(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝   作:ガンダム初心者のミリオタ

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時系列的には130さんの『戦場遊戯』の後~『公王即位』のあたりくらい、最終決戦よりは前。
拙作の前話『Maintenance』のちょっと後くらいに思っていただければ。


Break Time

「パイロットのさぁ…」

「えー、あたしは医療班の…」

どこでもそういう話題が好きな人はいるものよね。

斜め前に座ってる女性下士官二人組が、食事をしつつこそこそとどこの誰がイケメンか、ってことで盛り上がってる。

最近人員も増えたし、この前はMSパイロットチームの男性の何人かが訓練後の休憩時間、格納庫の隅っこでどこの誰が美人か、で盛り上がってた。

そこにアドルがいたらひっぱたいてやろうかと思ったけど、いなくてちょっとほっとした、のはまぁ横に置いておいて。

ミーハーな話題で盛り上がるのはいいけどさ、ちょっと盛り上がりすぎじゃない?

注意したほうがいいのかな…でも彼女らのほうがたしか先任だし…

「えーエグザベ中尉は顔はめっちゃいいけどさぁ…あの人ちょっとデリカシー足りてなくない?」

「確かにーちょっと女心がわかってないっていうかぁ、ノンデリって感じー」

いつの間にか話題がここ最近任官してきた人達から転じて、エゥーゴから異動してきたエグザベ中尉のことになっていた。

女心がわかってないのは同意するけど、ノンデリっていうほどかな…?

首をかしげてたら、隣からサラもこそっと耳打ちしてきた。

「エグザベ中尉が女心に疎いのはともかく、デリカシーがないってほど失礼な人じゃないわよねぇ?

 シドレもそう思うでしょ?」

「うん…むしろ失礼とは程遠いところにいる人だと思う」

パイロット業務の一環で少し交流しただけではあるから、私たちだってあの人のことをちゃんと知ってるって言えないかもだけど、カミーユや、私たちの姉妹のファから話を聞く限り、むしろ相手のことを最大限思いやってくれる人ではあると思う、ちょっとばかり感情より理性を優先しがちで判断がシビアというか…情が薄いわけじゃないんだけど、こう…微妙なところが…特に恋愛がらみのことには疎いところがあるだけで…

「顔がよくてもノンデリじゃぁ「本人のいないところで勝手にジャッジするような噂話するほうがよっぽどデリカシーのない行為だと思いますよ」

女性たちが何か言いかけた科白にぴしゃりとかぶせるようによく通る声。

彼女らが座っていたところの後ろの席から、すらりとした人が立ち上がった。

「あ…えっと…ジオンの…イマニュエル、さん」

まさか関係者がいるとは思わなかったのか、何か言いかけた女性がイマニュエルさんを見上げて目を白黒させる。

イマニュエルさんはちらりと無感情にそんな女性二人組を見た後、そのまま食べ終わった食器のトレーを持って立ち去ってしまった。

あの女性たちが最初に座った時には確かまだいなかったから、女性たちが食べ始めた後でやってきて、先に食べ終わったのだろう…そして、おそらく話を後ろで全部聞いていた。

私とサラは、二人で視線を交わし合うと、急いで食器を片付けた。

 

「イマニュエルさん!」

格納庫、エグザベ中尉のギャン改-IIを駐留させてる整備ブースの柱に軽くもたれかかりながら難しい顔でタブレットをみてたイマニュエルさんに、二人で呼びかけると、すぐに顔を上げてくれた。

「おや、どうかしましたか、サラ曹長にシドレ曹長。

 機体の整備についてなにかありましたか?」

「ええと…さっきのあの、噂されてた…」

あまりに自然な態度に、逆に拍子抜けしてしまって言おうと思ってたことが飛んで口ごもってしまい、サラから脇を軽く小突かれた。

「ああ…まぁ、ああいうこと言われやすい人ですけどね、うちの中尉は」

イマニュエルさんが使っていたタブレットをさりげなく近くの棚の上に伏せながら軽く笑う。

「あなた方が気にすることないですよ。

 自分が勝手に相手に期待して勝手に失望してるくせに、相手のせいにするほうがよっぽどデリカシーがない行為です」

「…イマニュエルさんが男性だと思いこんで告白したら、女性だとわかって逆上されたり?」

何それ知らない!いつの間にそんなことがあったの!?

サラの言葉にイマニュエルさんが声を上げて笑った。

「あっははは!

 あれは…まぁ、私のこの外見も悪かったかな…とは思ってますよ、ちょっとは」

「でもイマニュエルさんかっこいいし…かっこいいって言い方でいいのかわかんないけど…」

あっけらかんと笑うイマニュエルさんにサラがちょっと目線を落としてもごもごという。

”ハンサム”ってやつよね、わかるわかる。

「ふふ、ありがとうございます。

 自分のこの格好は好きでこうしてるだけですから」

さっきタブレットを見ていた時のちょっと険しい顔をしたイマニュエルさんは男性的な雰囲気が強かったけど、こういう柔らかい笑顔になると女性っぽく見えるかな。

私たちの姉妹であるファが教えてくれた、全員女性の役者で構成された劇団の演劇にでていた王子様役みたいな人…って表現がぴったり。

アレ結構面白かったな、また今度別のおすすめがあったら教えてもらおう。

それよりも。

「ギャンの改良、ですか?」

「え、ああ、エグザベ中尉が先日からちょっとずつ復帰しはじめましたからね。

 休みの間にいくらか手も入れてありますし、長めに休んでたこともあってまだ慣らしでとりあえず今のところは訓練だけですけど、中尉の操縦に見合う制動にするにはどうしたらいいかとずっと考えてて」

私の質問に答えつつ、若干思いつめたような目でちらりとタブレットをみるイマニュエルさん。

ちゃんと休んでるんだろうかこの人。

思わずサラと目線を交わし合った。

ただでさえ、ここ最近出撃も多いからMSがフル稼働で整備も多いそうだし、エグザベ中尉が休んでた間だって、ずっとギャンの改良だけでなく他の機体の整備の手伝いだってしてる。

エグザベ中尉もまぁまぁワーカーホリックぽいなって思ったけど、こちらもなかなかだ。

パイロットと整備兵は似るものなのかしら?

「…ここずっと、暇さえあればギャンの前にいるって聞きました」

「休息日の指定になってる日でも格納庫で見かけるって聞きました、ちゃんと休んでますか?」

心配そうなサラに、私も重ねて言う。

イマニュエルさんが肩をすくめた。

「流石に休息日は顔出したら整備長に怒られて追い返されましたよ。

 規定通り休んでますから大丈夫です」

「休息中もタブレットでMSの制動プログラム見つめてるのは休んでいることには入らんぞ」

「あ、パプティマス様」

低い声がぬるっと後ろから会話に入り込んできてちょっとびっくりした。

サラの顔が明るくなる。

「失礼しました、お疲れ様です、艦長」

サラ独自の、ちょっとしたったらずな呼び方で声の主がわかったのか、イマニュエルさんがぱっと振り返って艦長に敬礼したので、私たちもあわてて敬礼する。

「楽にしろ。

 話してるところ邪魔してすまないな、先日相談されていた資料が届いたぞ」

軽く返礼した艦長が、小脇に抱えていたタブレットや書類のようなものを幾つかイマニュエルさんに差し出した。

「すみません、お呼びいただければこちらから行きましたのに」

「なに、私の気分転換がわりだ、気にするな」

イマニュエルさんが恐縮しながら資料を受け取る。

艦長と顔を突き合わせて説明を聞いているイマニュエルさんを見ながらサラがちょっと複雑な顔をしているのに、こっそり笑ってたらにまた小突かれた。

だって、あなたわかりやすいのよ!

「また必要なものがあったら遠慮なく言え、できる限り取り寄せよう。

 整備長にも話は通してある、わからないことがあったら聞きにいくといい」

「ありがとうございます、パプテマス艦長」

イマニュエルさんが丁寧に礼をする。

パプテマス艦長はそれに鷹揚にうなずくと、ふと、私たちのほうを向いて軽く笑いかけた。

「サラとシドレは、今から訓練か。よく励むように」

「はっはい!

 頑張ります、パプティマス様!」

「はい!

 私も頑張ります!」

ほっぺたをほんのり赤く染めたサラが敬礼しながら元気よく返事をする。

私だって、艦長に期待されてるって思えば嬉しい、ほっぺた赤くはしないけど。

艦長が立ち去った後も、ぼうっとさっきの艦長の笑顔を反芻してるような顔のサラの小脇を今度は私が小突く。

「ちょっと、いつまでも呆けてないでよ」

「…久々に正面からパプティマス様の笑顔見た気がするんだもん…素敵…」

だめだこりゃ。

さっき艦長から受け取ってた資料に気をとられてるイマニュエルさんは気づいてないのか、気付いててスルーしてるのか微妙だけど、サラの様子は気にしてないみたい。

こういう若干大雑把な…もとい、細かいことを気にしないおおらかなとこがあるのもエグザベ中尉とイマニュエルさんどことなく似てるな…やっぱりパイロットと整備兵って似てくるのかな…

「あ、シドレ、サラ!

 もうこっちに来てたのかい、午後の訓練はシミュレーター訓練に変更になったそうだよ」

思わず遠い目をしてたら、格納庫の入り口からアドルが顔を出して声をかけてきた。

「あら、ありがとう、行きましょうサラ。

 イマニュエルさんも、休憩中に邪魔しちゃってごめんなさい」

「いいえ、構いませんよ。

 2人とも訓練頑張ってくださいね」

「はい!行ってきます!

 アドル、今行くから待って!」

にこりと笑うイマニュエルさんに、私たちは手を振って格納庫を後にした。




イマニュエルは本編の裏でエグザベくんのギャン改-IIの調整を地道に続けてましたよ、というお話。
なんでこういう改良とか調整とかって、一か所手を入れるとここもそこもついでにあそこもってどんどん手を入れたくなるんでしょうね…
イマニュエルが主に機体にのみ手を入れてるのは、共和国軍の武器開発制限でビームサーベルの強化ができないからです。
パンジャンドラムは、推進力の補助って名目で手を入れました。
えっエグザベ中尉ってば、パンジャンドラムをナックルダスターがわりにして敵をぶん殴るのに使ってる?
目的外使用なのでそれは関知しません!!(視線を逸らす)
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