カードが人を選ぶのだ 作:亜零
光が弱まり、目を開けるとそこはヤクザの本拠地ではなく、白一面の世界が広がっていた。
「どこだ……」
辺りを見渡していると、目の前に光の粒子が集まっていき、人の形となっていく。
「こうして会うのは初めてですねライアート」
現れたのは美人な女性であった。髪は金色で顔のパーツは非常に整っており、スタイルも細すぎず、かといって太すぎない絶妙なバランスを保っている。正しく美人という言葉が似合う姿だ。
「どうして俺の名を!!……それにここはどこで貴方は誰だ!?」
「私はセーラ、君は私を人と思っているかもしれないけど、それは誤解よ……私は人ではない。わかりやすく例えるなら精霊というのに近しい存在よ」
「精霊だって……」
突然の精霊の登場に驚きを隠せないライアート。それに反応せずセーラはライアートが大事に持っているコアデッキケースを指差す。
「君は何故カードが生成されるか知ってる?」
何故カードが生成されるかと問われたライアート。光のオーブから生成されるのがカードだろうと答えると。
「じゃあ何故光のオーブは現れるの?」
「何故……何故って……」
何故光のオーブが現れるのか、それは今もなお解明されていない謎であった。返答に困っているとセーラが再び口を開く。
「おかしいとは思わない? 何故光のオーブが現れるのか。そして光のオーブを手にしたらカードが生成されるのか?」
「そんなこと……」
考えたことがなかった。いや、考えようとしなかった、光のオーブを手にすればカードが生成されるのが当たり前というか、それがライアートにとって常識であったから。
「不思議に思わない? 君は考えることすらしなかった。何故考えることすらしなかったのだろうか……それが常識だから? じゃあその常識は誰から教わったの?」
別に教わった訳ではない。喉が渇いたら水を飲む。お腹が空いたら食べ物を口にする。それと同じように、光のオーブがあれば、考えることもなくそれを手にするとライアートは思う。
「そう教わってはいない……だけど君たち人間はそれを知っている。すでに生まれたその瞬間から」
「…………」
気づけばセーラの言うことに耳を傾けていた。セーラから言われて初めてこの世の常識に疑問を抱いた。その時、白一面の世界が歪んでいくことに気づいた。
「今から君は目を覚ますと思う。こんなこと言って混乱していると思うけれど、これだけは覚えてほしい」
世界が歪み、セーラの姿も歪んでいくが、言葉だけは歪まずライアートの耳にしっかり伝わっていく。
「人がカードを選ぶんじゃない……カードが人を選ぶのよ。そして自分の考えで行動して人生を歩むのよ」
それが最後の言葉となって、世界の全てが歪み、音を立てて壊れていき、ライアートの意識は再び闇に落ちていく。
☆☆☆☆☆
「はっ……!!」
意識が戻り目を覚ますと、ヤクザの本拠地であり、丁度自分がボスに負けたところだなとすぐに理解したライアート。
「……さて、そのデッキを頂こうか」
負けたライアートは託されたデッキを渡そうとした時、ある疑問が頭によぎる。何故自分からデッキを渡す必要があるのかと。このまま背を向けて逃げればいいと思い、足を動かそうとした。
(……動かない!! それに俺はボスにデッキを渡そうとしている……まるで誰かに操られているみたいだ)
身体が自由に動かないのだ。それどころか自分の意思とは関係なく勝手に身体が動き、デッキをボスに渡していたのだ。
「ふむ、よくこのデッキであそこまで耐えたものだ」
受け取ったデッキを確認するボス。デッキの全ての中身を見たボスは、ライアートに視線を移してこう言った。
「ライアート、君の腕は認めましょう……しかし、君にはカードの運が足りないようだ。まぁ何枚かレアカードが混じってるようだけど、基本はただのゴミカード……私のデッキには遥かに劣る」
数枚のカードを抜いたボスは、残りのデッキを後ろにいる黒スーツの青年に渡すと、その青年は奥の部屋に向かっていった。
「くっ……」
自在に身体が動くことに気づき、ここから出ようしたライアートだが、ドアの前にはもう一人の青年がそこに立っていた。それはまるでライアートをここから出させないようにだった。
「君はここに乗り込み、ボスである私にアルカナを挑んだ……それは反逆行為であることに変わりはありません」
「……俺を殺すのか」
そうライアートはボスの座を奪おうとした反逆者であった。すでにデッキがないライアートは、もはやボスに逆らうことはできなかった。殺すのかとライアートが問うと、クスっと笑いながらもボスは答える。
「殺しても構いませんが、君の実力は優秀ですから……取引をしませんかライアート?」
「取引だと……?」
「えぇ、内容は……」
取引の内容とは今回のライアートと及びその仲間たちの反逆行為を水に流す代わりに、近々開催されるレフュースタウンの大会に出場して優勝することだ。優勝賞品は大金とレアカード、そして好きな奴隷を選べる権利が貰える。
「そのレアカードはドラゴンに関係するとの情報が入ったので私は欲しいんですよ……各地区から2名まで参加資格が与えられるので……その1つを君にあげようかと」
「ボス!! 例え実力があってもそいつは裏切り者ですよ」
ドアの前にいる黒スーツの青年が声をあげる。それをボスは視線を青年の方に移してこう言った。
「確かに裏切り者であることに変わりはない……しかし、今回の大会は優勝しておきたい。そうすれば今後の動きに変化が起こるのは間違いない」
「……承知しました」
「どうかな……君はこの取引を乗るかね?」
頭を下げる青年を見ずに視線は再びライアートに移る。取引と言っても実質ライアートが取れる選択は限られていた。
「わかった……その大会で優勝すればいいんだな」
自分と仲間の反逆行為も水に流すのであれば当然ライアートはその取引を乗るしかなかった。それを伝えると、満足げな表情で頷く。
「これで取引は成立!! 大会までの日にちは少ないから……その準備に取り掛かるとしよう」
ボスの背後から現れたのはライアートと同年代の少女。見た目は黒髪のツインテールで、視線はライアートに向けていた。
「私の娘のフレヤだ。可愛い顔に似合わず私に次いで2番目にアルカナが強いのさ。君たち2人で協力して大会を優勝するのだ……さて、色々と準備があるだろうから、フレヤはライアートを部屋まで案内しなさい」
「……こっちよ」
フレヤの後をついていくライアートは奥の部屋に向かっていく。こうして命拾いしたライアートであったが、まだボスの座を諦めてはいなかった。
(今回は負けたが……今は大人しく従って力をつける時だ……そして俺が新たなボスとなり、このレフュースタウンを変えてやる!!)
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