(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝 作:ガンダム初心者のミリオタ
エグザベくんが出撃をおやすみしてる時の話です。
機体の駆動部の設計図とプログラムをタブレットに表示しつつ、整備部の控室の片隅で頭を抱える整備兵が一人。
苦笑しながら近づいたらすぐに反応して立ち上がって敬礼してきた。
「あっ、お疲れ様です整備長。
すみません、御用でしたか?」
「お疲れ、イマニュエル君。
ギャンのプログラムチェックかな?」
手を振って敬礼を下げさせる。
タブレットとにらみ合ってたのは、最近パプテマス・シロッコ艦長がどこぞから引き抜いてきたエグザベ中尉の専用機ことギャン改-IIの専属整備兵であるイマニュエル伍長だった。
最初ジオン共和国からの派遣兵士を受け入れると言う話を聞いたときは、正直艦長の正気を思わず一瞬疑ったものだが、蓋を開けてみればパイロットもその機体の専属整備兵も礼儀正しく真面目で誠実、自分の能力に自信はあるがそれを奢るようなことはしない、とまぁうちのやんちゃどもに二人の爪のアカを煎じて飲ませてやろうか、と思わず一瞬考える程度には良い奴らだった。
あとやたらイケメン。それはあんまり関係ないか。
「はい、いいえ、あの、チェックというか…プログラムの見直しというか…
どうもエグザベ中尉の操縦に合ってないような気がしまして、どうにかならないかと…」
顔を曇らせたイマニュエル君がちら、とタブレットに上官の前で失礼にならない程度に視線を落とす。
すらりとした、中性的な雰囲気の彼女…正直最初来た時に男性と間違えたせいで「イマニュエル君」呼びしてしまったせいで、今更さん付けに変えるのもな…ということで君付けのままで押し通してる。本人は自分が一人外様だからだろうと思ってるようだが。
いや、そうじゃないんだ、ごめんよ。
それはともかく。
先日伍長に昇進したばかり、入隊してから3年だかそこらだったかな?数年程度だという彼女だが、腕はなかなかいい。
若年ゆえの知識の絶対量不足は多少あるものの、それを変に取り繕うところなく経験者に聞いたり自分で調べたりしている学習意欲の高さも好感が持てる。
なにより、細かい部分も手を抜かず、きっちり仕上げてくるのが素晴らしい。そういうほんの些細な部分でもパイロットの運命が変わることもある、というのをきちんと理解しているものは彼女の階級程度ではそれほど多くはないのだ。
「自分からみたら十分パイロットの操縦についていってるようにみえるけどねぇ。
まぁ、しばらくパイロットの出撃が休みだというから、この機会で一気に全部やりたいのはわかるよ」
パイロットのエグザベ中尉が出撃時の負傷によりしばらく休みをとる、と伝達があったのは昨日のことだ。
連日のように出撃があったせいで、機体整備も間に合うかどうか、というような状況だったので正直整備部としても長めに休んでくれるのはありがたい、流石に口に出しては言わないが。
「それはともかく、ギャンか…正直ジオン側の機体についてはよく知らないからな。
制御プログラムも違うだろうし…見ても大丈夫かい?」
「はい、これは大丈夫です。
できれば何か意見をいただけるとありがたいのですが」
タブレットを借りて先ほどから表示されてる機体の設計図とプログラムを改めて見てみる。
違うといえば違うものの、ギリギリわかる、か。
「…マグネットコーティングは試してみたかい?」
「ええと…連邦側のMSに使われてる技術ですよね?
試してみようと思ったんですけど、自分の知識だけでは流体パルス技術との折衷がうまくいかなくて」
「ふむ…制御AIもだいぶピーキーな調整になってるから余計に難しいか…」
いや本気で大丈夫なのかいこの調整。連邦ともジュピトリスともプログラムの系統が違うとはいえ、おおまかに見ただけでもこのプログラムを乗せた機体の操縦はなかなかだと思うんだがな…とはいえけろっとした顔で毎回エグザベ中尉は戻ってきてるしな…大丈夫なんだろうな…少なくとも彼に限っては…
「よし、わかった。艦長に聞こう」
「は?
あ、いえ、すみません。艦長?」
不思議そうな顔をするイマニュエル君ににや、と笑いかけてやる。
「ウチで一番のMS設計者だよ」
「…ということで相談に来た次第であります」
パプテマス艦長にアポをとって、早速イマニュエル君と二人で艦長室に突撃する。
「…なるほど。
確かに…そうだな、だいぶ癖が強い調整がされているな」
若干言葉を選んだな…という気配をのぞかせた艦長がイマニュエル君が差し出したタブレットの画面を見やすいように大きなスクリーンに投影しながら言う。
すいすいと艦長がスクリーンに投影された表示を変更させたり、新しいウィンドウを展開させたりしていく。
いやまさかこの速さで艦長はコードを読んでる?…この方なら読めそうだけど。
「…このあたり、とここ、それとこっちも。
すこし書き変えても?」
ややあって、ウィンドウを幾つか表示させた艦長が画面のなかのコードのいくつかを指しながらイマニュエル君に尋ねてきた。やっぱ読んでたわ流石。
「はい、バックアップは取っていますので、このまま直接ここで書き変えていただいても大丈夫です」
「わかった、すまないが少し待っていてくれ」
艦長がイマニュエル君からプログラムのコードをいくつか軽く確認してから、つなげたキーボードを一気に叩き出す。
あっという間にプログラムが書き変えられていき、数分後。
「待たせたな、とりあえずこれで一度テストしてみてくれるか。
もしなにか不具合があれば遠慮なく元に戻して構わん」
パプテマス艦長からタブレットを返却されたイマニュエル君が、シミュレーション用のテストプログラムを立ち上げた。
「…すごい…動きが変わってる…」
驚嘆しながらイマニュエルがシミュレーション結果を見つめる。
艦長が手を入れた箇所のコードを示しながら、説明する。
「すこし制動のバランスをいじったついでに、流体パルスの調整もしてみた。
さらにマグネットコーティング技術を組み合わせれば少なくともあと5%は早くなるはずだ。調整用のコードはこれだ、駆動部にマグネットコーティングをいれたらこちらを追加でいれて確認してみたまえ。このコードを組み込めば機動はおそらく問題なく制御できるだろう。
細かい調整はエグザベが復帰後に相談しろ、必要があれば私のところに直接来てもいい。
いっそついでにスラスターも換装するか」
「換装?
いえ、本国から新しい装備品の機材は…」
首を傾げたイマニュエル君に、艦長が意味ありげに微笑んだ。
「…イマニュエル、なんか…機体に手を入れたかい…?」
ようやくパプテマス・シロッコから一日2時間までの訓練だけを許可され、さっそくギャンに乗りこんで、久々にコンソールを少し叩いたところで違和感を感じて手を止める。
いや、違和感といっても嫌なものじゃない。むしろ自分の操縦にピタリとはまるような、まるで複雑なピースがカチリとはまったかのような心地よさがある。
コクピットの前で最終調整を行ってくれているイマニュエルに尋ねると、彼女が顔を上げて答えた。
「はい、中尉が出撃をおやすみになってる間に、ギャンのオーバーホールをしたついでに駆動制御プログラムや制動AIの調整もしまして。
あと装備の換装を少々」
「換装?
いや、本国から新しい装備品の機材は…」
「パイロットのほうもイマニュエル君と同じこと言うねぇ。艦長に相談したら、ギャン改-II用に設計してくれたんですよ」
ひょこ、といつの間にか近づいていたらしい、ドゴス・ギア整備部の整備長が横から顔を出してコクピットに座る自分を覗き込んできた。
話に聞くところによると、彼は木星時代からパプテマス・シロッコの下で働いているらしく、連邦側のMSにもパプテマス・シロッコが設計したジュピトリス独自規格にも詳しいのだそうだ。
とはいえ、流石にジオン系列のMSは今回が初めてだといっていたので、ちょっと申し訳ない気持ちにはなったが、毎回きちんと仕上げてくれるのは本当にありがたい。
「ああ、お疲れ様です、整備長。
パプテマス・シロッコ艦長が?」
「はい、自分だけだと知識が足りなくて。
整備長に相談したんです。
そしたら、艦長に直接話を上げてくださって、艦長がその場で機体の制御プログラムを改良して、装備も専用品を設計してくださいました。
スラスターだけでなく、バックパックやジェネレーターも換装していますから、スピードもパワーも上がってます」
「へぇ、流石パプテマス・シロッコだな」
すごいですよ、これがこうなってこっちはこうで、艦長もここの調整について効率の良いやり方を教えてくださって、と丁寧ではあるものの若干早口で、コンソールに手を伸ばして色々表示させながら説明してくれるイマニュエルに内心苦笑する。
彼女言っちゃなんだけど、案外機械オタクなところあるんだよな…どうやらだいぶパプテマス・シロッコのところに通い詰めたらしい。
あとで自分からも御礼を言っておこう。
「うちの艦長はすごいお方なんですよ」
そんなイマニュエルのやや後ろでドヤ顔で腕組みしながら大きくうなずく整備長。
なんだっけこのポーズ…ミゲルが前になんか言ってたような…後方なんとかってやつだっけ…?
そんな整備長に、きらきらした顔でイマニュエルも同意する。
「ええ、パプテマス艦長がわーっとコードを一気に見たと思ったら、調整の必要がある部分を指摘して速攻で書き変えてくださって。
機体だけじゃなく、パンジャンドラムにも手を入れていますから、さらに中尉のイメージに近い動きができるようになってるんじゃないかと思います。
もうすこし細かい調整は戻ってきてからですけど」
一通り説明終わったイマニュエルが、整備長と共にコクピットの前からキャットウォークへ移動する。
「そうだな、まずはどれだけ動くのかを確認してくるよ。
それだけ変更してるなら今までと操作の感覚が多少変わってるかもしれないし」
「できるだけ前までの操作性と感覚が変わらないように努めてはみましたけど、何かあったら遠慮なくフィードバックお願いします」
「了解」
イマニュエルと整備長が規程の位置まで下がって、合図がわりに敬礼したことを確認してコクピットの扉を閉めてから、ヘルメットをかぶる。
誘導班の指示に従い、ハッチ前の射出ユニットへギャンを移動させた。
とりあえず操作性は問題なさそうだ、いや、少しレバーやペダルの感覚が変わってるかな?
動きがなめらかで細かい調整が効きやすいが、ほんの少し力加減が変わっただけで機体の制動がだいぶ変わりそうだなこれは。
だが、これくらいなら数回動かせば感覚はつかめるだろう、問題ない。
格納庫の扉が開き、目の前に宇宙空間が広がる。
「エグザベ・オリベ、ギャン改-II。出ます!」
グリーンシグナルと同時に、ギャンのレバーのノッチを最大までいれた。
本当はスレで投下しようと思ってネタだけ考えてはいたんですが、当時はタイミング外して書けずじまいでした。
ということでお焚き上げ代わりに完成させました、前半は整備長という名のモブが語り部。
マグネットコーティングは連邦側の技術とのことだったので、多分ギャンにはついてない(流体パルスアクセレーターだけ)かな?と思ってるんですけど、違ってたら教えていただけると嬉しいです…一応頑張って調べたけどガンダム世界の技術ツリーは難しい…
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ドゴス・ギアの整備長
階級は大尉。
ジュピトリスの頃からシロッコのもとで働いている、そこそこベテラン。
名前考えるのが面倒になったので役職で押し通しました。
今後も出てくるかどうかは未定です、次出てくることがあったらなんかいい感じの名前考えます…(4/11追記:名前考えました、ブエナベントゥーリオ・”ベンティ”・ナヴラット氏ですベンティって呼んであげてくださいよろしく!)
あと130さんが何か設定もし作ってるようならそれに合わせます…