ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか 作:ラブコメは正義マン
しかも、サポーターなあの子も出てきません。
.......文章がまとまらなかったんです許してください何でもしますから
急に絶叫したミィシャを、士郎は驚いた様子で見つめていた。
周囲では、ギルドの職員たちも何事かとこちらへ視線を向けている。
そのことに、ミィシャも気づいたらしい。
少し恥ずかしそうにしながら周囲へ頭を下げ、士郎に向き直った。
「急にどうしたんだ?俺、何かマズイことでも言ったか?」
「言ったわよ!貴方、昨日は恩恵もなしにモンスターを追いかけていった訳!?」
声を落とし、必死の形相で士郎を睨みつける彼女。
そこまで聞いて、士郎はようやく目の前の彼女の正体について思い至った。
モンスターが逃げたことを教えてくれた、あの二人の女性。
彼女は、そのうちの一人だったのだ。
「何か見覚えがあると思ったら、昨日の……」
「あなた……恩恵もなしにモンスター追いかけるとかバカなの?死にたいの?もし死んでたら、それを教えた私の立場は?責任は?どうなるっていうのよ?」
「それはおかしいだろ。話を聞いて追いかけていったのは俺だ。だから、何かあっても別に気に病む必要はない」
「別にあなたの心配はしてないわよ!ギルドの職員として、教えた私が危ないの!」
士郎へとまくし立てるミィシャ。
だが、噛み合わない士郎の返答に、ミィシャの怒りはますます膨らんでいく。
「第一、どうしてモンスターを追いかけていったわけ?」
──そもそも、何故モンスターを追ったのか?
その問いを向けられた瞬間、明らかに士郎の空気が変わる。
そして、一切の迷いを感じさせない声色でそう言った。
「誰かが危険な目にあうかもしれないのに
──それを見過ごすなんてことはできない」
その声には、疑いようのない覚悟があった。
直前まで怒りをあらわにしていたミィシャも、その迫力に、思わず言葉を失う。
「……ひとまず、書類を提出してきます。しばらくそちらでお待ちください」
呼吸を整え、逃げるようにその場を去ったミィシャ。
その頭の中では、先ほどの士郎の言葉が、いつまでも響いていた。
***
私の絶叫がギルドに木霊してから数十分後。
ギルドは何事もなかったかのように、いつもの喧騒を取り戻していた。
彼の書類は、すでに上へ提出されていた。
そうして彼は、正式にギルド公認の冒険者として登録されたのだが……。
「なんで私なのよ……」
手元へ戻ってきた書類には、思わず目を背けたくなる一文が記されていた。
衛宮士郎
担当アドバイザー──ミィシャ・フロット
──あんな危険人物のアドバイザーなんて、できたものじゃない。
上へ変更を要求しようか?
むしろ、登録直後のこのタイミングなら、
引き継ぎもなくスムーズに変更が利くはずだ。
担当アドバイザーが変わること自体、
冒険者にとっては決して珍しい話ではない。
だが、それはあくまでも冒険者側がアドバイザーの変更を要求した場合の話だ。
アドバイザー側から担当を外れるには、相応の理由が求められる。
脳内で逡巡する思考。
そして、最終的に辿り着いた結論は一つだった。
「やるしかない、かぁ……」
──アドバイザーの変更は不可能。
この現実を、受け入れるしかない。
先ほどよりも重たい足取りで彼の下へと向かう。
「お待たせしました……。これで冒険者登録は完了です。あなたの担当アドバイザーは私──ミィシャ・フロットとなりましたので、ギルドやダンジョン等、何かご不明な点があれば私にお聞きください」
なるべく事務的に、冷静に説明するつもりだった。
だが、自分でも驚くほど、声は深く沈んでいた。
どうやら、腹の底で必死に押し込めていた苛立ちは、まだ完全には消えていないらしい。
「ああ、よろしく。ミィシャ」
そんな私の態度を気にも留める様子もなく、彼は笑顔で手を差し出した。
だが、その手を私が掴むことはない。
──どうせ、短い付き合いだ。
そんな黒い感情が、腹の底から顔を覗かせる。
私の内心など知ってか知らずか、彼は続けた。
「冒険者登録が済んだってことは、これからはダンジョンに入ってもいいのか?」
「ダンジョンですか?はい……入るのは構いませんが……」
──それがどうしたんですか?
そう問い返そうとした、その瞬間。
「分かった。じゃ、行ってくる」
彼は振り返りもせず、歩き出していた。
「はぁ!?」
ギルドを出ていく彼の背中を、呆然と見送る。
先ほどの口ぶりからして、向かう先はダンジョンだろう。
まあ、登録を済ませるなりダンジョンへ向かおうとする冒険者自体は、決して珍しくない。
──だが、彼は武器を持っていただろうか?
記憶を辿ってみる。
しかし、彼がギルドに姿を見せてから、武器らしい武器を携えているところを、一度も見ていない。
それは、昨日も同じだった。
つまり、登録を済ませて直ぐに、武器も無しにダンジョンへ向かったということで──
「あー……こりゃ早死にするわー……」
そう小さくこぼした私の声は、ギルドの喧騒にかき消されていった。
***
──同日、ダンジョン。
士郎達は、ギルドで冒険者登録を済ませた後、ベルとともにダンジョンへと潜っていた。
その到達階層──すでに七。
本来、駆け出し冒険者であるはずの彼らにとって、この階層まで潜るのは自殺行為と呼ぶほかない。
──だが、
「はぁっ!!」
『ギィッ!?』
ベルの持つ漆黒の刃が、この階層に住まう蟻型のモンスター──キラーアントの首を断ち切った。
上層において、ウォーシャドウと並び“新米殺し”と呼ばれるこのモンスターは、頑丈な甲殻を持ち、並大抵の武器やステイタスでは、その攻撃すら弾き返してしまう。
それを、いとも容易く切り裂いたヘスティアナイフ。
その切れ味を確かめるように刃を振るったベルは、確かな手ごたえに、満足げな笑みを浮かべていた。
そんな彼のすぐ近くで──ドサリ、と別のキラーアントの首が地面に転がる。
それは、この場にいるもう一人の冒険者──衛宮士郎によって打ち落とされたものだった。
士郎の手に握られているのは、陰陽の夫婦剣。
この世界に来てから、十全な力を発揮できずにいたその武器は、今や容易くモンスターの鎧を切り裂くほどの威力を取り戻している。
「──ふぅ……。これで全部か?」
最後の一匹を討伐した士郎は、周囲へと視線を巡らせた。
そこには、ニードルラビットやパープルモスなど、討ち果たされたモンスターの残骸が転がっている。
その数は二十を優に超えている。
ギルドの基準でいえば、とっくに次のステージに進んでいてもおかしくない
「士郎さん、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様」
戦闘を終えた二人は、どこか穏やかな空気を纏いながら言葉を交わしていた。
倒れたモンスターの骸から魔石を回収しつつ、先ほどの戦闘を振り返っていく。
「士郎さん。ボクのさっきの動き、どうでした?」
「少し正直に突っ込みすぎかな。そのスピードは武器だが、少しは様子をうかがうのも大事だぞ?」
自身の動きについて問いかけたベルは、内心では褒め言葉を期待していた。
だが返ってきたのは、思いのほか的確な指摘だった。
予想外のダメ出しに、ベルはがっくりと肩を落とす。
とはいえ、それも長くは続かない。
すぐに気持ちを切り替えたベルは、鼻唄を口ずさみながら、最後の魔石を回収し終えた。
「えらく上機嫌だな?」
「はい!今までダンジョンには一人で潜っていましたから……だから、こうして士郎さんがファミリアに入って一緒に戦ってくれてるのがうれしくって!」
太陽のようにまぶしい笑顔で、ベルは士郎を見上げた。
そこまで素直に喜ばれてしまうと、士郎としても少しこそばゆく、思わず視線をそらしてしまう。
だが、ふと何かを思い出したように、士郎は視線を戻し、ベルに告げた。
「そうだ、ベル。今朝から言おうと思ってたんだが……」
「何ですか?」
「──せっかくファミリアの仲間になったんだ。俺のことはもっと気安く呼んでくれないか?」
──それは、仲間としての距離を、ほんの少し縮めたいという士郎なりの申し出だった。
「目上の人を気安く呼ぶなんてできません!」と、断ろうとしたベル。
しかし、自分をまっすぐに見つめる士郎の顔を前にして、その言葉は自然と引っ込んだ。
(士郎さんは僕のことを、仲間として見てくれている……。なら、その想いに応えない方が失礼だ)
「わかりまし──いや、わかったよ。シロウ」
「ああ、これからよろしくな。ベル」
こうして二人は、少し遅れて仲間としての誓いを交わした。
だが、それはまだ始まりに過ぎない。
この先、彼らを待つ試練は決して少なくないのだから。
──これは、英雄に憧れる少年と、正義の味方を志す少年が紡ぐ、
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毎度のことながら、読んでくださってる皆様方、本当にありがとうございます。
次回こそは、次回こそはサポーターなあの子が登場しますので何卒よろしくお願いします。