咲闇の闘牌   作:きりりり

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オリキャラ紹介!
新垣渚:現麻雀部部長。コントロールは低い。
小松聖:現麻雀部副部長。犬が好き。

覚える必要は一切ありません。
面倒な人はモブ1号2号くらいの認識で十分です。


第十六話

普段ならば部活動に精を出す部員達で賑わうはずの部室だが今は不穏な空気に包まれていた。

 

「もう一度言ってみなさい私達がなんだって……?」

「何度でも言って差し上げますわ!あなた達ロートルの皆さんにはこの麻雀部から去ってもらいますわ!」

 

売り言葉に買い言葉で現在部室では龍門渕高校の麻雀部員対透華一派の間で激しく火花を散らしていた。

 

「前々から思ってましてよ?団体戦のメンバーは3年生から選ばれ、しかも芽が出そうな下級生には姑息な嫌がらせを行う老害はいない方がマシですわ」

「言わせておけば……」

 

今にも掴みかからんとする雰囲気だったが透華は臆することなく言葉を続ける。

 

「何より許せないのはその意識の低さ。風越の存在があるものだから全国なんて最初から無理と決めつけ碌に努力もせず……しかも麻雀の腕も今一」

「私達があなた達よりも下だって言いたいの!?」

「あら?そう言ったつもりですけど、分かりにくかったかしら?」

 

挑発するように焚きつける透華。

元々何かと口出ししてくる透華を良く思っていなかっただけに不満が怒りに変わるのも一瞬だった。

 

「そこまで言うなら勝負しようじゃない」

「勝負?」

「あなた達がここにいる部員全員に勝ったらそっちの言う通り退部してやろうじゃない!もちろんそっちが負けたら……わかるわよね?」

 

いきなりの展開に部室全体が今まで以上にざわつき始める。

 

「ルールはそっちが1人に対してこっちは3人……アンタ達6人に対してこちらは14人で卓ごとに1位を取った人数が多い方が勝ち……私達より強いんだからいいわよねぇ?」

 

口では強気だがつまりはハンデ戦。透華達の実力を考えれば2対2で卓を囲んだ場合勝ちの目は薄い悔しいがそれは認めざるを得ない。

だが、1対3ならば別、こうなってしまえば勝利することは厳しいはずだ。

 

「そうですわね……2つほどよろしいかしら」

「なに?今更怖気づいたの?」

 

小馬鹿にしたような口調だが透華は気にしていない……というよりは元々勝負する気満々だっただけにこの展開は願ってもない状況だった。

 

「1つ目、対局するメンバーはくじ引きで決めること」

 

くじ引きで決めることによるメリットは通しの防止。

つまり3人でサインを決めて打ち回されたとなればいくら透華といえども勝つことは難しい。

そこでくじによってランダムに決められたとなれば事前に打ち合わせもしてない部員らが通しを行うことは不可能……とまでは行かないがかなり抑止できるはずだ。

 

「2つ目……私たちの敗北条件ですけど……これじゃヌルすぎますわ」

「なに言ってるの……あなた……」

 

思いがけない条件に怪訝な表情を浮かべる。

 

「私達の誰か一人でもトップを逃すことがあれば私達6人とも全員この麻雀部から去りますわ!」

(おいおい……本気かよ……)

 

絶対に負けないという自信かはたまた別の思惑があるのか。

勝負になるというだけでも厄介だと思っていたのに相変わらずの透華のテンションに純は心の中で溜息を吐くしかなかった。

 

「その言葉……後悔させてやるからね」

 

忌々しげにそう吐き捨てる。こうして透華達対麻雀部員の進退を賭けた勝負の幕は上がった。

 

第十六話 「幸運」

 

 

「では、皆いきますわよ」

「では。じゃないよ!どうすんのさ負けたりしたら!」

 

赤木や衣なら不利な状況といえど問題なく勝てるだろうがはじめは100%勝ちを収める自信を透華ほど持つことはできず、不安を隠すことができなかった。

 

「確かに将棋やチェスと違って麻雀は運が大きく絡むゲーム……絶対に勝つとは限りませんわ」

「なら……!」

「それでも……私は貴方達を信じていますわ。こんなハンデをものともしないって……それに……」

 

勿体つけた言い回しで語りつつ改めて全員の顔を見渡す。

 

「これくらいで躓くようじゃ全国なんて夢のまた夢……そうでしょう?」

 

透華の目つきがいっとう真剣なものへと変わった。

 

「ふふん有象無象の三下達が衣に勝てる道理なし!大船に乗ったつもりでいろとーか!」

 

透華に負けず劣らず自信満々の衣が。

 

「仕方ねーなそれじゃやりますか」

 

やれやれといった態度で純が。

 

「ボクはボクなりに精一杯がんばるよ!」

 

どこか不安げにはじめが。

 

「……がんばる」

 

いつも通りに智紀が。

衣の言葉を河切りに全員が透華を後押しする。

 

「あなた達……」

 

透華は目頭が熱くなるのを確かに感じ思わず涙が出そうになる。

それは主従関係を超越した、まさしく友情と言えるものだった

 

「それじゃ……後は頑張れよ、お前ら」

 

そして赤木が踵を返し帰ろうとした。

 

「ちょっと」

「待てい!」

 

純とはじめは赤木の肩を慌てて掴み赤木の帰宅を(物理的に)止めた。

 

「なんでだよ!お前には空気ってのが読めねーのよ!」

「そうだよ!今みんなで頑張ろうっていう流れだったじゃん!」

「お前らが辞めようがなんだろうが、俺には関係ないだろ……そっちでなんとかしろよ」

 

あくまで打つ気がない赤木だが本人からすれば何かを賭けているわけでもない温い勝負などやる気が起こらなくて当然だった。

 

「仕方がないですわね……ハギヨシ!」

「赤木様……こちらを……」

 

このままでは本気で帰られかねないために早急に手を打つ。

ハギヨシから手渡されたもの……それは紛れもなく昨日取り上げられた煙草であった。

 

「どういうつもりだ……」

「どうもこうも……手を貸していただいたら、それをお返ししますわ」

「安い報酬だな……」

 

かつて煙草1つでこき使われたことなど当然なく怒りの感情どころか苦笑すら出てきた。

 

「もちろんこれからも取り上げたりはしませんわ。た・だ・し!私や衣の前や屋敷の外では絶対に吸わないことが条件ですわ!」

 

透華にとっては苦渋とも言える決断だが赤木は思案する。

これに味をしめて自分をコントロールできると思われるのは癪だが、かといってこのまま帰って何かをする予定もない

ならば大手を振って喫煙できるように少しくらいの労働を行う方が得索であるとそろばんを弾き、赤木は渋々参戦を決めたのであった。

 

 

○●○●○●○

 

 

「みなさん、クジは引きましたわね?では揃ったところから始めてくださいな」

 

透華サイドは6人その他の麻雀部は14人なので一卓だけ2対2の勝負になるが、残りは1対3の対局が始まった。

 

「あなたと一緒とはツイてるわね」

「私もです、部長と一緒とは心強いです」

 

龍門渕麻雀部現部長新垣渚&副部長小松聖のペアが唯一2対2のハンデなしの戦いに挑む。

透華を除けば部内でも指折りの実力を持つ2人で組めたことは何より幸運だった。

 

「理事長の娘だからって調子に乗って……絶対勝つよ聖!」

「はい!部長と一緒ならだれが相手でも負けはしません!」

 

相手は誰かと既に席についている2人を確認する。

智紀、はじめペアならば互角のもしくはそれ以上の戦いが繰り広げられただろう。

しかしこの2人で組めた幸運程度では

 

「アカギ!今日は負けないからな!」

(面倒くさいな……)

 

龍門渕の2匹の魔物と当たる不幸は到底相殺できなかった

 

 




というわけで今回は勝負前の導入回です。
なので今回は短めです。申し訳ない。
闘牌パートと1つにまとめると長過ぎて区切ると中途半端になるという困った文量なのです。

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