ダンジョンに正義の味方がいるのは間違っているだろうか 作:ラブコメは正義マン
そのため、前話を修正前に読まれた方は、展開が若干異なる可能性があります
後、つなぎ回なので今回短いです
──三日後
ダンジョンでリリを救出してから、三日が経った朝。
あれから俺たちとリリは、改めてパーティを組むことになった。
今は、彼女をヘスティアに紹介するため、ホームへ向かっているところだ。
その道すがら、俺はリリを取り巻く状況について説明を受けていた。
「──というわけなので、しばらくは問題ないかと」
リリが所属していたファミリア──ソーマファミリアは、想像以上に悲惨な状況だった。
どうやら
リリにした行いを決して許せるわけではない。
だが、彼らもまた被害者なのだと思えば、胸の奥にわずかな痛みが走った。
「じゃあ、一先ずファミリアについては問題ないんだね」
「はい、リリにつながる痕跡はあらかた消しましたし。じきに死んだことにされるでしょう。それより──」
そこまで言って、問いかけるのを躊躇うように彼女は目を伏せた。
同時、魔法によって生やされた耳が、しゅんと力なく垂れ下がる。
その仕草は、答えを聞くのが怖いと訴えているかのようだ。
だが、それでも確かめずにはいられなかったのだろう。
意を決したように顔を上げ、言葉の先を紡ぐ。
「──ベル様達は、リリの事を許すんですか?」
リリは、まるで自分に罰を求めるかのように問いかけてくる。
「リリは、ベル様達にひどいことをしました。
それに、他の冒険者達にもです。ずっと、悪いことをして生きてきました。
そんなリリに許される資格なんて──」
彼女は、あの日からずっと自分の行いを悔いていた。
犯した罪の重さを、誰よりも理解しているのは彼女自身だ。
それでも──
「ある」
「──え?」
「俺達は、リリを許すよ」
──許されることに、資格なんかない。
俺達は、救けたいからリリを救けた。
それは紛れもなく、俺達自身が選んだことだった。
「で、でも……そんなことがあっちゃいけないんです。
だって、私が許されてしまったら、あの人たちだって──」
それでもなお、自分に許される資格がないと彼女は言う。
“あの人たち”とは、自分が陥れた冒険者たちのことだろう。
自分だけが救われてしまっていいのか。
その思いが、彼女を縛りつけていた。
だけど、俺が目指す先は──
「──リリには言ってなかったな。
俺、正義の味方になりたいんだ。
皆を救える正義の味方に。
その道がどれだけ険しくて、難しいか。
それならもう知ってる。
──それでも、俺は正義の味方を目指し続けたい。
だから、リリの事も救けるよ」
「──そんな……そんなの……」
リリの目から、堪えていたものが溢れ落ちた。
心のどこかで、自分は救われてはいけないと思い込んでいたのだろう。
その思いが、呪いのように彼女の行く先を塞いでいた。
だから、俺たちがその呪いから解き放つ。
「リリ、そんなに自分を責めなくたっていいんだぞ?
それに……ちゃんと叱ってくれる人なら──」
「ベルくーん!!士郎くーん!!」
視線を上げた先には、両手を振って俺たちを出迎えるヘスティアの姿。
彼女ならきっと、リリを真正面から叱ってくれるだろう。
溢れていた涙はいつの間にか収まり、ヘスティアの姿を見たリリは、どこか安心したように微笑んでいた。
***
──昼。冒険者ギルド。
ヘスティアにリリを紹介してから、しばらく後。
ベルたちは、エイナにもリリのことを報告するため、ギルドを訪れていた。
──その途中の出来事だった。
「ベル、どこに行こうとしてるんだ?」
「離して、士郎!このままだと──」
ギルドに入ろうとした瞬間、ベルは突然、その場を離れようとした。
あまりにも唐突な行動に、士郎は彼を引き留め、事情を問いただす。
入り口でもめる二人へ、周囲の冒険者たちの視線が集まっていく。
そして──
「……見つけた」
澄んだ声がベルの耳に届いた。
その瞬間、士郎の手を振りほどき、その場から逃げようとする。
だが──
「あだっ──!?」
逃げることはかなわなかった。
ベルが逃げ出そうとしたその瞬間、その声の主もまた、驚異的な速度で進路へ割り込み、結果として正面衝突する形になった。
激突した頭をさすりながら顔を上げ、ベルは声の主の正体を確かめた。
(やっぱり……見間違いじゃなかった。この人は──)
「剣姫……アイズ・ヴァレンシュタイン」
驚いて声の出ないベルに代わるように、士郎がその名を口にした。
オラリオでも第一級冒険者に数えられるほどの実力者であり、ベルの憧れの存在でもあるアイズ。
そんな彼女は、ここ数日ベルたちを探していた。
ようやく探し人を見つけた彼女は、少しだけ口元を緩ませながら、ベルたちへ話しかける。
「……やっとみつけた。少し……いいですか?」
「構わないが──ベル?また何してるんだ?」
「だって!急なことで!心の準備が!」
アイズが口を開いた途端、ベルはまたも逃げ出そうとしていた。
彼が彼女に憧れていることは知っている士郎だが、ここまで露骨に動揺するとは思っていなかった。
(気持ちはわからんでもないが……急に逃げ出すのは失礼ってもんだ。何より──)
「そんなこといってもな……この前も、俺達は助けてもらったんだぞ?」
「──え?」
「オークに囲まれたとき、彼女が助けてくれたんだ。
おかげで、俺もすぐに追いかけられた」
「そうなん……ですか?」
ベルはぎぎぎ、とぎこちなく首を動かし、恐る恐るアイズへと視線を向ける。
アイズは小さく頷き、その問いを肯定した。
事情を察したベルは、自分の行動がどれほど愚かだったかを悟り、しょんぼりとうなだれる。
「そういうことだ。
立ち話もなんだし、あっちで話さないか?」
ギルドの隅にあるテーブルとソファを指し示し、士郎が促す。
アイズは、ベルとようやく話ができることに、ほんの少し表情を和らげた。
ベルも、まだ緊張は残るものの覚悟を決めて彼女と向かい合う。
三人は、それぞれの思惑を胸に、場所を移すのだった。
士郎というキャラクターが愛されまくってて俺嬉しいよ......
この作品において解釈違いが最も許せないのは私自身です。
遠慮することなく、疑問に思ったことはどんどん書いていってください。