(Ζガンダム異伝)エグザべ・オリベ戦記別伝   作:ガンダム初心者のミリオタ

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時系列的には本編後、130さんのハーメルン版『いつもと変わらない日常への帰還』直後
 
元投稿:カミーユ?なんだ…14 https://bbs.animanch.com/board/5897175/ 21-25


宙の果てへの挽歌

エグザベを回収して医務室へとりあえず叩き込んだ後、自分も規定のメディカルチェックを受けて一息ついていた時にアドルから声をかけられた。

「…いや、こいつは…俺だけじゃ…シロッコに一旦確認したほうがいいか。

 そいつ持ってついてこい」

艦長室でシロッコにアドルが持ってきたものを見せると、あいつも少し考えてから口を開いた。

「…これは…確かにそうだな。

 エグザベにも確認したほうがいいかもしれないが、とりあえずまず」

 

「おい、イマニュエル。

 艦長が呼んでるぞ、ついてこい」

「はっ、ありがとうございます、ヤザン大尉」

戦闘宙域から戻ってきたMSの整備をしていたうちの整備兵の中に混じってたイマニュエルに呼びかける。

流石に今回は後ろからは声をかけてねぇぞ。

向こうもいい加減慣れたのか、以前のような警戒した子猫みたいな顔で見てくることは最近はすっかりなくなった。

ギャン改-IIが戦闘宙域で爆散した、ということは既に報告してあるから、かわりに他のMSの整備にまわされているのだろう。

ペアを組んでいるらしい整備長の野郎と一緒に破損部分の奥を覗き込むようにしていたイマニュエルは、すぐに反応してこちらを振り返ってきた。

いつかのようにチームメンバーに申し送りをしてから後ろをついてくるイマニュエルを伴って、艦長室へとんぼ返りする。

「御苦労、ヤザン。

 イマニュエル・ジャン伍長。忙しいところすまないが、ひとつ確認したいことがある」

「はい、大丈夫です。

 何でしょうか?」

「アドル曹長。あれを」

首をかしげるイマニュエルにシロッコが控えていたアドルを呼んだ。

「はっ。こちらです」

いつの間にか丁寧に布に包まれていたものをアドルが差し出す。

開かれた布の中には、1~2cm四方くらい、親指の爪の先程度の小さな白い欠片が納まっていた。

一見割れた皿の一部のようにも見えるがこれはおそらく。

「…あ…」

「…先ほどの任務からの帰還中、一番最後尾を務めていたMSに乗っていた隊員が衝撃を感じたとの報告がありましたので確認したところ、こちらの欠片が外装に食い込んでいたそうです。

 爆散したギャン改-IIの一部かと思われましたので回収させていただきました」

口を開きかけ、しかしそのまま声が出せないイマニュエルに、アドルが淡々と説明する。

MSの外装は、宇宙空間という特殊な環境下での戦闘に耐えられるよう、特別な素材と塗料を使っている。

特にギャン改-IIはジオン側のMSのため、連邦やジュピトリス製のMSとは違う技術が使われているであろうこれは、本来ならば技術解析班が喉から手が出るほど欲しい機密事項の塊でもあるのだろう。

しかし。

「…触れても…よろしいでしょうか…」

「かまわん」

絞り出すように言うイマニュエルにシロッコが許可を出す。

アドルの差し出す欠片を震える手でイマニュエルが布ごと受け取った。

「…念のため確認させてほしいが、これはエグザベ・オリベのギャン改-IIの外装の一部で間違いはないか?」

「…はい……そうです…間違いありません…

 ずっとみてました、ずっと整備してました、部隊にこの機体が配備された時から、最初からです。

 欠片になってても、わかります。

 エグザベ中尉のギャン改-IIです、間違いなく」

そう、一気に言い募ると、耐え切れなくなったようにまるで遺骨のようなその欠片を布ごと抱きしめて、イマニュエルは泣き崩れた。

 

 

「よ、エグザベ。具合はどうだ」

「元気だよ、全然問題ない」

医務室にぶちこんでおいたエグザベが最終的にグラナダの病院送りになったと聞いて、まぁそうだろうな…とチベットスナギツネ顔っていうのか?以前写真でみたジト目の動物と同じ表情になってるのは自分でも分かった。

申請していた面会許可が下りたので、休息日を使って病院へ行く。

この俺、ヤザン・ゲーブルが!わざわざ休息日に来てやってるんだぞ、ありがたいと思え。退院したらなんか美味いもん奢れよ。

それはともかく、病室にいるエグザベの顔見た瞬間に、まず真っ先に指さして笑ってやった。

周りの奴らにさんざん心配かけた罰だ。

ひとしきり大笑いした後、決まり悪げな顔をしたエグザベに現況の確認と多少の報告をしてやる。

一緒の部屋にぶっこまれてると聞いていた、アーガマの情報部の…ヌーだったか。

そいつは今リハビリの時間だかで不在、とのことだった。

まぁ別にあいつはいてもいなくてもいいか。

むしろ居ると一々小うるさいこといってくるからめんどくせぇ。

情報共有の必要があればそいつにはエグザベから伝えるように言い添えておく。

ついでとばかりに持たされたエグザベへの分厚い書類袋にそいつの分も一緒に入ってるらしいから、コレ渡しときゃいいんじゃねぇかな。

「…とりあえず現況についてはお前に報告できる分はこんなもんだ。

 一か月の入院だって?

 反省…もとい、療養にはちょうどいいくらいだな」

「反省はしてるよ、本当に。

 見舞いに来てくれる人みんなから本当にたくさん怒られるし」

「その怒りがお前に対する信頼だと思えよ。

 もっと怒られろバーカ」

「…はい…」

しょぼくれた犬みてぇな表情するエグザベにもうひと笑いしてから、見舞いにきたもう一つの目的を切り出す。

「お前のMS専属整備兵、イマニュエル。

 本当はあいつも来たがってたんだがな、ちょっと無理だった。

 んで、かわりにこいつを託されてきた」

何やら複雑な、よくわからん事情があるらしく、イマニュエルには面会の…というより、今彼女がいるドゴス・ギアを離れる許可が下りなかった。

だいぶシロッコも粘ってくれたらしいのだが。

落ち込んだ様子を何とか隠そうとして失敗してるイマニュエルから託された小箱のようなものをエグザベに渡す。

「…開けても?」

「おう」

ぱかりとふたを開けると、中に納まってたのは。

「…これ…もしかしてギャン改-IIの外装?」

「お、流石に自分の機体はわかるか。

 あの時爆散した欠片がたまたま一つ回収できたんだよ。

 で、イマニュエルに渡したやつの、おそらくこれはその半分だな」

艦長室で見たときよりさらに小さくなった白い小片が、シルクのような布を敷かれた小箱の中に行儀よく納まっていた。

じっと、しばらくその欠片を見つめていたエグザベが、ややあってぽつりとつぶやくように口を開く。

「…イマニュエル伍長は…これを見たとき泣いてた?」

「めっちゃ泣いてた」

「…だよね」

「勘違いするなよ、ギャン改-IIが壊れたから泣いたんじゃない、ギャン改-IIは壊れても、お前が、自分の担当MSのパイロットが無事に戻ってきた、そのうえでこうやって一部でも機体が回収できたからこそイマニュエルは泣けたんだ」

本来宇宙空間で爆散したようなMSなんぞ、そのまま欠片がデブリと化して無重力空間をものすごい勢いで四方八方へ散らばっていくので、回収できることなんてほとんどあり得ない。

運よく小惑星なんかにぶつかったやつがそのままめり込んでるのが見つかれば回収できるかどうか、というくらいだが、それもその欠片の元が何か、はっきり判明するのはめったにない。

成分分析して、検出された素材から推測できる程度だ。

そもそも、そんないつ使われていた機体の、どこの欠片かわからないものをわざわざ回収するようなコストをかけるような余裕はおそらく連邦にもジオンにもないだろう。

そんな手間をかけるくらいなら、MSそのものを鹵獲するほうが断然有益だ。

今回欠片が回収できたのは、文字通り「運が良かった」以上の何物でもないだろう。

「うん…イマニュエルにありがとう、ごめんって伝えておいてほしいんだが頼めるかな」

「そいつは退院した後自分で直接伝えとけ。

 俺はこれ以上のメッセンジャーはしねぇ」

ついでにあいつにも怒られとけ、と心の中で付け加えておく。

あの時医務室に入れた後で艦長室へ呼び出されてシロッコにもクソ叱られたらしいが、そんくらいきっちりシメといたほうがこいつにはちょうどいいだろ。

エグザベもそれなりに死線くぐってきてるはずなんだが、どうも変なところでぽやっとしてやがる。性分かな。

「…はは、それもそうだ。

 いや、すまない。君に甘え過ぎたことを言った。自分でちゃんと伝えるよ」

「おう、そうしろそうしろ」

神妙に頭を下げたエグザベに、気にするなとぱたぱたと手を振ってやる。

「戦うってのは、一人じゃ戦えない。

 今回、それを本当に痛感したよ、MSに乗ってるのは確かに自分一人だけれど、自分の後ろにはこんなにもたくさんの人が僕の、僕らのためにいてくれてるんだなって」

良いMSってのは、単純に機体の性能が高いってだけじゃねぇ。

それを操るパイロットの技量、そしてその技量を十全に引出せる整備技術。

それらが全部あって、初めて「良いMS」って評価の舞台に上がることができるってもんだ。

ギャン改-IIは、あの激戦を最後まで存分にその性能の全てを使って戦い抜き、そしてパイロットを生かして帰した。

白い欠片を通して、その向こうの何かを想うような表情で、そっと小箱を握りしめるエグザベに声をかけてやる。

「なぁ、エグザベ。

 ギャン改-IIは、いいMSだな」




宇宙の果てで散った、ギャン改-IIへ愛をこめて。

半分にしたギャンの欠片を入れていた小箱は、イマニュエルがギャンの機体にも使われてる素材を使って空き時間を使って作業場を借りて作ったものです。
同じものを二つ作ってあって、もう一方は自分が持ってます。
小箱の外側も、ギャンに使われてる白と銀の塗料でペイントしてあります。
内側の布は、シロッコに頼んで弔事用の紫色の布を取り寄せてもらいました、ら、端切れサイズではあるものの、びっくりするほど上質のシルクが届いてちょっと呆然としたらしい。

現時点ではイマニュエルは他のチームのお手伝いに入ってたり、相変わらずシロッコや整備長のところに突撃して連邦側の機体やジュピトリス製の機体について勉強してたりしてます。
そのうちメッサーラがエグザベくんの機体になっても安心だ!

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130さん、ハーメルン版完結おめでとうございます!
本編は一旦エンディングを迎えていますが、自分が(勝手に)書いたエグザベくんやカミーユくんたちのお話はまだもうちょっとありますし、新作ネタも書けたらいいですね、お付き合いいただければ幸いです。
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