ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか   作:ラブコメは正義マン

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2026/5/12 追記
はじめまして。本作に興味を持っていただきありがとうございます。
序盤は文章面でも構成面でも拙い部分が多く、読みにくいかもしれませんが、そのままこの物語の出発点として残しています。
途中からは徐々に改善されているため、第1話から最新話まで通して読んでいただけると嬉しいです。


1章 オラリオ転移編
転移


「急に呼びつけてどうしたんだ?遠坂」

 

聖杯戦争が終わって一年ほどたった頃、俺は師である遠坂に呼び出され、遠坂邸の地下工房を訪れていた。今日も魔術の鍛錬だろうか。しかし、床一面に描かれた魔法陣がただ事ではない様子を醸し出していた。

 

「今日はただの実験よ。衛宮くんには少し協力をお願いしたいの」

 

遠坂は答える。実験?鍛錬ではなく?魔術師としてまだまだの俺が遠坂の実験に手伝えることなんてないとは思うが……?

 

「前に見せた宝石剣の設計図は覚えてる?」

 

俺が考えていると、遠坂から声がかけられた。宝石剣ゼルレッチ。前に遠坂に「投影してみてくれ」と設計図を見せられた時の記憶がよみがえる。あの時投影したものは、見た目だけそっくりの贋作だった。

 

「覚えてるけど……あれは失敗しただろ?遠坂も見てたじゃないか」

「そうね。ただ、少し疑問だったの。なんで衛宮くんの投影が失敗したのか」

「俺がへっぽこなだけじゃないのか?」

「いいえ。確かに基礎的な魔術はまだまだだけど、剣の投影においてはあなたの右に出るものはいないわ。だから何か別の原因があると考えたってわけよ」

 

予想外の高評価に少し恥ずかしさを覚える。どうやら俺の師匠は大変俺を買ってくれているらしい。ゆるみそうになる口元を抑えながら、会話を続ける。

 

「そのための実験ってわけか。それで、別の原因って一体なんだ?」

「私の推測では衛宮くんが第二魔法、もっと言うと並行世界について知らないからだと思うの」

 

なるほど。宝石剣ゼルレッチは第二魔法を行使する魔術礼装だ。見た目の再現ができても中身が伴っていなかったのは、俺が剣を再現するための理論が欠けていたからと遠坂は考えたわけだ。逆に言えば、あとは理論さえ完成させれば宝石剣を投影できるということらしい。

 

「って言っても遠坂は第二魔法なんて使えるのか?魔法って相当すごい技術なんだろ?」

「もちろん使えないわよ。でも疑似的に再現はできるんじゃないかってね」

「再現?」

「そう。並行世界の観測って結局は“視る”ことなのよ。だったらそれをありったけ強化してあげればいい」

 

と遠坂は言う。つまり俺の視力をものすごく強化して並行世界を観測しろってことか。いくら何でもそれはさすがに無理だろう。いくら視力を強化したところで見えないものは見えないのだ。無限に連なる並行世界の観測なんてできるわけが……。

 

「あなたはすでに並行世界の自分を知っているでしょう?なら、そこを起点に他の並行世界も観測できるはずよ」

 

遠坂の言葉を聞いて、脳裏に浮かんだのは赤い外套を着たアーチャー――

その正体は、どこかの未来で抑止の輪と契約し、守護者となった自分自身だ。

自分が辿り得た、理想の成れの果てのその姿を、今でも鮮明に覚えている。

 

「なるほどな、つまり、あいつを起点に並行世界の観測をすればいいってことか」

「そういうこと。もし上手くいかなかったらまた別の手段を考えるわ」

 

最終手段もあるしね、と呟く遠坂。しかしあまり使いたくないのか、苦虫をかみつぶしたような表情をしている。トラウマでもあるのだろうか。第二魔法を再現できる手段とは何だろうか、と少し興味が湧く。

 

「さて、準備はいいかしら?」

 

なんて考えていると、いつの間にか切り替えた遠坂に声をかけられる。

 

「ああ。俺はこの中心に立てばいいのか?」

「そうよ。あと、これを持っていて頂戴」

 

そういって渡されたのは赤いペンダント。俺も同じものを持っているが、これは違う。

これはあのアーチャーが持っていたものだ。いつかの夜に殺された俺を助けるために遠坂が使ったペンダント。アイツは生涯これを持ち続けていた。

今や魔力を持たないそれだが、何か強い力を感じられた。

 

「これをもって強くイメージしなさい。ありえたかもしれない並行世界の自分をね」

 

魔法陣が起動し、魔力が流れ出す。

自身に魔力が流れてくるのを感じるとともにイメージする。

守護者としてその生涯を捧げた男の人生を―――

 

__「すべてを救う」という理想を追い続け、力を得た。

__自身の持つ力を使い、人々を助ける。

__男は人々に英雄と呼ばれるようになった。

__しかし、その人々にも裏切られる。

__世界を救った男が迎えた最期は断頭台であった。

__理想を追い続けてきたその生涯は、最期まで報われることはなく―――

これがアイツの辿った末路だ。思い出すだけで吐きそうになる記憶を探る中、いくつかの“俺”が重なったような感覚を覚える。これが並行世界なのだろうか。それを考えているうちに“俺”は増えていき――

__花園のような場所で紺碧の瞳をした少女と再会する自分を見た。

__大事な後輩のため、たった一人だけの正義の味方になる自分を見た。

__妹のため、悪となる自分を見た。

自分を見る。自分を視る。自分を観る。様々な自分が流れ込んでくる。

同時に、自身が何かに引っ張られるような感覚があった。最初は気のせいかと思ったが、それは強くなっていく。

 

「どう、成功しているかしら?」

 

遠坂の声が聞こえる。しかし、返事をすることができない。自身を引っ張る力が徐々に強くなっているのだ。

 

「ちょっと、士郎!?」

 

声が遠くなっていく。

マズい、と直感が叫んでいるが、どうすることもできない。

残った意識で俺はペンダントを握りしめ、どこか違う世界に引っ張られるような感覚の中、意識を失った。

 

 

 

──目を覚ます。

しかし、その天井は見覚えのないものであった。

 

「遠坂――?」

 

 声をかけるが返事がない。キョロキョロとあたりを見回すが、どうやら遠坂邸ではないらしい。石造りで作られたその家は、どこか現代ではない様子を感じさせる。

自分はなぜこんなところにいるのだろうか?さっきまでの出来事を思い出そうとする。

確か、遠坂の実験に協力して、並行世界の観測を……

そうだ、思い出した。実験の途中で意識を失ったのだ。

だが、ここはどこだ?立ち上がってカーテンを開き、窓の外を見る。

しかし、窓から見えるその景色は、自分の知っている世界とは決定的に異なっていた。

なぜ自分がここにいるのか、と考えていると、ドアの開く音が聞こえ──

 

「目覚めましたか。具合はどうですか?」

 

 目を覚ました俺が最初に出会ったのは、緑の髪をした少女だった。

 

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