(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝 作:ガンダム初心者のミリオタ
元投稿:カミーユ?なんだ…12 https://bbs.animanch.com/board/5775554/ 20-22
130さんのハーメルン投稿でいうと『茨の冠』付近、『出兵』より数日前。
訓練宙域から戻り、宇宙の匂いの残滓が漂う格納庫内でコクピットからでると、専属整備兵のイマニュエル上等兵が敬礼しながら声をかけてきた。
「お疲れ様です、おかえりなさい中尉」
「お疲れ様、戻ってすぐの相談で悪いんだけど、もうちょっと操縦の反応速度上げられないかな」
「は?
既に割と今結構どころでないシビアな調整してますけど?」
すごい顔された、ごめん。
「…いや、でもその、やっぱ反応が遅いなって…」
おそるおそる進言するとイマニュエルは途端に考え込む顔になった。
キャットウォークからひょい、とコクピットに乗り込んできたイマニュエルがコンソールに機材をつなぎだしたので場所を譲る。
「うーん…これ以上……単純に出力上げるだけだとパワーバランスが崩れるし…といって制動の補助AI組み直すのも時間がかかるし…マニュアル制御とオートマチック制御プログラムの切り替えをいじる…いや…パラメーターが…」
なんかぶつぶつとつぶやきだして、プログラムチェック用につないだキーボードをすごい勢いで叩き出し…あれ?
「イマニュエル上等兵って左利きだっけ?」
「え?ああ、これですか。
中尉みてて、左でもペン使えれば持ち替えしなくて便利だなって思ったんで練習しました」
右手でキーボード、左手でペン型デバイスでタブレットを叩きつつ答えてくれた。
さらっというけどマルチタスク能力すごいな。
一流の整備兵になるにはそういう能力も必要なのかな?
あ、そうそう。
「そういえば、遺書は書いたかい?」
「はい。書いたというか、あんまり書き変えることもなかったのでちょっと日付更新したくらいですけど」
「まぁそうだよね」
そもそも艦に乗ってたらそんなに荷物が増えることもないし、任務内容だって基本的には部隊内で共有されている。
「…クワトロ…大尉、の遺書は結局見つからなかったんですか」
「…あったら荷物は今頃処理できてるよね…」
お互いため息をつく。
じっとりとした目でイマニュエル上等兵がこちらを見た。
「自分で自分の荷物処理させるためにも、彼は生きたまま捕縛してほしいんですけど。
でなければ遺言がわりに私物破棄の許可もらってください」
遺書というとなんか情緒的なイメージになるが、実態は自分で自分の私用の物品類が管理できなくなった場合…ありていに言ってしまえばMIAやKIAになった時の、私物処理や業務引き継ぎの委託書だ。
もちろん多少の私信を書く人もいるが、それよりも重要なのは現在自分が個人で抱えている業務内容があればきちんと書き出しておくことと、私物を破棄、あるいは相続者へ譲渡するための許可である。
クワトロ…キャスバル・レム・ダイクンの場合、遺書どころか私書すら見つからなかった所為で、借用品は返却したものの、私物はメモ用紙一枚に至るまで全てまとめて自分の執務室の奥にて保管継続中となっている。
ゲーツ大尉が他に移動できないか空いている部屋や倉庫のスペースを探してたみたいだけど、場所に限りのある艦内ではなかなかそれも難しいようだ。
流石に廃棄物と同じ場所に置くわけにもいかないし、といって通常空いている場所があるなら基本的には艦内生活に必要な物資類の保管が優先されるし…今僕が使ってる執務室…名目上は派遣兵用控室だが…元は軽営倉用に確保されていた部屋の一つらしい。
艦内で軽微な問題行動…憲兵が出てくるまでもないような、ちょっとした諍いを起こしたような奴を一晩入れておくための謹慎部屋にしていたり、あるいはブライト艦長が倒れたときに落ち着いて過ごせるような療養部屋にしていたりと今までは何でも部屋みたいな扱いになっていたが、いつの間にか部屋の中が整理されて書類作業ができるようにされていた。
ついでにキャスバル・レム・ダイクンの部屋の片付けも行っていたようで、彼の部屋はすっかり綺麗にされていた。
そのときにまとめた荷物が今僕の執務室にあるというわけだ。
同じジオンだから、といういいがかりでもないような建前で僕が出撃中、つまり機体整備作業がない時間にイマニュエル上等兵はキャスバル・レム・ダイクンの部屋の整理担当の一人に充てられていたらしく、彼女から「着用済の下着は捨ててもいいですか!」とブチ切れられながら上申された時はさすがに頭を抱えた。
念のため衣類はすべてクリーニングしてからパッキングしてもらったけど下着は捨てても良かったかな…でも勝手に捨てるとそれはそれで器物損壊罪という問題が…いくら下着とはいえ…
でも今際の際に「下着は破棄していいですか」とかこっちだって聞きたくない。
「エグザベ中尉はどなたに遺書預けたんです?艦長ですか?」
キャスバル・レム・ダイクンの下着の処遇についてはともかく。
「いや、ハマーンさんに頼んだよ、相続者名義としてはカミーユになってるけどまだ未成年だからね。ついでに僕がいない間の後見人役もお願いしておいた」
彼女なら悪いようにはしないと思うし。
イマニュエルは、自分の遺書は連邦軍経由で本国の家族へ届くようにしてもらったらしい。
今回、ドゴス・ギアへ異動する予定になったのでそのための引継ぎ準備代わりに更新の必要が出たというわけなのだが、実際のところ、何か高価な物品を所持しているとかではないのでたいした内容でもないから、万一カミーユが中身を見たら拍子抜けするかもしれないな。
もちろん、カミーユが中身を見ることがないようにするのが第一目標であることは当然だけど、そうじゃなくなる可能性というのはどうしてもこの仕事は付きまとう。
その可能性をどうにかできる限り下げるためにも、できるだけ愛機の調整をしてほしいんだけど…うーん、頭抱えてるな…
整備班には毎回無茶ぶりしている自覚はある。
とはいえどうにか調整がかけられたのか、一息ついたイマニュエルがテストプログラムを走らせながらこちらを見た。
「後見人役かぁ。カミーユ君たちの身の安全がもうちょっと保障されればいいんですけどね。
いくら護衛だといっても、カミーユ君はちょっと繊細なところがあるから、憲兵(たにん)がずっと近くについてるのもやっぱ息が詰まるでしょうし」
カミーユが整備班に多少出入りしているらしい関係で、最近彼とも少し話すようになったと聞いた。
どうしてもジオン側からの出向という立場のせいか、イマニュエルが整備班で孤立して無いか少し心配だったのだが、本人の明るい性格とアストナージさんが気にかけてくれているおかげでなんだかんだありつつもアーガマの皆とそれなりにやれてはいるらしい。
しかしこんなにすぐ異動になってしまったのは、せっかく新しい職場になじみ始めたところだったろうに少し可哀想なことをしてしまったかもしれないな。
本人は”新しい技術を学ぶ良い機会なので気にしないでください”って笑ってたけど。
「中尉が異動した後ちょっと心配ですね、この前も絡まれてたし…」
「えっ何それ絡まれてた?」
「おっと」
聞いてないぞ。
つらっと続けられた科白におもわずイマニュエルの顔を見ると、彼女は「やべっ」とでも言いたげな顔で口を押さえて視線を逸らした。
「…イマニュエル上等兵」
「すみません、中尉がずっと忙しそうで大変だからあまり心配かけたくないし、休憩時間で業務外のことなので言わないでほしいとカミーユ君が。
アストナージ曹長はご存知です、一緒にいましたし。
あと絡んできた人はエマ中尉がシメてたみたいです」
ほんの少しだけ「上官」の声を出すと、観念したようにイマニュエルが白状した。
「…その二人が処理してるならまぁいいか…一応そういうことがあったら上官へ報告するのが規定だから、ちゃんと守ってくれよ。今回は不問にするけど」
念のためあとで確認しておこう。
それと僕が異動したあと、後任はゲーツ大尉になるから彼にも言っておかないと。
カミーユだけでなく、他の子供たちのことまでみてもらうことになってしまうのは負担をかけてしまって申し訳ないのだが。
「はい、申し訳ありません。
でもエグザベ中尉だってしばらくまともな休息日とれてないじゃないですか。
それこそ服務規定違反ですよ」
「…まぁ、それを言われると弱いな」
業務を回せる人員が足りないのは事実だし、そもそも健康やパフォーマンス維持のためにも本当はちゃんと規定通りの休息をとらないといけないのはわかってるんだけど。
前に休息日に何していいか良くわかんないし、ただぼーっとしてるだけになってしまうので仕事してるほうが気が楽だ、っていったらカミーユに怒られたな…
「せめてカミーユ君や新しく来た子供たちの周辺だけでも、なるべく早く状況が落ち着くといいんですけどね。
中尉がちゃんと休息日とれるかどうかもかかってますし」
「それはこれからの僕らの頑張り次第かな」
プログラムを走らせ終わったのか、再びカタカタとキーボードになにやらコードを打ち込み始めたイマニュエルがこちらをちらりと横目で見た。
「そうですね、とりあえずドゴス・ギアに異動するまでに一通りなんとか調整してみせます。
行く前に一度乗っておきたいですよね?」
「…できるかな?」
異動前に調整し終わってそのフィードバックまでできれば一番いいんだけど、流石にそこまではここにいる日数ももう少ないし求めるのは酷だろう。
ドゴス・ギアに行った後に調整できる時間があることを祈ろう。
「してみませますよ!
パイロットに常に最高のパフォーマンスを提供できるように、担当MSを最高の状態に保っておくのが我々専属整備兵の仕事ですから」
「ありがとう、そろそろデブリーフィングの時間だから僕は行ってくるよ。
よろしく頼む」
「はい、お任せください!」
コンソールから顔を上げてこちらを見て微笑むイマニュエルに感謝を述べる。
頼もしい声を背に、僕は格納庫を後にした。
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MIA:軍務中行方不明 KIA:軍務中の死亡(殉職)のことです。
クワトロの私物がまとめて保管中ってなってたの、こういうことかなって…本来なら遺書に従って遺族や相続人に私物は返却、あるいは破棄するんですけど、なんか本編のクワトロは遺書書いてそうにない…おそらくは一定期間保管後は規定に従って破棄もしくは希望者に譲渡って扱いになるかなって思います。
そのうち鉄道忘れ物市みたいに、軍主催のチャリティーバザーでクワトロの私物が売り出されてるかもしれません。
本編だとエグザベくんの思考が半分くらい宇宙に溶けかけてたけど、このSS内だとまだまっとうですね…訓練直後で身体使ってきたからかな?
GQXではソドンがシャアを探してたけど、あれシャア個人を探す任務というよりは、多分一話時点でのソドン(シャリア・ブル中佐)の任務がMIAおよびKIAの遺留品類捜索・回収で、その一環でシャアや赤いガンダム目撃についての確認作業があるんじゃないかなと思ってます。
わりとソドンの空気がまったりしてるのは、平時というのもあるけど比較的後方支援に近い、緩めの任務だからってのもあるからかも。
まぁその後コイツ本物だ!になるわけですが…
エグザベくんに無茶ぶりされるギャンの整備や調整、某魔改造的な番組の技術者みたいなことやってるんだろうな…って思ってます。
個人的なマイベスト魔改造はキングスパニエルちゃんです。つよい!はやい!かわいい!
マジでちょっと夢に出てきそうな挙動だったけど…その夢、どう考えても悪夢です。
スレのまとめ(デブリーフィング資料)にて仮題として「クワトロパンツ」ってかかれてるのみて死ぬほど笑ってしまいました、いや確かにそうなんだけど!我ながらひどいもん書きましたね!!
家族でもない他人の下着を片付ける羽目になるの、シンプルにセクハラでかわいそう。家族でも異性の下着はちょっと嫌だよね。ごめんイマニュエル。
ところで宇宙の匂い、正確に言うと宇宙空間から帰ってきた後の宇宙服等から漂う匂い(宇宙に漂う微量成分と宇宙船内の空気が結合した匂い)がTenQで嗅げると聞いて、先日ふらっと行ってきました。
遠くにうっすら焦げた金属っぽい苦みと香ばしさのある、甘さは少なめの酸味があるフレッシュなベリー系の香りって感じでした。
確かにラズベリーぽさがある。なんだかおいしそう。
個人的に割と近い香りかもと思ったのがヴァシリーサのグレイスルージュです。
バラエティショップやドラッグストアとかの香水コーナーに置いてあることが多いプチプラ系香水です。
自分の肌に乗せてみたときは割と甘さ少なめの、果実感が強い香りになった(自分は比較的ムエットと肌乗せしたときの香りの差が少ないタイプです)のでTenQの宇宙の香りと近いと思ったんだけど、人によっては甘みのほうが強めに出るかも?って感じの香りですので、参考程度に…
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