(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝   作:ガンダム初心者のミリオタ

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<前提>

軍人と軍属、ついでに軍の階級について一般的な知識じゃなさそう…というけはいをさっち。

一万字以上ありますがんばって読んで!


W&W Litte Theater:How come military?

<SE:拍子木>

(幕が開ける。

 舞台上に並んだ椅子に座っているエグザベとカミーユ。

 テーブルの上にはティーセット。

 2人そろってお辞儀)

 

エグザベ「このセットは久しぶりだね」

カミーユ「新作なぜなに小劇場です」

エグザベ「なにやらなかのひとが軍隊組織について解説しないといけないような気配を察知したらしいよ」

カミーユ「ニュータイプ…?」

エグザベ「では、ないと思う。は、ともかく。今回のテーマは『軍人って?』だよ」

カミーユ「おお…ずいぶん初歩…というか…今更感が少しありますが…」

エグザベ「カミーユは『軍人』の定義ってなんだと思う?」

カミーユ「え?軍隊にいる人のことですよね?

 エグザベさんもそうだし、ブライト艦長とかアムロ大尉とか…」

エグザベ「まぁ一般的にはそういう認識でいいよ。

 ただ、もうちょっと細かくいうと『軍に所属している人のうちで戦闘行為にかかわる役目の人、戦闘行為を行う資格を持つ人』を『軍人』って言う。

 軍に所属していても事務や研究職、いわゆる文官の人たちは軍人とはあまり表現されないかな」

カミーユ「じゃぁ軍隊に所属してる人全体、だとなんて表現…あ、そういえば『軍属』って言葉を聞いたことあります、これですか?」

エグザベ「広義には」

カミーユ「…さては広いがあるってことは狭いもある…?」

エグザベ「実は『軍属』って言葉には複数の意味が含まれていて、文脈によって意味が変わる上に国や時代でも指す範囲が違う、ものすごい大雑把な概念を指す言葉なんだ。

 本来の意味合いは『軍に所属してる人のうちで軍人以外の、文官および民間雇用者』のことを軍属っていう。細かい定義や意味はいっそウィキペディアみたほうが早いよ。

 英語だとそれぞれ指す意味によって違う単語を使うんだけどね。

 例えばざっくり『軍隊に所属する人』って意味のときはMilitary personnelだけど、軍属って言葉自体は前述の通り、軍人以外の軍に所属してる人のこと、だからこれに『軍属』って訳語をあてるのは本当は適当じゃない。ただ、日本語に該当するわかりやすい言葉がないから軍属って表現されてることも多いね。

 一応軍隊に所属してる人、の意味だと軍籍って単語があるけどこれには軍で雇用されてる民間人は含まない。

 だから日本語でMilitary personnelをできるだけ正確に表現したいと思うなら、軍人及び軍属、って表現が適当かな。

 軍人以外の軍隊に所属する人たちについてはCivilian employeeやCivilian personnelがだいたい英語で一般的につかわれる表現。

 これはMilitaryに対するCivilian、つまり軍人(Military)以外の人をざっくり指してるもので、通常は軍隊で働く文官…事務職とか研究職とか、あるいは外部、つまり民間からの雇用者のことを指すから、いわゆる本来の意味での軍属だ。

 さらに在日米軍に関しては、米軍に雇用されてる民間の米国人をさすCivilian Componentの訳語として使われている。

 本来の意味からすれば誤用に近いんだけど、日米協定でそういう規定になってるからそういうもんだと思って軍属って表現を使うしかない。

 日本の自衛隊の場合は軍じゃないから軍属って表現はそもそも使わないね。

 ざっくり自衛隊所属を表現したいなら自衛隊員、軍人に該当する単語としては自衛官、いわゆる背広組と表現される事務職は自衛隊職員、あとは自衛隊の雇用の業者…って感じかな。

 …大丈夫?ついてきてる?」

カミーユ「…なんとか…」

エグザベ「軍隊というものがあまり身近な存在じゃないから余計に難しく思えるかもしれないね。

 もうちょっと一般的な概念で例えようか。

 カミーユは将来医者になりたいって言ってたよね。

 医者が働くといえば病院だけど、そうだな、すっごく大きな総合病院を思い浮かべてみて。

 そこで働いてる人たちはどういう人がいる?」

カミーユ「ええと…まずお医者さん、看護師さん。受付の事務の人とか案内ボランティアさん、薬剤師さん、レントゲン撮る技師さんにリハビリの療法士さん、あ、売店の店員さんや院内レストランのバイトってのもいますね。

 大きい病院だと総務とか経理とかの病院経営にかかわる部署もありますし」

エグザベ「まぁそんなものでいいか。

 今あげた人たちは全員病院で働く人たちだけど、いくつかにジャンル分けできるね。

 例えば、医療行為ができる人とできない人。

 できる人は医者や看護師、薬剤師など、国家資格を持つ人たちだ。

 病院だと医療者って表現を使うけど、これが軍隊で言うところの『軍人』に該当する」

カミーユ「病院で働いていても医療者以外の、医療行為を行う資格を持たない人たちが軍隊で言う軍属に該当するってことですね」

エグザベ「そういうこと。

 病院で働いている人を別の分類で区分すると、病院の正規の職員と、職員以外の人たちに分けられる。病院の正規職員の人が軍隊でいう軍籍を持つ人に該当すると思ってくれればいいよ。

 職員以外の人っていうのは、例えば人材派遣会社からきてる受付業務の人とか、外部の業者がやってる院内レストランの調理や配膳のバイトさんとか、警備会社から派遣されてる警備員とか、あるいは案内ボランティアとか、そのあたりがイメージしやすいかな?

 これらの人たちが軍隊で言う民間雇用者の意味の軍属に該当する人だ。

 で、これら全員、病院のバックヤードに入るために病院からIDカードを貸与されている。

 つまり病院からのIDカードをもらっている人がmilitary personnelに該当するってことになるね」

カミーユ「ああ…なんとなく把握してきました。

 …いや、ちょっと待ってください。

 そう考えると僕の『中尉待遇』ってめちゃめちゃ不安定な立場じゃないですか?!

 民間人だから正規の軍籍は持ってなくて、でも戦闘行為を行ってるから軍属ともちょっと違って」

エグザベ「…そうだよ…」

カミーユ「あっエグザベさんの目のハイライトが三割減に!」

エグザベ「一応カミーユは書類上はMSパイロットの極端な不足を補うための民間からの臨時雇用者って扱いで、パイロット業務を行うために必要な階級と資格を戦時任官で一時的に付与してる…って扱いにしてある、というかそうする以外になかった…どういうことだエゥーゴ…」

カミーユ「エグザベさんエグザベさん、しっかり!

 そ、そうだ、軍隊の階級についてもついでに教えてくださいよ!

 僕中尉待遇ってなってますけど、実際のところ軍隊の階級もなんだか良くわからないです」

エグザベ「あ、そうだね、それも一般的にはあまりなじみがないものかもね。

 じゃぁ軍隊の階級についてもついでに説明しようか。

 の、前にお茶を入れなおそうかな」

 

<SE:拍子木>(同時に降りる幕)

 

  旦~  旦~

 

<SE:拍子木>(再び幕が上がる)

 

カミーユ「お茶を入れなおしました」

エグザベ「ということで、次は軍隊における階級について。

 軍隊で階級があるのは、命令が上から下に必ず正確に伝達されるように、かつ下の階級の者が行う軍事行為について上の階級の立場の者が責任を持つため。

 軍事行為って国家によって許可された暴力行為だからね、通常そんなことが許可されることはない。

 その許可されない行為を行うために命令があって、それは正しく遂行されなければならない」

カミーユ「以前エグザベさんがカツに言ってたことですね」

エグザベ「大事なことだからね。

 で、そのための階級制度なんだけど…うーん…」

カミーユ「?」

エグザベ「これからいうのはあくまで『実際の軍ではだいたいこういう運用になってます』っていう紹介であって、これをもって創作の軍の表現は適当だって批判したいわけじゃないし、批判に使ってほしくないことは最初に言っておくね。

 作中でそういう設定になってるならそれが絶対だ」

カミーユ「シャア・アスナブルが20代で大佐だったりすることとかですか?」

エグザベ「そうだね、実際の例がまったくないわけじゃないけど。

 もっとも、ガンダムの階級の設定は比較的現実的な人もそれなりにいるけどね。

 極端な階級を与えられた少年兵も多いのは…まぁ…うん…いまはそれが本題じゃないしいいか…

 …えっと、話を戻すよ。

 まず、カミーユは軍隊の階級の基本はわかる?」

カミーユ「一応最初に覚えました。

 下から二等兵・一等兵・上等兵、伍長・軍曹・曹長。それから少尉・中尉・大尉、少佐・中佐・大佐。

 あと准将・少将・中将・大将…であってます?」

エグザベ「OK、それで大丈夫。じゃ、それぞれの階級についてちょっと解説を入れようか。

 まず軍隊の一番下、入隊すると二等兵になる。兵役で入隊した人はここから始まるよ。

 志願制の場合は高校卒業以上の人がここからだね、現代だとだいたい入隊資格が18歳以上ってなってる国が多いかな。

 二等兵っていうのは基礎訓練中ってこと。入隊直後は新兵なんて呼ばれたりもする」

カミーユ「あれ、新兵って階級もあるんですか?」

エグザベ「あ、新兵は階級じゃなくて単純に新米って意味で大体入隊後2~3か月くらいの兵士をそう表現する感じかな。

 一般社会で言う新入社員とか新入生とかと同じようなニュアンスだよ。

 基礎訓練は大体数か月から一年、これが終わると自動的に一等兵になる。

 一等兵は任期制で、1任期だいたい2~3年前後…国や所属する兵科によって変わるけど、大抵は戦闘科は短め、後方支援科は長めになってる国が多いね」

カミーユ「実例としては、K-POPアイドルがほぼこのパターンって兵役を務めてるってことですね?」

エグザベ「そのとおり。

 で、志願制の場合は任期を更新してこの上の階級へ行くか、あるいは任期終了後退役するか選択する。

 兵役義務で入った人たちなら基本的には任期が終わったら全員ここで退役で終了になる。もちろん上の階級への昇進を選択する場合もあるよ。

 退役後は予備役って言って、普段は一般社会で生活してるけど軍籍だけ残ってて、有事の際に呼ばれて一等兵に復帰してまた任期制で兵を務めることになる。

 有事で呼ばれなくても、予備役の間はいつ呼ばれてもいいように既定の訓練プログラムを受けることになってる。

 予備役の期間は国によって差はあるけど、大体退役後10年くらいかな、その間に何もなければ予備役期間が終了したら完全に軍籍から抜けることになる。

 だから一等兵が兵士の中で一番多いってことになるんだ。どんどん入ってきてどんどん出ていくからね」

カミーユ「イマニュエルさんのアーガマにいたときの階級だった『上等兵』は?」

エグザベ「一等兵からさらに任期を更新してその上にいくための階級だったり、一等兵の中で優秀な人がリーダー役として勤めるための階級だったり、場合によって立場は色々あるけど、一等兵の中でも優秀な人が選ばれる階級、と思ってくれればいいよ。

 ここまでの3階級がいわゆる『兵士』とよばれる立場の人たちだね。

 上等兵の上にくるのが伍長だよ。イマニュエルが昇進した階級だね。

 伍長から上になると任期制じゃなくて永続的に軍隊に所属して、何事もなければ定年まで勤めあげることになる。

 いわゆる職業軍人って呼ばれる人たちのことだ。

 大学卒業後志願して入隊するときは伍長の階級から始まることもあるよ」

カミーユ「なるほど。

 あれ、そういえば某巨人と戦う兵長さんの階級である『兵長』ってどこにあたるんですか?」

エグザベ「兵長の階級は設定されてる場合とない場合があるけど、ある場合は『兵』の『長』だから上等兵の上、伍長の下だね。

 立場としては伍長の補佐というか伍長扱いの兵というか、「お前優秀だから兵士だけどその上の階級の仕事も任せる!」みたいな感じ。

 宇宙世紀では兵長の階級はジオンも連邦も設定されてないみたいだ」

カミーユ「兵長さんってやっぱすごい人なんだ…」

エグザベ「4次元の壁を越えてる話はここら辺にしておいて。

 次は伍長から上の階級について説明するよ。

 伍長から上、曹長までの階級を『下士官』っていう。

 少尉から上が『士官』と呼ばれる階級で、その下の階級だから『下士官』だね。

 上等兵から伍長に上がるときは、任期を更新すれば自動的に上がるわけじゃなくて、下士官に上がるための適性試験みたいなものに合格しないといけなかったり、昇進するために必要な教習を受けたりする必要があるよ。

 上官からの推薦もあるとさらにいいね。

 伍長として無事着任できた後も、自動的に年数がたてばその上に昇進するわけじゃなくて、規程の講習を受けたり資格をとったり、もちろん任務を昇進に必要な規定数こなす必要があるし、それぞれの階級ごとで昇進するための試験もあるんだ」

カミーユ「昇進したかったらずっと勉強しないといけないってことですか?」

エグザベ「軍隊はぼーっとしてればそのうち昇進できるなんて優しい組織じゃないからね。

 必要な最大人数が決まってる階級もあるし。

 上の階級に行けば行くほどその立場につける人数が少なくなるから、昇進が難しくなるとはいえ伍長からはまぁ数年程度あれば大体の人は軍曹に昇進できるかな」

カミーユ「軍曹!映画で有名な階級だ!

 『口でクソたれる前と後に『サー』と言え!分かったかウジ虫ども!』だ!」

エグザベ「こら、カミーユ」

カミーユ「すみませんファにはいわないでくださいそしてせつめいをつづけてください」

エグザベ「まぁ、その映画で有名になったとおり、軍曹の階級は新兵の教育を任される立場になることが多い。

 最近はその映画みたいなとんでもない罵倒をされることはほとんどないようだけれど、厳しいのは同様。

 戦場で生き残るために必要なことを体に叩きこまないといけないからね。

 軍曹の上が曹長だ」

カミーユ「ええと、兵士から下士官にあがるまでに約3年、伍長から軍曹にあがるまでに数年、軍曹から曹長にあがるまでにさらに数年…って考えると曹長って階級は本来は入隊後10年くらいは経てるベテランですか?」

エグザベ「そうだね、アストナージ曹長やヌー曹長がまさにそうだ。

 実際数年で昇進していくのは本当に一握りだから、30代で曹長になってるのはものすごく優秀だよ。

 といっても、現場で働きたいからって理由で曹長へ昇進せずに10年以上軍曹の階級を務めることも全然珍しくはないからね。

 確かに優秀な人が昇進できるんだけど、昇進することと優秀であることは必ずしも一致しない」

カミーユ「サラさん達も曹長って階級ですけど、もしかしてなにか特例とかですか?」

エグザベ「うーん、Z本編で明言されてないからわからないけど、多分特例かな?戦時任官かな…

 そこらへんは最初に言った通り、もう公式でそういう設定だからそういうもんなんだと思って。

 で、曹長まで勤め上げた人が最後に昇進することがあるのが准尉。

 宇宙世紀だと准尉の階級の設定はあったかな?ちょっとなかのひとが宇宙世紀初心者すぎてわからないけど…

 兵長と同じで、『とっても優秀だから下士官だけど士官と同じような仕事を任せるよ』ってことだ。

 二等兵から始まった人は大抵は曹長、もしくは准尉までくると定年になるので退役する。

 さっきの一等兵の任期終了後退役した場合と違って、定年後の退役の場合は予備役にはならない。

 といっても軍の定年は、普通の会社の定年よりずっと早くて、米軍の場合だと一番早い場合は40代で定年だから普通なら全然現役で働ける。

 だから退役後再就職する人も多いし、再就職を斡旋するサポート団体もたくさんある。

 自衛隊の場合は早いと50代かな。文官だともう少し遅いよ」

カミーユ「なるほど…ってあれ、定年になっちゃいましたよ。終わりですか?

 エグザベさんの階級の中尉ってこの上、ですよね?」

エグザベ「そう、順番としてはこの上に士官の階級があって、少尉、中尉…と続いていくんだけど、下士官と士官は全く違うものなんだ。

 じゃ、この次は士官について説明する…前に一回休憩しようか」

 

<SE:拍子木>(同時に降りる幕)

 

  旦~  旦~

 

<SE:拍子木>(再び幕が上がる)

 

カミーユ「もはや小劇場とは言えない長さになってきましたね」

エグザベ「なかのひともこんなに長くなるとは思ってなかったみたいだよ…まさかの三幕目。

 ともかく先ほどの続き、士官からだ。

 前述の通り、少尉から上を『士官』と呼ぶ。

 『将校』という言い方もある、指してる範囲は同じだ。

 具体的にいうと、尉官と呼ばれる少尉~大尉、佐官と呼ばれる少佐~大佐、それから将官とよばれる准将~大将だね。

 将官は国や時代によって”将軍”と呼称されてる場合もあるよ。海軍だと”提督”って呼ばれる階級だ。

 ただし自衛隊は軍じゃないから、将の階級でも基本的には将軍とは呼ばれない、個人的にあだ名で呼ばれてる人はいるみたいだけど。

 軍隊の中で一握りしかいないエリートだけど、創作の中では一番目にすることが多い階級かもしれないね」

カミーユ「むしろ士官以外をあんまり見かけない気もします…軍隊の中ではどれくらいの人が士官なんですか?」

エグザベ「うーん、国や軍によって違うけど多くても全体の2割以内くらいだね。

 自衛隊の場合は士官じゃなくて幹部って呼ばれるけど、幹部の人数が4万人少し超えるくらい、隊員全体の人数では20数万人いるそうだから大体2割弱だ」

カミーユ「思ってた以上に少なかった。

 そんなもんなんですね」

エグザベ「士官は基本的に部隊の指揮官だからね、そんなに何人もいるものじゃない。

 士官になるために入るのが士官学校、卒業すれば確実に士官として入隊することになる、そのためのエリート教育を受ける学校だ。

 士官学校は大学相当だから、学士資格もとれる。

 普通の大学と違って、大学の勉強と軍隊の士官として必要な勉強を両方こなさないといけないから大変だ。

 入隊後一年目が少尉だよ。

 GQXのコモリ少尉はまさに士官学校卒からの入隊だからエリートコースだね。

 別ルートとして一般の大学を卒業して士官候補生として入隊試験を受けて入ってくる人もいるよ。この場合は入隊後、軍大学校で士官になるための教育研修を数か月受けてから着任することが多いね。

 あと例外に近いけど、優秀な下士官が士官昇進試験を受けて少尉に上がることもある。この場合は士官昇進試験を受けるための年齢制限があったりする、大体30歳くらいで切られてる国が多いかな。

 で、二年目になると中尉に上がる」

カミーユ「二年目?少尉から中尉は自動で昇進するんですか?」

エグザベ「自動ではないんだけど、通常の任務をこなしていれば昇進に必要な規定の時間数はクリアするからよっぽど昇進試験でポカしなければ、ほぼ自動昇進みたいなものだね。

 中尉から大尉には昇進に必要な規程の時間数や研修・資格の習得、それから昇進試験をクリアすれば早ければ3年くらい、遅くても5年もあれば上がるから、ここまでは大体みんな同じくらいのタイミングで昇進していくね。

 だから少尉で入隊して大尉に上がるまでが大体5年前後って思ってくれればいい。

 大尉から先は人によってばらつきが大きくなってくるよ。

 さっき言った、下士官から昇進してきた人の場合は年数的に大尉まで務めたあたりで定年になることが多い。

 大尉から少佐に上がるためには、軍大学校での佐官教育や資格の研修を受けるのと、もちろん昇進に必要な既定の時間をクリアして昇進試験に合格しないといけないから、一番昇進が早いルート、士官学校卒業の人でだいたい30代前半くらいが相場ってとこかな」

カミーユ「ってことはパプテマス少佐ってすごく優秀なんだ…」

エグザベ「流石パプテマス・シロッコだよね。僕も負けないくらい頑張らないとな。

 佐官に昇進した後は尉官のときと同様、昇進に必要な条件をクリアしていって、最終的に優秀な人が大佐まで上り詰めることができる。

 もちろん、自分の希望する軍務の内容的にあえて佐官への昇進を目指さずに尉官の階級で頑張る人も多いよ。

 昇進すればするほど、現場仕事というよりは机に向かう書類仕事が多くなるから、戦闘科でも文官みたいな仕事ばかりしている場合もある。

 そういう事務作業を手伝うために高位の士官…佐官から上を高級将校って呼ぶこともあるけど、そういう立場の人が個人的に秘書的な役割というか、事務作業の補佐を付けることがあって、これがいわゆる『副官』と呼ばれる立場の人たちだ。

 正式な役職じゃなくて、上の階級の人が個人的に依頼する役目の人だから、「お願い」「了解」で受けることもあるみたい。

 優秀な人に自分の補佐をさせて、将来的に昇進したときに役立つような経験を積ませようって意図もある。どうやらコモリ少尉がそのパターンでシャリア中佐の副官になってるらしい」

カミーユ「そういえばエグザベさんもなんか書類作業ばかりしてましたもんね…」

エグザベ「あれはそもそも書類作業ができる人がエゥーゴ自体に少ないせいで事務作業が後回しにされまくってた弊害もあるけど…本来ならいくら士官は事務作業が多いからといっても普通はあんなに書類ばかりに埋もれてはない…はず。はずだよな?」

カミーユ「自問自答しないでください。

 大佐まで上がった後に昇進するのが准将以上の、将官の階級ってことですか?」

エグザベ「階級の順番的にはそうだけど、通常はだいたいは大佐までいくとほぼ定年だね。

 じゃぁ将官まで昇進するのはどういう場合かっていうと、例えば人事上艦隊の指揮官とか、学校や基地の長官とかに任命された大佐が将官へ昇任する。

 もとから少ない大佐の中でもさらに一握りの人たちがなるってことだ。

 将官へ昇任するためには軍大学校で将官になるための高度な専門教育を受ける必要がある。

 もうちょっと正確に言うと、そういう教育を受けた大佐の中から将官が任命される。

 部隊や学校、基地の規模によって役職に就ける階級ってのが決まっていて、順番的に言えば准将の階級に任ぜられた人の中から少将の階級、少将を務めた人の中から中将の階級と昇任していくけど、必要な時に必要な人が任ぜられる階級だから、少将を何年勤めたら中将へ昇進する…って決まってるわけじゃないよ。

 この辺は昇進試験を受けて昇任していく佐官以下の階級とちょっと違うね。

 大将ってなるといわゆる陸軍大臣とかそういうポストだから、通常昇進していってなれる軍の最高位は中将と思ってくれればいいかな。

 准将は国によってある国とない国があるし、平時の最高位が大将だけどさらにその上の上級大将なんてものが設定されてる国もあるね。

 将官はちょっと国や時代によって規定にばらつきが大きいし複雑だけど、まぁとりあえず優秀な人が任命されるって思ってくれればいいよ」

カミーユ「ギレンは大将でしたね。で、キシリアが少将。マ・クベはGQXだと戦後に中将でした」

エグザベ「ザビ家の人たちの階級は名誉職に近いような気もするけれど、マ・クベ閣下は軍事裁判を取り仕切ってるみたいだから、後方支援部隊のほうの統括みたいな立場なのかも。

 ルナ・ツーにいるって言われてたから、そっち方面の基地の長官職に就いてるのかもしれないね」

カミーユ「そういえばGQXだとキシリアの隣には参謀長とか呼ばれてるヒゲの人がいましたね。

 正史と違ってマ・クベはキシリアとは距離を置いてるのかな…ってそういえば参謀長ってどこの階級ですか…?」

エグザベ「参謀長自体は階級じゃなくて指揮官の補佐をする役職だから、この階級って決まってるわけじゃないよ。

 キシリア様が少将だからあの方は佐官かな?」

カミーユ「GQXの設定の隙間が大きすぎる…

 そういえば、同じ階級でも上とか下とかがあるんですか?

 エグザベさんがアーガマに着任したときに先任とかなんとかって言ってましたよね」

エグザベ「ああ、軍隊でそもそも階級がある理由にもつながるんだけど、軍隊ってのは完璧な上命下達の組織だ。

 上の命令を下の階級の者がこなすことで軍務を達成する。

 実際そんなことはないしあったらいけないんだけど、もし内容が食い違う命令が同時に二つ発令された時にどちらを優先するかっていう、いわゆる指揮権の優先順位を付けるために、同じ階級だったらその立場に先についてるものが優先されるってことになってるんだ。

 あるいは指揮官が戦地でいなくなってしまった場合に、次の指揮をとる人が誰になるかっていう、指揮権の順位を決めるためでもある。

 同時に着任している場合は持ってる資格だとか、その人の軍歴の長さとか、場合によっては出身校とか、着任してきた基地の履歴とかで判断されるよ。

 GQXだとシャリア中佐とラシット中佐の関係がちょっとわかりにくいけど、作戦任務上の指揮権はシャリア中佐、ソドンの運行に関しては艦長であるラシット中佐がそれぞれ優先される。

 そうだな…例えるなら、「この犬を今日からウチで飼います。ワクチン接種はこの日に行きます」って決定するのがシャリア中佐、犬のエサの種類や散歩に行くルートを決めるのがラシット中佐…ってところかな?」

カミーユ「じゃぁ、昨日士官学校卒業して着任したばかりの新人の少尉と、すっごいベテランの曹長だとどっちが優先されるんですか?」

エグザベ「うーん…命令できる権限に違いがあるからな…とはいえ、少尉の命令のほうが優先。

 ただし、少尉の命令を曹長が修正具申することはありえる。

 少尉も、現場のベテランのいうことをちゃんと聞いて軍務として正当な命令を出す必要がある。

 あまりむちゃくちゃな命令はいくら階級が上でも兵に出せないし、出しちゃいけないってことだ。

 己の一言で兵たちの命が左右されるからこそ、士官は命令に対する責任を果たさないといけない。そのための高い階級だからね。

 だから逆にいうと、命令で行動しているという証明ができればその行為に対する責任は実行者の兵ではなく命令をした士官のほうにいくんだ。

 いうなれば、拳銃で人を撃った時に責任を問われるのは拳銃の弾ではなく引き金を引いた人間のほうってことだね」

カミーユ「拳銃の弾が兵士、引き金を引いた人間が命令した人ってことですか。

 そのへんはなんだかちょっと一般社会と感覚が違いますね…」

エグザベ「むしろそういう自分の立場がちゃんと守られてるって保証がないと戦場で兵士が安心して戦えないからね。

 だから軍隊で命令違反は厳しく罰をうけるよ。

 命令で守られる範囲を逸脱して、場合によっては部隊全員の命にもかかわることになるからね。

 そういうのをチェックする機構が、以前説明した憲兵ってわけだ。」

カミーユ「じゃぁ、もしそのめちゃくちゃな命令が通っちゃって、その上自軍の部隊壊滅、みたいになったら命令を出した側は何か処罰されますか?」

エグザベ「そのときの事情によるかな…将官からのむちゃな要求にどうにかこたえるために現場でめちゃくちゃな作戦を立てざるをえなかったってなったら、そもそもの命令を出した将官が処罰対象になる。

 将官からの要求はそんなに非人道的ではなかったけれど、現場側で非人道的な作戦を立てて実行されたっていうなら、その作戦立案者である現場責任者の佐官とか尉官が処罰対象になる、って感じ。

 そこらへんを調査するのも憲兵の仕事だよ。

 軍隊の作戦は必ず上で立案してる人がいて、それが下達されていくから、最終的にどの階級の人まで責任を遡及していくかは場合に寄りけりってことだ。

 もちろん、命令もなにでていなくて、完全に個人で問題行動したって場合は当然一般社会と同様の法律でその人が裁かれるよ。

 GQXでのシャア大佐…あの時点だと中尉だったけど…のガンダム鹵獲とか、あれ本当は命令にない行動をしたってことで処罰対象だと思うんだけどな…なんかうまいことなんとかなったから適当に流されてるだけで…」

カミーユ「…宇宙世紀の軍隊のライブ感…」

エグザベ「シッ」

 

(そのままとりとめのない雑談をしている二人

 するすると幕が下りてきて―――)

 

<SE:拍子木>

 

 

<SE:どこからともなく拍手が聞こえる>

 

 

<SE:拍子木>

(再び幕が上がる。

 そろってお辞儀をするエグザベとカミーユ)

 

エグザベ「カーテンコールならぬカーテン追記です」

カミーユ「終わりだと思ったんですけど…」

エグザベ「終わりだと思ったんだけど、なかのひとが書くつもりでいたのにうっかり書き忘れてるのを思い出したので…と。

 創作でものすごくよく見るけど実際はめったにない、『階級の特進』についてだよ」

カミーユ「!確かに!創作でよく見る!創作でよく見ます!

 二階級特進とかそういうやつですね?!」

エグザベ「そう、それ。

 一番目にしたり聞いたりするのはその二階級特進かな?」

カミーユ「軍人が任務中に亡くなった時に階級が上がる制度…でしたっけ」

エグザベ「そう、軍人だけじゃなく、警察官や消防官など、階級制度がある職種で行われること…なんだけど、実はこの殉職時の二階級特進、旧日本軍由来の慣例で、世界中で一般的な制度ってわけじゃない。

  ただ、昇任はしなくても殉職時に生前の功績を何かしらの形…勲章とか報奨金とかで讃える制度自体は広く存在する。

 ついでに言うなら、功績によって昇進するのは一階級だったり二階級だったり、時代によっては三階級なんてものもあったりするから、必ずしも任務中の殉職イコール二階級特進ってわけじゃないよ。

 さらには階級や殉職時の状況によっては昇進せず、他の制度で対応することもある。

 元々亡くなった後の死亡退職金や遺族年金の補償を手厚くするためって目的だから、そもそもそれらが最高ランクに達してる将官だと昇進はないね。

 あと当然任務に関係がない理由での死亡では昇進しない」

カミーユ「案外複雑な制度だった。

 殉職以外での特進だと、たまに戦場での功績をたたえて…みたいなのをみかけますけど、もしかしてこれもあまりない…?」

エグザベ「…ないといえばないけど、あるといえばある…かな」

カミーユ「なんか煮え切らない返答ですね…」

エグザベ「戦時に特進することは実際にあるよ。あとであらためて言うけど。

 功績をたたえて…っていうのは、現代だとすごくレアになる。

 なぜなら、現代の戦争だと基本的に個人が圧倒的な首級を上げて戦場の流れを一変させる…みたいな例がないからだ。

 現代の軍は基本的に部隊、つまり集団で動くから、もし戦地でなにかしらの功績を上げたことを讃えて、っていう場合はその部隊全体に対する勲章で対応している軍がほとんどだね。

 一応歴史的にいうと、その個人で圧倒的な功績を上げたことに対しての特進で一番有名なのはシモ・ヘイヘの五階級特進かな」

カミーユ「…シモ・ヘイヘ…ええと…あ、第二次世界大戦時のフィンランド軍の狙撃兵って出てきましたけど…つまり圧倒的な功績って…」

エグザベ「…まぁ、そういうこと。

 戦時の功績による特進でもう一つ有名なのは、ナポレオンの20代での将軍への昇任だ。

 おそらく彼らがシャア・アズナブルのモデルになってるんじゃないかなと思うよ。

 で、現実的にありえるほうの特進についてだけど、戦場で指揮官が何らかの理由により戦線離脱してしまった場合に、その次の指揮権を持つ人が一時的に代理を務めることがある。

 本来ならその階級になる条件を満たさないんだけど、他に適当な人がいない場合にその任を果たすのに必要な階級をその時だけ特例で与えるってことだ。

 戦時任官とか戦時特進っていうよ」

カミーユ「あ、さっき僕やサラさん達の階級のこと話したときにちょっとでてきました」

エグザベ「そう、あの時にちゃんと説明しておけばよかったね、うっかり流してたなすまない。

 で、通常は他からその部隊に必要な正規の階級を持ってる人がそのうち異動してくるから、そこで戦時任官した人は元の階級に戻るんだけど、場合によっては昇進扱いでそのまま昇任した階級で据え置かれることもある。

 俗に戦場ではどんどん昇進していくって言われるのはこの辺が理由だね」

カミーユ「そう考えると、一年戦争でのシャア・アズナブルの大佐の階級はありえるといえばギリありえるってことですか…」

エグザベ「その階級で積むべき経験が飛ばされちゃうから、あんまり極端に昇任が早いのも考え物だと僕は思ってるんだけどね。

 シャア・アズナブルも、地道に1から経験を積んで昇任していってたら、もしかしたら本編とも正史ともまたちょっと違うルートがあったんじゃないかなと」

カミーユ「その可能性の一端がシロウズさんだった…かも?」

エグザベ「あの人には、今後戦いの場に関わることなく穏やかに達者に暮らしてほしい。切実に」

 

(そのままとりとめのない雑談をしている二人

 どこからともなく幕が下りてきて―――暗転)

 

<SE:拍子木>




Why&What's that? (なぜなに)

さくっと書くつもりだったのがめっちゃ長くなった…!!
最初投稿してた時点では詳細不明だったのですが、GQXブルーレイ特典のブックレットにてコモリンがヒゲマンの副官であることが明記されてましたので修正しておきました。
エグザベくんのフラガナンスクール→少尉(入隊一年目)は、フラガナン(大学相応)卒業後に試験うけて入隊&軍大学校で士官教育研修受けてから着任なのかもしれないです。
フラガナンの中でもしかしたら幾つかコースに分かれてて、エグザベくんたち4人は士官候補生コースだったりするのかもしれないな…と思ったり。
士官教育期間に乗ってたMSがギャンで、そのあとジークアクスにソドン着任直前に乗ることが決まった(だから1話時点で機体転換訓練中)だったのかな?と愚考。
ギャンはサイコミュがついてないそうなので、フラガナンでは他のサイコミュのついてる機体(GQXゲルググ?ガンダムのリバースエンジニアリングらしいし…)だったのかな…
この辺は詳細が出てないので完全に想像ですが。

戦時任官、ガンダム正史で言うとファーストのブライトさんがコレ(士官候補生→中尉)だと思います。

軍大学校とは軍人が勉強するための学校のことです。
高度な軍事技術や戦術、戦略など、軍隊を動かすのに必要な佐官教育や将官教育、資格を取るための教育研修などを受けたりします。
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