと死なせることは無い。最低限の武装を整えて、ある程度生還してくれなくては困るのだから。

 

 さて、ここにその悪魔との契約(さいていげんのぶそう)を失った男が一人。

 名前を早川アキ。銃の悪魔への復讐を誓う、言っちゃあなんだが、ありがちな公安のデビルハンターである。

 

 『嫌な味の物を口に入れた』という割と理不尽な理由で、比較的友好的とされる狐の悪魔との契約を打ち切られたのだ。いや指定した物に食らい付いて、場合によっては飲み込んでいいのがお前の契約とちゃうんか? という疑問はさておき、切られてしまったものはしょうがない。

 呪いの悪魔も居たが、発動のための代償である寿命がもう2年しか無いので、こちらも実質無くなった様なものだ。

 

 公安に残って銃の悪魔を追うためには、別の悪魔と契約しなければならない。

 

 その為に、アキはとある秘密施設へと移送されていた。

 ココには公安が生け捕りにした悪魔が数多く収容されている。

 事故や偶然で悪魔と契約しちゃったから公安に所属するしかない、みたいな例外的な奴以外は、大体ここで悪魔との契約を結ぶ。

 

 言うなれば、公安の弾薬庫だ。

 勿論、扱いを間違えれば大爆発が起きるという意味である。

 

「今回、アキ君に契約してもらうのは『未来の悪魔』。今コイツと契約してる人は2人いて……1人は寿命半分、もう1人は両目と味覚と嗅覚を差し出して契約してます」

「……」

「気に入られれば安く済みますよ。じゃあどうぞ」

 

 重々しい扉が開く。

 暗く湿った、手入れもされていないだろう収容房。

 

 その奥にある闇で、1つの眼球がこちらを睨みつけていた。

 

「未来、最高。未来! 最高! 未来!! 最高!!」

 

 未来の悪魔。

 その姿は、一言で言えば野生化した木人。

 

 一体化した足は確定した過去と現在を表し、芽吹く枝葉は枝分かれするパラレルワールドを表す。

 

 腹部にある”うろ”には眼球が1つ。

 頭部は6つの眼と、同じく枝分かれする角。

 

 なるほど、人知を超えている。

 

「お前も未来最高と言いなさい」

「俺はお前と契約しに来たんだ。欲しいもの言え」

「……過去最悪な態度だぞ! まあいい! お前の未来を見せな! それで契約内容を考えるぜ!」

「未来?」

「早くお腹に頭を突っ込め! じゃないと未来が見れないだろうが!」

 

 便利なのか不便なのか、むしろ未来視の条件としては安い物なのか。或いは勝手に未来が覗かれない事実に安堵するべきなのか。

 そもそもこんな得体のしれない奴の得体のしれない空間に頭を突っ込むというのは、やや躊躇うものがある。真実の口みたいなものだ。

 

 だが、そんなこと言っていても始まらないので、アキは大人しく従うことにした。

 

「ム、ンッン~……難しいな……」

「なんだと?」

「そもそもお前、寿命が2年しかないじゃないか……何を貰っても薄味過ぎるぞ……」

 

 流石は未来の悪魔。人の死期を察するぐらいはお手の物と言う訳か。

 

「これで最悪な死に方をする、とかだったら、右目に住んでその末路を見物するぐらいで良かったが……」

「碌な死に方はしないと思うが」

「俺からすればありふれたもんだ! そんなの!」

 

 まあそれはそうか。悪魔基準では、グロテスクな死なんていっそ食傷気味なのかもしれない。

 

「左腕全部と、右目。あと味覚と……寿命も、使う度に1時間だな!」

「使う?」

「俺の能力だ。数秒先の未来を見れる。見れるだけ、だけどね」

「ただし、対応できるかは分からないと」

 

 アキは考える。

 得物については、後で呪いの悪魔の釘ではないものが支給されるとのことだ。具体的な性能や分類については聞いていないが、銃の悪魔との兼ね合いを考えると刃物……扱いやすさ、リーチ、取り回し、対応力等、諸々考えると日本刀タイプの物だろう。

 

 自分は前に出て行って、悪魔とバチバチに格闘するスタイルなので、それが一番馴染む。

 

 では数秒先が見える事が、悪魔との戦闘でどれぐらい役に立つか。

 まぁ、役には立つ。一瞬一瞬を争う格闘戦において、数秒先が見えるというのは圧倒的なアドバンテージ。恐らくは目視すら難しい銃の悪魔の攻撃を防ぐためにも役立ってくれるだろう。

 

 だが片腕と片目を取り上げられてしまえば、腕力は半減し距離感は絶望的。体重のバランスも崩れて再調整には時間が掛かる。

 代償にするのは良いが、裏に隠れた時間という代償を本当に払えるのか。

 

「分かった。契約だ」

 

 是非も無し。

 そんなことで臆するぐらいなら、わざわざこんな所に足を運ばず、公安を辞めている。

 

 『どうしたらアキ君をやめさせられるかな』

 

 右目には、その一文が永遠に焼き付けられることになった。

 

◆◇◆◇

 

「すごく……大きいです……」

 

 アサが動揺の余り敬語になっている。

 5秒ぐらい呆然とした後にこのセリフだったものだから、ちょっと笑ってしまった。

 

 サムライソードへの襲撃から1か月。

 国内外を飛び回って暗躍を続けたり、デビルハンターの仕事をしたりして過ごしたこの1か月だったが、つい先日デンジのリベンジマッチが完遂されたことを確認したので、これはいよいよレゼ編の始まりだと思って一旦東京に落ち着くことにした。

 

 幸い今思い付く限りの準備は全て完了したし、おかげでみっちり詰まったスケジュールからも解放されて、久しぶりにアサとデートできるぐらいには暇になった訳だ。

 

 その久々の顔合わせで、開口一番これである。

 セリフから連想されるシチュエーションと、アサの顔面偏差値が合わさることでなんとなく笑顔になってしまうのは俺だけだろうか?

 

 無理もない。

 前回会った時の身長はアサの胸元ぐらいだったというのに、今や視線の水準がおおよそ同程度と来ている。

 数字にすれば10㎝は下らなく、前回を8歳児とするなら、今の俺は12歳ぐらい。

 

 アサと並んで歩いても、姉弟と感じる人間は劇的に少なくなっただろう。

 

「な、なにそれ……成長期? ってこと?」

「まあそんなところだ。男子3日会わずんば刮目して見よって言うだろ?」

「えぇ……?」

 

 俺の周りをグルグルと巡回して、全身を上から下まで眺めているアサ。

 

「ファッションチェックは止めてくれ。なにせ全身が間に合わせだからな」

「ふーん……これから暑くなるんだから、長袖止めればいいのに」

「肌は余り出したくないんだ。多分俺はそっちの方が似合うし」

「そうかなぁ……どっちでもイケると思う」

「そう言われると悪い気はしないが、信条なんでな」

「あっそ」

 

 へそを曲げた様な言い草だが、生憎とアサはこれが平常運転である。

 ちなみに、本当にイラついていたりする場合はもうちょっと眉が下がり、眉間にしわが寄って声のトーンが下がる。

 

 本当に微妙な変化である為、周囲の人間に『汲み取らせる』能力……訴求力に欠ける。

 要するに、わかりにくいので人好きしない。

 

 俺はまあ汲み取れるし、多分レゼも大丈夫なんだろうが、この事例はある意味でプロばかりだ。キャバクラで饒舌な事を『コミュニケーション能力が高い』とは言わないのと同じ様に、全く参考にならない。 

 

 アサの対人能力が切に心配である。

 大丈夫だろうか。DIO討伐の旅のメンバーが察しが良すぎて、娘とディスコミュニケーション続けまくってる承太郎みたいにならないだろうか。

 

「私、今日行きたいところあるんだけど」

「あぁ、言ってたな。どこ行くんだ?」

「ついて来て」

 

◆◇◆◇

 

 メモ帳とにらめっこしながらアサが案内してくれたのは、なんと喫茶店。

 

 内装を見るに、2部冒頭で吉田とデンジが会話していた所だ。

 いやどんな偶然だ。

 

「喫茶店か……」

「二道のマスターに、ライバルの偵察してきてって言われたの。ほら、軍資金も」

 

 ちょっとしたドヤ顔で……具体的には永遠の悪魔の腹の中で携帯電話を取り出した時と同じ様な表情で……突き出してきた封筒には、わずかに厚みを感じるぐらいには現金が入っていた。

 全て千円札だとして、1万は超えてそうだ。中学生2人のデートには分不相応な金額である。律儀な性格が幸いして、結構信頼されているのかもしれない。

 

 しかし千円札で分割されて『軍資金』といわれると、まるで銀玉の錬金術師みたいな妙な気分だが。

 あれで『射幸心煽ってません』は無理があると思う。

 

「ライバルって……気にする程儲かってるのか? あそこ」

「……モーニングは、まぁ……」

 

 店員のお前の擁護がそれで精一杯なら、もう何も言うまいよ。

 

◆◇◆◇

 

 店員からの『とても可愛らしい物を見た』という視線を浴びながら、案内された席に着く。

 なぜわかるかと言えば、ちょうど似たような視線を俺がデンレゼに向けているからだ。これ以上の説得力はあるまい。

 

 察するに、あの店員にはまだまだ幼い中学生カップルが、少し背伸びして喫茶店デートに来た、という風にでも見えたのだろう。

 結構可愛い女性の店員だったが、それを立ち居振る舞いを偵察するべく凝視していたアサも、まるで年上の女性になびかないように威嚇しているように見えたと思われる。

 

 あの店員の立場になって考えてみれば、なるほど微笑ましさが視線に浮き出るのも致し方あるまいて。

 

「第一印象はどうだ?」

「まず店員の制服が可愛い」

「あー……確か、二道で支給されるのはエプロンだけだったか」

「そう。レゼ先輩ぐらいスタイル良かったらあれだけでも良いと思うけど……」

「こふっ」

 

 イカン、また発作が。

 

 幸いアサは気付かなかったらしいので、適当に誤魔化しておく。

 いいぞ……順調に慣らしが進んでいる……そう思わないとやってられん。

 

「ぶっちゃけ私だと、親のお店手伝ってる感が」

「別にそれでも良いと思うけどな」

「レゼ先輩って高校生らしいけど、私もあと3年であんな風になれるのかなぁ……」

「ふむ。パッと見た感じ、確かに働き者という印象は受けたが」

「……気になる?」

「まあそれなりに」

 

 嘘である。

 

 フェルマーの最終定理に対する数学者と同じぐらいに。

 即ち、ある種の研究者が、己の分野における究極の難題に対するのと同じぐらいに。

 

 物凄く、気になっている。

 

 だがそれを表には出さない。

 日本には思想の自由が存在し、思うだけであれば自由である。裏を返せば、外部へ出力した時点である程度の摩擦を覚悟しなければならないという意味だ。

 

 そうした摩擦を完全に度外視して行動し、周囲は勿論本人にまで害をなすのがマキマの様な厄介オタクな訳だが、腹に抱える情念がそれと同じだったとしても、そのあたりの配慮が出来ているのならまだ大丈夫だ。

 

 つまり俺は厄介オタクじゃないので、分別があるという事だ。

 

「ふーん……気になるんだ……」

 

 訂正しよう、デート中に他の女性の事を持ち出した時点で分別はなかったのかもしれない。

 

「まあ、アサを見る限り悪い人じゃあないんだろうが、やはり職場の悩みは人間関係と相場が決まっているからな。心配にもなるってもんさ」

「どこで知った知識なの」

「私は本で言葉を覚えたんだ」

「また適当言って……」

 

 ちなみに寄生獣が終わったのは1995年。まさに今年である。

 

「レゼ先輩は……綺麗だし、いっつも明るいし、勉強も凄くできるし、力持ちで、頼りになって……本当にすごい!」

「へぇ」

 

 なんか職場の先輩というよりは、もっと純粋に憧れの存在って感じだな。

 感想の部分だけ抽出すれば性別すら分からないあたり、もう男女とか超えた相手なのだろう。

 

 レゼアサで百合の花が生えてもまあ構わんけど、やっぱり間にデンジ君を挟んでおいた方が発展性があって良いと思います。

 百合の間に挟まった時点でデンジ君には何かしらの天罰が下ると思うが、スターター引けば復活するし誤差だよ誤差。

 

「ってか勉強教わってるんだ」

「うん。すっごく分かりやすい!」

 

 流石に超大国ソ連が送り込んできたスパイなだけはある。

 

 如何に日本語が難しい言語とはいえ、日常会話ぐらいであれば会得する事は出来るだろう。

 しかし、中学生レベルであろうと学問に踏み込むと一気に話が変わる。

 例えば「素因数分解」はロシア語で「Разложение простых факторов」となるわけだが、もうこれだけでうんざりする事だろう。勿論その処理自体を知っていなければ教えることは出来ないし、勿論その際の解説は全て日本語で行わなければならない。

 

 レゼが受けてきた訓練の広さと深さを伺わせる話だ。

 ボムの能力も加味すれば、ソ連にとっては『銃の悪魔』以上の秘密兵器と言える。

 

 そんな秘密兵器が犬系彼氏にべた惚れして祖国を裏切るなんて青天の霹靂だっただろうな。

 

「ジョージにも教えてあげる!」

「おお……んむ?」

 

 視界がいきなり暗くなる。

 何事かと周囲を確認すると、原因は外にあった。

 

 驟雨(しゅうう)

 何の脈絡もない、突然の雨をこう呼ぶ。

 

 サムライソードが公安に引き渡され、数日開けての驟雨。

 

 いよいよ、本格的にレゼ編が始まると言う訳だ。

 

 それはつまり、いよいよ本格的にデンレゼを拝むことができるという事を意味する。

 マジ震えてきやがった。色んな意味で。

 

「うわ、雨」

「急に来たな。傘持ってるか?」

「持ってない」

「俺もだ。少し粘らせてもらおうか。急に来たんなら、急に上がるかもしれん」

 

 具体的な数字までは流石に分からないが、恐らくは1時間も要らないだろう。

 まだ注文も通ってない段階だし、迷惑にもなるまい。

 

「アサ、お前今日バイトは?」

「今日は大丈夫。てゆーか、この偵察がバイトみたいなもので、そのお給料も込みなんだって」

「あぁ、妙に高額な軍資金だと思ったら」

 

 やっぱり、あのマスターの資金的な余裕はかなりの物らしい。

 何やってたんだか……元公安デビルハンターで、コーヒーの悪魔の能力でデンレゼの逃亡をアシストした二次創作なら見たことあるが。

 

 しかしながら、考えてみるとなかなか運命的な話である。

 

 これでデンジとレゼは原作通りに、1対1の出会いとなった訳だ。

 アサが二道にいるという特大の乖離をものともせず、まるでこの世界で2人だけみたいな出会い。

 

 可能であれば、俺もマスターと同じく背景の一部の様にその光景を見ていたいところだったが……正直言って、今のコンディションで背景に徹しきれる自信がない。

 あのシーンを壊してしまうぐらいなら、そして巡り巡ってデンレゼさえも壊してしまうぐらいなら、いっそ近付かない方が良い。

 

 もっとも、デンジには俺からの援助を受けてもらう為、レゼ同様にある程度の信頼を確保したいところなのだが……単品であればともかく、セットの状態で果たして恙なく遂行できるかどうか。

 これは綿密なプランニングが必要である。カメラを用立てておくべきかもしれない。

 

 店員にコーヒーとケーキを頼みながら、俺はそんな算段を立てるのだった。

 

◆◇◆◇

 

「……よしっ」

 

 二道の店内で、レゼはエプロンを結びながらそう呟いた。

 

「遅れた分、給料から引いとくからね」

「えぇ、ケチ」

 

 マスターはそんな軽口にも動じず、淡々と仕事を続ける。

 

「4番テーブルにお水ね」

「ケチケチケチケチ……って、あれ?」

 

 ぼやきつつも、水を手に取り、珍しくモーニング以降の時間帯に来た客を見る。

 そこには、先程出会い、そして一度分かれた男の子……デンジが既に座っていた。

 

「早~~ッ! えぇ……? 私より早く来たでしょ?」

「ま、そうだったかも。お礼貰いに来ただけだぜ?」

「ふぅーん?」

 

 どこか誤魔化す様な言い振りに、レゼの口角が上がる。

 プロのスパイであるレゼからすれば容易く看破できる見栄を、そうと知らずに張り続ける姿にはある種の愛嬌があった。勿論、それを見抜けるレゼだからこその感想であったが。

 

 そんなものを見せられては、思わず揺さぶりを掛けて揶揄いたくもなるというもの。

 

「一緒に飲みますか……」

 

 レゼはデンジの隣に座り込み、そして肩でぶつかって少し奥側に詰めてもらう。

 それだけでもデンジは動揺し、その動揺をレゼは敏感に気取る。

 

「ヘイヘイアサちゃん! 私と彼にコーヒーを!」

「アサちゃんは今日いないよ。ジョージ君と偵察」

「何が偵察ですか。モーニングにしか客なんて来ないのに」

「店員なのになんてことを言うんだ」

 

 苦言を呈するも、撤回を求めはしない。

 なぜなら事実だから。

 

「じゃあマスターがコーヒー淹れてください」

「『じゃあ』ってなによ、『じゃあ』って」

「だってもうアサちゃんの方が上手いじゃないですか」

「店員なのになんてことを言うんだ」

 

 苦言を呈するも、撤回を求めはしない。

 なぜなら事実だから。

 

 どこか苦々しい表情でコーヒーを入れたマスターは、4番テーブルにさっさと置いて、元の場所に戻った。

 

「お礼はコーヒーでした! コーヒー好き?」

「飲む」

 

 ぶっきらぼうな物言いが、先程と同じく『誤魔化す』為の物だとレゼには手に取るようにわかった。

 

 どこか微笑ましい物を見る思いでデンジを見ていたが、彼がコーヒーを飲んで『ウゲェ……』と言わんばかりのとんでもない表情になった事で、抑えていた微笑ましさが笑いとなって爆ぜる。

 

「ふっ、あっはははは! なにそれ、絶対強がってる!」

「だぁって、コーヒーって不味くねぇ!? ドブ味だよドブ味!」

「あっはははは! 子供だ子供……」

 

 可笑しさのあまりにデンジの肩を何度も叩く。

 敢えてボディタッチをしたのは訓練によって培われた理性だったが、それほどまでに笑ってしまったのは理性とは違った。

 

 最近では若干鼻につくガキ(ジョージ)が素知らぬ顔で飲んでいたりもするが、それに比べればデンジのなんと素直な事か。

 

 正直な所、アサは男の趣味が悪いと思わんでもなかった。

 

 ひとしきり笑った後、改めて。

 

「私の名前、レゼ。君は?」

「デンジ」

「デンジ、デンジ……デンジ君、かぁ……」

 

 何度か髪を弄りながら、口に馴染む呼び方を模索する。

 結局は最初の『デンジ君』で決まった。

 

「デンジ君みたいな面白い人、初めて」

 

 呼吸量を絞って血色を強め、頬の赤らみを再現。

 首をかしげて強引に相手との高低差を作り、やや上目遣いを意識。

 

「ふ……う~ん」

 

 内心での動揺を強引に押し殺す様なデンジの生返事を聞いて、レゼの理性が『決まった』と確信する。

 

 座学で習った限り、『こう』なった時の男はほぼ恋に落ちている。

 あとは何度か交流して信頼を培えば、いよいよドツボにハマってくれることだろう。

 

 デンジは女性慣れしていないらしい。

 どの好感度稼ぎのテクニックを使っても、あまりに完璧な反応を返してくれる。

 

 レゼとしてもなんだか楽しい。

 

 そうだ。これはラッキーじゃないか。

 デンジを教材にしよう。こんなに『正誤』が分かりやすい男なんてそうそういない。これからの任務の事も考えれば、ハニートラップの技術はもっと磨いておくべきだ。自分は顔こそそれなりだが、若干……断じて、”若干”発育が乏しくハニートラップに向いていないのだから。

 

 この分かりやすい男を使って実践経験を積もう。

 レゼは、内心でそんな算段を立てた。

 

 ところで、レゼには1つ、気になることがあった。

 

 赤面する技術を使った時の顔は、こんなに熱い物だっただろうか?

 

 




アキ君についてこれ以上掘り下げる気は今の所ないですが、原作で言う所の「最悪の死に方」はしないよ~って事です。眼帯は姫パイのを継承します。
まあこれも1つのアガリってことで。

ハニトラの実戦経験を積む必要があるという事は、ハニトラの実戦経験が無いという事です(処女厨)
ソ連の教官にはロリコンが居なかったのでそっちも大丈夫です(処女厨)
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