カードが人を選ぶのだ 作:亜零
今ライアートがいる場所は、レフュースタウンのジンジャー地区、そのジンジャー地区を牛耳っているのが、アブソートという名である。
ボスに負けたライアートは大会に出場するのを条件に反逆行為を水に流す取引に乗り、新たなデッキを組むためフレヤにカード保管庫の場所まで案内されていた。
「ここがカードの保管庫よ……このアタッシュケースの中にあるカードを使ってデッキを組むのよ」
部屋の中には4つのアタッシュケースが置かれており、その中にはびっしりカードが積まれていた。
「わかってると思うけど、これはボスが管理しているカードを貴方が借りてデッキを組むのよ。もしも惨めに負けたら……」
「エモルと同じ目に合うってわけか」
言われなくても重々承知だった。実際エモルがアルカナで負けてデッキを回収されるだけではなく、クビ宣告されてここを去ったのだから。
「デッキを組むか……」
たくさんあるカードの中でデッキを組むとなると、どこから手を出せば良いのかわからなくなるライアート。元々ボスに挑んだのも仲間たちから託されたデッキであり、既存のデッキしか扱ったことがなかった。
「そうね……寄せ集めのデッキを使っていた貴方は、自分でデッキを組むという行為をしたことがないわね……時間も惜しいし、私がデッキが作りやすくなるアドバイスをするわ」
「…………」
少し棘のある言葉に苛立ちを覚えるライアートだが、そんなのを気にせずにフレヤは4つのアタッシュケースの中身を説明する。
「まず左のアタッシュケースにあるのはアニマルテーマで、スターブーストを得意としてるわ」
スターブーストとは、モンスターやマジックカードなどの効果によって☆を追加することができる。その効果が一時的なものか、永続的なものかどうかは、カードによって変わる。
「☆が増えれば単純に取れる選択が取れるのも強みね……次にその右隣にあるのがナイトテーマで、モンスターを並べるのを得意としてるわ」
ナイトの多くが持つ効果に、手札やデッキから場にモンスターを出すことに優れている。
「モンスターを並べることは、すなわち盤面を有利にすることに直結するからそれが強みね。次はウィザードテーマでマジックとモンスターの組み合わせで強力な効果を出すのを得意としてるわ」
ウィザードは、各テーマのマジックカードに比べて、ウィザード専用のマジックが多い。例え単体では弱くても、組み合わせ次第では強力となる。
「戦闘以外での効果破壊など、多種多様なマジックがあるのが得意としてるわ……それで4つ目なんだけど……」
澱みなく説明していたフレヤだが、4つ目のアタッシュケースに関しては少し説明しづらそうにしていた。
「ここは色んなテーマがあるわ……ただ現時点でデッキに組むには良くも悪くもクセのあるカードばかりね。数枚デッキに組むのは悪くないけど、このカードを主体としてデッキを組むのはオススメしないわ」
フレヤの説明が終わった時、積まれていたカードがほんの一瞬光り輝いて見えた気がしたライアート。
4つ目のアタッシュケースを閉じたフレヤは、部屋を出ようとしてドアの前に立ち、振り返りこう言った。
「用があるから離れるけど、ここで大人しくデッキを組むのよ……奪われたデッキを取り返そうなんて馬鹿な真似はしないことね」
「……っ!?」
ライアートの考えを見透かしたような言葉に驚くも、フレヤはそれに反応せずに部屋を後にした。
「忠告されたってことか……」
フレヤに説明されたことを思い出す。どれも魅力のあるカードだが、ライアートは4つ目のアタッシュケースに目を向ける。
☆☆☆☆☆
一方その頃、ライアートとエモルの勝負を盗み見ていた黒フードを被った人物の名はアオイは、待ち合わせをしている空き地に足を運ぶ。そこには紫髪の少年が先に待っていた。
「どうだアオイ、ライアートの様子は?」
「お前の予想通りだ」
その少年はライアートの仲間であるカゲリであった。アオイと呼ばれた様子を聞いたカゲリはエモルとの戦いを報告を聞き、満足げに頷く。
「くく、エモルが負けたか……まぁあいつは今までデッキパワーで相手を倒していたからな。エモルが負けたとなると、次に戦うのは他の構成員か、もしくはボス自らが相手か?」
「何故……エモルとの戦いが終わり次第帰れという指示にした? あのまま監視していれば、情報を手に入れることができたのではないか?」
エモルを倒した後の行動を予測しているカゲリに、アオイは今回の指示に対して不思議だった。より新鮮な情報を得るには引き続き監視している方が良いはずだとアオイは考えていた。
「確かにお前の言うことは間違ってない……だが、ボスはもちろんその娘であるフレヤも厄介な奴でな……恐らくお前の隠密行動がバレる可能性がある」
「私の隠密がバレる……? 何を馬鹿なことを言っているんだカゲリ」
アオイは過去にも自身が得意としている隠密行動で、相手に気づかれることなく、様々な情報を得てきた。少なくともアオイの中では自信とプライドが出来上がっていた。
「私の隠密はその辺の奴らとは違う!! 何故ならば……」
「ストップだアオイ」
それを真っ向から否定されたように感じたアオイは、反論しようとしたが、カゲリは人差し指を立ててストップと言う。
「それ以上は言ってはならない……俺たちはそのことを口にするのは強く禁じられていることぐらいわかるだろう?」
「……それもそうだね」
カゲリの言葉に、大人しく黙ることにした。周囲に誰もいないことはすでに確認済みだが、無闇に言うべきではないことは理解していた。
「ようやくこの段階まで計画が進んだからな……よし、お前ばかり働かせるわけにはいかないから、俺も自分の仕事をやるか」
「へぇ……いったい何の仕事?」
頭をかきながらアオイに背を向けて歩きだすカゲリに、何の仕事か問うとこう返ってきた。
「なに、皆の団結力を高めようと思っていてね」
そのまま去っていくカゲリの背を見つめながら、アオイはボソッと呟いた。
「ふふっ、全く悪い人ね……ここまで来たんだから、足をすくわれないように気をつけて行動しないと、せっかくの潜入任務が台無しになってしまう」
ライアートが新たなデッキを組んでいる裏ではカゲリとアオイの怪しげな行動。そして今回の大会でライアートがカゲリと再開して驚愕の事実を知ることになるのは、少し先の話となる。
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