カードが人を選ぶのだ 作:亜零
フレヤに勝ってから数時間が経過した。あの勝負の後、強さを認めたフレヤは、ライアートを客室まで案内させてその場を後にした。なんでも仕事が残っているとのことだが、一体フレヤが何の仕事をしているのかはライアートにはわからなかった。
「はぁ……なんとか大会には出場できるようにはなったけど、俺の力が通用するのかな……?」
まだアルカナを始めて数時間しかないライアートは、こんな自分の実力が大会で通用するのか不安になっていた。ベットの上で仰向けで天井を見つめていると、だんだんと眠気が襲ってくる。
「眠くなってきたな……」
極度の緊張状態から解き放たれたライアートだが、その分身体に大きな疲労が蓄積していた。夢の世界に入りつつあったが、ドアのノック音が聞こえて、現実に戻される。
「入るわよ」
ドアを開けたのはフレヤであり、アルカナで挑まれた時を思い出したライアートは、咄嗟に身体に力が入る。
「そんなに緊張しないでよ……貴方の力は私が認めたし、変なことをしない限り、貴方を追い出そうとはしないわ」
ドアを背もたれにして話すフレヤは、少々威圧的に感じるが、アルカナで勝負を挑まれた時と比べると、僅かだが雰囲気が和らいでいるようにライアートは感じた。
「なぁ……お前はここでどれくらい強いんだ?」
フレヤの強さは実際に戦ったライアートがよくわかっていた。あの時一撃必殺ガロウを引いていなければ、負けていたのは自分であったと自覚していた。力が拮抗していたからこそ、フレヤの強さがこのアブソート内でどこまで強いのかが気になっていた。
「お前って言わないで……私にはフレヤっていう名前があるから」
「悪かったよ、次から気をつける」
名前を呼ばなかったことて、ムスッとした表情を浮かべたフレヤにライアートはすぐに謝る。その行動が良かったのか、フレヤはライアートの問いに答える。
「そうね、上澄みではあると思うけど、デッキの相性とかもあるから一概には言えないけど、このアブソート内で一番強いのはボスであることは変わらないわ」
「フレヤよりも強いのか?」
当然と言わんばかりに頷くフレヤに、本来の目的であるボスを倒すことが叶わないどころか、実質ボスの配下となったライアートは、いかに自分の実力が足りていなかったのを痛感した。
「まぁ、ボスの強さは頭ひとつ抜けてるから、そんなに悔しそうにしなくても大丈夫よ……貴方はこのアブソート内でも上澄みにいることは間違いないから、安心して大会に臨むことね」
「えっ……」
そう言ってドアを開けて部屋を後にしたフレヤ。何故大会のことが話題になったか疑問に思っていたが、ライアートは自分が監視対象で、この客室も隠しカメラなどで情報が筒抜けになっているのだろうとライアートは考えていたが。
「あれ? じゃあフレヤは何でここに来たんだ?」
まさか自分を励ますだけに来たのかと、一瞬頭によぎったライアートだが、流石に違うかと思い、強烈な眠気に襲われて夢の世界に入っていくのであった。
★★★★★
あれから一週間経過した。その間にライアートはアブソート内にいる者とアルカナで対決して、実戦経験を積みながら、また新たにデッキ調整もして迎えた大会当日。
「遂に大会当日か……」
ギリギリまでデッキの調整を考えていたライアートは、ナイトを主力として組むことに決めた。今回も負けられない戦いのため、デッキのバランスを考え、偏らないように安定を重視とした内容になった。
「…………」
今回のデッキの内容について、満足がいくかと言われれば微妙なところであった。直感を信じてデッキを組んだこともあるが、どれもキーカードを引けなけれはきつい状況になるだろうと考えた。
「これで行くか!!」
客室を出たライアートは、集合場所に向かうとそこにはフレヤが壁に背をもたれて、ライアートを待つフレヤの姿がいた。
「ごめん待たせたか!?」
「いや、私もさっき来たところだから」
この一週間で何度もアルカナで戦ったこともあり、少しずつだがフレヤと打ち解けていたライアートは、両手を合わせてフレヤに謝るが、特に気にしていないようだ。
「…………」
「…………」
しかし、大会まで数時間前ということもあり、緊張しているライアートは声をかけることができずにいた。その沈黙を破ったのはフレヤだった。
「デッキ調整上手くいった?」
「あぁ、時間かかったけど、上手く組めたぜ」
実際は悩みに悩んで組んだデッキだが、それを口にすれば余計な不安を伝えてしまうのではないかと考え、笑いながら上手く組めたと答えるライアート。
「そう……それじゃあ行きましょうか」
フレヤと共に大会に向かうため外に出た二人は、眩しい朝日を浴びながら会話をする。
「俺たち徒歩で向かうんだな」
「徒歩以外にどうやって向かうのよ……まさか馬車とか用意してもらえるなんて思ってたの? あれはあくまでもボスが使うんであって、私たちは徒歩しかないよ」
このレフュースタウンの移動手段は主に二つだ。一つ目は徒歩であり、二つ目は馬車であるが、こんな治安の悪い場所で馬を飼うのは難しく、また使うとしたらボス専用になるので、フレヤ達が馬車を使うことなど滅多にないのだ。
「そうだよな……今回の大会で優勝できなかったら、俺と俺の仲間はどうなるんだろうな」
今は安全な環境ではあるが、大会で優勝できなければ自分はもちろん仲間の身に危険が及ぶ。自分を信じてカードを託してくれた仲間たちに申し訳ないと思っていた。
「アンタが優勝できるかなんて私にはわからないわ……だけどそうね一つ言えることはあるわ」
フレヤは足を止めた。急に立ち止まったフレヤに少し驚きつつも、一緒に足を止める。言葉を切って一呼吸整えたフレヤはライアートに告げる。
「今のアンタじゃ優勝なんて夢のまた夢よ」
「なっ……!?」
告げられた内容は、ライアートにとってお前は優勝はできないと言われたようだった。驚いて言葉が出ないライアートに更に言葉を繋げる。
「それどころか勝てるかどうかすら怪しいわ……もし本当に優勝したいんだったら、よく考えることね」
「よく考える……」
怒りや悲しみもあったが、それ以上に何故フレヤがそんなことを言ったのかを考えながら歩き続けてたライアートだが、結局答えは出ることはなく、大会が行われる場所に辿り着いたのであった。
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