キンイロリョテイは気性難   作:白老好太郎

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前回あらすじ
メイクデビューを終えた、キンイロリョテイとオースミサンデー。
その後、栗東寮の同室となった二人は、次のレースに向けてそれぞれの準備を進めていた。
一方、ランニングゲイルは、朝日杯勝者マイネルマックスの様子が気がかりになっていた。

既存登場人物の簡易解説
[97年クラシック世代]
キンイロリョテイ:1戦0勝(新バ戦3位)。レースにイマイチ本気になれない新人ウマ娘。
オースミサンデー:1戦0勝(新バ戦7位)。リョテイの同室で、同じレースでデビューしたウマ娘。
         母親の格言の影響で体重第一主義。
ランニングゲイル:8戦2勝。気さくで人当たりが良いウマ娘。
         出走したレース数は同期トップレベルだが、イマイチ勝ち切れない。
マイネルマックス:5戦4勝(朝日杯勝者)。デビューから5カ月でG1を制した天才ウマ娘。
         実力は一流だが、どこか気が抜けていて浮世離れした雰囲気を持つ。
         ランニングゲイル曰く、不思議ちゃん。
[トレーナー陣]
山中トレーナー:オースミサンデーの担当トレーナー。真面目だかイマイチインパクトがない。


M1-4「レースの功罪」

◆沼川 与根 1996年12月6日

確か、牛乳が残っていたはずだから、アールグレイにしよう。

キンイロリョテイに、練習をすっぽかされた(今週3度目)私は、

優雅なティータイムの準備を始めた。

ありがとう、キンイロリョテイ。

怠惰な教え子のお陰様で、数少ない余暇が生まれた。

午後は、明日のレースに向けてローゼンカバリーの見送りか。

また、阪神競バ場か。遠いんだよなぁ。

リョテイはどうしようか。

レースで真面目に走れないのと、サボり癖はあるが、十分な素質はある。

あの小柄にもかかわらずだ。

まぁ、その短所が世間一般で致命的なんだが。

 

レースは勉強とは違う。

もし、80点のウマ娘が居たとして、短所の20点分を補った時、

テストなら100点満点で合格だろう。だが、レースは違う。

レースで100点取っても、才能の120点に勝てない。

個々の足の速さに上限はあったとしても、足の速さに満点などは存在しない。

トレーナーとはウマの短所や長所、もしくは全く新しいスキルを、

限られた期間でうまくトレードしながら、1着を狙わなければならない。

「だけど、アイツよくわからないんだよなぁ」

ああみえて、最初の時はもっと真面目そうだったのになぁ。

 

黄土色の茶缶を探していると、来訪者が現れた。

「沼川、キンイロリョテイを1日ほど借りていいかい。

うちのオースミサンデーと合同でゲート訓練をしたい」

声をかけてきたのは山中トレーナー。

これがとにかく平凡で、あまり面白味のない男だ。

もし彼が塾講師なら、生徒の苦手科目をとことん教えて平均点の底上げを図るだろう。

それが悪いことではないが。

「狙いは?」

「狙いもなにもゲート訓練だよ。スタートダッシュの改善以外ないよ」

「そんなの普通一人で出来るだろ。

もし合同でやるにしても、同じ教え子のランフォザドリームでやれば良い。

わざわざ、リョテイを指名した狙いを聞いてるの」

「それは、その……」

苦笑いをしながら首に手を当てている。

山中とは同期で付き合いは長い。

反応をみるに、思い付きで提案したわけではなさそうだ。

「もったいぶらずに、さっさと言いな」

「あくまで推測なんだが、オースミがメイクデビューで出応れた原因が

キンイロリョテイにありそうなんだ」

 

山中から一通り事情は聴いた。

どうやら、リョテイが前回のメイクデビューで不要な発言をして、

驚いたオースミサンデーが出遅れたらしい。

爆笑した。

「スタートダッシュの直前に『さっさと帰りてぇ』って。

アイツ、言いそー」

「沼川、その態度はどうなんだ。

読み取り方に寄っては、教え子に出遅れの原因を押し付けられてるんだぞ。

そうでなくとも、キンイロリョテイのやる気の無さは、少しは危機感を抱いた方が良い」

「そうだね。ご忠告ありがとう」

彼の言うことは間違ってない。ただ、私には私のやり方がある。

「分かった、キンイロリョテイをその練習に参加させよう。

ただし、3つ条件がある。

その前に紅茶でもどうだ。今淹れるところなんだが」

彼は少し機嫌そうな顔をしつつ言った。

「頂こう」

 

◆キンイロリョテイ 1996年12月8日

なんだろう。この感覚は。

久しく感じてなかったような。

人の温もりを感じ……ないな。

「さむっ」

「あ、起きました?リョテイちゃん」

同室のオースミサンデーが笑顔を向けてくる。

顔が近い。寒い。窮屈。なんだこれ。

「おい、なんでお前が俺をお姫様抱っこしてるんだ」

「起きなかったので、つい」

「つい抱っこするんじゃねぇー。速くおろせ」

「ちょっと、暴れないでください。今、靴置くんで」

「よく見たら屋外じゃねーか」

 

なんとか、新入りが置いた靴を履き周りを見る。

どうやら、トレセン内の歩道だった。

日曜のせいか人は一人も見えない。

あの醜態を誰かに見られたりはしなかったようだ、良かった。

というか、今日、日曜かよ。

「おい、新入り。拉致は犯罪だぞ」

「オーちゃんです。同室なんですし、もう覚えてください。

あと、拉致じゃないです。訳あっての誘拐です」

「誘拐も犯罪だろうが。また、しょうもない言い換えするな。

目的はなんだ」

「よくぞ、聞いてくれました」

新入りの目が輝き始める。

寝起きの、しかも日曜日の朝にはカロリーが高い。

「来るべき、メイクデビューに向けて、ライバルとの特訓です」

「メイクデビューって、俺らデビューもうしただろ。

次走同じレースなのは聞いたけど」 

「折り返しです。メイクデビューは勝てなかったら、

もう1回までなら出れるんですよ。トレーナーから聞いてません?」

「記憶にはないな。で特訓って初耳なんだけど」

「そうでしたか、沼川トレーナーは了承済みですよ」

あの狸め。

「さ、行きましょ。私の担当トレーナーも待ってるので」

 

危うく、再度お姫様抱っこで運ばれるのを回避するため、

渋々、芝の直線コースまでやってきた。

事情は新入りの担当、山中トレーナーから聞いた。

「事情は分かったんだけど、うちの沼川が出した条件って何?」

(リョテイちゃん、初対面の大人にもため口なんだね)

新入りの小言が聞こえたが無視する。こっちは付き合わされるんだ。

「えっと、沼川トレーナーの条件は3つ。

①キンイロリョテイ参加はオースミサンデー側で強制させること。

沼川トレーナーが捕まらないって嘆いてたよ。

②練習風景は録画すること。

これは沼川トレーナーが見返す用だね。

③キンイロリョテイは『オースミサンデーが出遅れる事だけ』を目的として練習に参加すること。

目的が達成されていれば、今週の練習サボりは不問とする。

だって。この③だけは意味不明なんだけど、やってくれるかい」

確かに意味不明だが、意図を汲み取るのを放置すれば面白そうだ。

沼川 与根。俺のトレーナーの時点でまともとは言えないが、今回ばかりは変化球過ぎる。

半年前はもっと堅実な奴かと思ったが。あの狸はよくわからん。

「いいよ。面白そうだし。

スタートダッシュだけで、たいして走らないんでしょ」

「そうだけど、参加する君の成長が度外視されている」

「いいよサボりがチャラになるなら」

山中トレーナーは少し不服そうだった。お人好しだな。

 

◆山中 好太郎 同日

「はい、終了。二人ともお疲れ」

2時間程経って、練習の終了を告げた。

所詮スタートダッシュだ、わざわざ丸一日やるような内容もない。

「あんなもんで良かったの?」

キンイロリョテイが飄々と言う。

「あぁ、想像以上と言うか、想定外と言うか」

一方のオースミサンデーを見ると、息も絶え絶えだ。

きっと本番想定で、全力を出してくれたのだろう。

 

キンイロリョテイの行動はキテレツだった。

 

開いてもいないゲートをこじ開けて出る。

ゲート内から隣のオースミサンデーの足を触る。

ゲート内で逆立ちをする。

ケガしたふりをして倒れこむ。

ゲートの下をくぐって出る。

ゲートを思いっきり揺らす。

そして、次何かしてくると構えていると何もしない。

 

そう言った心理的な揺さぶりもありつつ、オーちゃんは出遅れを繰り返した。

もちろん、実際にレースでこんなことをすれば、ペナルティで降着。ゲート再審査も免れない。

だが、提示されたオーちゃんを出遅れさせると言う目的は、確実に果たしていた。

沼川との会話を思い出す。

「前走でのオースミサンデーの出遅れは偶然だろうね。

リョテイは意図的にそんな事をやる中途半端なバカじゃない。

ああいう発言を素でしちゃうのがリョテイの狂ってるところ。

彼女が本気だったら、あんなちゃちな事はしない」

確かに、彼の言うことは正しかったかもしれない。

 

「今日はありがとう。

練習内容はちゃんと沼川トレーナーに共有するよ。

オーちゃんもお疲れ。

片付けこちらで済ますから二人は寮に戻って良いよ」

そう言って二人とは別れた。

 

 

◆ランニングゲイル 1996年12月12日

ジョギングがてら校内を散策していると、一人ベンチに座っていたマイネルマックスを見つけた。

「よう、マックス、元気か」

「え、いや、全然」

振り返った彼女の顔は、活力がなかった。

顔色を見るに体調不良ではなさそうだ。

あれ、ならいつも通りか?

少なくとも朝日杯で話した時よりは、ボーっとしている。

マックスとはあれ以来、話す機会がなかった。

「何してたんだ」

場所は陸上競技用の小さなトラック。

芝でもダートでもないここで、敢えて練習する物好きも居るわけでもない。

周りが人が全くおらず、僅かに聞こえるのは、近くの販路コースからの足音だけだった。

「んー、ボーっとして、トラックを見て、考えてた」

「結構疲れてそうだな」

「かなり」

「やっぱり朝日杯の影響?」

そう聞くと、あからさまに顔色が悪くなった。

「うん」

「やっぱ、G1獲ると取材の対応とか大変だろうな」

マックスのコーチは、今回初めてのG1制覇。

しかも、そのコーチは朝日杯の翌日に結婚式を控えていたので、メディアでも大々的に報じられた。

「なんか、他の娘からの対応も変。

知らない娘から、サイン求められたり、ジムで順番譲られたり、

自主練の時にダメ出し食らったり」

「フフッ、ダメ出しって誰から。

そいつはG1獲ってんの」

「知らない。多分先輩だけど、成績までは分からない。

だから、生徒が多いところはちょっと苦手」

「だから、ここに居たのか」

「トレーナーのアイディア。

ここ、陸上転向の時くらいしか使われないんだって」

「あー、トレーナーには相談出来てるんだ」

「うん、3月までは休めって」

担当トレーナーとも相談出来てるなら一安心だ。

「重賞3つに、うち1つはG1。花丸満点だろ。

ゆっくり休めよ」

「休むのは良いけど。休んでどうしようって」

「そうか、マックスは念願の朝日杯を制覇しちゃったのか」

「そっちの方が今、一番の問題」

マックスはずっと朝日杯に注力して、その栄誉を勝ち取った。

大事な目標を達成して、燃え尽きてしまっているのかも知れない。

「どうせならクラシック制覇とか」

「勝てないよ」

軽い提案のつもりが食い気味に否定されてしまった。

「え」

「もう、勝てないんだよ。レースには。私には分かるの、『流れ』が」

「調子の良し悪しってこと」

「ちがう」

即答された。悲しい。

「私が負けたメイクデビューは私の中で一番仕上がってた。

でも勝てなかった。足が言うことを聞かなかった。

逆に京成杯の時とかは、調子落としてたのに勝てた。

足も軽くて、地面も吸い付くみたいだった。

あるんだよ、調子やバ場よりも、もっと絶対的で逆らえない流れが」

「流れ?風水とか運気とかそうゆう話?」

「そういわれると、ちょっと悲しい」

「ごめん」

「まぁ、でも、そうゆう話だと思ってもらっていい。

朝日杯の日は、流れに勝たされた。

でも、理解した。

ゴール板を先頭で駆け抜けた時に『あぁ、これが最後なんだ』って」 

「最後って」

「レースに勝てるのが多分最後。

今後もう……レースには勝てない。

だから、クラシック路線なんて意味ない。

G1はおろか、オープン戦も勝てない」

マックスがヒートアップするのが分かった。

「もし、マイネルマックスの人生が映画なら、あの朝日杯のゴールがラストシーン。

物語は終わってエンドロールが流れて、観客は帰っていく。

この後、どんなに努力しても、どんなに挫折しても、どんなに酷い怪我をしても。

これから先の私の人生は、物語にならない」

あの顔だ。マックスは朝日杯のゴール後と同じ顔をしていた。

そして、その目には涙が溢れていた。

「ランニングゲイル。

この先もし一勝もできないとして、貴方ならどうする?」

少し黙った。

そんなのオカルトだと切り捨てるのは簡単だ。

でも、それを言ったら彼女はきっと傷つくと思った。

1年目でメイクデビューとオープン戦勝って、それ以降未勝利か。

情けないし、気に入らないけど、全然あり得る範疇だ。

実際、そんな成績でやめてく娘もごまんと居るだろう。

マックスのようにG1を獲ってるウマ娘なんて一握りだ。

でも、それでも。

「走り続けるんだろうな。負けるって分かってても。

走るの好きだし。嫌いになるまでは走るかな」

「努力は報われないし、誰も見てないんだよ」

「父さんがよく言ってたんだ、『負け戦ほどうまくやれ』って。

生きてたら、絶対に勝てない戦いをしなきゃならない時がある。

そうゆう負け戦で、大人のふりして早々に白旗上げるのは簡単なんだ。

だけど、結果が分かってても、事前にちゃんと準備して、

策や力を尽くして、どんなに状況が悪くなっても、

最後の最後まで悪あがきをして、勝利を諦めない姿勢が重要なんだって」

「その悪あがきの先に、なにがあるの」

「もちろん、負ける。コテンパンに」

「え」

「でも、なんかいい事が起こるらしいよ。人生で」

「凄いフワッとしてるね」

「ねー、私もそう思う。

報われないかもしれない、

誰も見てないかもしれない、

何の意味も無いかもしれない、

それを分かってて努力をするのは、とっても辛いのに。

でも、信じたい。

どんな絶望的な環境でも、平然とした顔で勝利を狙えるんだ。

そんなカッコいい人の人生が不幸な訳ないじゃん」

マックスは俯いてしまった。彼女の表情は伺い知れない。

「それにさ、例え勝てなくても、私はマックスと走りたいけどな。

一着に成れなくても、誰かに先着することはできるだろ」

彼女はこちらを向いた。

目は涙のせいか赤くなっていて、でもしっかりとこちらを見つめていた。

「約束だから、皐月賞出てね」

「分かった。約束ね」

「私、悪あがきしてみる」

次走負けてから言え、っと言うのを必死でこらえた。

 

◆オースミサンデー 1996年12月15日

今日はなんとライバルの1人、リョテイちゃんとスプリンターズステークスを見ています。

「にしても今日は無抵抗で来てくれましたね」

「一緒にテレビ見るだけだろ。それに無抵抗って言い方するな犯罪者か」

リョテイちゃんはツンツンしてますが、結構譲歩してくれるタイプのようです。

「やっぱり、今回のスプリンターズステークスの注目はヒシアケボノさんですかね?」

「ちげぇよ、それはお前の推しだろ」

「そうです。なんせ」

「体重だろ」

「流石です。リョテイちゃんの推しは誰ですか」

「推しとか居ねぇよ。ただ、嫌な予感がするだけで」

 

レース結果はフラワーパークが、ハナ1cmの僅差でエイシンワシントンを下し勝利。

推しのヒシアケボノさんはスタートで出遅れながらも4着と大健闘でした。

接戦のレースを前に呆気にとられていると、リョテイちゃんが呟きます。

「なぁ、5番の競争中止ってなんだ」

着順を示すテレビ画面には、

最下位の5番ニホンピロスタディが競争中止と表示されていました。

 

彼女が予後不良になったと知ったのは、翌日になってからでした。

 

◆名もなき男 同日

祈っている。自分の出番が無いことを祈っている。

祈る対象は、神か仏か三女神か。太陽や競バ場のターフでも良い。

何でもいい。何でもいいんだ。

私の出番さえなければ。この電話が鳴らなければ。

 

中山競バ場の一室。

関係者以外、立ち入り厳禁のエリアにある『見取り図上は仮眠室Ⅱ』となっている部屋に私は居る。

照明はつけておらず、テレビの明かりだけが部屋を照らしている。

「ザー、ザーー」

テレビから流れているのは砂嵐のみ。この時の為にVHSに録画したものだった。

初めのころは民放も流していたが、仕事との落差が激しくやめた。

今はただ、砂嵐を聞いて、ため息をつき、祈る。

今日も一日退屈でありますように。

 

ブラックドクター。

競走中に故障したウマ娘が、現場の緊急対応医療チームで、

『故障が著しく重症で、生命維持すら危ぶまれ、苦痛が甚しい』状況

(言わば予後不良)と判断した際に、医療チームに代わり、投薬による安楽死を行う医者。

レースの死神。競バ場の嫌われ者。それが私の仕事。

まるで強盗のような顔全体を覆う黒いマスクを着けていることから、その名前が広まった。

悪名高いマスクは個人特定によるファンからの報復を免れる為に、作られた。

まぁ、マスクをつけていても観客から小石を投げつけられる事は珍しくない。

小石程度なら我慢できる。

本当に辛かったのは、ライスシャワーのぬいぐるみを投げつけられた時だ。

あの時は、見えないふりをしていたウマ娘とファンの繋がりを、

見せつけられて辛かった。

マスクの下に涙を流しながら、それでも、やった。

もうサンエイサンキューのような事は起してはいけない。

 

電話が鳴った。急いで受話器を取る。

息が詰まる。

ツーツーツー。電話をかけてきた相手は居なかった。

「また、幻聴か」

 

また、薄暗い部屋で考える。

何を間違えたのだろう。

人を救いたくて医者になった。

学生の青春を売り払って、死に物狂いで医学部に入った。

誰が好きで、思春期の女の子を殺せるだろうか。

昔読んだ、ジキルとハイドを思い出す。

『善い人は善い行いだけをして悦に浸り、

悪い人は悪い行いだけをして悦に浸れれば、世界はもっとシンプルなのに』

確かそんなセリフがあったはずだ。

この仕事をしていると、ウマ娘を殺しても何も感じない人間が、

天性の才能と言えるだろう。

だが、そんな感性の人は居ない。断言できる。

なぜならそんな奴が医者にはなれないからだ。

人が死んでも気にしない奴が、人を治す術を本気で学べる訳がない。

いっそ、その人格を作ればいいのか?

 

いや、疲れてるな。

 

ブラックドクターの現役期間は短い。

大体はメンタルをやられてやめる。

通常の医者でも助けられない命は珍しくないが、

ブラックドクターのように人の命を直接奪うのとでは、

メンタルの負担のかかり方が違う。

また、通常の医師は科学の進歩、自分の手術の上達に希望を託すことはできる。

だが、ブラックドクターは違う。

何かの要因で予後不良のウマ娘を減らすのは医療チームの管轄で、

ブラックドクターに声がかかるのが減るだけだ。

 

ブラックドクターに成長はない。

ブラックドクターは感謝されない。

ブラックドクターはただ壊れるまで役割を果たすだけ。

 

そんな仕事を続けている自分に驚愕だが、一つだけ願いがあった。

一人でもこの苦痛を味わう人が減るように、

あわよくば、私達世代が最後のブラックドクターである為に、仕事を続けている。

 

 

電話が鳴った。急いで受話器を取る。

息が詰まる。

「サイトウさん、至急医療室まで来てください。急患です」

「分かった。すぐ行く」

机に置いていたマスクを着て、急いで部屋を出た。

 

 

ライスシャワーでも誰でもいい。誰か私を呪い殺してくれ。

それでこの苦悩が収まるなら。

 

 

何が、神だ仏だ、三女神だ。

この世界が大嫌いだ。

 

 

 

◆キンイロリョテイのヒミツ

寝る時も、走るときもジャージ。

だけど、流石に寝起きの服では、走りたくなかった。

 

◆オースミサンデーのヒミツ

虫が苦手で、蚊も殺せない。蚊取り線香の匂いは好き。

 

◆ランニングゲイルのヒミツ

父親は将棋のプロ棋士。だが本人は将棋のルールすら分からない。

 

◆×××のヒミツ

ステイゴールドとローゼンカバリーの繋がり

実はこの二頭の共通点は多い。

同じ白老ファームで生まれ、同じ馬主の社台レースホースの競走馬であった。

ローゼンカバリーが1年年上と、年代も近く、同じレースに出たりもしている。

実はローゼンカバリーは勝ちきれない部分が多く、

ステイゴールド程ではないがブロンズコレクター気質がある。

二頭の共通点を調べるのも面白いかもしれない。

ただ、調教師が異なる点はご注意を。

もちろん、ステイゴールドと本作のキンイロリョテイは別ウマ娘である。

 

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