(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝 作:ガンダム初心者のミリオタ
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ギャン改-IIがエグザベ中尉の元に届いたSSはスレ6
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ハーメルン版:『八百長』https://syosetu.org/novel/395796/39.html
報告書番号:5621117
「やっぱりもったいないよ」
「は?」
ようやく自分の任務に対する軍機指定が外れたので、ここへ派遣されてから此の方、ずっとため込んでいた報告書を通信部の機材を借りて本国の部隊へ送付していたときに通信の相手から唐突にそう言われた。
当然だが軍務中だし万一の盗聴も考えるとあまり無駄な会話はしないほうがいいのだが、たまたま応答したのが昔なじみの同期だったため、気が抜けたのだ。お互いに。
そして意外と世話焼きな同期の「声が疲れてる」から始まった「ちゃんと食べてる?」「寝てる??」「休みは取ってる???」等々の怒涛の質問に流されるように答えた結果の結論が冒頭である。
ミノフスキー粒子が散布されてなければ通信が使えるわけだが、あまり一気にまとめて送ると傍受された時に漏れる情報が多くなってしまうのと、そもそもの送付するデータ自体の量が多すぎたために複数に分けた結果、少し時間がかかったせいでなんとなく送信中に手持無沙汰になったから…というのは言い訳か。一応個人情報や軍務に直接かかるような内容は言ってないし、ここでの会話や通信内容は暗号化されているとはいえ通信部や情報部に全部筒抜けなので聞かれてもいい話しかしてないはず…してないよな?
隣や奥でこっそり耳をそばだてている情報兵や通信兵たちからも露骨な視線は感じないので多分大丈夫。よし。
「こっちに先に届いたデータ今みてるけど、コレ尉官レベルの…というかパイロットの仕事じゃなくない?」
「自分もそう思う」
それは本当に。
「こっちから人員もう少し派遣できればいいんだけど、なかなかね。
専用機送るときにようやく専属整備兵って名目で1人追加できたくらいだから…察して」
「いや、わかってるよ大丈夫。
一応こちらの情報部の人が補佐についてデータ処理を手伝ってくれているから、それだけでも助かってるし」
文官じゃないからさすがに情報の精査までは専門外なので、どうにも処理が上手くいかないことも多かったのだが、執務室…そんな上等なものではなく、むしろ書類作業用タコ部屋という趣であるが…の情報部の人がそのあたりを担ってくれるようになった。
データをまとめたり統計を出したりはさすがに餅は餅屋である、圧倒的に早い。
本国から派遣人数が増員できないのは、いくら連邦との協力体制ができたところですぐには連邦軍内部近くへ兵を多くは送れない事情があるからだ。軍機に関わることとか保安上の問題とか、そもそもの人員不足とか、色々。
なお、今送付してる報告書は同じ内容で連邦軍側にも出してるのだが、特にクリアランスの高い内容については前時代的にアナログ手段…物理記録媒体や紙での提出になる。
別便で送ったより詳細な報告書が共和国軍へ届くのはもう少し先になるだろうが、データを精査すれば概要は把握できるはずだ。
軍機といえば自分がここに派遣されたときも、セキュリティクリアランス上アクセス権が将官以上になっていたせいで同僚どころか部隊長の上官…佐官だ…も知らなかったし、なんなら派遣される僕本人にも詳細は教えられなかったと聞いた。
いや、そんなことあるか? あったな…
無事ここまで到着したという意味ではもう終わった話だし、軍機指定は既に外れてるからいいか。
「でさ、話は戻るけど。
中尉は今MSパイロットじゃない?
でもそれしかやってない…ことになってる…のは本当にもったいないと自分は思うわけ」
うん、それしかやってない、ことになってるはずだ。
少なくとも表向きの書類上は。
ともあれ、能力適正的にMSパイロットをやらないのはもったいないといわれたことはあったけど、MSパイロットをやってるのをもったいないといわれたことは初めてだから少し面食らった。
「そっちの新米パイロットへの教育とか情報の精査とか他の部署との調整とかも、一応パイロット業務に必要な措置ってことでやってるわけじゃん?」
「そうしないと本ッ当にどうしようもなかったからね…本来は教導専門じゃないんだけどな僕」
ちょっとだけ心の底からの声が出てしまったのは許してほしい。
一応派遣前にMSパイロットの育成・教育のためのカリキュラムをとってきたときに相手は素人と思えと言われたし、そもそもまともな訓練もできていないだろう新兵だろうから、コクピットへの乗りこみ方から教えるようなどうしようもないレベルの可能性もある、と思ってある程度の覚悟はしてきたけれど、思ってたことと違う方向性でどうしようもない事態になってるとは思わなかったんだ。
「でも結構向いてると思うんだよ。
だったらさ、教育部隊に異動して、本気で指導教官目指してみない?」
教官? 僕がか?
「教育部隊なら、もっと専門的な指導方法や最新の技術についても学んだり教わったりできるし。
中尉の知見が後に残らない…残っても一部にしかない可能性があるのは絶対人類の損失だよ。
指導専門じゃなくて現役パイロットしながら教鞭取ってる人もいるし、いいと思うんだけど。
とはいえ、異動の辞令だすにしても今の派遣任務が終わってからになりそうだけどね。
むしろ先に大尉へ昇進させてついでに佐官教育受けさせたほうがいいか…」
「えぇ…噓でしょ…?」
なんかこわいこといってる。
「大尉への昇進は半分冗談だけど、教育部隊への異動の話は頭の隅にでも置いておいてほしいな。
今すぐ結論出せってことでもないし」
「待て、残り半分は本気か?」
「あ、全部データ届いたよ。
エラーもなさそうだね、全部展開できた。大丈夫」
「…そうか、よかった。
一応今後は定期的に報告できると思う」
僕の言葉をおそらくあえて流したな…まぁいいか。
どちらにしてもここに派遣されている間にどうにかなる話じゃないだろう。
「その辺は考慮してるし、こちらでもある程度連邦軍と情報共有はしてるから」
つまり定期報告ができなければ『できない何かがあった』と判断され、その情報が共有されるわけだ。
「…了解。本日以降の分は次回に報告する」
「了解、お疲れ様。
お互いがんばろうね」
「…そうだな」
柔らかいねぎらいの声にほんの少し気持ちがほころぶのを感じつつ通信を終えたら、室内にいたヌー曹長がいつの間にかじっとこちらを見ていた。
いや、見るのはいいけど瞬きもせずに見てくるのは怖いんだが。
「…仲良さげでしたね…?」
「そりゃ同期だし、初任の頃からお互い知ってるからな。
なんでだ?」
「いーえー」
そうフラットなトーンでいうと、ヌー曹長はくるりと自分の前のモニターに向き合ってしまった。
なんだったんだ。
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ヌー曹長は130さんのSSに出てくる情報部の方です、お借りしましたありがとうございました。
作中にでてる「指導教官」はこの場合は兵士(プロ)に専門技術を教える高度専門職(プロ)のことです。士官学校などで学生に教えるものとは、技術も教導内容もレベルが違います。
リアルでいうと、ミリ系でいうなら空自の小松基地にいるアグレッサー部隊、もうちょっと一般向け知識でいうなら専門研修医に対する指導医あたりをイメージしてもらえればわかりやすいかなって思います…といいたいところなんだけどその説明自体がそこそこマニア知識というジレンマ。
先生に教える先生…とでも思ってください…(小学生並みの説明)
専用機がやってきてるってことは、その整備をするための整備兵もいるはず…ということで思いついた話です。
作中では基本パイロット(正史ならカミーユ、本編SSならエグザベくん)視点で進むので、パイロットやブリッジメンバーはともかく、どうしても後方支援の整備班の存在感はめちゃめちゃ薄くなりますが、画面に映ってない裏側で多分奮闘してくれている、多分。
というかそもそも軍隊がネタになってても後方支援側の視点がかかれること自体があまり…というのはまぁ、はい。
パイロットとかのほうが華やかで画面映えするからね!しょうがないね!
あとMSが活躍しないといけないからね!ガンダムなんで!
閑話休題。
戦闘機だと数名で1チームになって整備してるそうですので、MSやMAだと1機あたり2~4人一組くらいで整備してるのかな…とは思ってます。
専属で担当でなければ1チームで複数機担当することになると思うので、実は結構忙しいんじゃないかな。
ギャンと一緒に来た整備兵は「ジオン共和国制のMSは連邦軍MSとは使われてる技術が違うのでアーガマの整備班だけでは整備しきれない可能性が非常に高いのと、専属パイロットの細かな要求にこたえるため」という建前で来ました。
基本的にギャンの整備の担当ですが、連邦側MSの技術を学ぶため、という名目でアーガマのほかの艦載MSの整備、なんならアーガマ自体の整備とかもやることになります、忙しい。
一人しかいないのはチームで結託されて反乱分子化するのを危惧されたせいです、ジオンに対する信頼がない…
この作品内でちらっと言及されてたギャン専属整備兵ことイマニュエル・ジャンはこのあとの拙作にちょこちょこでてきます、よろしくお願いします。