カードが人を選ぶのだ 作:亜零
カードには神秘的な力が存在する。そのためアルカナと呼ばれるカードゲームを制す者はすなわちこの世界において絶大なる力を保有することに繋がる。それほどまでにこの世界はカードの力が大きく関わっている。
「俺はこのデッキで勝ち抜いてやる」
薄汚れた空気に薄汚れた建物と薄汚れた服装である目的地に目掛けて歩く少年の名はライアート。ここはレフュースタウンと呼ばれ、都会などのあらゆる場所から弾かれたゴミが一か所に集う場所。大抵が身寄りがない者や金のない者、或いは悪事に手を染めている者など、ゴミとはいえ様々な種類が存在する。
「勝って勝って……このレフュースタウンから抜け出すんだ」
ライアートはここレフュースタウンで生まれた。幼少期の頃から地区を牛耳るヤクザに安い仕事で働く毎日。仕事内容は主にこの世界で生成されるカードの元となる光のオーブを回収することだ。
光のオーブとは道端など様々な場所に突如現れて、手のひらサイズの塊で淡く光ることから光のオーブと言われるようになった。その光のオーブを手にすると、光を放ちながら一枚のカードになるのだ。何故そのような現象が起きるかは未だに解明されていない。
「着いた……落ち着け俺……大丈夫だ……きっと力を貸してくれる!!」
辿り着いた場所は、ライアートが住んでいる地区を牛耳っているヤクザの本拠地。デッキケースを握りしめて、ライアートはドアを開けて中に入る。
「誰かと思えばライアートか……一体何しにここに来たんだ?」
「ボスとデュエルしに来た」
中に居たのは丸刈りのヤクザの男であり、名はエモルという。ライアートのような身寄りのない子供たちの管理を任されている。
「ボスとデュエルだと? くだらねぇ冗談言っている暇があったら……」
「デッキならここにある!!」
エモルの言葉を遮るようにライアートは、デッキケースを見せつける。それを見たエモルは驚きつつも、ニヤリと笑う。
「まさかデッキに加えて希少価値のあるコアデッキケースまで持っているとはな……おいライアート今から俺とデュエルしろ!! お前が勝てばボスの現在地を教えてやる……ただし、俺が勝ったらその二つを頂くぞ!!」
コアデッキケースとは、通常のデッキケースとは違い、中央に煌びやかに輝く鉱石が埋め込まれている。何故希少性が高いかと言うと、そのデッキケースを使ってデュエルすると、カードが実体化することができるのだ。
特殊な鉱石とカードの最もカード全ての力を引き出すことはできないが、どうやらその鉱石とカードの力が共鳴することで実体化するのではないかと言われている。
「いいだろう……そのデュエル受けて立ってやる」
「俺とデュエルを受けたことを後悔させてやるよライアート!!」
「「デュエル」」
ゲーム開始時、お互いは40枚のデッキの上からカードを5枚引き、☆2が与えられる。☆とはカードを使用するためのコストであり、これ以上のカードは使用することは出来ない。☆はターンが進むにつれて増えていき、最大が10である。
そしてゲーム開始時、ランダムで先攻後攻が決まり、今回はエモルが先攻、ライアートが後攻となった。
「先攻は俺だ……手札から☆2を支払い、騎士アローンを召喚」
騎士アローン
☆2/ナイト/ATK2000/HP1000/SKP1
「ターンエンドだ」
モンスターカードに表記されているヒューマンはモンスターの種族を表しており、ATKは攻撃力を表している。次にHPとは生命力を表していて、SKPとはプレイヤーに与える打撃力を表している。そしてモンスターは召喚したターンは行動を取れないことを召喚酔いという。そして先攻は攻撃ができないためエモルはターンを終わらせた。
ライアート LP10 手札5枚
場 なし
エモル LP10 手札4枚 ◆
場 騎士アローン
LPとはライフポイントであり、10という数字が0になった時、そのプレイヤーは敗北となる。ライアートのターンとなり、後攻はまずデッキからカードを一枚引いてから始まる。
「俺のターン……手札から☆2を支払い、同志を持つ骸骨を召喚」
同志を持つ骸骨
☆2/ゾンビ/ATK1000/HP1000/SKP1
デッキから同志を持つ骸骨を一枚召喚することができる。
「俺はこれでターンエンド」
ライアート LP10 手札5枚 ◆
場 同志を持つ骸骨
エモル LP10 手札4枚
場 騎士アローン
「ははっ!! どうやらお前のデッキには1枚しかないみたいだな!!」
2ターン目になると、先攻であったエモルもデッキから一枚引き、☆が1つ追加される。本来であれば同志を持つ骸骨をデッキから出した方が得なのだが、それをしなかったライアートの動きに、エモルはデッキに1枚しか存在しないと判断した。
「俺のターン!! 手札から☆3を支払い、疾風一閃を発動!! これでお前のモンスターは破壊だ」
疾風一閃
☆3を支払って発動する。相手の場のモンスター1体を選択して3000のダメージを与える。
今エモルが発動したカードはマジックカードという種類でモンスターと違い場に残らず墓地に置かれるカードだ。
疾風一閃の効果によって選択された同志を持つ骸骨はHPは1000。それに対して3000ダメージを与えた。モンスターのHPが0になると、破壊されて墓地に送られる。
「そして騎士アローンで相手プレイヤーに攻撃」
「くっ!!」
騎士アローンのSKPは1。つまり攻撃されたライアートのLPは10から9に減ってしまう。
そして攻撃を受けたライアートの身体に衝撃が襲う。これはカードを実体化させたことで、衝撃が襲いかかるようになっているのだ。命に支障がないよう制御されている。
「これでターンエンドだ」
ライアート LP9 手札5枚
場 なし
エモル LP10 手札4枚 ◆
場 騎士アローン
「俺のターン!! 手札から☆3を支払い、突撃者の権兵衛を召喚する」
突撃者の権兵衛
☆3/ヒューマン/ATK4000/HP1000/SKP2
これは【襲撃】を持つ。相手プレイヤーに攻撃できない。
「襲撃は場に出たターンに相手モンスターを攻撃できる。騎士アローンに攻撃せよ!!」
「迎え撃て騎士アローン!!」
モンスター同士の戦闘の場合、お互いATK分HPが削られるルールとなっている。突撃者の権兵衛のATKは4000で騎士アローンのHPは1000なので破壊できる。しかし、攻撃された側のモンスターも反撃するので、騎士アローンのATKは2000で突撃者の権兵衛のHPは1000なので破壊できる。
こういう場合はお互いのモンスターが相打ちとなって破壊されて墓地に送られるのだ。
「俺はこれでターンエンド」
ライアート LP9 手札5枚 ◆
場 なし
エモル LP10 手札4枚
場 なし
「俺のターン!! 手札から☆4を支払い、勇敢なる者を召喚」
勇敢なる者
☆4/ヒューマン/ATK4000/HP3000/SKP2
召喚に成功した時、手札に臆病な者があればコスト無しで召喚できる。臆病な者が召喚された場合、相手の場にモンスターがいなければ【速攻】を持つ。
「勇敢な者の効果発動!! 俺は手札から臆病たる者を召喚する」
臆病たる者
☆4/ヒューマン/ATK1000/HP4000/SKP1
勇敢なる者の効果で召喚された時に効果を付与する。このカードは【防御】を持つ。
「速攻を持つモンスターは場に出たターンでも相手モンスター、プレイヤーに攻撃できる。勇敢なる者でプレイヤーに攻撃」
「くっ……」
ライアート LP9→LP7
「これでターンエンドだ」
ライアート LP7 手札5枚
場 なし
エモル LP10 手札 3枚 ◆
場 勇敢なる者 臆病たる者
「俺のターン……」
「その手札じゃこの盤面を覆せないか……それなら素直に降参してもいいんだぜ?」
「ふふっ……降参するだって……見当違いもいいところだぜ」
手札を見つめるライアートに、エモルは盤面を覆す手はないと考えて降参を勧めるが、不敵な笑みを浮かべるライアート。
「俺は手札から屑鉄のロボットの効果を発動する!! 効果によって☆4を支払い召喚する」
屑鉄のロボット
☆6/機械/ATK4000/HP6000/SKP2
自分のLPが2以上差があり、かつ相手の場に2枚以上ある場合効果を発動する。これを☆4で召喚可能となり【襲撃】を持つ。
「屑鉄のロボットで勇敢なる者を攻撃せよ!!」
「そうはさせん!! 臆病たる者でその攻撃を防御する。」
攻撃対象の前に現れたのは臆病たる者。肝心の勇敢なる者に攻撃することはできなかった。
「防御を持つモンスター自分の場のモンスター、プレイヤーの代わりに身を挺して守ってくれる。残念だったなライアート」
「残念だったか……それはこっちのセリフだぜ? 俺は手札から追撃のハツカネズミの効果発動!!」
追撃のハツカネズミ
☆3/獣/ATK3000/HP/1000/SKP1
自分の場のモンスターの攻撃が防御された時、手札を一枚墓地に送ることで、0コストで召喚することができる。この効果で召喚した場合【襲撃】を持つ。
「追撃のハツカネズミで勇敢なる者に攻撃して、ターンエンドだ」
ライアート LP7 手札3枚 ◆
場 屑鉄のロボット(HP5000)
エモル LP10 手札3枚
場 なし
(みんなに託されたこのカード達で俺は勝つ!!)
並々ならぬ覚悟を持つライアート。それは過酷な環境で生まれた少年らが、このレフュースタウンから抜け出すために、長年の時間をかけて集めたカード達が、ライアートを強くしているのだ。