(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝 作:ガンダム初心者のミリオタ
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130さんのハーメルン版でいうと『宇宙の白い死神』あたりの時期、「宇宙の亡霊』よりは前
整備中のMSが並ぶ格納庫。
シロッコに人を呼んでくるように頼まれたんだが…目当ての奴は…あいつか。
この俺がかわりにメッセンジャーやってやろうってんだ、せいぜい感謝しろよ。
「エネルギーパック満充電、よし…サブパック補充、よし…停戦信号弾定数補充…」
「あ?停戦信号弾?ンなもんいまだにご丁寧に補充してんのか」
「びゃっ?!」
真後ろから覗き込むように声をかけたのが悪かったのか、ギャンに張り付いてた若い整備兵がびっくりした子猫みてぇな声を上げて飛び上がった。
その声でこちらに気づいたのか別の部位の整備をしてた奴がひょい、と顔をのぞかせてきた。
「あれ、ヤザン大尉。どうしましたか」
「あ、わりぃな。
お前…イマニュエルだったか。艦長が呼んでるぞ」
手を振って何でもない、と示してから、毛を逆立てた小動物みてぇな顔でこちらを見てくる優男じみたツラの男…いや、女か?どっちだかわからんがまぁ今はいいか、整備兵のほうに向きなおる。
本来ならこれはエグザベの仕事だろうが、あいつは今別の部署から緊急の呼び出しを食らってたから仕方がない。
「…はい…少しだけお待ちください」
一緒にこいと促してやると、手早く簡単にチームメンバーに申し送りをしてから若干不審げな表情をしてはいるものの素直についてくる。
自分の仕事をわきまえて、上官の指示にちゃんと従う良い子は好きだぜ。いい教育受けてんな。
「ヤザン・ゲーブルだ。連れてきたぜ」
「はいれ」
前に一度そのままドアを開けたらエグザベにめちゃめちゃ怒られたので素直にノックしてから声をかける。
上に立つものが礼儀もなってないようだと舐められるとか何とか。
流石にシロッコからも苦言を呈されたので、それからはちゃんとしてる。えらいだろ。そうでもないか。
中にいるシロッコの声をちゃんと聞いてからドアを開けると、艦長室にいたのは奴だけだった。
「御苦労、ヤザン。
すまないがエグザベがくるまで少し待っててもらうが構わないか。
すぐ戻ってくるはずだ」
「はい、大丈夫です。
今行っていた作業は残りのメンバーに引き継ぎしてきましたので」
ソファに座って待ってて構わない、というシロッコと、それを首を振って固辞するイマニュエルとやらの会話を聞きながら退出しようとしたら、シロッコに呼び止められた。
「あ?俺の仕事は終わっただろ。
まだなんかあるのか」
「お前に何かあるわけではないが、立会人が必要なのでな。
ああ、エグザベが戻ってきた」
「エグザベ・オリベです。入室許可願います」
シロッコが言うが早いか、軽快なノックの音と同時に扉の外から聞こえてきた声にシロッコが許可をだすと、すぐにエグザベが顔を出した。
…ん、今エグザベがノックする前に把握してたな…?
「すみません、遅くなりました」
きちんと敬礼してから入室してきたエグザベを自分の脇にシロッコが呼び寄せた。
「そんなに時間はたっていない。構わない、緊急の要件だったのだろう。
彼女もすでに来ている。
…エグザベ」
どうやら話題の中心になっているのは己だと悟ったらしいイマニュエルが首をかしげている。
それをほほえましい顔でみたシロッコが、デスクの上に置いていたなんかの紙を取り上げ、エグザベに改めて声をかける。
あ、今彼女って言ってたな。イマニュエルは女だったのか、そりゃ後ろから声かけたのは余計に悪いことしちまったかな。
エグザベが一つ頷き、同じくデスクの上にあったトレイをとりあげて、所在なさげにしているイマニュエルに向きなおった。
「ああ、すまない。
君を呼び出したのは、重要な話があったからだ。
…イマニュエル・ジャン伍長」
「…え…えっ?」
「おめでとう。
イマニュエル・ジャンにおいては本日付けで伍長へ昇進することを承認する」
鳩が豆鉄砲どころか大砲食らったような顔になってるイマニュエルに、シロッコが丁寧な仕草で辞令を差し出した。
古式ゆかしき紙の辞令だが、昇進の実感がでるとかで割と評判いいらしいなコレ。
…俺が昇進した時もらったやつはどこにやったかな…どっかにはあるはずだが。
エグザベも恭しくトレイを掲げる。
中には小さい徽章が数点納まっていた。
「これは伍長の階級章、こっちは襟章。
今日中に付け替えるようにしてほしい」
「あっ…ありがとうございます!
パプテマス・シロッコ艦長、エグザベ中尉」
ようやく実感がわいたのか、顔を輝かせてイマニュエルが辞令と徽章を受け取った。
なるほどそれで立会ね。
「戦時任官か?」
「いや、タイミング的にこんな形になってしまったけど、ちゃんと正規の昇進だよ。
共和国軍のほうからパプテマス・シロッコと僕で代理で承認することを了承得てる」
つまり既に下士官昇進試験は受けてたがその結果が出る前にここに来ちまってた、ってことか。
まぁ運が悪かったなそりゃ。
「イマニュエル・ジャン伍長。
君の行う整備は緻密かつ正確で優秀だと整備部からもエグザベからも聞いている。
これからもその能力を我々のために生かしてほしい。
我々もまた君の仕事ぶりを正当に評価することを約束しよう」
「君の整備のおかげで僕のギャン改-IIは常に最高のパフォーマンスで動くことができている。
これからもよろしく頼むよ、イマニュエル伍長」
「はっ!ありがとうございます!
より一生精進することをここに誓います!」
「おお、がんばれよ」
「…はい、ありがとうございます」
おい、俺にだけ態度違わねぇか。さっき後ろから驚かせちまった恨みか。悪かったって。
どっかのオーディオメーカーの犬みてぇな仕草でとぼけた顔して首をかしげてるエグザベはともかく、シロッコは多分理由わかってんな、含み笑いしやがってこのやろう。
「昇進祝いだ、立会したよしみになんか奢ってやろ「結構です」
食い気味に否定するイマニュエルにとうとうシロッコが噴出しやがった。
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▽いまにゅえる は ごちょう に しょうしん した !
悪いやつじゃないんだけど微妙に距離感が近いせいで、特に初対面近い女性からはやや警戒されがちヤザン。
ヤザンの行動はよく言えば男女の性差を気にしない、悪く言えばがさつで女性に対して遠慮や配慮がない。なんかずっと男社会にいた(男兄弟育ちとか男子校とか)ぽさがある。
親しくなると男女の関係なく誰とでも対等な関係を結べそうなフラット感なんだけど、まだちょっとこの時点では難しいかな!とはいえこの後イマニュエルがヤザンの乗ってるハンブラビの整備を手伝ってるうちに、いつの間にか普通に会話するようになっててシロッコがこっそり大笑いしてると思います。
戦時任官(戦時特進)とは戦闘中の死傷などの理由によりその役目を果たせる権限を持った階級の兵がいなくなった場合に、必要な権限を果たせるような階級へ臨時で昇進させることです。
詳細は弊SSのこちら↓で解説しましたので参考にしてください
本編別軸『W&W Litte Theater:How come military?』
アクシズ殲滅戦とはいえ、一応建前上「虐殺」ではなく「戦争」であるので戦闘開始前に停戦信号弾を一応使ってるんじゃないかな、と予想。
もっとも、信号弾撃っても意味は通じなさそうですが。アクシズ側は意味知らない人のほうが多そう。
しょうがないね、多分アクシズ側は正規の訓練を受けてる軍人を温存するために、真っ先に前線に出されてるのは肉壁用即席パイロットだろうからね…そういう知識も何もなく、ただ前につっこめ敵が見えたら撃てってだけ教えられてるんだもんね…うーん、特攻兵。
とはいえ、戦後の批判をかわすためにもそういう「こちらは常に人道的に降伏を勧告していたがアクシズ側が無視して攻撃してきている」っていう実績を作っておくのは必要。
全て軍事命令と軍規に従って行動している正規の軍の行う軍事作戦であるっていう建前があるのとないのとでは戦後処理が全く変わるので。
このへんは多分シロッコの思惑。
そういう『上官の責任として兵士たちを守る姿勢を公に見せる』『兵士として上官の命令にちゃんと従う』って行為が重要なんですよ…その場のライブ感で動いた結果物語が始まると思えば、命令違反ってすごくドラマチックな舞台装置ではあるけど、多用すると単なる無法地帯なので軍隊である意味がなくなるんですよ聞いてるかライブ感で動く宇宙世紀の軍人ども。特にその赤いの。
どっかのオーディオメーカーの犬→https://www.victor.jp/nipper/